「ヒーロー、公安委員会の……」
「はい。名前を名乗ることはできませんが、覚えていてくれたようで良かったです。本日はあなたにお話がありましてご足労していただきました」
「あの、リクルーティングのお話でしょうか?」
「そこらへんも関係ある話なのさ!悪い話じゃないから安心するといいのさ!」
びっくりした、相澤先生に受けた呼び出しがなんのこっちゃと思ったんだけどまさかヒーロー公安委員会の会長さんからの呼び出しだったなんて。そりゃあんなクリスマスパーティーの場で仔細を話せないわけだよ。というか私に何の用?物々しすぎない?相澤先生だけならともかく校長先生とまさかのオールマイト先生も一緒だなんて。緊張しちゃう、何言われるんだろう?退学とか?ありえそうで困るよ。最近、その……いろいろアレだから。ナノテクとかナノテクとかビームとかあともう一つ先の技術とか。
「えーと、それでその……私、何かしましたか?」
「自覚があるようで結構だが、今回はお叱りの話じゃない。演習場を更地にした件とはまた別だ」
「それにもう自分で修復したからね!関係ないさ!インターンの件、覚えているだろう?」
「インターンですか?はい。まだどこに行こうかなーっていう段階ですけど」
「行き先が決まってないならちょうどよかった。ヒーロー公安委員会からあなた個人に、インターン先を用意しました」
「はへ?」
思わず間抜けな声がでた。ヒーローの上位組織であるヒーロー公安委員会から私個人にインターンのお誘い……?なんか、なんか怪しくない……?世の中平等じゃないっていうのはわかるんだけど、公平であるべきっていうのは持論だ。そういう話が来るのだとしたら他の人たちにも来ないとへんじゃないかなあ?
「端的に説明すると、君に留学の話が来ている!インターンの期間中、つまりほぼ3学期丸々だ!」
「無理ですね」
「ちょ、楪少女!?そんなざっくばらんに!?」
「いやダメでしょう。エリちゃんどうするんですか」
「それに関しては、お前のご両親と過ごしてもらう予定だ。いつまでもべったりしていてもエリちゃんは成長できない。多少長く引き離す時間も必要だ。ちなみにご両親には説明済みだ」
留学かぁ、と思ったけど期間が3か月近かったので一瞬で却下した。エリちゃんを置いていくにしろ連れて行くにしろ長すぎる。そう考えてたら相澤先生から想定済みとのお返事が。確かにエリちゃんをいつまでも雄英の中に閉じ込めてはおけない。個性訓練がある程度ものになったら雄英をでて私の両親との暮らしに入るのだろうけど……まああと2年近くエリちゃんと寮生活できるとは思ってなかったけどさ……。
「今回のインターンは、ヒーロー公安委員会の提案でなされました。現状犯罪発生率は右肩上がり、ヒーローの卵である学生たちですら道端で事件に遭遇するほどです。未熟なうちにやられてしまわぬよう経験を積んでもらう必要があります」
「確かにそれは……覚えがあります」
「ですので今回、特に優秀だと公安が判断した学生個人には、公安からインターン先を用意しました。留学という形、つまりは外国のヒーローたちです」
「具体的には通形、天喰、波動、それとお前だ。天喰と波動は断ったがな。通形はナイトアイ事務所が多忙だから受けた」
なるほど、一応断れるには断れるのか……断ろうかな、と受けようかなが今半々。前々から危惧していた通り私はエリちゃんを甘やかす悪癖があるのでここらで一つ離れてみるのは悪くないのかもしれない、それにエンデヴァーから言われた私がもっと成長できる場所があるだろうという言葉……国内トップから言われたのだ。なら海外にそれがあるかもしれないし……。
「ここからは私が話そう楪少女。私の目から見て、君はすでに完成に近い。伸びしろだけなら多重にあるが、現時点でも並のプロを上回るだろう。ビルボードで言うなら10位以内、通形少年と並ぶ」
「弱くはないつもりですけど……」
「デイヴからもそう見えるようだ。そして……個性を狙われ、奪われている」
「っ……こっちが本当の理由ですか」
