もし一緒に行くなら心操くんがいい、と提案してみるとオールマイト先生はなるほどなるほど、と頷き、相澤先生はぽかんと唖然としている。そして校長先生は休憩なのさ、とチーズかじってる。そして、10秒ほど経過していると柔和な顔だったオールマイト先生がいきなりブハッと吐血した。うわ、持ち芸扱いするのやめませんそれ?
「心操少年をっ!?」
「はい、だめですか?」
「いや、だめも何も心操は仮免とってないだろう」
「えーだって心操くん進級したらヒーロー科なんですよね?現時点で私たちの演習に食らいつけるくらい頑張ってるのに現場を体験しないで進級したらひどいことになりますよ。ただでさえ最近不穏なのに」
確かに心操くんは仮免取ってないから、いいかダメかで言われたらダメなんだろうけどさ……もったいない、うんもったいないんだ。心操くんの個性はそのままプロに通用しうる強いものだから。現場を経験できたら何よりも強い糧にできるはず。確かにその現場がスターアンドストライプのところだっていうのはハードルが高いかもしれないけど、そのハードルが高いほど燃えてこなくそってなるのが心操くんだし。
あーでも確かに、仮免がないからダメなのかなあ?私たち仮免がない状態で職場体験に行ってヒーロー活動しているから行けるんじゃないかなって思ってるんだけどなあ。難しい顔の相澤先生、結構悩んでるっぽいな……まあ、相澤先生の言い分のほうが正論だし、だめって言われたらそうだな……百ちゃんあたりを誘ってみようかな?百ちゃん英語話せるそうだし、私と個性タイプ似てるし。
「職場体験扱いにするのさ!」
「校長、しかし……」
「確かに彼女の言うことも一理あるのさ。現状、先行きは不透明、このまま2年次に入って……戦力とみなされ始めるときに実戦経験がないのは致命傷なのは君もわかっているはずさ」
「それは、そうですが。スターアンドストライプがなんていうか」
「キャシーならむしろ心操少年を歓迎するだろうね。聞いてみないことにはわからないけど」
「それにこれは手続きの話になるんだけど仮免ヒーロー二人より、一人のほうがぶっちゃけ通りやすいのさ。雄英というネームバリューがあっても弾かれるときは弾かれるしね!」
お、おお?なんか行けそうな空気になってきた?しかし相澤先生がこんなに拒否反応を示すなんて……ん?あれ?もしかして、相澤先生心操くんのことかなーり、気に入って大切にしているから心配なのかな?私たちでは絶対にしない反応をしているし。うわ、うわわわわ、なんかすごいことに気が付いちゃったぞ私、とはわはわしていると相澤先生が気づいたのかギラッと眼光鋭く私を見る。
「なんかあるのか、楪」
「いーえ?心操くんが大事なんだなーって」
「はぁ……校長がここまで言うからには俺も許可は出そう。スターアンドストライプが拒否しなかったらの話だぞ」
「では私がさっそく聞いてみるとしよう」
今ですか!?と私が驚いてると時差なんか関係ねえとばかりにオールマイト先生が廊下に出て電話をかけ始めた。ひぃえー、直通番号知ってるんだ。さすがは平和の象徴。というか、今アメリカって午後の9時くらいじゃない?スターアンドストライプだったらどうなんだろ?待機中になるのかな?そういえば校長先生チーズお好きだと聞いて作ってきたんですよーと減塩チーズスナックを見せると校長先生は嬉しそうに受け取ってくださった。ありがたや。
「あー、楪少女。結果なんだが……二つ返事だった。というか、むしろそんな個性が何でヒーローやってないんだ?くらいのことを言われてしまったよ」
「校長、やはりあの入試形式は……」
「見直す必要がありそうだね!とにもかくにもこれで決まったのさ!」
とんとん拍子にいろいろ決まってしまった。いやしかし、これで私のインターン先、きまっちゃったのか……しかもあの、現世界ナンバーワンヒーローのスターアンドストライプのところに。夢か?夢じゃないよね?私個性の構造上夢を見ることはできないんだけどほっぺつね……左腕外れてるんだった。がちゃこんと左腕を拾って装着完了!しかし、久しぶりに驚いて落としちゃったな……。
「楪、心操にはお前が伝えろ。推薦した理由も含めてな」
「え、私でいいんですか」
「むしろお前がいい。それに、心操のやつ……ヒーロースーツをお前に頼みたいって言ってたしな。もし作る余裕があるのなら要望聞きついでにC組の寮に行ってこい。インターンについて詳しいことはこのチップの中だ。機密だぞ」
「心操くん……!すいません、行ってきます!」
なんか心操くんがとてもかわいいことを言ってたらしいんだけど!なになに!?私でいいのヒーロースーツ!?雄英直属のプロ事務所じゃなくて!?サポート科でもなくて!?何それものすごくうれしいんだけど!?相澤先生のもうどうにでもなれー的な表情にはいささか引っかかるものはあるけど、そんなことより心操くんだ!
