「あー、希械。いい加減機嫌直せって、な?お前が無事だったことのほうが俺は100倍大事だぜ?」
「おかあさん、だいじょぶ?」
「ありがとえりちゃん。へーきへーき!だってえーくん~、あそこまで詰ませて逃げられるだなんて思わなくてー!黒霧捕まえたんじゃないのっ!?何でワープの個性が増えてるのー!」
ふんすー!と私は大きなコンクリート塊を持ち上げて、粉砕機にぶち込む。同じ動作をしているえーくんの言葉に、私は拗ねたような声で返した。ちなみにえーくんに対抗した爆豪くんはコンクリート塊につぶされてデクくんに助けられてる。えーくん、個性使わない素の筋肉でもクラスで一番だもんね。伊達に私で筋トレしてないよ!私が重いせいだけど!
私がこんなにも消化不良というか、してやられたというかそんな感情を抱いているのには理由がある。おんぶひもでおんぶしている状態のエリちゃんが私に心配そうな声をかけてくれる、一瞬で癒されるけど腹立つのは変わらない。なんでかって?死柄木に逃げられたの!もー!なんなの!何でワープ個性がいるの!おかしいでしょ連合!空間系の個性はありえないほど貴重なんだよ!?
ナイン確保のため先行して那歩島本島の花畑にたどり着いた私は、おそらくナインを処分するために現れたであろう死柄木弔と鉢合わせた。万全の死柄木と消耗した私ではかなり不利だったけど、ナインを始末されたら困るどころの話ではなかったので全力で抵抗をしようと自爆まで検討しはじめたとき、空に戦闘機が音速で現れて、そこからホークスが飛び降りてきた。
音速飛行を物ともせず私の近くに降り立ったホークスはいきなり剛翼で死柄木を拘束しようと動いたが、死柄木はにやとわらうとそのまま背後に現れた空間の歪みに落ちて逃げてしまった。あまりにも呆気ない逃走になんじゃそりゃー!とアドレナリンドバドバ状態の私は憤慨しつつナインをぐるぐる巻きにしたわけです。
「クソが!てめえにできて俺にできねえことなんざねえんだよタコ!放せやクソデク!」
「かかかっちゃん、そういう趣旨じゃないから!復興作業だから!」
「かっちゃーん、それするよりこっち粉々にしてくれた方が助かるな~?」
「てめえがかっちゃんって呼ぶんじゃねえどこだおら塵にしたるわ!」
扱いやすいなあ爆豪くんは、ちょっと煽ればやってくれるんだから。さてさて、現在私たちが何をしているかというと、復興のお手伝いをしていますですはい。経緯を説明するんだけど、ナイン一味を全員拿捕した私たち1年A組は先行して戦闘機でやってきたホークスとなんとオールマイト先生によって、安心できた。遅れてやってきた自衛隊と本土の警察のおかげで、ナインたちはタルタロスに行くことになったみたい。
オールマイト先生のあの言葉のおかげで私たち奮い立てたんです、とがりがりのトゥルーフォームのオールマイト先生に伝えると、君たちの力になれたのならよかったと言ってくれた。ふふ、まさか私があの私が来た!というお決まりのアレを言うことになるだなんて入学前は思わなかったなー。それにしてもヴィラン連合は腹立つ。私の個性を軍事利用みたいなことしてくれちゃってさ。
にょき、にょきにょき、がらんがらん、どさどさどさ、と私は粉砕機に放り込まれた瓦礫やら壊された家やらの残骸を取り込んで体内で加工、セメントの粉、屋根瓦、鉄骨などなど建築に必要なあらゆる資材に変換器を通じて出力し、それをハロが操るミニ骨格「ドワーフ」で破損個所を猛スピードで立て直しているところ。那歩島では失態を重ねまくりなのでこういうところで役に立たないとね~。
「相変わらず便利だな。お前と八百万のドローンのおかげで気づくことができた。ありがとう」
「相澤先生。便利かもしれないですけど、私初戦で負けちゃいました。あそこで捕らえられてたらもっと被害も抑えられたかもしれないし、遺産である城跡も……」
「そう落ち込むな。お前はよくやっている、間違いない。しいて言うなら、プロを常駐させるべきだったんだ」
「あいざわせんせー、ひさし、ぶり?」
「ああ、そうだなエリちゃん。ひさしぶりだ」
いつも通りぬるっとやってきた相澤先生はハロ頭のドワーフたちが溶接、電気工事に道路敷設、水道管修理などなど復旧作業を続々と進める様子を見て私を誉めてくれた。エリちゃんは怖い目にあったせいか、相澤先生に会えたのが嬉しいのかふわり、とようやく自然に出せるようになってきた笑顔を見せる。相澤先生はそれに微笑んでエリちゃんの頭を撫でる。私の背が高いので結構手を伸ばして。エリちゃんにとっては、こんな短い時間わかれただけでも久しぶりなのかな?
