「私のおかげでスターアンドストライプがパトロールに出れる、というのは……?」
「スターの個性は大っぴらには使えない。それこそマフィア壊滅みたいな大掛かりな作戦以外は細かい制限が入ってるのさ。アメリカ国民が見る彼女は、実際はテレビの中だけ。アンタが抑えたあのヴィラン相手に現れたのは例外中の例外、というかスターの命令無視だよ」
そこを気にしないのがスターのいいところだと思うがね、と明後日の方向に葉巻の煙を吐き出した軍人さんは、仕方がないけど納得はしていない、という顔をしていた。
ミスったけど空中で体勢を立てなおした心操くんが反対の手で伸ばした捕縛布が今度こそターゲットを過たず捕らえる。助けようと一歩出た足を戻した。
「繰り返すがスターは個性を使えない。個性を使えば彼女の研究が進んで結果ヴィランは活気づく。スターはいうなれば核爆弾、使われないことで抑止力となるヒーローでもあるんだよ」
なるほど……オールマイト先生が自らすべてをなぎ倒す平和の象徴足りえたのが、彼の個性が研究してもどうしようもないほどの超パワー、単純で研究しても先がない個性だったからというのもあるのか。
対してスターアンドストライプは活躍の規模、そして実力含めてもオールマイト先生と並べてそん色ないヒーローだと思う。私が入手できる情報は、アメリカから発信されているので国の検閲が通ったものとみるべきだね。
だから、マフィア壊滅、クーデター鎮圧、山脈崩壊阻止、自爆テロ未遂の鎮圧、過激派思想集団の迎撃等々、派手、なおかつスケールが大きい……わかりやすくスターアンドストライプが強いとわかるニュースばっかりだったんだ。
これらは当たり前だけどすべて事実。オールマイト先生と同じく、あったらどうしようもないヒーローにアメリカが見せているんだ。パトロールに出ないでも、抑止力足りえるように。彼女はアメリカ全域で目撃自体はされている。作戦行動という形で。
パトロールに出ればでるほど、個性を使うから詳細が漏れてしまう。国としては国防に直結するのでそれはどうしても阻止したい。だから、ヒーロー活動は限定的にせざるを得ない。日本とは違うアメリカの常識に私は舌を巻いた。日本じゃ、そんなことありえないから。
「そんな状況で来た君ら。世界のナンバーワンだったオールマイトと現代の偉人であるミスターネヅの推薦だ。ふたを開けてみれば、スターについていけると来た」
すうっとまだ4分の3残っていた葉巻が一気に燃えて消える。この肺活量がこの人の個性か、一気に吐き出した煙は、アメリカの国旗になっていた。
「君らが入れば、スターは個性を使う頻度を減らせる。つまりはばれにくくなる、そしてスターがパトロールに出れば、テレビの向こう側だった抑止力は、目の前に現れる。いいことづくめさ」
「だから、あの時スターアンドストライプは……」
「そういうことさ!ひどいな准将、人の秘密をペラペラと」
「悪いなスター。必死こいて俺が許可取ったんだからこれくらい許せ」
脱獄囚のヴィランに会ったとき、私に任せた理由が分かった。私の実力を測ると同時に、無断出撃でヴィラン相手に個性を使用する許可が下りてなかったからなんだ。……ん?ちょっと待って?
「あの、今准将って」
「ああ、言ったよ。ルーカス・E・ゲイツ准将、ここのトップだ」
「よろしくねキカイくん。しがないおじさんだけど、困ったら頼ってくれよ」
「し、ししし失礼しましたぁ!」
「前途有望な若者を揶揄うんじゃないのミスター」
いきなり軍人さんの肩に手をやる形で肩を無理やり組んだのは、ヒーロースーツを脱いで迷彩柄のパンツとタンクトップになった状態のスターアンドストライプ。彼女の口から出てきた聞き逃せない言葉、准将、准将だって!?
慌ててルーカスさんの軍服を見てみると、そこにある階級章には、銀の一つ星!マジでお偉いさんだ!慌てて直立不動になる私に大笑いのスターアンドストライプ、一応下調べしてきたけどアメリカ軍なんて私とはほぼ無縁だから気づけなかった!
