「遅くなっちゃったね!とにかくようこそだ、エリア78……ネバダ州個性軍基地へ!」
「すいません、何か作るとなると凝っちゃって……」
「いやいやわかるよわかるわかる。私も人助けしてたらそりゃあ時間なんて忘れるよ」
まさに軍の基地!という感じの滑走路の真上で私はスターアンドストライプに頭を下げていた。いやね、実はあの巨大脱獄ヴィランが壊したところをとりあえず使用可能くらいにまで回復させた、のはいいんだけどスターアンドストライプは結構無理を言って軍の基地を抜け出してきていたらしく、彼女の無線にはお叱りの通信が入ってしまった。アメリカ式ではなく日本式の対応を取ってしまったけど……正直後悔はない。あ、スターアンドストライプに対しては申し訳なく思っておりますとも、はい。
違うんです。切れた電線繋ぎなおしたりとか、ボロボロの道路舗装したりとか、ぶっ壊れた消火栓を元に戻したりとかしてたらスターアンドストライプも面白くなってきたみたいで、あれ直せるこれ直せると聞かれてやります!って言ってやっただけなんです。基本有機物でもなければなんでも直せるので……そんな感じで怒られました。アメリカのヒーローたちで一番偉い人、アグバー司令っていう人に。
「やっときた。なにしてたの……?」
「えっとね……心操くんこそなにしてるの……?」
「なんか……楪のこと聞かれまくった。本人いないから何聞かれてるのか全然わかんなかったけど」
「それは、その、ごめん……?」
私が聞きたいのはその手に持っている分厚いナイフのことを聞きたいんだけど心操くん?それ米軍の制式採用ナイフだよね?空軍のやつ。もしかして後ろにいるマッチョメンな人のやつ持たせてもらってるの?まさか私が作った超振動ナイフよりそっちがいいっていうの心操くん!?浮気!?浮気なの!?そりゃ信頼性は比べ物にならないくらい高いかもしれないけどさー!私のサポートアイテムはいまだに故障報告がないんだよ!?もっと信頼して!
あ、何となく心操くんが聞かれていることが分かった気がするー。えー、私と心操くんを交互にさして……ガールフレンド、もっと言えば彼氏彼女!?って聞かれたわけかな?うーん、心操くんなかなかカッコイイとは思うんだけど、私にはもったいないよ。もっといい人いるいる。私をもらってくれそうな人は現状……多分いないような、そんな気が……。えーくんは……私は売れ残っても彼は真っ先に完売になるタイプだしないかも。
大急ぎで戻ってきた私たちは、マッチョメンな軍人の皆さんに囲まれて筋トレをしていた心操くんと合流。全部で10人くらいいるのかな。みんながみんな、オールマイト先生やエンデヴァーとまではいかなくても超筋肉質で、迷彩服がにあってて、あと歯が白い。私が想像するステレオタイプなアメリカ軍人って感じかも。それとすごい強そう、拳銃のホルスターとか、ナイフの鞘とか見るかぎり、日常的に撃って斬ってしてるみたいだから多分、戦闘慣れしてるっぽい。
「改めて自己紹介だ!私はスターアンドストライプ!名前はキャスリーン・ベイト!見ての通り、アメリカの象徴さ!」
「エクスマキナ、楪希械です。これからよろしくお願いします!」
「心操人使です。まだヒーロー科にも仮免許もとれていませんけど、職場体験を受け入れてくださってありがとうございます。早急に英語はなんとかしようと思います」
「元気があっていいね!2人のことは
マスター、っていうのはオールマイト先生のことかな?オールマイト先生ってデクくん以前にも弟子がいたのかな?じゃあなんでデクくんに対してあんな教え下手というか、慣れてない感じというかそんな感じだったのだろう。
心操くんはアメリカナンバーワンヒーローが個性のことを誉めてくれたのがかなり嬉しい様子。一応逐一私が通訳しているけど、ちゃんと伝わってるかな?機械翻訳はできなくもないんだけどね。人が通訳したほうがいまだに正確で、なおかつ意図が伝わりやすいんだよ。
学んだハロにやらせても多分うまくいかない。言葉の意図を、心を汲むには機械はまだまだ未熟が過ぎるってわけ。だからこそ、人は人としてあるって思うんだよ。
