個性「メ化」   作:カフェイン中毒

129 / 138
127話

「おはよ、心操くん。気合入ってるねー」

 

「降ってわいたチャンスだから。どうしてもつかみたいんだ」

 

「いい心がけだねえ。そんな心操くんにはお姉さんが誉めてあげちゃうぞ!」

 

「一体全体どんなキャラしてるの……同い年でしょ、俺たち」

 

 たらふく食べたBBQの翌日、午前9時30分に、身支度を済ませた私は宿舎を出て集合場所に歩いてきた。隣の部屋の心操くんはすでに外に出てたみたいだったので、探してみると彼は集合場所近くで軽く運動をしていた様子。

 

 私の軽い小ボケにやれやれと返してくる心操くんだけど、声には少しだけ緊張が走っている感じがする。そりゃそうだ、私とかA組のみんなは度重なるアクシデントのせいで肝が据わってしまったけど彼は、これが初めての実戦だから。

 

 対して私は朝になって相澤先生から送られてきたエリちゃんのビデオレターのおかげでものすごくテンションがあがっているのだけど。今なら何でもできる気がする。核爆弾だって食べちゃうぞ!

 

「ん、それじゃあ心操くんにお待ちかねのものをお渡しするね、じゃじゃーん!」

 

「まってました、っていえばいい?……実際待ってたけど」

 

「お待たせしてごめんね~。正真正銘、心操くんのためのヒーローメガホンだよ!」

 

「マジで作ったんだ……」

 

 マジで作りましたとも!私が後ろ手に隠していた黒の下地に紫の色が入った拡声器、名づけてヒーローメガホンを心操くんに渡す。コンパクトに変形していたメガホンは折りたたんでいた取っ手を展開して心操くんの手に収まる。

 

「コマンドコードは、着装!変えたかったら私に言ってね!」

 

「……ちゃ、着装」

 

 恥ずかし気に心操くんがヒーローメガホンにコマンドを吹き込むと、認識したメガホンがナノマシンを放出し、彼の体に定着、同時に今着ているジャージをメガホン内に超圧縮して格納してしまう。

 

 黒と紫。イレイザーヘッド、相澤先生のシンプルなヒーロースーツを参考にしてエッジショットのエッセンスをちりばめたヒーロースーツが心操くんの体に定着する。別枠で超圧縮していた超振動ナイフ3本、ゴーグル、ペルソナコードがそれぞれ定位置に配置され、ヒーローとしての心操くんが完成する。

 

 腕を見て、足を見て、手を握って動かして、ペルソナコードを口から外した心操くんは初めてまとうヒーロースーツに何を言っていいかわからない様子だけど、すごくうれしそうだっていうのは見ている私に伝わってくる。正直それで充分かな。

 

「どう、動きにくくない?」

 

「うん、俺はやっぱりすごいとしか言えないけど、全然動きやすい、ジャージよりも」

 

「ふふ、その感想が一番うれしいよ。雄英のジャージに勝った!」

 

「それでいいの?」

 

 いいんだよ~雄英のジャージ、国立のヒーロー育成校、しかも名門中の名門の指定ジャージに勝てた、つまりこれはサポートアイテムの技術者としてはある意味で偉業なのです!割と冗談じゃなくこのジャージやばい技術が平然と使われてたりするんだよ。破損率高いからその割にお安いんだけど。

 

「ヘイヘイヘイ、なんだい今のは?日本っていうのはいつの間にかヘンシンヒーローがスタンダードになっちまったのか?良いもの着てるじゃないかヒトシ!」

 

「スター、おはようございます。えーと、これはですね……デビット・シールド博士が発表したナノテクですね。ほら、実用化に成功したっていうのの試作品的な」

 

「あー……なんか長官が何とかして開発者をI・アイランドからアメリカに戻せって怒鳴ってたやつか……ん?なんかおかしくない?」

 

「………………発表者はシールド博士ですけど、開発者はほぼ私です……」

 

「ミスターネヅから国に対して引き抜き不許可の書類がいくつも出てきたのはそういうことか。アンタ帰ったら日本版の私にならないように気を付けなよ。私はある程度好き勝手できるけど、アンタは多分我が儘言うのは無理そうだし」

 

 ややこしい話なんだけど、ナノテクは理論提唱者がシールド博士で、実証、開発、実用化は私というなんともめんどくさい構造になっている。すごいのは私の個性で実用可能な理論をはじき出したシールド博士だ。理論が通ってなきゃ私の個性で作ってもただの金属の粉だっただろうし。

 