受け取ったチップを指先に挿入して中身を読み取りつつ、私は立ち上がった。とりあえず心操くんに説明できるものを仕分けしつつ、頭を下げて校長室を退室した。湯呑を持つオールマイト先生と校長先生は優しく見送ってくれたけど、相澤先生だけ頭痛をこらえてるような顔だった。むむ、なんか引っかかる。あとで相澤先生のゴーグルをVRゴーグルに交換しちゃおうかな?
そういえば、B組とサポート科以外の他寮に行くの初めてだな私。ハイツアライアンスはどこも同じつくりをしているから上鳴くんとかはたまに迷ってるみたいなんだけど、まあ私には関係なし。A組の寮の外観と全く変わらないC組の寮をノックノック、すると顔を出してくれたのは……あ!私が暴走トラックから助けた子だ!
「ヒーロー科の……!」
「ごめんください、心操くんいます?」
「いるよ、いるいる!こっち来て、共用スペースで待ってて!」
あ、あれ~~~?なんか、勘違いされてる、ような?まるで三奈ちゃんが恋バナをするときのように目を輝かせた女の子は、そのまま私の手を取って共用スペースに引っ張れないと思うので自発的に歩いて引っ張られていく。なんだなんだとそこにいた普通科の子たちの反応にちょっと恥ずかしくなってると、いきなり心操君よんできて!と近くにいた男子を顎で使った女の子に私は目をパチパチ。おー、普通科って男女半々くらいなんだ~。しかも一クラス30人いるんだっけ?なんだなんだと続々心操君のクラスメイトが下りてきて、囲まれちゃった。ひ~~ん。
「何、いきなり降りて来いって……楪!?」
「あ、やっほー心操くん。直接会うのは久しぶり?ちょっと今日は、あるお誘いに来たんだけど」
「お誘い……って何の話?」
「うん、心操くん!私と一緒に、留学に行かない!?」
うおおおおおときゃああああという謎の黄色い声が聴衆と化したC組のみんなからなぜか聞こえる。あれ?私普通に誘ったと思うんだけどなんか変なこと言ったかな?と首をかしげてると心操くんは理解しているらしく顔を真っ赤にして私を引っ張る。素直に引かれて共用スペースから寮スペースに引っ張られる私。後ろからごゆっくりー、だの後で話を聞かせろよーだの聞こえてくる。
私を引っ張る心操くんの手は、最後に見た時よりかなりたくましくなっていて、手の皮が厚くなってるのが見えた。残念ながら私の手は触覚はほぼないので感じ取れはしないんだけど。重い私を何とか引っ張ってきて、自分の部屋にぽいっと放り込んだ心操くんは後ろ手に開けられないようにか鍵をかけて、ちょっと赤みが残る顔で息を切らしつつ私を睨みつけて口を開いた。あれ?思ってた反応と違う。
「いきなり来て、留学ってなにさ。俺のことからかいに来たの?なら大成功だけど」
「え?いたって真剣だけど。私、ヒーロー科のインターンで留学することになったんだけど、心操くんも一緒にどうかなーって思って校長先生にお願いしたら通ったから誘いに来ただけ」
「待って……まずいろいろ聞きたいんだけど……インターンって何?」
「あ、そこからか。インターンっていうのはね……」
そういえば知らないよね、と私は心操くんにインターンの説明を行う。あれそれこうで、プロのもとでヒーロー活動をするんだけどやってるときはプロと同列に扱われるから責任も生じるんだよと説明。ただ、心操くんは仮免許を取得してないから一歩手前の職場体験になると思うという話をすると心操くんは少し黙って頭を整理した後私に尋ねてきた。
「それってつまり、俺でもヒーロー活動ができるってこと?」
「そうだね。と言っても戦闘とかができるかどうかはわからないよ?職場体験扱いだったら……避難誘導がせいぜいかなぁ。でも」
「現場に立てる……!」
「そうだね。経験が積める!心操くん進級したらヒーロー科だし、2年生は戦力としてみなされるみたいだから現場知らないと大変だろうなあって思って、誘いに来たんだけど」
「……正直、めちゃくちゃ嬉しいし行きたい。でもなんで俺?」
「何でって言われると困るなあ……誰を推薦するか、で頭に浮かんできたのが心操くんだし」
確かに心操くんが一番に浮かんできたわけではないけど……なんでか彼ならいいんじゃないかなって思えたのは事実。それが私が心操くんが重ねた努力を知っているからなのか、純粋に実力なのかは私にも判断できない。ぶっちゃけコネみたいな感じに近い。まあコネはコネで悪いことじゃないしね。利用できるんならなんだって利用すればいいのだ。私みたいに便利なメカもね!