「本来ならプログラムを打ち切ってすぐに帰すはずなんだけどなァ。お前らには負けたよ。期日まで復興の手伝いと残りのヒーロー活動、やるからにはきっちりやれ」
「もちろんですとも。立つ鳥跡を濁さず、までは難しいかもしれないですけどね。やたらめったら壊すもんですから」
「全くだ、ハア。基地局の警備も考え直さないといかんな。有事以外無人ではエマージェンシーも認識できん」
ヒーロー公安委員会は、事の大きさを鑑みてプログラムの中止を申し渡してきたんだけど、私たちはむしろそれに断固抗議した。そりゃそうだ、こんな全部ボロボロにされちゃった、ついでに私とかもちょっと壊した那歩島の状態を放っておいて帰れって?そんな無茶苦茶まかり通ってたまるもんですか。後詰めのヒーローが来るまでは、私たちは那歩島のヒーローなのだから。
公安委員会はだいぶ渋ったみたいなんだけど、私たちの気持ちを汲んでくれた相澤先生やオールマイト先生のおかげで無事わたしたちは期日まで、ヒーロー活動をやり遂げる許可を大手を振って手に入れたわけなのです!私がやってる復興はほとんど応急処置に近いのでちゃんとした業者が来れるまで電気水道雨風をしのげる場所を確保するだけで押さえてるけどね。私はサポートアイテムのプロではあるけど、快適に暮らすための生活を支えるプロではないので。解体しやすく、それでいてできるだけ長持ちの方針を取っております。
えーくんデクくん砂藤くん障子くんが持ってきた巨大鉄骨を爆豪くんが熱して折り曲げ、私の粉砕機に放り込むのを見て、私はいきなり入ってきた巨大物の感覚にひやっと肩を跳ねさせるのだった。こう、加減というものをね?
「ジングルベルの時間だオラァ!」
「そうだ!きよしこの夜が近いんだよウェイ!」
「上鳴、アンタ個性使いすぎて戻らなくなったの?」
「峰田ちゃん、まだ一週間は早いわ」
「ちっげえええええ!まだじゃねえ!もうなんだよ!このままクリスマス迎えんのが許せねえんだオイラは!性夜だろうがへぶっ!?」
「なんだか不穏だわ」
どがしゃん、と勢いよく借りている仮事務所のドアを開けて変なことを叫ぶのはイベントごとに元気になったりしょげたりするでお馴染み峰田くんとそれによく乗る上鳴くんの嘘八百並べ立てて私や百ちゃんをだまして恥ずかしいことさせるでお馴染みコンビだ。いや上鳴くんはまだましなんだけど峰田くんがね……?今もほら、梅雨ちゃんにシバかれてる。
「ああでも、クリスマスは大事だよねえ。えーくんなんかリクエストある?」
「ローストビーフ食いてえ。あとできりゃ去年作ってくれたターキー」
「お気に入りみたいでよかった~。エリちゃんもおいしいの食べようねえ」
「何であいつら当然のように二人で過ごす前提なわけ?」
「正確には芦戸とエリちゃん入れて四人だろ」
「おのれ切島ぐはっ!?」
「なになに~?何の話~~?」
復興作業を頑張ってくたくただけど、みんなと話すのは楽しいからこうやって集まってだべっていたりするわけで。確かにそういえばもうすぐ年末どころかクリスマスだ。私にとってはエリちゃんと一緒に過ごす初めての年越しにもなるのかな?エリちゃんはクリスマスをご存じないみたいなので何をしてあげようかなって楽しみだったり。
こちらにぴょこぴょこやってきて私に抱き着く三奈ちゃんにクリスマスに峰田くんと上鳴くんが反応してるんだよ、と伝えるとぴょこん!と三奈ちゃんの頭に生えてる角が動いた。あー、そういえば三奈ちゃん騒がしいの大好きだもんねえ、折角ならみんなでパーティーとかやらないとか言いそう。むしろそういうのありありじゃない?やるべきじゃない?エリちゃんのためにも!