 私の技術者としての身柄を守ってくれてるのは主にオールマイト先生、校長先生、シールド博士にI・アイランドの名だたる教授たち。あと特許が国に囲われたら困るいくつかの企業。特許関係に無知だった過去の私よ、口座の金額は絶対に覗いちゃだめだよ……もうすでに研究所くらいなら建てれるよ……。

 

 今やっている別の研究、ナノテクから発見した未知の技術もあるんだけど、こっちは100%私が開発することになる。だってまだ誰にも言ってないし、ナノテクですら持て余すだろう今の社会に伝えたらヤバそうだし。

 

 ナノテクはそりゃ初見の人しかいないから、スターもかなり興味津々で心操くんのヒーロースーツを見てる。私がハロに封じてあったスーツを身に纏うと、ほうほうと私の方へ。バスケットボールのようにハロを回転させるスターは

 

『ヤメロー、ヤメロー』

 

「ははは、わるかった!んじゃあ準備できたみたいだし、早速行こうか、欲望、ギャンブル、ついでに観光、アメリカが誇る歓楽街に!」

 

 

 

 

「ところでさー、エクスマキナが使ってるナノテクのスーツ?私にも作れないかい?」

 

「日本語、喋れたんですね。あとナノテクの管理者はシールド博士なので……ごめんなさい」

 

「あっはっは!(マスター)も英語、喋れるじゃないか。まあ、英語で話すと気取られるし、お前たちの指示伝達も早く済む。ヒトシに訳してるとワンテンポ遅れるだろ?」

 

「それは、すいません」

 

「気にしない気にしない。むしろヒトシは頑張ってる方だろ?ただ、建前自体は留学だからね。英語はガンガン使い倒しな。さて、久しぶりのパトロールだ」

 

 目の前に広がるのはネバダの荒野の中にある摩天楼。真昼間なのにネオンがビカビカ、鳴り響く雑多なBGM、そこかしこにあるカジノの看板。そして、空気に乗って漂ってくる、マリファナの匂い。勘違いしちゃいけないけど、合法だ。初めて嗅いだけど、成分分析で大麻じゃん、と顔をしかめる。

 

 軍用ヘリに乗せてもらった私たちが摩天楼の中でも一番高いビルに、飛び降りる。CASINOという看板のNの文字の上に着地したスター、私、引っ掛けるものがなかったので私が抱えた心操くん。

 

「ヒーロー3項、わかるね?救助、避難、撃退。(マスター)はそのうち二つ、救助と撃退に特化したヒーローだった。私だったら撃退だ。他二つもできなくはないが、任せた方が効率がいい」

 

「エンデヴァー事務所だと、3項すべてこなす方針だったと思いますけど……」

 

「できるなら、そうしたほうがいいからね。ただ、アメリカは日本ほどお行儀がよくなくてね。逃げろっつってんのに銃が出てくるんだから、逃がす前にヴィランを張り倒したほうがいい。流れ弾で混乱が増えるから」

 

「治安、悪いな……」

 

 確かに、と額にゴーグルを上げた心操くんの感想に私は頷く。日本だと銃は規制されてるもので、個性も禁止だから基本市民ができるのは避難なんだけど、アメリカの自立心が強い市民たちはそこに反撃が加わるんだ。3項どれかに特化したヒーローは珍しくないけど、アメリカではそれが極端に撃退に偏ってる感じかな?

 

 さ、行くよ。と眼下にあるスクランブル交差点の一点を見つめるスターの視線の先にあるのは……車?いや……後部座席!遮光ガラスの先に、銃を突きつけられている女性の姿が。

 

「見てるから止めてきな!ミスしたら私が何とかするから大胆にね!」

 

「心操くん、私が止めたら運転席の人に洗脳を!」

 

「了解!」

 

 飛び降りて、心操くんのゴーグル内にターゲティングを済ませた車と中身の女性を見せると彼もそれで気づいたらしく私に続いて飛び降りる。

 

 空中で心操くんをキャッチした私は指先を伸ばし、その部分だけメリクリウスに置換し、一瞬蒼雷を奔らせた。ほぼ無音のレールガンは、狙い通りに車の後ろのトランクを打ち抜いて、内部をナノマシンで侵食し、メリクリウスの体積を増やし重要パーツを溶かして車を止めてしまう。

 

「なんだぁ?」

 

「おい」

 

「ああっ!?…………」

 

 ナイス心操くん!犯罪者心理としては、声をかけられたら興奮すればしているほど反射的に返事してしまうよね。そこをついて捕縛布で街頭をひっかけてドアから出てきた男の真後ろから声をかけた。そして、あっさり洗脳に落ちる。

 

「動くな!こいつの頭を撃ち抜くぞ!」

 

「もうその銃、撃てないよ」

 

「は、なにを…………え?」

 