「まあ、それはそれとしてだ心操くん!ヒーロースーツ、私に作ってほしいんだって!?」
「あ、相澤先生……秘密にするって言ったのに……!……そりゃまあ、よく知らない事務所より楪のがいいでしょ。ペルソナコードもゴーグルも楪製だしさ」
「なるほどなるほど、では心操くん……ヒーロースーツの要望……の前に!」
「前に?」
「留学してもいいかご両親に許可取れる?」
「あっ、ごめんちょっと待って」
私があまりにも急に誘いに来たからあれかもしれないけど、この話学校の職場体験と違って心操くんを特別扱いするわけだから別枠でご両親に許可を取る必要があるのだ。書類云々は校長先生がすぐ送付してくれるみたいなんだけど予め許可を取るべきなんだ。特にヒーロースーツの制作は、これに許可が下りないと無理だし。ヒーロー科でもないのにヒーロースーツを作るにはある程度特別な理由が必要だ。それこそ職場体験で絶対に必要、とかね。
心操くんも私が急に来たもんだから混乱しているのだろうけど、どうやら留学に行くのは結構乗り気な様子で電話を取り出し、ご両親に連絡を取り始めた。俺もよくわかってないんだけどという前置きから始まって職場体験に行けるという話をご両親にする心操くん、許可が欲しいという段になると、かすかに電話口から泣いたような声が聞こえてきてぎょっとしたけど、心操くんは2、3話して切っちゃった。
「いいの?」
「なんか……俺がヒーローになれるかもっていうのが、嬉しかったみたいで……とにかく許可下りた」
「いいご両親だねー。それじゃ、スーツの要望聞こうか。なんでもござれでございますー」
「なんなの、そのキャラ」
混乱から立ち直ったらしい心操くんが、ちょっと茶化した言い方をした私にいつもの皮肉じみた笑みじゃなくて、純粋に笑ってくれる。それで始まった心操くんの要望タイム。ふむふむ、できるだけ軽くて、丈夫で、それでいて動きやすく……そうすると防弾布を使った布製になるのかな。一部金属で補強、いやナノテク使おうか。サポートアイテムは捕縛布とペルソナコードとゴーグルで変わらず。あ、ナイフ欲しい?いいよいいよつけちゃう。
そんな感じでいろいろと心操くんの要望を聞いていく。心操くん、結構いろいろ考えてるんだね。まるでフルガントレットのことについて語ってくれるデクくんみたい。デクくん、いろいろ正確に解析してくれるからテスターとしてとても助かってたりするんだよねえ。サポートメカのことも料理のことも。これに関しては私えーくんよりもデクくんを信頼してたり。えーくんだいたい「これいいな!」と「うまいぞ!」だけだから。細かいところわかんないんだよねー。
「それで、なんだけど……」
「もうこの際全部吐き出してよー、後からリテイクは大変なんだよ?ほらほら、恥ずかしがらずに言う!」
「イレイザーと、エッジショットみたいな感じに、してほしい」
「まかせなさい!」
なるほど、ヒーロースーツモチーフは決まった!期待しててね心操くん!度肝を抜くスーツ、作っちゃうよ!
これより心操くんのヒーロースーツを大改造する!仕方ないね、心操くんカッコいいからね。原作ヒーロースーツなんか相澤先生というよりかはエッジショットっぽい気がするの。不思議。なのでこの時空の心操くんはエッジショットファンです(断定
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