「よし!実は私、サイドキックも候補生も受け入れるのは初めてでね。アメリカは私の個性の秘密を明かしたくないわけだから、だぁれも育てさせてくれないのさ。もちろん手は抜かないよ?ヒトシの力は後で見るけど、キカイが私についてこれるのはさっき確認した」
「俺、楪のような感じにはどうしても無理なので、期待されすぎると重いんですけど……」
「あっはっは!そりゃそうさ。誰にも得意不得意があるもんだよ。むしろ、アンタの個性は私たちができないことをできる特別なもんさ!自信を持ちな」
アメリカの国防の象徴、スターアンドストライプ。彼女はなんとインターンも、職場体験も受け入れるのは初めてだという。それもそうかもしれないけど、こんな自信満々に言い切られるのも気持ちいいくらいかも。
「ま、我らがアメリカもオールマイト、根津校長に頼まれたら形無しってわけだ。それじゃ、スクランブルが起きるまでは自由時間だ。訓練は明日からするよ!今日は宿舎の部屋に行って落ち着いてるといい!運動したきゃbrosが付き合ってくれるさ!私に声かけてもいいよ!」
ん、なんか……画風としか言いようがないけど、スターアンドストライプの様子が、変わった。マッスルフォームのオールマイト先生のようだった彫りの深い顔が、普通の美人な女性の顔に。ん?まさかこれも個性の効果?もしくはオールマイト先生と同じように腹筋力んでるだけ?
夜はパーティーさ!とマントを翻して去っていくスターアンドストライプ、行先は……多分お偉いさんのところかな?とりあえずは……宿舎に行かないと。軍基地だし勝手に歩いたらまずそうだよね?と思ってると残ってくれたパイロットさん、名前はジェフさんが案内してくれることになった。
部屋はさすがに別室だけど、隣同士、一応個室。いかにもピチッとそろえた感じの無機質なベッド、湯船のないシャワールーム、一応ある別室のトイレもあるし、いいかも。キッチンのキの字もないけど。まあ私なら作れるので問題なし!
荷物広げて、あとは心操くんに渡すスーツのナノマシンをチェック、待機形態のメガホンも大丈夫そう。こっちは別の捕縛布100mも平気。よしよし、問題なし。
ああそうそう、相澤先生にメール打っておかなくちゃ。アメリカ到着の報告は済んでたけど、スターアンドストライプとの合流以降は全く何もしていない。インターン先についたと報告……うおお、課題が山のように……。
私と心操くんの留学はあまりにも特殊で、学校を全公欠にしてるんだけど、授業の補填は先生方が作ってくれたプリントになる。心操くんも私もお勉強の成績自体は悪くないからね。さすがに時差がありすぎてリモート授業は無理があるし。
「心操くーん、心操くんやーい」
「なに」
「先生たちから課題届いてたでしょ。せっかくだから一緒にやらない?机と椅子つくるからさ」
「助かる……この部屋そういうのないし。ついでに英会話も教えてくれるとありがたい」
「任せて任せて~~!」
先生たちの採点のためデータでいろいろ送りあうんだけどそこらへんは私に任されてるので腕からガガピー、と課題のプリントを出しながら私は心操くんの部屋に侵入するのだった。
「アメリカ、どう?」
「言葉の壁の分厚さを感じるけど、意外と意思疎通は困らない感じ。受け取り側にかなり頑張ってもらってる感じだから早く何とかしたい」
「おお、真面目。私はねー、事件規模の大きさにびっくりしちゃったよ。心操くんが巻き込まれたアレの件、ネットニュースにしかなってないくらい扱いが小さいし」
「日本だったら全国ニュースじゃないのアレ」
2時間ほどかけて勉強を終わらした私たち。心操くんのベッドに腰掛けた私と、椅子の背もたれに顎を乗せる心操くん。時刻はきっかり午後4時。ちょっと眠くなってくるよね。
「自主練か何かしたいかな。心操くんもどう?」
「勉強で体なまってるし行きたい」
「ジェフさんが言ってた訓練用のアスレチックいこ?使っていいって話だし」
そうだね、と立ち上がる心操くん。ジェフさんが案内してくれた時に、入っちゃいけない場所と入っていい場所を教えてくれて、訓練場は全部入っていいらしいの。射撃場は私しか縁がないだろうけど。
