個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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128話

 アメリカに来て1週間、訓練とパトロールの繰り返し、確保した薬物は青天井、かなり充実した日々を過ごしている私はいま……天変地異が過ぎ去った後といわれたら納得してしまうネバダの砂漠にて、倒れ伏していた。

 

「いや、アンタ想像以上だよエクスマキナ。そんじょそこらのプロ、アメリカ日本どころか世界探してもアンタに真正面から勝てる奴はほとんどいないだろうね」

 

「真正面から負けたばっかりなんですけど……」

 

「そりゃあ私はアメリカ背負ってるからね。(マスター)の推薦といえどもおいそれと負けてやるわけにはいかないさ。にしても……派手にやったねえ」

 

「何してもいいって言われたらそりゃ……こうしますよ」

 

「地形変わってるじゃないかい」

 

 そうなんです。変えました、3割私、7割スターくらいの割合で。ネバダの砂漠の砂丘が4つほど消し飛びました。うち一つはガラスになってます。私のビーム兵器で。模擬戦で地形がひどいことになっちゃったあ。

 

 だって、だってスターが反則じみたことばっかりしてくるから全力で応戦しただけなんです!なんでビームを素手で弾けるどころか投げ返してくるの!?とっさに磁気で捻じ曲げたから何とかなったけど場合によっちゃ私消し飛んで……同じ攻撃してたね、人のこと言えない。

 

 ビーム効かないし、火薬の弾丸も効かないし、なんだったら音速の3倍の速さのレールガンですら弾いて見せた。というかテニスがごとく打ち返してきたんだよこの人。

 

「何度も言うが、大したもんだよ。私に本気を出させてるんだから、というか一発まともに食らったしね。次からはクリーンヒットが増えそうでいやだよ」

 

「あの大きいのは反則ですよぅ」

 

「私としてはフィスト・バンプ・トゥ・ジ・アースでつぶれなかったそのスーツこそ反則といいたいね」

 

「つぶれてますよ。バイタルエリアは守ってますけど、つぶれてもとに戻ってるだけです」

 

「十分おかしいからね?」

 

 私が着ているアルビオンを指さすスター。大怪獣ヒーロー大決戦とも言うべきネバダの砂漠の惨状には目をつぶれないとは思うんだけど、重りをつけてつぶることにして。反則だ、新秩序(ニューオーダー)という個性は。

 

 この模擬戦で存分に見せてもらったけど、概要レベルだった理解が詳細レベルまで行ったと思う。彼女の個性は、ルールを後付けする個性だ。

 

 この後付けっていうのがミソで、詳細は彼女の口やアメリカからは絶対に聞けないから私の推測になるんだけど、例えば未知の物質を作り出してそこに新しくルールを付加するなんて無法はおそらくできない。

 

 でも、私が作った新しい物質なんかには彼女の個性は適用される。トリガーは、名前だ。その物質、あるいは人間、生き物……正式名称を発音し、触れる必要がある。それさえ済ましてしまえば、弱体化、あるいは強化、もしくは新たな性質の付加なんかは自由自在だろう。

 

 私が彼女に一撃くらわしたのはそこをついたもので、正式名称とは別の組成のメカを作って、私が発話した名前を使ってルールを付与しようとしたスターだったけど、別物質だったからルールは適応されず、一撃入ったわけだ。

 

 これもしかしてビームでも応用できる?荷電粒子、プラズマ砲、重粒子砲、ビームって実は多種多様なんだよね。ビームのひとくくりで対応されるんだろうか?いけない、気になる。技術者の側面が覗いちゃう。

 

 で、一撃食らわしたまではよかったんだけど、そこで改めて本気を見せたスターに私はコテンパンにやられたわけ。まさか空気を自分の100倍に固定して攻撃してくるとは思わなんだ。

 

 質量はないけど、硬さと大きさは正義なんだよね私がいつもやってる通り。んで、ラスト極めつけに付加されたルールは[楪希械に接続されているメカは機能しない]。そんなことやられたらもう駄目だよ。アルビオンどころか手足も動かなくなっちゃうんだもの。

 

 強化には、おそらく上限があるんだと思う。というのも無制限なら身体強化でワンフォーオールじみたことをしてこないのが不思議だから。オールマイト先生を師としてリスペクトしているスターのことだ、同じことができるならまずやるはずだ。

 

 むっひー、どうにもならんねこれは。勝てるビジョンがいまいち思い浮かばない。まずルールがいくつ設定できるのかを見抜かないことにはどうにもできない。そもそも戦闘経験値が違いすぎる、たぶん殺したことも1度や2度じゃないと思う。アメリカのヒーローは、日本より殺害に移るまでがかなり簡単だから。

 

