個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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122話

「留学、お前が!?」

 

「そうだよ?だから、しばらくみんなとはお別れ~」

 

「うぇえええっ!?やだー!希械ちゃんに会えないのやだー!」

 

「エリちゃんが聞き分けたのに三奈ちゃんが駄々こねないで!?」

 

 いーやーなーのー!と腕をぶんぶん振ってわがままをいう三奈ちゃんと私が留学に行くっていうのを聞いて驚愕するえーくん、そして共用スペースで話しているのでなんだなんだと集まってくるみんな。そして、ぴっとりと私にくっつくエリちゃん。心操くんの要望を聞いた翌日、私はみんなにアメリカに留学に行くことを伝えていた。そしてその結果が、三奈ちゃんのガチ泣きである。

 

 エリちゃんには昨日のうちに、帰ってすぐにこれこれこうで、しばらく離れることになると伝えた。その時のエリちゃんはかなり動揺してしまったけど、私が約束を破ったことがないのを思い出したからか、必ず帰ってくるっていう約束をしてくれたら我慢するって小指を差し出してきた。私はもちろんそれを受け入れて、留学に行くまでは精一杯エリちゃんに愛情を注いであげようと思ってる。

 

「希械ちゃんのご飯食べれんようになるん……?」

 

「麗日さんそこなんだ……」

 

「よく考えてデクくん!毎日私たち、何かしら希械ちゃんが作ったもの食べてるんよ!?それが全部なくなるんよ!?」

 

「……たしかに、ちょっとやばいかもしれないね」

 

 なに、みんなそんな欠食児童みたいなこと言って。というか私の料理がなくなるごときでそんな青い顔しないの。別に毎日冷蔵庫に入ってる常備菜とおやつと夜食と早い者勝ちの夜ご飯のあまりがなくなるだけでしょ?ランチラッシュ先生のご飯があるからへーきへーき。なぜかみんな私に食費を渡しだすもんだから困ってたんだけど。勝手に作ってるだけだから勝手に食べていいんだよ?

 

「でも、エリちゃんは……」

 

「おかあさん、帰ってくるって約束してくれたから……がんばる」

 

「おい芦戸、お前幼女に我慢強さで負けてるぞ」

 

「だって~~!希械ちゃんと3か月も離れるのは無理~~~!峰田のセクハラにどうやって耐えればいいのさ!」

 

「そこに関しては峰田がドブなんだけどよ」

 

「オイラの扱いひどくね!?」

 

「当然の報い」

 

 峰田くんのセクハラに関してはやられるごとに手口が巧妙かつ斬新、それでいて私たちの被害も小さいというおかしなことになってきているんだけど、たまに本気で覗きに来たりするからたちが悪い。この間なんて……いややめとこう。あの事件は私たち女子とデクくんと轟くんに深い傷を残したのだ……ごめんね二人とも、変なものみせちゃって。

 

「まあ峰田のことはともかくよ、希械はどこに行くんだ?」

 

「アメリカ~~。ヒーローの本場だよね!いろいろ学んでくるよ~」

 

「何でこいつが留学できて俺ができねぇんじゃクソが……!」

 

「日頃の行い」

 

「うるせえクソ鳥!」

 

 痛いところをつくでお馴染み常闇くんと、私が留学に行くのに自分には話が来なかったことに爆ギレする爆豪くん。それもそうだよねえ、爆豪くんなんだかんだ優秀だから話が来ても……いやだめだ。外部に出していい言動してないもん。それするならデクくんとかのほうが対外的にはいいよね。で、そのデクくんは私がどこのヒーローのもとに行くのか気になる様子。わくわく顔でノートを片手に私のそばに座った。

 

「それで、楪さんがインターンするヒーローって誰なの?」

 

「ふっふっふ~~~、機密なので言えませーん!」

 

「ええ~~!そんな~~!」

 

「言えねえのか」

 

「残念ながらね。帰ってきたら教えてあげるよ」

 

 正確には帰国して、情報漏洩が起こってなかったら、かな。そういえばデクくんがいつも持ってるノートの中身ってみたことなかったなあと思ってちらりと中身を確認してみると、あらら!?私の全体像がイラストになっててそこに細かく色々と……!やばい、いろんなところでデクくんお得意の解析をかけられていて私を丸裸にさせられた気分だ。恥ずかし!ここまで網羅されちゃうと怖いなあ、デクくん。

 

 轟くんって、なんか割と感情がわかりやすいよね。今なんてほら、くしゅーんみたいな感じで沈んじゃってる。犬の耳としっぽが見える気がしてきた。ちなみに私評だと爆豪くんもわんこ、犬種にするならチワワかな?どこでも吠えて噛みつくところとか、よく怒りで震えているところとかそっくり。轟くんはハスキー?ウルフドッグかな?あれ?何で私クラスの男子をわんこに例えてるんだろう?どうでもいいけどえーくんはゴールデンレトリバーね。デクくんはポメラニアン?

