個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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116話

 自動砲台、地雷、その他もろもろの兵器の数々。まるで戦争だ。際限なく生み出されていくそれらの兵器は、自発的に移動し、私と百ちゃんが計算した迎撃位置に収まっていく。私の中の素材ストックは膨大、だった。先ほど生み出したタンカー船を封じた私サイズの超圧縮ボックスのおかげでかなり在庫が減ってしまった。そして、今百ちゃんと一緒に生み出している兵器たちのせいでもっと減る。

 

「厳しいかな、これは……」

 

「さすがにこれだけあれば……」

 

「十分、とは思えないの。こんなおもちゃで何とかできるならデクくんと爆豪くんが何とかしてたはずだし」

 

 脂質をほとんど使い果たして倒れる寸前の百ちゃんを支えながら私は厳しい予想を崩せないでいた。秒間20発でレーザーをばらまくタレットも、貫通力が高いビームを照射できる自動砲台も、衝撃波を発する地雷も……あのナインっていうヴィランを確認した後だとどうしてもすべてが玩具に見えてきてならない。

 

 作戦が決まった私たちは、すぐに行動を開始した。島民の皆さんにヴィランから守るためと事情を説明して断崖絶壁の洞窟に避難してもらうことを容認してもらい、万が一の時は超圧縮ボックスに封じたタンカー船で脱出してもらうことも説明済み。透ちゃんと常闇くんが先導してすでに洞窟に向かって行ってる。

 

 A組の大部分は待ち伏せのために誘導するポイントと今できる最大限のトラップを作成している。デクくんと爆豪くんが岩を砕き、持ち上げ、高所に配置する。それを尾白くんがへし折った木で止めて、瀬呂くんのテープで補強する。浜辺近辺の平たんな場所は私の機械で、高所から見下ろせる坂は百ちゃんとほかのみんなによる落石で。それも越えたらいよいよ非致死性の兵器から切り替えて攻める予定だ。

 

 多分、これでナインの活動限界まで個性を使わせ続けるというのはできると思う。既に彼らがどこにいるかというのは把握している。島外れの灯台の中だ、スライスと呼ばれた赤毛の女が3回出入りしたのを空撮ドローンが確認している。現在私とリンクして監視中ではあるけど、いつ出てくるか……。

 

 百ちゃんを横抱きに抱き上げて私は迎撃地点の一番上、山の頂上を目指す。私の視界では配置された兵器がどこにあるのか、どういうものなのかが刻銘に記録されている。その情報をすべてカットし、バーニアをふかして頂上へ戻る。既に頂上には細工を終えたA組の面々が戻ってきている。真っ暗だった空が白んできて、朝日が昇ろうとしていた。

 

「私のドローンが予定通り進めているのなら、向こうに救援要請が届いているはずだよ。籠城戦と耐久戦……経験はないけど、持ちこたえれば……」

 

「ああ!島の皆さんを守れる!」

 

「そうじゃねえ、勝つんだよ」

 

「うん、勝って守ろう」

 

「デク兄ちゃん……」

 

 この島で見た何度目かの朝焼け。皮肉なことに、この島に来てから一番美しく思えた。同時に、それを塗りつぶすような黒と紫の人影が、女と異形の男を伴って灯台から出てくる。空撮ドローンの映像では最後に確認できた額のひび割れはない。どうやら、休んだことで万全とはいかないまでも戦闘が可能な程度にまで回復したと考えていいだろう。

 

 来るよ、と私が呟くとクラスメイト達は顔を引き締めて自らの作戦ポイントへ向かう。異形型の男は滝へ誘導し、防御力身体能力で張り合えるえーくんと攻撃力が高い轟くんを中心に攻める。スライスは鍾乳洞まで追い込み、暗闇で強くなるダークシャドウをもつ常闇くんとトリッキーなことができる三奈ちゃんを中心にしていく。

 

 私、爆豪くん、デクくんはもちろんナインを。途中の足止め役は百ちゃん、お茶子ちゃん、瀬呂くん、そして峰田くん青山くん透ちゃん。島民の皆さんの護衛役には砂藤くんを。活真くんと真幌ちゃんには障子くんと響香ちゃんを。同じ場所で私もメカを操作予定だけど場合によっては、いや……ほぼ確実にデクくん爆豪くんと一緒にナインに挑むことになるだろう。

 

 どこまでやれるか、と私はステープルで止めた脇腹の傷を確認する。活真くんは、個性を使えなかった。いや、不安定がゆえにデクくんたちを回復できたのが奇跡だったというべきか。エリちゃんはギガンテスと一緒に島民の皆さんと一緒だから私が大怪我してるのはまだ知らない。泣きそうな顔で私に個性をかけようとする活真くんを大丈夫と止めてから、ゆったりと歩いてくるナインたちを映像越しににらみつける。

 

 

 

 

「青山さん、透さん、ポイント20。チャージを!」

 

『うん!行くよ青山君!』

 

『ウィ☆エネルギー充填……!」

 