 なるほど、私はルールを拡大解釈して新技術で攻めるわけだけど、スターはルールそのものを作ってしまうってわけだね。同じようでいて、かなり違う。だけど、大枠では同じようなことができる。

 

 例えばビームをはじくのだって、私でもできるし、なんならまげて投げ返すのもやろうと思えばできる。それでも、発動速度が違いすぎるよねえ。口に出して触れればオッケーとは何ていう無法。さすがはアメリカナンバーワン。

 

「さって、午後はまたラスベガスだ。そういえば日本から来たヒーローも今日からパトロール入るらしいね」

 

「え、日本から私たち以外に?」

 

「キャプテン・セレブリティ、アメリカが誇るお騒がせヒーローの元サイドキックだったかな。確か名前は……ザ・スカイクロウラー」

 

「…………もしかして、4年位前に渡った人ですか?ネット記事を見つけました。鳴羽田ロックダウンの立役者……」

 

「さぁ、どうだろうね。なにせ私は噂話を聞いただけだから」

 

 砂が引くようにボックス型に圧縮されたナノマテリアルに戻ったアルビオンを腰に吊り下げ、インターネットで検索した記事に記されてた名前を出すと、スターは破れたマントを翻して首をすくめる。

 

 とりあえず聞いてみよう、と私は記事の中にイレイザーヘッドの名前を見つけたので、ちょうど夜に差し掛かっている日本に連絡を取ることにした。ドン引きしてこちらにやってくる心操くんに頬を膨らませてみせると、彼は捕縛布で口を隠してそっぽを向いた。なにそれー!

 

 ご飯ごっ飯ーと軍の食堂で心操くんと並んで食事を受け取る私。アメリカってなんでもビックサイズらしいけど私にはちょうどいいや。チリコンカンに、タコスに、マカロニチーズ。あと原色のジュースとケーキ。なんか栄養が偏ってるようなそうでないような

 

 まあいいか、と席に着いた私は目の前に仮想画面を表示して報告がてら相澤先生に連絡を取ることにした。スターが言ってた彼のことが気になるし。会えたらどう接していいかわからないしー。

 

『ザ・スカイクロウラー?ああ、あいつか。知っているが……何でその名前が出てきた?』

 

「なんでも、スター曰く今日の午後あたりに私たちが行くパトロールでかち合うかもしれないとのことで。4年前の記事にイレイザーヘッドをはじめとしてそうそうたる面々の名前があったからご存じかなと。ご飯食べながらすいません」

 

「なんか……失言ばっかしっていう印象ですね。英語わかってるのかこれ……」

 

『ああ……まぁ、なんだ……お前らに分かりやすく言えば緑谷が近いだろうな。度を越えたお人よしだ』

 

「あの、一気に不安になったんですけど俺」

 

「デクくんみたいにって……その気になったら手足使い捨てたりとか……」

 

『言いたいことはわからんでもないがそういう意味じゃない。まあ、悪いやつではない。ヒーローとしての経歴は異色かもしれんが、間違いなくお前らの先輩だ。吸収できるところはして来い』

 

『おかあさん、こんばんは』

 

「エリちゃーん!寂しくない!?私は会えなくて恋しいよぅ!」

 

『おい』

 

 詳しい話はよく分からないけど、相澤先生曰くちゃんとしたヒーローのようだ。味が濃ゆいチリコンカンをスプーンで掬って口に含んでいるとひょこっと相澤先生の膝に乗ったエリちゃんが画面に登場したので私は話題を投げ捨てて彼女に夢中になった。

 

 うーん、まだまだ全然離れて短いのにこんなに恋しくなるなんて!というか心操くんがいるからまだいいけど彼が帰っちゃったら本格的に寂しいぞ私!また少し角が伸びたエリちゃんに今日あったことを聞いてみる。

 

 え?なに?お父さんが模擬戦でデクくんを粉砕して爆豪くんを投げ飛ばし轟くんを沈めた後にえーくん息切れに追い込んだぁ?マジかお父さん、まあパワーと硬さは戦闘形態の私以上だしなあ。単純に戦闘が地味すぎて人気でなかったんだけど。

 

 あの人ヒーローに復帰するよう頼んでくれないかと割と真面目な顔で言う相澤先生に頼んでみたらノリノリで復帰するんじゃないですかねと返して、私はタコスをほおばる。午後が楽しみだなー。

 

 

 

 

 

 

「ミスタースマイリーだって。デクくん面白いことになってる」

 

「爆笑して行動不能って……わらえないな」

 

「自由が利かない洗脳みたいな感じだね。返事しないでいい分こっちもやばいかも」

 

 ラスベガスのビルの合間を私は空を飛び、心操くんは捕縛布を看板に引っ掛けて振り子運動で移動しながらデクくんから送られてきたメールを見て雑談する。

 

 私たちの上ではビルの天辺をジャンプするスターの姿がある。ここ1週間のパトロールの成果は如実に出ていて、ラスベガスの犯罪率が40の大台から30を切り始めていた。スターアンドストライプがラスベガスにいるという事実が広まったからか、どんどこラスベガスで悪いやつが捕まってるみたい。

 

 信じられないと思うんだけど、10分に1回この町ではヴィランが出る。事故とかじゃなくて、薬をキメてハイになっちゃった人ね。日本ではこれを突発性ヴィランというのだけど、アメリカでも同じ扱いなのかな?

