「遅いよ
「あ、いえこっちは自立型のパワードスーツで……ちょっと待ってくださいね!」
『無茶言わないでくれスター!スクランブルにして急いでも限界があるぜ』
「それを超えてこそさ。ほら、この子たちの学校では言うだろう?Plus Ultra!ってね!」
突然の米国ナンバーワンヒーローの登場に沸く観衆と完全にフリーズする私、そして上空から轟音を立ててやってくるのは、ゲェッ!?発表は2年位前だったけど現在最新鋭の垂直離着陸超音速戦闘機だ!それも3機!どうなってるのってああ……スターアンドストライプがスクランブルしたからそれについてきたんだね。ネバダからここまであれなら10分程度かな?それより早いってどうやってきたんだろうスターアンドストライプ。
ハロが入った4mの大きさがあるゴリアテのことを心操くんだって勘違いしてるみたいなので違います違いますと再起動した私が否定。ヘルメット内から出てきたハロでようやく中身が空っぽなのに気付いたスターアンドストライプは興味深そうにゴリアテを観察している。その隙に私はスラスターを点火してジャンプ。まったく進んでない渋滞の中、クラクションの多重奏に顔をしかめつつ乗ってたタクシーを見つけて降り立つ。
「ただいま!運転手さんここで降りるね!心操くん、行こ!」
「お、お帰り楪。もう終わったの?というか降りるって?めちゃくちゃ前が騒がしいんだけど」
「詳しい話は向こうについてからにするけど、ヒーローに呼ばれてるから!急いで準備して!」
「よくわかんないけどわかった」
「運転手さん!おつりいらないから!チップと迷惑料込みね!」
あわただしく降りる心操くんとトランクを開けて荷物を取り出す私。運転手さんは目を白黒させているけど、私が押し付けた100ドル札をぽかんと受け取ってくれる。荷物を大慌てで抱えた心操くんをキャリーして飛び立ち、ゴリアテとハロを置きっぱなしの事件現場へ戻る。ショットガンにアサルトライフル、サブマシンガンで武装した警官たちが銃を突き付けながら拘束したヴィランたちをパトカーに突っ込んでいるところだった。
大慌てで拘束具の鍵を彼らに渡し、超目立つスターアンドストライプのところまで走っていく。いつの間にか外に出ていたハロをスターアンドストライプが抱っこしているというデクくんが見たら気絶しそうな光景が目に飛び込んできて泡を吹きかけた。は、は、ハロがごめんなさい!まさかあなた相手に抱っこしてくれっていうとは思わなくて!後で躾をプログラミングしないと!
「戻ってきたね。なるほどこっちがヒトシかい?雄英から話は聞いてるよ、職場体験で留学か……いい
「ス、スターアンドストライプ!?おい楪、まさか……!?」
「彼女がそうだよ。だから、先生たちも私も日本じゃ何も言えなかったの」
「な、納得したけど……俺、ついていけるのか……?」
「相澤先生言ってたでしょ?プルスウルトラって、私は普通のヴィラン退治程度なら心操くんは問題ないと思ってるよ」
ナインとか、マスキュラーとかのスーパーヴィランは別にしてねと心の中で呟いた。彼ら相手だったら私でも死を覚悟して戦うレベルだし、心操くんの個性が割れたらなお不利だ。一人で相手するもんじゃないね。豪快に笑うスターアンドストライプ、うーん画風が違う。オールマイト先生と同じ感じ、というか身長まで同じくらいじゃない?