 車を伝ったメリクリウスが、銃を侵食して自分に同化させてしまっている。女性のこめかみに突き付けられた銃が銀色の水になってドロリと溶け落ちたのを見て唖然とするヴィラン。

 

 私の後ろから捕縛布が伸びて、男の額を激しく打ち付ける。後頭部をドアにぶち当てた男はそれで悶絶。さらには女性をもう一枚捕縛布で確保し引っ張る心操くん。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、ええ……ありがとう。さっき路地裏で急に攫われて……」

 

「終わりだな」

 

「ふざけんな!こんなとこ…………」

 

 うーん、話術が達者になってきたね心操くんは。私に話しかけるようにして相手に意識をむけつつ挑発し、洗脳にはめる。洗脳に、言葉の壁は関係ない。無視されたと感じたもう一人のヴィランはそのまま洗脳されて御用。

 

 誰かが通報してたのだろう、いつの間にか聞きなれないサイレンの音がそこかしこから聞こえてきた。それで完全に助かったと思ったのだろう、人質にされていた女性は大きく息を吐いて座り込む。

 

「拘束これでいい?初めてやったから不安」

 

「うん、大丈夫。両手足ちゃんとしばれてるよ。縄抜け対策もばっちり」

 

「ここまでするのって感じだけど」

 

「一回ステインに縄抜けされててさ。対策しないと相澤先生に怒られるでしょ?」

 

 こん、こん、と二人組ヴィランの頭を叩いて洗脳から解く。ハッと正気に戻った二人は、いつの間にか拘束されているのと、警察のパトカーがあたりを囲んでいるのを見て、がっくりと肩を落とした。相手が悪かったね。

 

「できたね、心操くん」

 

「……なにが?」

 

「ほら、ヒーロー科編入の時できなかったやつ。ヴィランも、要救助者も無傷での終了。本番でしっかり成し遂げた!」

 

「……そっか」

 

 あ!ペルソナコードで口元の表情隠すのはずるいぞ!あーっ!ゴーグルまでかけちゃって!笑ってる顔くらい見せてよー!とぶんぶん心操くんを振り回しているとこっちを看板の上から見てたスターが飛び降りて着地した。

 

「なんだいまったく、私はお払い箱だね。優秀なのも考え物と日本じゃ言うらしいけど、今わかったよ。ヒトシ、グッジョブ!エクスマキナ、グレイトだ!」

 

 存在感マシマシ、画風が違うスターアンドストライプは、心操くんの頭をぐしゃぐしゃと撫でながら、私にグッドサインを送ってくれるのだった。

 

 

 

 

「これも、これも、これも……ぜーんぶ、個性誘発因子(イディオ・トリガー)入りのカクテル……」

 

「無針注射器だけで何本あるんだこれ……」

 

「残念ながらこれがアメリカの現状だよ。いや、ここまであるのはかなりひどいけどね。ラスベガスの汚染が止まってないんだ」

 

 純ブースト薬、27本、粗悪品、54本、やばい麻薬との混ぜ物、100本超、これが3時間ラスベガスを練り歩いた結果。個性誘発因子(イディオ・トリガー)が混ざった違法薬物の数々だ。しかも、ここまで堂々と持ち歩いている人がいるなんて。

 

 なんというか、やばい。言っとくけどこれ全部違法薬物だよ?普通に、なんか様子が変な人がいるから、職質してみるとでるわでるわ無制限に。お守り代わりに持ってるって人が7割くらいだったけど、さすがに怖くなってくる。

 

「こりゃ、ワールドヒーローズミッションの参加も再考しないといけないね」

 

「なんですか?それ」

 

「あー、まだまだ先の話だけどね、この薬の大本組織をぶっ潰そうって話が世界規模で話し合われてるのさ」

 

 ブースト薬の大本?それってアメリカとかメキシコとかの麻薬カルテルかマフィアじゃないのかな?日本のヤクザは絶滅危惧種だけど海外のそういうのはいまだに元気だし。

 

「それよりも、だ。事件だ、いくよ!」

 

「はいっ!」

 

「はい!」

 

 押収した薬を警察に預けて、スターの無線に入った事件の概要を聞く。え?また薬キメた酔っ払い!?気軽にブースト薬使いすぎじゃないかな!?普通に命に係わるよ!?




 心操くんの個性は呼びかけは言語関係なしにはまりますが命令するには相手が理解できないと行動させられません。具体的には英語しかわからない人に使う場合は呼びかけて返事させれば洗脳状態におけますが例えば歩けと命令するには英語で命じる必要があります。

 作中で匂わせた新技術は楪ちゃんファイナルフォームのことです。いつ出せるかは未定。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。