そうか、そうか、そういうことか。私の個性はナイン、脳無とすでにコピーされて劣化状態ではあるにしろ使用されてしまっているのだ。現状私を上回ることはできないけど、追いつくことはできるかもしれない。ここまで言われたらバカでもわかる。もしも、私の個性が恒常的にヴィランに使われるようになってしまった場合、私にはそれを何とかする義務がある。元の個性の持ち主である私が、この個性を一番理解している人間なのだから。
「つまり、ヴィラン連合の目の届かない場所に行って、個性をさらに進化させろ、と」
「そうなります。あなたの個性の有用性はステインの件の時にお話ししましたね?公安としても核攻撃を容易に行えかねない個性がヴィラン側にあるのは憂慮する事態です。故に、対策を打ちたい」
「だから、私も動いた。君に用意されたインターン先は……スターアンドストライプだ」
「すたっ!?」
がちゃん、と思わずびっくりして左肩が外れて地面に落ちた。す、スターアンドストライプだって!?それってアメリカのナンバーワンヒーローじゃないか!うっそ……だって、だってあり得ない話だ。日本じゃあ、オールマイト先生が長い間平和の象徴をしていたからその意識が希薄となっているけどヒーローの存在は国防に直結する。内政的にも外交面でも。ある意味での抑止力、いうなれば核爆弾の同類なのだ。
だから、外国のヒーローが別の国に派遣されるのにはものすごい数のステップを踏む必要があるし、自国のヒーローの個性の詳細を把握されるのすら嫌がる国がスタンダードなのだ。ある意味で開放的な日本が例外に近い。エンデヴァーなどのビルボードチャート上位のヒーローの個性が割れているのは、日本くらいのものだ。特にヒーロー発祥の国アメリカの秘密保持はそれはもうすんごい。
その中でもスターアンドストライプは別格中の別格、当然だと思う。だって彼女は、オールマイト先生が引退した今文句なしに世界一強いヒーローなのだから。当然個性についても概要レベルでしか私も知らない。機密中の機密のはず、そんないろんな意味ですごいヒーローのもとにインターンに行けるだって?おかしい、いくら何でもおかしすぎる。私一人に割いていい労力じゃない。
「はっきり言わせていただきます。私たちヒーロー公安委員会、および政府はあなたがスターアンドストライプ級にまで成長すると確信を持っています。次代の平和の象徴にすらなれるかもしれません」
「私が、スターアンドストライプに並ぶヒーローに……?」
「その通りです。現時点であなたは、自らの個性を使って科学方面でいくつもブレイクスルーを起こしました。ビーム兵器の実用化をはじめとした兵器方面、量子コンピュータの開発、ナノテクノロジー……それらを自在に操るあなた一人で軍隊以上の力がある。その気になれば、たやすく街を消し去れる個性です」
「だからこそ、だ。大きな力には大きな責任が伴う。お前の力の大きさを自覚してもらうために、同じことをできる個性の持ち主であるスターアンドストライプのもとで学べ」
「スターアンドストライプ……キャシーと私は知り合いでね。快く承諾してくれたよ、今すぐにサイドキックとしてほしいとね」
君の戦闘映像を見せてみたら即決だったよ、とニコニコしているオールマイト先生の言葉に私はオイルを吹き出しかける。い、いつの間にか私の戦闘映像がワールドワイドになってる……!?というかスターアンドストライプの本名を知っているあたりやっぱりこの人ただものじゃないというか流石は平和の象徴というか……。
スターアンドストライプに、サイドキックはいない。正確には彼女が出張る事件は大体が軍との共同作業なので軍人さんたちがサイドキック、かな?何でヒーローのサイドキックがいないのか、これは単純に彼女についていけるヒーローがいないからだ。全盛期のオールマイト先生のようにニューヨークにいたと思ったら2時間後マリブにいたとか普通にあるんだよね。
「わかり、ました。インターン留学、させてもらいます。よろしくお願いします。それと、エリちゃんのことは」
「それは俺らが責任を持つ。本来なら教師寮で監督するはずだったしな。そもそも学生に世話を投げている時点でおかしな話なんだ。正常な状態に戻すだけの話だ」
「君は本当によくやっているのさ!ただ、自らの持つ力についてはやや過小評価が過ぎる。ヒーローとして、力には等身大の自覚を持ってほしいのさ」