「んじゃ、詳しい話は基地でするよ。bros!ヒトシを乗せてやってくれ、荷物も一緒にね。エクスマキナは外で私についてくるんだ。ついてこれるだろ?」
『戦闘機使いが荒いねえ……いいさ、乗っけてやるよ』
「イエス!わかりました!心操くん戦闘機乗れるって。男の子の夢だ!」
「え、マジ?むしろ乗っていいのそれ」
心操くんなんだけど彼、意外とスレて皮肉気なんだけど中身は意外と、というか普通に男の子。接していてわかるけど、カッコいいヒーローには拳を握って応援するし、普通に特撮ものも見るし、アクション映画もハリウッド映画も好み。それなら当然最新鋭の戦闘機に乗れるってなったらそりゃ心躍らせるでしょう。垂直に降りてきた戦闘機のコックピットが開いて、酸素マスクをつけたパイロットの人が親指で後ろを指さしている。
「はい、ペルソナコード。一応酸素マスクの機能は入ってるからね」
「要望通りだな……。うわ、模擬戦の時よりも軽い」
「でっしょー。残りのお楽しみは向こうついてからね」
心操くん用のアタッシュケースから出して手渡したペルソナコードは変声機であると同時に、酸素マスク、ガスマスクの役割を持つ生命維持アイテムだ。というか、そうしないと万が一の時に心操くんを守れないし。複座式らしい戦闘機、名前はわからないけどパイロットの後ろに心操くんを連れて飛び、席に失礼させてもらって荷物やらも放り込み、私は降りる。ついでにハロとゴリアテを回収っと。
「よし!じゃあbros!私とエクスマキナはこのまま戻るからついてきて!エクスマキナ!私を見失うと今日は野宿になるよ!」
「ついていきます!絶対に!」
「その意気さ!じゃ[空気は私に抵抗を及ぼさない]……スタートだ!」
ドンッという音が聞こえそうな勢いで、スターアンドストライプはジャンプする。だけど、おかしい。無音だった、音が聞こえない。そして、まるで飛んでいるかのようなジャンプであっという間に私を置き去りにしてしまった。両目の測定でマッハ2は出てる。衝撃波も起こさずに?どうやってるんだろう?これがスターアンドストライプの個性「新秩序」の力?
さっき呟いた言葉が関係しているのだとしたら、今の彼女は空気の抵抗を受けずに移動できることになる。重力の影響は受けても、抵抗がなければ減速しない、むしろ加速し放題!?や、やばい!本気でおいてかれる!と私はキュボッ!と足のスラスターを爆発的に吹かして大ジャンプ。空中で手と足を個性で組み替えて飛行に入った。
足の裏、踵、脹脛にリパルサーエンジンを追加、加速力とし、手のひら真ん中にもリパルサーを配置する。景気よく点火したリパルサーが私をぶっ飛ばす勢いで前に押し出し、瞬時に私をマッハ2まで加速させる。衝撃波の壁をまとった私は大ジャンプで移動するスターアンドストライプを見つけて、さらに加速をかける。まだまだ!だけどこれ以上行くならアルビオン着ないとだめかも!
「やるねえ!ついでだ!さっき州警察が護送してたヴィランが逃げ出したみたいでね!捕まえに行くよ!見つけてみな!」
「……いました!前方50キロ先!個性で暴れてます!」
追いついた私を見て口笛を吹いたスターアンドストライプは、右耳に着けていた無線から聞いたらしい情報を私に共有してくる。音より早く行動しているので声は全く聞こえないけど読唇で内容を読み取った私は彼女の無線の周波数に合わせて彼女の耳に直接声を届けた。同時にあらゆるネットワーク、オンライン上の監視カメラを覗いて何があったのかを把握した。すぐに見つけた、おっきいなあさすがはアメリカ!ゴジロみたいだ!