「そういうことを求めてこういう話をしたわけじゃないんだからやめてくれ。要は、ギブアンドテイクなのさ。今回のことに関しては特に。君らはスターに鍛えてもらう。スターは君たちに注目を浴びてもらって動きやすくする。ウィンウィンだ」
「だから、ネバダなんだよ。ここ最近、きな臭いからね。
「それで、直接町に姿を見せれば……」
「頭が働く奴は引っ込むし、バカが暴れてもアンタたち二人に対応してもらえる。危なかったらもちろん助けるさ。でかいのが仮に釣れたら……私が、SMASH!ってわけ」
引っ込んだ奴は地元のヒーローに張ってもらう予定だよ、と続けるスターアンドストライプに君が我慢できるとは思えんのだがなというルーカス准将。まるで往年の友達みたいな距離感だ。スターアンドストライプは確か42歳だったかな?見た感じ同年代か准将が少し上な感じだ。
「仲がよろしいんですね」
「そりゃあそうさ、ルーカスはもう引退したけど私の最初の
「手のかかる妹だよ全く。アグバー長官に言い訳するのは骨なんだぞ」
「一緒に怒られるから見逃してよ。それよりも、ヒトシかなりいい動きするね。入り組んだ路地裏、それに住宅街でも頼りになりそうだ」
視線の先には、汗だくになった心操くんがビルの上から飛び降りて、捕縛布を街灯に引っ掛けて減速し地面に降り立ったところだった。ヒューヒューと喝采が飛び交っている。心操くんは照れ臭そうに捕縛布に顔の半分を埋めて隠してこちらにやってきた。
「スターアンドストライプ!?」
「スターでいいよ、キカイあんたもね。確かイレイザーヘッドが同じ武器を使ってたね、ヒトシは彼と知り合いかい?」
「イレイザーは、その……師匠です。それよりも、知っているんですか?」
「彼は有名だよ。ヒーロー界隈ではね。メディア避けが徹底しているけど、作戦行動を共にしたヒーローたちからは評価が高い。そもそも雄英所属なんだからある程度情報は入ってくるんだよ」
「うわー、相澤先生そういうの嫌がりそう……あ、心操くんミス13回ね」
「イレイザーに言ったら5回以下にしろって言われるな……」
「ちょうどいいや、ヒトシまだ動ける?組手してあげるよ、それ使ってもいいから」
「いいんですか!?お願いしますっ!」
えー、いいなー心操くーん。画風が違くないってことは多分?いまスターは個性を使っていないということなんだろうけど、それでも絶対強い。
そうして始まった心操くんとスターの組手は、さっそく捕縛布を手繰った心操くんの初撃を難なく躱したスターが距離を一瞬で詰めてズダンッ!と目にもとまらぬ速さで彼を地面に投げた。叩きつけの瞬間に引いて威力を減らしたうえで心操くんも受け身取ったので大丈夫そう。
「うーん、思った通り近づかれると脆いね。ある程度仕込まれてるみたいだけど……」
「スターと一緒にされちゃ世話ねえや!」
「うっさい
いいぜー、とオッケーサインが所々の軍人さんから出てくる。スターからは一言だけ、制圧してみなと肩を叩かれて終わり。えっ!?あの、なんか実銃構えだしてるんですけど!?
ヒトシさがるよーと首根っこつかまれてぷらーんとなった心操くんが憐みの目を向けてくる。中身はペイント弾?そっかーよかったーじゃない!当たったら痛いやつ!自分が使うからよく知ってる!
ドバババ!と撃たれるペイント弾を躱して、接近。ナイフを腕で受け止めて銃をはたき落としパワーで無理やり投げる。瞬間、作っておいたグレネードを投擲。即席だけど!
げぇっという顔をした軍人さんたちと爆発する煙幕グレネード。煙で視界を封じた隙に両手をメリクリウスに変じて攻勢をかける。触手状に変形したメリクリウスが投網のように広がり正確に銃だけを落とし、ついでに両手首両足首に巻き付いて拘束具代わりになる。
おお!というスターの声をよそに、ひとまとめにしてセーフティをかけた銃の山がメリクリウスからこんにちはし、拘束された軍人さんはワォの一言。スターは大きくパチパチと拍手をしてくれた。
「これは直接私が相手しなきゃだめだね。准将~~、私が本気だせる場所よろしく」
「無茶言うんじゃねえよ」
3本目の葉巻に火をつけて一気に吸うルーカス准将、もしかしてその一気吸いって個性とかじゃなくて素ですか?ストレスですか?スターの無茶ぶりのせいで?違うよね?