「10……5……今だよ!撃って!」

 

『Can't Stop Twinkling☆スーパーノヴァ!』

 

『集光、屈折、歪曲!ハイッチーズッ!』

 

 百ちゃんが作ったトランシーバーから一番最前線にいる透ちゃんと青山くんの声が聞こえてくる。双眼鏡を使ってナインたちが迎撃ポイントについたことを確認した百ちゃんの指示で青山くんがネビルレーザーを最大限溜め、私の合図で発射する。飛び出した青山くんのへそからは極太の青いきらめきを伴なったレーザーがほとばしり、さらにその前に構えていた透ちゃんに直撃する。

 

 透ちゃんの体は透明な集光レンズ、レーザー、つまり高出力の光であるネビルレーザーを体内で曲げることができる。そして、発射角度も自由自在。ただでさえ高い収束率を誇るネビルレーザーが、透ちゃんによってさらに収束率を上げられ、貫通力が飛躍的に上がった状態になってナインを襲う。ナインは片手を前に出し、空気の壁でレーザーを防ぐが、足が止まった。

 

「今ですわ!」

 

「感知地雷!レーザータレット起動!」

 

『青山君もっと頑張れる!?』

 

『……!プルスウルトラッ!』

 

「おまけもつけてあげる!!」

 

 カチッと百ちゃんがスイッチを押すと、ナインの周りの砂浜が地盤沈下を起こして沈みだす、がナインはネビルレーザーを防ぐことで手いっぱいで動けない。それを助けようとするスライスと異形型の男の足元で私が仕掛けた感知式の衝撃波地雷が起爆、大きく二人を吹き飛ばし、さらにその間に地面に埋まっていたレーザータレットがにょきっと現れてレーザーの弾幕を張って完全に分断させる。

 

 ナインを釘付けにするために青山くんはさらに力を振り絞ってレーザーを大きくする。透ちゃんの手袋が燃えるほどの光量のレーザーに対し、私はダメ押しでさらに仕込んでおいたマイクロミサイルを斉射。30発のマイクロミサイルはナインを覆いつくして大爆発を起こす……そして、煙が紫色のビームに薙ぎ払われ、タレットをすべて引き裂いた。

 

「防がれましたわ!」

 

「分断はうまくいったよ!青山くん透ちゃん!脱出して砂藤くんと合流!瀬呂くんお茶子ちゃん、出番っ!」

 

『おう!いくぜウラビティ!』

 

『まかせて!』

 

『こちらインゲニウム!分断に成功した!交戦に入る!』

 

『こっちも!切島!気張ってよ!希械ちゃん、またあとで!』

 

『ああ、行くぜ!轟ィ!』

 

 ナインはどうやら機械獣を出してあの光量のネビルレーザーから自分を守ったらしい。焼けて溶けた機械片が散乱している。服の袖口が燃え落ちている。貫通したんだ、通用してる!無敵じゃない!希望の目は……ある!次はお茶子ちゃんを中心とした落石、瓦礫の破砕流!落ちてくる岩の塊を背中からはやした機械獣と指の先から放つビームで相殺していくナイン。

 

 そして、それぞれ分断が成功した先で戦闘を開始する。えーくんと三奈ちゃんの声がトランシーバーから聞こえた後、交戦音が聞こえてくる。三奈ちゃんのところには常闇くんと私の兵器で仕掛けたトラップがある。えーくんのところには飯田くんや轟くんがいる。大丈夫だ、信じろ。それよりも私は牛歩でも着実にこちらに来るナインのことを!

 

『あかん、効いてへん!』

 

『いや、あれでいいんだ!使わせ続けろ!後につなげ!峰田ァ!』

 

『準備できてるぜ!行けるよな!?』

 

『まっかせて!』

 

 ヘルメットを割られた瀬呂くんがお茶子ちゃんをテープで確保しつつ後ろに下がる。同時に私はあらかじめ作っておいたビームライフルを手に持ち、射角が開いたことを確認して撃ち込んだ。対人威力じゃない制限を外した本来の威力のビームライフルはナインが張った空気の壁にぶつかり、すさまじい熱量と圧力を叩きつける。ナインの手が火傷を負う、覆いかぶさった機械獣が溶けて変形する。貫通は無理でも、影響を与えることができるのは確認済み!この程度じゃ死なないでしょ!

 

 さらにそこからのダメ押しにクラスの大多数の人数を動員した最後の手段、落石の雨あられ!お茶子ちゃんが最後の力を振り絞り上限である3トンを超え、目視だけで100はあるがれきがすべて宙に浮き、さらにはその奥の瓦礫も連動して転がるようにナインに向かって行く。ビームライフルで火傷した手を押さえたナインは空気の壁を張って防ぐけど、対応できずに埋もれていく。そして峰田くんのもぎもぎが瓦礫と瓦礫をくっつけてドーム状にした!