「でももう、那歩島ともお別れかー。もう少し復興手伝っていきたかったやけど……」
「そうね、でも仕方ないわ。公安の人たちも妥協をしてくれたのだもの」
「明日で終わりかー、しょっぱなから大変だったな。もう、そんな時間がたつのか」
瀬呂くんの言葉通り、明日……私たちA組は那歩島から去る。自衛隊の人たちと、私たちの跡に赴任してくれる人のいいヒーローに後を託して。私たちは荷造り片付けを済ませて、もうあとは寝るだけの状態。うつらうつらしているエリちゃんはまだまだ起きていたいとわがままを言っている。どうやらエリちゃんは那歩島がかなり気に入ったから、もっといたいみたい。
「とにかくー、帰ったらすぐにクリスマス会の準備しないと!せっかく寮生活だし、みんないるし!楽しまなきゃ損損」
「まあヒーロー科、実質冬休みねえもんなあ」
「普通科とかよりもだいぶ短いよね。仕方ないけどさ」
「そういえば爆豪と轟、帰ったらすぐ仮免の試験じゃね?」
おお、そっか!今回は公安の肝入りプロジェクトだったから、仮免なしの二人でもヒーロー活動が特例で許されてたけど、帰ったら二人の仮免の再試験があるんじゃない!これはゲン担ぎ飯の用意が必要じゃないかな?やっぱカツ丼?デクくんの好物だから爆豪くんがキレそう。食べるんだろうけど、なんだかんだ彼私の料理残したことないし。育ちというか、所作に教育がうかがえるんだよ。言動にそれが欲しいところだけど。
轟くんはやっと並べる、とぐっと手を握り締めてやっとお前らに追いつけると決意を込めている。爆豪くんはそもそも俺は劣ってなんかねーんじゃといつも通り。ある意味で一定のメンタルを保っているのが爆豪くんのすごいところなのかもしれない。いや、弱みを見せてないだけなのかもしれないけど。私はデクくんほど彼には詳しくないしね。
クリスマス、年越し、それに3学期と話題は尽きない。もう、入学してかなり立つんだなあ感慨深いかも。まさか……入学したらこーんな可愛い妹、もしくは娘ができるだなんて思わないよね。エリちゃんと出会えたことは、私の学校生活の中で一番のサプライズかもしれない。もちろん、クラスメイトのみんなに出会えたことも同率で一番。
夜は更けても、話題は無限に出てくる。いつもは注意する飯田君すら笑って会話しているあたり、夢中なんだね。私たちは結局、個性を使った相澤先生に怒られてそそくさと布団の中に入るのだった。
「あのガキどもになんも言わんでいいんかよ」
「そうだね……何か言ってあげたい、とは思ったけど。多分大丈夫、きっと……」
「きっと伝わってる、だろ緑谷。わかるぜ、そういう男と男の通じ合いってやつをよ。どんなにチビだってわからぁ、特にお前の言いたいことなんてな!」
「あー、いーなーそういうの。男の子同士の友情とか。でもさデクくん?せっかくだから言葉にしてあげなよ」
公安委員会が用意してくれた、連絡船の展望デッキ上で海風に揺れながら私、えーくん、デクくん、珍しいことに群れた爆豪くんが名残惜しさが勝る復興途中の那歩島を見つつ話す。存外に子供には優しいし好かれる爆豪くんは、活真くんと真幌ちゃん、島の人たちに何も言わずいなくなることをデクくんが気にしてないか彼なりに心配しているらしい。
えーくんは男泣きにそういうことに理解を示しているけど、言葉に出すのも大事だよっていう私の意見も頭に入れてほしい。伝わっていても、言葉にされたらもっと嬉しいから。そういって、私は両目で捉えていた先を指さす。3人が改めてそこを見ると、再会したお父さんの車から走っておりてきた活真くんと真幌ちゃんが息を切らせてゆっくり進む船を追いかけてきていた。その後ろからは、島民の皆さんの姿もある。
「デク兄ちゃーん!希械姉ちゃーん!僕と姉ちゃん、島の人たちを守ってくれてありがとう!僕、強くなるから!強くなって、来てくれたみんなみたいな強くてカッコいいヒーローになるから!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえかよ、ほれ緑谷。多分、お前だぜ」
バン、とえーくんがデクくんの背中を叩く、まんざらでもない顔の爆豪くんとにこにこえーくん、お友達に手を振るエリちゃん、笑う私を見たデクくんは、一歩前に進んで活真くんに呼びかける。私たちが、先達から言われた言葉を。誰かから、送ってもらった言葉を。今度は自分が先達として、後に続くものに贈るんだ。
「活真くん!君は……君は!ヒーローになれる!」
はい、那歩島編終了です。映画もそうですけどやっぱりデクのこの言葉は外せませんよね。次回以降なんですが時系列の関係上後期インターンはほぼオリジナルと映画の連続になります。それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