個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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115話

「ここまでやられちゃったら、いくら私でも復旧は無理だね」

 

「楪、それよりお前……腹」

 

「大丈夫、内臓は傷ついてないし焼けて止血も終わってる。ステープルで無理やり止めるしかないけど」

 

「……くそ……」

 

 改めて私はビームで撃ち抜かれて焼けただれた脇腹をナイフで切開して形を整えた後ステープルで無理やりバチッと止めて包帯をぐるぐる巻きにした後にみんなと合流した。高電圧でボロボロにされた体中のメカを修復し終えた私は一応平常通りの動きができる、かな?重傷と軽傷の合間くらいだけどまあ私は頑丈なので平気だ。それよりも、目の前の状況を何とかしないといけない。

 

 目の前にあるのは、めちゃくちゃに破壊されてしまった島の基地局。電波の大本だ。幸いトランシーバーで私たち雄英の生徒は連絡が取れるけど、島民の皆さんの携帯電話は使えないし、私たちのスマホも同様。というか私のスマホ壊れた!雷のせいで!またせっかく今度は百ちゃんとおそろいでそろえたのに!

 

 はっきり言う、電波の回復は不可能だ。基地局の復旧用の物理キーも電子デバイスも、見事に粉々になっている。元の形すらわからない、私でも直せない。徹底的で、手慣れている。こうなれば次善の策だけど……さっきドローンを飛ばして本土に向かわせた。でも、つくまでは時間がかかる。行って救助が来るまで最短で10時間弱、本土が受け取ってくれるのが4時間後くらいだろう。それに撤退していったヴィランはまだこの島の中だ。

 

 夕立がひどくなって降り始めた土砂降りの中、私は基地局の確認に来ていた。一人で行かせるわけないだろと轟くんが一緒に来てくれている。他のみんなは島民のケアに必死だ、休んでいるようで居心地が悪い。何がおおよそ私は万能だ、できないじゃないか。幸いこの雨のおかげで火災は消し止められているらしい。

 

 私のおなかを見た轟君は歯を食いしばって、手を握り締める。彼の話を聞くに海岸にやってきたヴィランはかなりの強敵だったらしい。異形型、私に近いタイプか。デクくんのようなパワー、炎を吐く特殊能力……轟君の氷結を軽く砕いてしまったのだとか。全部で4人、うち一人はえーくんと爆豪くんが捕まえた。でも、3人逃がした。実質わたしたちの負けだ。

 

「おかあさっ!あ、あうう……」

 

「エリちゃん、ただいま」

 

「お、おなか……」

 

「えへへ、すりむいちゃった。平気だよ~~。抱っこしようね。百ちゃん、あんまり無理しちゃだめだよ」

 

「平気ですわ、これくらい。希械さんこそ」

 

 轟くんと一緒に帰ってきたのは雄英の仮事務所、ではなく島で一番大きな建物、サトウキビ工場だ。私の帰宅と同時にこちらにやってきたギガンテスが開いて、エリちゃんが顔を見せる。見てくれがボロボロなせいかエリちゃんに少なからずショックを与えてしまったみたいだ。痛みに鈍い体で助かった。普通なら笑顔で取り繕うのは無理かもしれないけど、私なら何とかなる。

 

「ギガンテス、電力を供給。ナノマテリアル生産、支援物資生成」

 

『ミッション更新』

 

「上鳴くん、休んで。百ちゃんも。ギガンテスでやれるだけやるから。無理をするのは、次戦うときに取っておいて」

 

「次って……」

 

「はい……上鳴さん、おそらくもう一度ヴィランは来ますわ。狙いが……活真さんだというなら」

 

 ギガンテスのエネルギー炉、核融合炉の電気をバイパスして避難所になっているこの工場に電気を供給し、ナノマテリアルを変換して最低限のサバイバルキットを生産する。炊き出しに参加したかったんだけど、みんなしてけが人は休めっていうものだから轟くんに付き合ってもらって基地局まで行ってきたんだ。私が首を振ると理解した百ちゃんの顔が曇る。増援は絶望的だ。

 

 私が一応平常だっていうのはエリちゃんもわかっているみたいだけど避難所に漂う暗い空気を察してしまったのか、顔色が優れない。緊張が続いてしまったのか、私に抱かれて安心したのか……少しゆすって子守唄を歌っていると眠ってしまった。状況整理しよう。まず一つ、確保したヴィランはボイラー室で幽閉中。脳波測定器をつけての尋問でも口は割らなかった。人道的観点から拷問は却下。当たり前ね。

 