 

「しかしまあ、寂しくなるな」

 

「んだなー、なんだかんだ楪いると面白れぇし」

 

「なにー?褒めても何も出ないよ~?」

 

「その手に持ってるのは何だよ……」

 

 何って、さっき焼いて持ってきてたマドレーヌだけど。と私は上鳴くんの口にぽんっとマドレーヌを入れて、そういえばそろそろ来るだろなあ。とエリちゃんを膝に抱っこしなおして、私の胸に顔を埋めるエリちゃんをよしよしして待っていると、控えめに共用スペースのドアが開く。そこにいるのはたまたま居合わせた飯田くんと、待ちに待っていた心操くんだ。

 

「うわ、ほとんどいるじゃん。呼ばれたから来たんだけど」

 

「心操君!どうしたの?A組の寮に来るなんて珍しい」

 

「楪に呼ばれたんだよ」

 

「そう!私が呼んだの!心操くんのヒーロースーツのデザインが決まったので!」

 

「え、昨日の今日じゃん……」

 

「仕事が早いのが楪サポートメカ工場だよー」

 

「ま、まってまってまって!心操君のヒーロースーツ!?何で!?」

 

「え、何でって……心操くん私と一緒にアメリカ行くから」

 

 大体心操くんの要望を聞いたときに大まかなデザインは決めてたから、昨日エリちゃんが寝た後にブラッシュアップして今朝デザインだけ完成させたの。とりあえず意見聞きたいからって呼びつけたのだ、心操くんを。なんでA組寮なのかっていうとエリちゃんがいるからだね。今日はエリちゃんにつきっきりの予定だからさ。そんなことを考えてるとはああああっ!?と瀬呂くん上鳴くん峰田くんの驚愕3重奏が。

 

「どしたのさ?」

 

「どーしたもこーしたもあるか!心操と留学!?どういうことだ説明しろぉ!!!」

 

「いいのか切島ァ!取られるぞ心操に!」

 

「あー、心操……こいつのこと頼むわ。ほっとくと無限に無茶するから」

 

「なんか、わかる気がするけど……」

 

「これが幼馴染の余裕ってやつかぁ!?」

 

 それよりもえーくんはなんなの?なんなのその父親みたいな顔は?逆じゃない?ねえ逆じゃない!?そこは私に心操くんをちゃんと守り切るんだぞっていうところじゃない!?何で私が心操くんにおもりされる前提になってるのねえ!?心操くんも心操くんで何で受け入れ……いや、守ってくれよとか普通に言う人じゃないしな……後で悔しくなるだろうから言わないでおこう。

 

「でも心操って仮免取ってなかったよな?何で急にインターン行けるんだ?俺らが仮免取った意味よ」

 

「心操くんはインターンじゃなくて、職場体験。2年生から私たち一応戦力としてみなされるでしょ?インターン行ったらプロのサイドキックと扱いは同じだけど、心操くんは実戦経験がないじゃない。危ないよ、それ」

 

「だから、今のうちに職場体験をってことだね!相澤先生、相変わらず合理的だな」

 

「実は相澤先生、猛反対だったの。校長先生が賛成してくれたからオッケー出たけど」

 

「イレイザー、そうだったんだ」

 

「そう、相澤先生表に出さないけど心操くんのことほんとーに、大切にしてるんだよ」

 

「……」

 

 すっ、とこの後自主練でもするつもりだったのか首に巻き付けていた捕縛布を口元まで引き上げて顔を隠す心操くん。相澤先生に想われてるのが嬉しくてにやけた顔を隠すためか、単純に恥ずかしいのか。いつも通りのニヒルな顔に一瞬の空白。そしてA組のみんなはなんか微妙な顔。そりゃそうだ、相澤先生の1番は自分たちだっていう自負があるんだけど、心操は相澤先生の直弟子。贔屓だなんて口が裂けても言えない、それでもなんか羨ましいのは私たちが相澤先生大好きな証拠。

 

「とまあ、本来の目的を果たそうか。はい、これデザインね」

 

「にんじゃ?」

 

「エッジショットとイレイザーヘッドモチーフだ!こことか、こことか!」

 

「……カッコ、イイな」

 

 デクくんったら心操くんの感想を奪わないであげてほしいなー。私がホログラムで映し出した心操くんのヒーロースーツデザインは、彼の要望通り、相澤先生のシンプルなヒーロースーツを基礎に、上にエッジショットのような忍者っぽい衣装を被せたもの。エリちゃんが最近見たエッジショットのことを思い出したらしくお目目がキラキラ。なんとも可愛らしい、忍者のコスプレでもさせてあげようかな?