「爆豪少年くらいまで、とはいかなくても……自信を持つといい。デイヴも、私も、そして雄英の教師陣、あるいは君とかかわったヒーロー……君を認めている人間は多いんだ」
「そう、なんですね……」
かぁ……と顔に熱が集まるのを感じる。自覚していたつもりだ、私はまあ……できる方ではある。私にしかできないこともあると。だけど、平和の象徴だったオールマイト先生や、シールド博士……それにこんなにたくさんの人たちが私を認めてくれているというのはなんか、こう……むずがゆくて、恥ずかしくて……嬉しい。小学校、中学校だと避けられてたのに。あだ名なんてターミネーターだったんだよ?そんな私が、日本一のヒーロー育成校の先生たちに、認められるようになれたなんて。
「正直、安心しました。スターアンドストライプに依頼を出そうと考えたのはオールマイトで、私たち公安は別の留学先を考えていたのです。力に不安はありませんでしたが、人格面がこれなら問題なさそうですね」
「もちろんさ!彼女はどこに出しても恥ずかしくない自慢の生徒なのさ!当然、うちの学校にいる生徒はみんなそうだけどね」
「こ、校長先生、これ以上褒められると調子に乗っちゃうのでその辺で……」
この褒め殺しから抜け出したい私は頭から湯気を出しつつ何とかして話を軌道修正しようと奮闘する。会長さんは、私を海外に出すにあたり人となりを確認するのが目的だったらしくて、校長先生に予定が詰まっているので後はお願いしますと言って帰ってしまった。とにもかくにも何とか褒められループから脱出に成功する。私、褒められるのも褒めるのも好きだけど、過剰にされると熱暴走しちゃうからやめてほしいなあ。中学まで面と向かって誉めてくれるのが両親とえーくん三奈ちゃんくらいだったから、学校の先生から褒められるのも慣れてないし。
「それでなんだけど、楪少女。実はキャシーから、もう一人くらいなら面倒を見てもいいと言われているんだ。君から推薦するなら誰がいいと思う?」
「え、で……じゃなかった。私が決めるんですか!?」
「お前についていける奴じゃないと合理的じゃないだろう」
「そ、そうですか……」
オールマイト先生からいきなり一緒に行く一人を決めなさいなんて言われて反射的にデクくんに言わないんですかと言いかけて直す。そういえばこの時間の前にデクくんと爆豪くん連れ添ってオールマイト先生に会いに行ってたんだった。多分そこで言わなかったってことはオールマイト先生はエンデヴァー事務所に行くべきって判断しているってことだよね?
確かにデクくんに今必要なのは、ワンフォーオールの中から現れた不可思議な力を制御する方法だ。いうなれば、新しく芽生えた発動系の個性の制御を学ぶことが重要。新しいことをしている場合じゃない、発動系個性のナンバーワンであるエンデヴァーのもとが一番いいだろう。ついで爆豪くんは……うん、彼もそうなのかも。エンデヴァーとタイプ近いし相性よさそう。ついで轟くんは赫灼熱拳の件があるからエンデヴァーじゃないとだめ。なるほど。
まあ私が選ぶとしたらまずはえーくんが来るんだけど、えーくんファットガム事務所を自宅がごとく気に入ってるからなあ。今更ついてきてほしいっていうのはちょっと違うような……それに、えーくんなら頼めば来てくれるだろうけど、それってえーくんの自由意志じゃないじゃん?彼は彼の考えがあって、今ファットガム事務所を希望しているわけだし。
えーどうしよう?クラスメイトを思い浮かべながらあーでもないこーでもないとうんうんと脳みそとメモリをフル稼働させていると、ピンとくるものがあった。そうだ、そうだ!彼がいい!私ったら冴えてる~~~!!!
「心操くんじゃ、だめでしょうか?」
「心操少年か!」
「……なるほど……は?」
あ、相澤先生ぽかんとしてる。面白い表情みれたー。
日頃の行いがアレなせいで国外追放される系主人公がいるらしい。やらかしがやらかしですからね。戦闘能力に限ればトップヒーロー。というわけで原作でほぼ空白だった3学期は海外留学じゃあ!
ということでまた次回。感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