 次、怪我人は私、デクくん、爆豪くんの3人。他のみんなは擦り傷打撲程度。一番重症なのはなんと私、感電と脇腹のあれ。普通の人なら死んでたがそこは私、メカだから頑丈!と言っても予断はあまりよくない。できれば病院で消毒もしくは手術しないと中身から腐っていくと思う。一応傷跡は中身まで洗浄したけど、この後戦闘をするなら少々心もとない。

 

 それで、デクくんと爆豪くんはろっ骨の骨折と切り傷。気絶してしまってまだ目覚めてない。島のお医者様の個性じゃ傷口をふさぐ程度がせいぜいで骨折なんかの大きなケガは本当の病院か定期的に来る病院船で対処しているとのことだ。絶望的なことに、その船は3日後にしか来ないみたいだけど。

 

「デクくんと爆豪くんが目覚めたら、作戦会議だね。あのドローンが仕事を果たしてくれるまで、持ちこたえなきゃ」

 

「そう、だな……やらなきゃなんねえ……俺たちしか、いねえんだからよ」

 

「上鳴……でも、希械がこんなんじゃ……」

 

「戦えるよ?」

 

「やめてよ、だめだって……お腹に穴が開いてるクラスメイトを戦わせられないよ……」

 

 上鳴くんが決意を見せてくれる。響香ちゃんは私のことを心配してくれている。雷のおかげで電力網は完全破壊、通信網も同じく。災害のような結果だ。だけど、ヴィランはきっとまだくる。そうなったら、私は前線に出る。これは確定事項だ。誰が何と言おうと、私は出なきゃいけない。あのナインというヴィランは強い。デクくんのパワーをものともせず、私の兵器を無視できて、爆豪くんを弄べる。そんなヴィラン相手に、私を……いやA組の誰かを欠いた状態で何とかできるわけない。

 

 まだみんなには伝えてないけど、あのヴィランは私の個性の劣化コピーを有している。それが大きな問題だ。私の個性はため込み、作り出す。異形型はほとんどおまけだ。真の効果は百ちゃんと同じ、機械なら構造さえ把握してればなんだって作れること。なんでもできかねないというのが、一番怖い。なにせ、何をしてくるかわからないから。

 

 まだ救いなのがナインの言葉を信じると完全に使いこなせていない劣化コピーであるということかな。脳無を経て、ナインを見て確信した。私の個性は、私以外が持つと生身を機械が侵食していく。重いんだ、オールフォーワンが言うことによると。これが本来の持ち主じゃないから起こってるのかそもそも私の形に近づけようとしているのかはわからないけど。

 

 ギガンテスの中にもう一度エリちゃんを寝かしてあげて、ハロと白ハロを配置する。エリちゃんが起きれば、私が急行するから平気だね。さて、それで問題は……まだ目覚めない二人のことだ。精糖工場の休憩室らしい和室では島のお医者さんと三奈ちゃん、えーくんが必死になってけがをした人たちの応急処置をしていた。布団の上で寝かされているデクくんと爆豪くんのところでは、活真くんが何かをやっている。

 

「どうかな、みんな」

 

「ああ……おめぇも休めよ希械。お前が一番重傷なんだ、普通なら起きるのもダメなんだぞ」

 

「活真くんの個性、細胞の活性化なんだって。だから、爆豪も緑谷もそれで起きてくれたら、いいんだけど」

 

「すごくいい個性だね。うん、安心したかな。ん?真幌ちゃん、どうしたの?」

 

「その、痛く、ない?ヴィランの攻撃、おなかに……」

 

 汗を流しながら、必死に集中する活真くんの手が緑に淡く光っている。もしこれで、彼ら二人が復活できるなら希望の目がかなりあるね。それを見守っていると、座った私の近くに、真幌ちゃんがやってきた。いたずらしたのが負い目になっちゃっているのか、かなり気まずそう。まったく気にしてないんだけどなあ。でも、気丈な子だ。こんなに小さいのに弟を一番に考えて、私の心配まで。

 

「だーいじょーぶ」

 

「……ほんと?」

 

「ほんと。こんなのかすり傷、活真くんや真幌ちゃんの怖さに比べたらね。だから、だいじょうぶ」

 

「……ひぐっ、ぐすっ……」

 

 エリちゃんにいつもやっているように、真幌ちゃんを抱っこする。気丈にふるまっていても、エリちゃんよりちょっと大きいくらいの女の子。怖いに決まってる。絞り出すように泣き始めた真幌ちゃんを胸の内に抱きしめて、背中を撫でてあげながら私は活真くんを見守る。こっちが見えてないほど集中している彼の横にはえーくんがしっかりとスタンバイしている。えーくんの硬い手は、誰にだって安心感をくれるんだよ。