あはは、と笑うスターアンドストライプ、なんかテレビのイメージとちょっと違うような気がする。もっとこう、凛々しかったんだけど、今の彼女はどこか幼く見える。そうだな、ああ!ニッコリ笑うオールマイト先生にそっくりなんだ!マッスルじゃなくて、トゥルーの方の雰囲気に!納得した!
わいわいがやがや、とそこかしこで大声で話したり、お酒を飲んだりする人の声が聞こえる。どでん、私が持った紙皿に追加される分厚いお肉、目の前で赤赤と燃える豆炭、網の上で迸る油。いい笑顔のスター。
「食べな食べな!ここじゃ新入りの歓迎はBBQって相場が決まっててね!」
「そうなんですね……これが本場のBBQ……心操くん思ってたけどよく食べるよね」
「むしろヒーロー科の人たちたまに食堂で見るけどあれで足りるの?」
「うーん、どうなんだろ?私は自分で作って持ってくからなあ」
心操くんが肉の山を片付けながらヒーロー科の食堂事情について聞いてくる。私はいつも通りよく食べるので例外としても、心操くんもかなり食べていると思う。
食べっぷりならえーくんに並ぶかも。デクくんや轟くんよりは確実に食べてる。百ちゃんと同じくらい?呵々大笑のスターは分厚い肉をさらに鉄板の上に並べてピットの蓋を閉じ、コーラの瓶をつかんで私と心操くんの間にドカッと腰を掛けた。
「ま、成長期だしいくら食べてもいいさ。それよりも、明日からの動きを説明するから話半分に聞いて」
私と心操くんがその言葉に紙皿を置いてピリッと緊張感を持つ。固いなあ、日本らしいねというスターはそのまま説明に入ってくれた。
「まず、何でネバダなのかっていう話からするよ。理由はただ一つ、一番治安の悪化が激しいからだ……なんでだと思う?」
「なんで……砂漠に身を隠しやすいからですか?」
「それもあるね、ヒトシはどう思う?」
「…………ラスベガスがあるから?」
「Great answerだ!そう、ラスベガス!カジノ、マフィア、裏社会のメッカになりつつあるのさ。それで、ここ最近妙な薬が出回っている。日本にも流れてるときた」
「
「Japaneseヤクザにも流れてるって話だ。で、今そのマフィア、あるいはグループはネバダのどっかにいる。最悪そいつらは叩けなくても、ラスベガスの治安は守らないといけない」
それで、抑止力として私と心操くんを伴い、スターはラスベガスにパトロールに行くっていう話なのかな。今、潜入を得意とするヒーローが尻尾を掴みに行ってるらしい。スターが主要な取引場所になってるラスベガスに行けば慌てふためいて尻尾を出すかも、って感じ?
つまり、ローラー作戦のローラーが私たちなのか。おお、やる気が出てきた!結局インターン、中途半端だったしねサー・ナイトアイ事務所!これが私の3度目の正直!
「で、だヒトシ。個性の使用許可は私が出す。キカイのほうが場慣れしてるとは思うからフォローをしてもらうつもりでどんどん動け。縮こまってると何もできないぜ」
「わかりました!」
「いい返事!ミッションスタートは明日の朝10時からだ!それまでは、よく食べて!よく飲んで!よく眠りな!」
バッスンバッスンとよく筋肉がついた腕にふさわしい威力で私と心操くんの背中を叩くスター。なんだかとてもうれしそうで、私も嬉しくなってくる。
あ、BBQ奉行としては何もしないのもなあ、と思うんだけど久々に食べる他人に作ってもらう食事もいいかな。でも、お皿にあふれるほどのお肉は……お野菜もください。あ、相澤先生からメール。ああ!課題ふえてる!
トリガー薬も絡んできます。今回主人公たちは雑魚狩り役で、スターはおまけ程度です。けど、パトロール出れるやん!とテンション上がってる。多分スターはオールマイトと同じことしたがってると思うの。
ではまた次回。感想評価よろしくお願いいたします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