 

『鬱陶しい!』

 

「チィっ!!行くぞクソデク!」

 

「うん!かっちゃん!」

 

「よし、行ってくる!」

 

「待って!希械姉ちゃん!」

 

 一瞬で現れた青の鉱石の竜が瓦礫の大山を粉砕する。出てきたナインは、だいぶ消耗させることができたらしく肩で息をしていた。ビームライフルの一撃を受け止め焼け焦げた右手を抑えながら、こちらに向かって一歩一歩歩を進めてくる。ここで最終防衛ポイントを割ったと判断したデクくんと爆豪くんが一緒になって飛び出す。当然私も飛び出そうと腰を浮かせたら、活真くんに止められた。

 

「もう一回、もう一回だけ僕に個性を使わして!絶対に治すから!」

 

「ダメ、もう時間がない!戦線を維持しないとやられる!」

 

『受けて!希械ちゃん!』

 

『お前がなおりゃ絶対勝てるぜ!それまではオイラたちに任せろ!』

 

『緑谷、爆豪!俺も混ぜろ!』

 

「クソデク、ぶちかますぞ構えろ!」

 

「うん、かっちゃん!活真くん!楪さんをお願い!」

 

 作戦が成功したら撤退するはずだったお茶子ちゃん峰田くん瀬呂くんから通信が入り、デクくんたちの真後ろに姿を現した。それでも、と私は行こうとしたけど、百ちゃんの手と響香ちゃんのイヤホンジャックが私を抑えた。ここまでされたら、受けるしかないよね……!私は活真くんに向かって一つ頷く。活真くんはすぐに私のおなかに向かって個性を使う。細胞活性の光が、過たずに灯る。

 

 これなら、と私は包帯を引きちぎってホッチキスの芯のように私の傷を固定するステープルを引き抜いた。活真くんはそれに軽く驚いたようだけどむしろ個性の光は強まり目に見える速度で私の傷を修復していく。その間に、デクくんと爆豪くんがナインに攻撃を加える。爆豪くんが怒鳴るようにデクくんに指示を出し、それにデクくんが応える。滅多に見れない幼馴染同士の協力だ。

 

 デクくんの右足に迸るエネルギーが渦巻いた。100%のスマッシュ、それに合わせるように上空で爆豪くんが爆発で回転を始める。二人して超大技の構え、隙の大きいそれを埋めるのは、ほかのみんな!瀬呂くんのテープと峰田くんのもぎもぎ、さらには粉砕を免れた瓦礫がひとまとめになってナインに襲い掛かる。それを空気壁で受け止めたナインを挟み込むように、大技が迫った。

 

「100%、セントルイススマッシュッ!」

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)ォ!!」

 

「ぐぅうぬ……俺の邪魔をするなぁぁぁぁっ!!!」

 

 天変地異もかくやという衝撃と爆炎がナインを包み込む。着弾の瞬間に、機械獣と鉱石竜が覆いかぶさり何重にも重なってナインを守る。衝撃波で瀬呂くんたちが吹き飛ばされていく。その一瞬、大技のスキをついてナインはまた個性を使った。私がやられた大出力の落雷、それは丘を粉砕してクレーターに変える。デクくんと爆豪くんからかなり逸れて。

 

「なに……!?」

 

「きょ、供給過多うぇい……!」

 

「てめえ、やっぱり天候操作の個性かよ。避雷針が役立ったなあオイ」

 

「もう一撃ぃ!」

 

 必勝の策だったはずの電撃は、帯電の個性をもつ上鳴くんが引き受けてくれた。その隙に飛び込んだデクくんのナノガントレットに包まれた100%の一撃は多重に張られた空気壁をガラスのように粉砕して余波でナインを吹き飛ばす。今度こそまともに入った!同時にナインの顔にひび割れが現れてマスクが外れる。苦しみだしたナインをよそに、私のおなかの傷が活真くんのおかげでふさがった。

 

「な、なおった!」

 

「ありがとう活真くんっ!お待たせっ!二人とも」

 

「ハッ眠ってたか楪テメェ!んで、セリフが違えんだよ」

 

「よかった、楪さん!活真くん、ありがとう!」

 

 地面に膝をつき、のたうちまわって苦しむナインを前に私とデクくんと爆豪くんが並び立つ。いつも通りの悪態をつく爆豪くんの、セリフが違うという言葉に一瞬首を傾げたけど、そういえばこういうタイミングで言うカッコいいセリフがあるんだった。私たちはみんな、今この場においては那歩島のヒーロー、じゃあ……言わなきゃならないよね!

 

「かっちゃんからまさかそんな言葉が出るなんてね……僕たちが!」

 

「るせぇ!いうべき時に言わなくてどうすんだ!……俺がぁ!」

 

「全くもってその通り!ナイン!ここであなたを止める!……私たちが!」

 

「「「来た!」」」

 

 誰よりも強く優しかった平和の象徴の言葉を、私たちは目の前のヴィランに向かって言い放ってやるのだった。




 どんな時、どんな状況でも希望が見いだせる魔法の言葉。やっぱりオールマイトは偉大なのです。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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