雄英のジャージって便利だよねー。ヒーロー科のジャージは訓練にも耐えられるようある程度頑丈な素材でできてるから汚れにも破損にも強い。さすがに防刃防弾みたいなヒーロースーツみたいな性能はないけどさ。あ、ちなみに心操くんのジャージも相澤先生の合理的計らいによって私と一緒になってる。
「ヒーロースーツはまだスターアンドストライプの許可が下りてないから渡せないけど、はい。新型捕縛布ね。よーし、動くぞー!」
「ありがと、サポートアイテムって海外に持ってくのに申請いるんだね。いつも使ってるやつ持ってこれなかったんだ」
「大体危険物だからねー。海外渡航の時って個性証明書も発効して提出しないといけないからめんどくさいよねー」
すぽん、と束にした捕縛布を心操くんにかぶせて頭を出させる。うーん、言えないけどエリちゃんに服着せてる時みたい。心操くんの無造作癖っ毛ヘアーがちょっと寝てて新鮮。
雑談を挟みつつ宿舎をでて、案内されつつ訓練施設に向かう。途中で売店があったのでミネラルウォーターを買う。おお、アメリカっぽい大きなお菓子がずらーりある!レイズってポテチきになるな~。
「心操くん、アスレチックコースあいてるって」
「お、やった。捕縛布触ってないと落ち着かないんだよね」
「ん?ああ!お前ら確か日本から来たっていうヒーロー候補生か!?使うのか、アスレチック?おーいお前ら!銃仕舞え!子供にかっこ悪いとこ見せんなよー!」
「あわわ。ごめんなさい気を遣わせちゃって!」
「いいさいいさ!スターアンドストライプにサイドキックができるなんて夢みたいな話だしな。俺らもお前らに期待してるんだぜ?」
「だって、心操くん」
「そこで俺に振るのやめない?プレッシャー」
「心操くんこうすると燃えるでしょ?」
私たちに気づいたらしい訓練場を使っていた兵士さんがそこで私たちに訓練場を使わせてくれるように呼び掛けてくれる。拳銃の発砲音がやんで何だ何だとほかの訓練中だった兵士の人たちも集まってきた。
ひぇー、なんか申し訳ない。アスレチックエリアの印象は、雄英の運動場γをこじんまりさせた感じ。雄英が大きすぎるだけでこれでも普通に大きいくらいだ。
ミスを数えといてほしい、と心操くんにお願いされたので頷いて私は下がる。準備運動を済ませた心操くんが一呼吸して、シュバッと捕縛布を投げてビルのフェンスに引っ掛けてそれを使って振り子の要領で飛び出した。
おおおおっ、と軍人さんたちから歓声が沸く。ここら辺国民性の違いというか、みなさん割とオーバー表現している。私は見慣れてるんだけどなー。もしかしたらあれ?超常発現前に人気だったというクモの能力を持った架空のヒーローに重ねてるのかな?最近新しい映画やってるよね、私も好き。
捕縛布をひっかけ、手繰り、引き寄せて鋼鉄のジャングルを飛び回る心操くん。彼が捕縛布を足場に引っ掛けるたびに歓声と口笛の甲高い音が鳴る。しばらくそれを眺めていると、隣で見ていた軍人さんが話しかけてきた。
「ありがとよ、こっちに来てくれて」
「へ!?むしろ私たちはお礼を言う立場で……」
「そういうことじゃねえのさ。スターアンドストライプにサイドキックが居ない話は知ってるだろう?彼女について来れる奴がいないっていうのが理由っていうのは半分嘘で半分ほんとってところでな」
そこから軍人さんが語ってくれたのはどうしてスターアンドストライプにサイドキックがおらず、軍と共同作戦ばかりしてる理由だった。
彼女はサイドキックを作れない、ではなく作らない。国防の要として個性を厳重に管理されているから、相棒から個性の詳細が漏れるようなことがあってはならない。そう国が定めたから。だから彼女はヒーロー活動の基本であるパトロールすらも許されないのだと。
「それが、お前さん方が来たことで少し変わるのさ。特に、アンタだ。おかげでスターもパトロールに出られる」
高そうな葉巻を咥えて火をつける軍人さんに私はその言葉の意味が分からずに困惑する。どういうことだろう……?あ、心操くんおちた。
アメリカと日本の違いはたくさんありそうですね。ではまた次回。感想評価よろしくお願いいたします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