 

 日本だと、トリガー……つまりはブースト薬は割と遠い存在で、それこそ死穢八斎會とかのおヤクザさんたちとか、裏社会のふかぁいところに精通してないと手に入らないものなんだよね。あ、粗悪品は別だよ?あれはむしろ裏組織がばらまいてるからね。

 

「でかいのが出たよ!」

 

「嘘だろ……」

 

「舌が真っ黒……ブースト薬の常用者だ」

 

「さすがにあれは私がやる!エクスマキナ!動きを止めて!ヒトシは隙があったら洗脳を試す!」

 

 40階建てのビルと同じくらいになった毛むくじゃらの人……というかゴリラ?個性が多分類人猿とかそれこそゴリラの個性持ちがブースト薬を使ったのだろうか?巨大化する個性だったのかもしれない。

 

「おい!とまれ!おいっ!……だめだ、意識が飛んでる。俺に返事をしてない」

 

「だいぶキツいやつ使ったのかな……!おっけー!動きとめる!パラライズシフト!スタンバイ!」

 

『スタンバイ!スタンバイ!』

 

 心操くんがメガホンをペルソナコードに当てて大声を出して洗脳にはめようと動き出す。ブースト薬常用者の特徴である真っ黒な舌が確認できるほどの大口を開けて何事かを叫んでいるヴィラン。

 

 ヒーローメガホンの中身は、震えをキャッチしやすく、さらには増幅する新開発の特殊金属を採用している。つまりは、洗脳の効果を保ったまま、大声を出せる道具でもあるんだけど、肝心かなめの洗脳はヴィランには効いてない。

 

 心操くんが苦々し気な顔で相手の意識が飛んでるから洗脳が効果を発揮しないことを教えてくれる。無傷捕縛は無理かぁ!と私はビット兵器を腕から製造、一気に飛ばす。

 

 最近開発した当たると直撃部位の筋肉が硬直するレーザーを搭載したビットを飛ばして、ハロに指示を送る。一斉射、赤い光線がヴィランのそこかしこを貫いて、ひきつったように筋肉を硬直させて動きを止める。

 

「スターッ!」

 

「よぉし、よくやった![空気は私の腕の50倍の大きさで固まる]!離れてなさい!これが私のSMASHさ!」

 

 スターの個性によって、彼女の背後の空気が巨大な腕の形にまとまる。大きく振りかぶったスターのスマッシュは、吠える相手の顔面に狙いを定めた。

 

「フィスト・バンプ!」

 

SKGD(超・気合をギュッとしてドーン)!!!!!」

 

 はぇ、と声が漏れた。顔面を見事にとらえたスターのパンチとほぼ同時に同レベル、いやそれ以上の威力かもしれない衝撃波が突如として発生した。

 

 すぐさま確認、観測した衝撃波、いや力場そのものといっていい何かを発したのは……パーカー姿の男性……?いや、あれヒーロースーツだ!ということは、ヒーロー!?

 

「ってやっば!倒れこんだらビルが!」

 

 手加減してたスターのパンチだけならともかく、同威力以上の攻撃を入れればさすがに吹っ飛ぶ。私は大慌てで飛ばしていたビット兵器から超硬質ワイヤーを飛ばしてヴィランに巻き付けた後、さらに自分につないで、スラスターから青を超えて紫色の爆炎を発しながら全力で引っ張る。

 

「こ、こ、こ……!根性~~~~!!!!」

 

「ごめんっ!手伝う!」

 

 さっきのパーカーのヒーローは事態を認識したらしく私のそばに飛んでやってくると、そこで足から爆発的なほどの不可視の力を発して、同じようにワイヤーを引っ張り出した。

 

 左頬に走る傷跡が妙に印象的な男のヒーローのおかげで、なんとかヴィランはその場に崩れ落ちるような形で、気絶に持っていくことができた。にしても、だれだろう?




 出しちゃった☆

 誰だろな、わからないなあ(棒)火力だけなら規格外、楪さんです。バイタルポイントさえ守れば手足潰れても無問題。それではまた次回。長くなりそうです、それではいつか。

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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