 

 首には捕縛布、腰には実はデクくんから着想を得たポーチ、頭にはゴーグル、口にはペルソナコード。そして手の甲、膝、足の甲、肘には金属パーツで防御と打撃の威力向上の一挙両得。腰には大振りのナイフ、足首にも同じものを左右二つ、高周波振動刀だ。相澤先生もぼやいてたんだけど、捕縛布はある程度力があるヴィランだと割とたやすく切られちゃうらしいの。だから、捕縛布そのものを切れにくく強度があるものに変えることにした。

 

 防刃防弾繊維をナノテクを使って複雑に編み込み、さらにナノマテリアルを織り込んで金属の重さと布の柔らかさを実現した新型捕縛布!使用感、重さは変わらず!ただ、絡まったときとかは普通のナイフじゃ絶対にきれなくなってしまったのでそれを斬れる専用のナイフを乗せることにした。もちろん攻撃にも使えるんだけど、落としただけで柄が地面まで抵抗なく刺さるほど切れ味鋭いので攻撃の時は高周波をオフにすることをお勧めするよ。

 

「とまあ、こんな感じなんだけどどうかな心操くん?重さとしては全装備合わせて10㎏くらいだね。スーツだけなら2㎏だよ」

 

「……正直、俺は楪やA組ほどヒーロースーツには詳しくないから、これがすごいものだってわかっても欠点を指摘することはできない……緑谷はどう思う?」

 

「えぇっ!?僕!?……そうだね……うん、僕から見ても何か追加で必要だとは思わないかな」

 

「……そうか。じゃあ、これで頼む」

 

「はいは~い!じゃあ最後に心操くん、待機形態決めようか!おすすめがあってね!」

 

「え、なにそれ」

 

 私が待機形態決めよう!というと心操くんは困惑の顔、えーくんは悪い癖が始まったと頭を抱える。なにをー?せっかくナノテクという夢の技術が手に入ったんだから活用しない手はないでしょう!架空を現実に落とせる技術だよ!?つまり、ナノテクを使えば普段着からヒーロースーツに『変身』できるわけです!私が心操くんに見せたホログラムは……

 

「メガホン?」

 

「そう、メガホン!例えばの話だけど、これに音声コマンドを吹き込むと、ヒーロースーツが自動装着されるとか!もちろんそのまま心操くんの個性が使えるように設計してるんだよ!ペルソナコードが変声機能なら、こっちは拡声と収束の機能!合わせて使えば遠くまで声が届く!声を使うヒーローになる心操くんにぴったりだと思うな!」

 

「……」

 

「あ、気に入らなかった?なら普通に腕時計と同じにするとかできるけど……。ヒーローっぽいものっていうオーダーがあったから、そういうの好きかなって」

 

「あ、ごめん。いやいや逆逆。こんなカッコいいもの作ってもらえるのかと感動してた」

 

 ぽかーんと固まってしまった心操くんにやっばい調子に乗りすぎちゃったかなと私は顔を青くする。実は、心操くんのヒーロースーツは私が初めて全部フルで作ることになるから気合が乗っているんだよね。デクくんとかはメリッサさんとか明ちゃんとか別の人の手が入っているし……ほかのみんなはあくまで私は補助でしかない。私メインの私100%の私の作品、それも他人に作るものなんだから気合が乗りまくっていたんです。

 

 だけど、心操くんの反応はどうやら杞憂で済んだらしく、触れるホログラムでできた紫をメインに黒のラインが入ったメガホンを手に持った心操くんは、それを嬉しそうに見つめてくれている。ちなみに『変身』できる、と言ったとたんにクラスメイトの半数、具体的にはデクくん、爆豪くん、轟くんに常闇くん、三奈ちゃんなどなどが反応を示したので後で詰められそう。みんなは会社別でしょー!

 

「よし、決まったね!心操くん、これから自主練?」

 

「ああ、冬休み時間たくさんあるから助かってる」

 

「じゃあ、私も行くよ。演習場押さえるからデータ取りさせて。それでヒーロースーツ作るから。組手と模擬戦のデータ欲しいし、だれか付き合ってくれる人いるー?」

 

 私がみんなに呼びかけると、はいはいはい!と暇を持て余して心操くんのヒーロースーツに夢中だったみんなが手を挙げる。私はそれに苦笑しながら、良かったねと心操くんに目をやる。彼は、ここにきて何度目かわからなくなった捕縛布で、改めて口元を隠していたけど、目尻の笑みは、隠せないようだった。




 楪さんのせいでヒロスは変身スーツが基本になる模様。メガホンはあれです。レスキューファイヤーの変身アイテムのやつです。知ってる人は知っている。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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