 

「ん……」

 

「うぅ……」

 

「起きたか!爆豪!緑谷!」

 

「切島……おい、ヴィランどうなったァ!?」

 

「そうだ、活真くんと真幌ちゃんは!?それに楪さんも!」

 

「デク兄ちゃん!」

 

「バクゴー!」

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、まずは状況の確認だ!確認されているヴィランは3人、通信、電力の復旧は不可能。僕たちがすべきことは」

 

「島の皆さんをヴィランから守り抜くことですわ」

 

「そして、ヴィランの目的は、活真くんの個性。他の二人はともかく僕らが戦ったあのナインってヴィランは町の人に興味はなさそうだった」

 

「そうだね、活真くんだけに執着している感じ、だとおもう」

 

 1-A全員での対策会議、ロッカールームの中に集まった私たち21人は、各々が持ち合っている情報をすり合わせて、状況を整理し、次はどうするべきかを話し合う。おそらくだけど、ヴィランのリーダーはあのナイン、そして何らかの形でヴィラン連合とかかわりを持っている。複数の個性を操れることと、活真くんの個性を奪うという発言も含めて。

 

「それと、みんなに共有しておきたいことがあるの。あのナインってヴィラン、私の個性をもってる。だから、何をしてくるかわからないよ。私が船を作っても、遠距離から攻撃されて沈められるかも」

 

「え、希械あんた、個性使ってたじゃん?奪われたってわけじゃ、ないの?」

 

「みんな、私がオールフォーワンに目を奪われたの、覚えてるよね?多分そこから、個性をコピーされたんだ。すでに私の個性を持った脳無もでてる」

 

「笑えねえ冗談だなぁおい……ふざけてやがる」

 

 爆豪くんの端的な感想が、その場のみんなの気持ちを代弁している。疲れて眠ってしまった活真くんと真幌ちゃんに聞かせる話でもないのでここで言ったし、割り切って対応するべきだ。みんなして怒ってくれているのはちょっとだけ、うれしいかな。さて、最低条件を確認しよう。まず最大目標である活真くんの防衛、次に巻き込まれる島の人たちの防衛、そして私たち個人の個性を奪われないようにすること、可能ならば那歩島本島にダメージを与えないこと。重要度はこの順番だ。

 

「簡単な話だ、次勝てばいいだけなんだよ!おいクソデク!楪!なんか考えてたんだろうが!さっさと話せ」

 

「う、うん。楪さんと一緒に情報をすりあわせて、作戦を考えてたんだ。多分、これが最善」

 

「そうだね。デクくんそこらへん頭回るから助かったよ~~。さて、那歩島本島の端っこに城塞の跡があるのはみんな知ってるよね?海岸の浜が干潮の時につながる島」

 

 地図でここ、と指示しながら私とデクくんが説明を開始する。まず一つ、敵の進行ルートを絞って各個撃破に持ち込める状況を作る。城塞跡は城がそこにあっただけあって地形が防衛向きだ。特にここ、滝と、鍾乳洞、そして岩場……住民の皆さんには城の裏手、断崖絶壁の裏にある洞窟に避難してもらうのがいいだろう。私が船を作っておけば万が一の時脱出できる。1000人乗せられる船を作るのはかなりきついけどね。

 

「ナインって呼ばれた個性複数持ちが何で活真くんを狙っているかだけど……多分個性を使いすぎると体に何らかのダメージがあるんだ。だから、活真くんの細胞活性の個性を狙った」

 

「多分だけどこれがアキレス腱だね。個性を使い続けさせるんだ、私と百ちゃんを中心に遠距離攻撃と物量で波状攻撃を仕掛ける。できるなら、そこでヴィランを3人とも分断して各個撃破に持っていきたい」

 

「でも希械さん、怪我が……」

 

「接近戦をしなければみんなも心配がすくないでしょ?それに、ここなら私の火力に制限がかからないから……昼みたいな無様は晒さない」

 

 一回活真くんの個性を受けようとしたんだけど、活真くん個性が発現したばっかりでうまく操れないみたいなの。デクくんと爆豪くんの時は何とかできたんだけど、疲れ切っちゃってる今は個性を出せなかった。だから私の怪我はそのまま、金属のステープルで止まってるだけの状態だ。とにかく作戦が決まったら行動開始だ。夜のうちに、やってしまおう。




 A組は楪さんの個性が目玉からコピーされていると知ってガチギレしてます。しょうがないね、そして腹痛が悪化する青山くんかわいそうに

 ではまた次回に。感想評価くださると励みになります

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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