音を超えている状態で50キロ先なんてあっという間。怪獣みたいな巨大ヴィラン、スターアンドストライプに指示を仰ごうとすると、彼女は私を見て、ヴィランを見た。任せるってことか、了解!私はそのままさらに加速を取り、慣性制御を用いて直角機動で目測20mはあるヴィランの真上を取る。空中で完全にブレーキをかけて滞空した私は、両手を組んで変形、砲口に変わった手からビーム一歩手前の熱線を極太で発射する。
名づけるなら焼却砲、かな。真っ赤な熱線に飲み込まれたヴィランは、悲鳴を上げて転げまわる。気絶には一歩足りなかったかな?とリパルサーで加速し、真っ黒こげのヴィランの脳天にかかと落とし。ものすごく硬いでお馴染み私の足による一撃を食らったヴィランはそこで気絶。がちゃん、と地面に着地して周辺の被害確認。うん、想定内かな……警察の人たちは正気を取り戻し麻酔銃をバスバス気絶して縮んでいくヴィランに打ち込みながら拘束を始めた。そこでストっとスターアンドストライプが降り立つ。
「エクスマキナ、アンタ面白い。文字通り……
「何でもできる、とは若干違います。できる手段を増やす、という感じでしょうか。如何せん、科学技術がないとこの個性はぽんこつですよ」
「ああ、なるほど……アンタはその場で理論を組み立て、技術を再現し、そして出力してるわけか。勉強が得意なのはいいことだね」
「……好きですよ、お勉強。だってこうやって、あなたと英語で話せるんですから」
「かわいいこというじゃないの」
いきなりふわり、と浮いたスターアンドストライプは私の頭をわしわしと力強く撫でる。まさか、私の個性でやっていることを一瞬で看破されるとは思わなかった。オールマイト先生ですら初見では何してるかわからなかったらしいのに。あと、たぶんだけど……この人だったら私より早く鎮圧できた。いや、できて当たり前なんだけど……さっきのトレーラーのヴィランといい、今のヴィランといい……スケールが大きいんだよね日本と比べると。
私の経験値が偏ってるのは間違ってないんだけど、日本のヴィラン犯罪は大体万引きとか、空き巣とか、そういうある意味では軽犯罪に該当されるものが7割だ。日本のヒーローたちは、大多数がどちらかというと救助に長けている。これは日本がほかの国より災害に近いのもあるんだけど……実態は今までオールマイト先生が凶悪事件を何とかしちゃってたから、その後始末に特化しているだけとも言える。
勘違いしちゃいけないのは、日本も日本で戦闘が必要なヴィラン犯罪はもちろん皆無なんて口が裂けても言えない。それなりに起こってはいる……ただ、適切な戦闘訓練と個性訓練を受けたヒーローたちならショービズ意識して倒せるのも事実だった。マスキュラー、ムーンフィッシュ、それにヴィラン連合のようなスーパーヴィランは例外だ。あいつらみたいなのがポンポン出てきてたまるか。
だけど、アメリカに来て1日で携わったこれらの事件は、どっちも被害が大きすぎる。当たり前のように怪我人、死者が出てもおかしくない。町なんかレゴブロックをぶちまけたように壊れてしまっているし。日本だとガラスが割れる程度が多いけど、ここまで大規模にものが壊れているのは普通に全国ニュースになるレベルだ。
だけど……今この状況になってまったくメディアが来ない。報道ヘリの1台も来やしない。護送された囚人の脱獄という日本からしたら大事件なのにもかかわらず、だ。まるで当たり前の日常のように、肩を落としていたその建物で商売をしていた人も、すぐに立ち上がってがれきの撤去を始める。被害にあってない人も、どこからかたくさん集まってきてそれを手伝いだした。日本だとボランティアか専用の会社を派遣してやることを、市民がやってるんだ。
「アメリカは、自由の国だ。自由には責任が伴うけど……だが、ヴィランの被害に対する責任はだれも取ってはくれない。ヴィラン自身にけじめをつけさせる以外はね。だけど結局、裁判して保障が確定しようが払われないのが当り前さ。犯罪起こすようなヴィランが金を持ってるわけないからね」
「日本だと、ある程度国から保証がおりますけど……」
「こっちもそうだ。ただ、日本に比べるとかなりミニマムだよ。そのための保険もあるけど、高い。だからみんな手伝う、明日は自分がそうなるかもしれないから。明日そうなっても助けてもらうために」
「日本とは助け合いの精神から違うんですね……」
日本のヒーロー活動、および救助、撤去のボランティアなんかは、無償の奉仕を原則としている。ステインが言ってたような、ヒーローは金や名声を求めてはいけない、というのが根本にある……実態は別としてね。だから、国からの保護も手厚い。だけどアメリカは、全然違う。自己責任なんてレベルじゃないな……放置に近いかも。このレベルの事件が常態化してるなら日本だとコメンテーターが騒ぎ立てるよ。
それに関しては、スターアンドストライプも思うところがあるような顔をしている。アメリカの社会保障が日本よりも薄いというのは聞いていたけど……ここまでなんだな、と私はスターアンドストライプの許可を取ってがれきの撤去を手伝う。ついでに外装だけ修復しちゃえ、やばいなんか泣かれて感謝されてる。居心地悪い……。
自由(色んな意味で)の国アメリカ生活開始です。それではまた次回
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