「それじゃ、やろうか」
「はい!」
「ウッス!」
「了解です」
スターの合図で同時に私たちは飛び降りる。剛翼をはばたかせるホークス、空を蹴るスター、足からリパルサーを噴出して飛び立つ私と私に抱えられたえーくんの順番で、まだ見えない列車を追いかけ、眼下の線路を頼りにして空を飛ぶ。
彼我の距離は30キロ前後、本当にいまでは珍しい石炭式の機関車なのか石炭が焼ける匂いと黒々とした煙の軌跡が見えてくる。しかしまあ、機関車なんてすごい年代物を犯罪に使うだなんて私じゃもったいなくて思いつかないよ。だってそれって間違いなく博物館にあってしかるべきものじゃないかなあ。
「見えてきたね。作戦通りにいくよ、ミッションスタートだ」
「俺がフォロー入れるから、エクスマキナも烈怒頼雄斗も自由に動いていいよ。じゃ、やるぞ!」
ホークスが隣から励ましてくれるのに二人して頷いて私は後ろから、大きく空を蹴ったスターが加速して回り込むように前から速度を上げてレールの先に進む。
「えーくん!硬化して!撃ってきた!」
「こいつかぁ!!」
ドガァン!という音がして両手がふさがった私の顔の前に手を差し出したえーくんの手が火花と衝撃波を発した。私が展開したピンポイントバリアより前に差し出された手に握りつぶされているのは、50BMG弾……つまり対物狙撃銃に使われる弾薬だ。
「えーくんやばっ……」
「いやこんなもんよりお前のビームの方がやばいぞ」
「それもそっか」
「そうだぞ」
そうだった、そういえばえーくんはもうすでにレールガンくらいまでだったら弾けるんだった。物理じゃもうどうしようもないんだけど私のヒーロー。搦め手に弱いのはしょうがないけどそれは私がどうにかするとして。
「よっ、ほっ、おりゃ」
「でもえーくん、さすがにそんな蚊でも払うように銃弾弾きだしたらいくら私でもおかしいと思うの」
「銃口見りゃどこに撃ってくるかわかるだろ。つーかこれ教えてくれたのお前の親父さんだぜ?」
「お父さん、何やってるの……」
「そういやあの人拳で殴ってミサイル粉砕してたな」
シュポシュポ走る機関車が見えてきて狙撃の精度も上がってきてるんだけど、えーくんはどでかい対物狙撃銃、バレットM82の銃口を見て撃たれた瞬間に手を伸ばしてバキンバゴンと音をたてながら銃弾を払っていく。
うーん確かにこっちに来るまではえーくんの特訓に武器を使いだしてたから銃口から着弾位置を予測するのはできるって言われたらできるような……いやそれ私の個性込み計算力があってはじめてできることじゃない?
前方にスターが強引に着弾して土煙と衝撃波が機関車を跳ねさせる。脱線しないように私もえーくんごと強引に突っ込んで衝撃で機関車を押さえつけて降り立った。
『強引に外に出してくれていい!あとはこっちで何とかする!』
「了解です。それじゃ一人目」
「二人目だな」
最後部にいて機関砲を構えていた二人のヴィランをえーくんは殴って、私は蹴り飛ばして壁ごとぶち破り外に落とした。視界の端で私が開発したエネルギー式ワイヤーを保持した剛翼がヴィランをキャッチと同時にぐるぐる巻きにして空に運んでいく。
おっしゃ!と声をあげたえーくんが突っ込んで私はその後ろから両手を変形させてビームやらレーザーやらを発射して私は次々と個性を使おうとした手とか発火部位、電撃、その他発動系個性の起こりを潰していく。
そうすればあとは簡単だ。えーくんに丸投げしちゃえば一撃で意識を刈り取ってくれる。うーん流石はえーくんのパワー。あと打撃の選択部位がとてもいい。えーくんの打撃の威力なら人体急所に当てちゃうとやばいので、そうじゃない部位を狙ってるんだけどそれでも威力があまりあるせいで一撃ノックアウトの連打だ。
無理して外に蹴り出す必要はないのでエネルギーワイヤーを崩れ落ちたヴィランたちにぐるぐる巻きしている。前方だとスターがテンションアゲアゲでやってるからか知らないけど偉い衝撃音と振動がしてる。あと蹴り出された人の悲鳴もプラスで。容赦ないなあ……ん?
「どした希械、次行くぞ」
「あ、うん」
捕縛し終えたところでなんか違和感を抱いて車内をぐるっと見回していると待ってたえーくんが声をかけてきた。私は作戦行動中だったことを思い出して気を引き締めて次に行く。
次の車両に行ってもやることは変わらない。突っ込むえーくんと援護する私。その繰り返し、膨れ上がってくのはさっきの違和感だ。えーくんのバックドロップやらシャイニングウィザードやらラリアットやらが繰り出されるたびにヴィランが悲鳴を上げて倒れる、私が拘束する。その中で私は違和感の正体を探る。
『おーいエクスマキナ、レッドライオット。全車両のヴィランの鎮圧が終わったから一番前来てくれ。めんどくさいことになった』
「はい!」
「なんだあっさりだな」
めんどくさいことになったって何さ?とスターが言うめんどくさいを想像してなんだか辟易してきたけどスターが制圧してた前の車両に入っていくと、えらくうめいている人がたくさん山積みになってる。よ、容赦ないなあ……ひいい解放骨折してるぅとひどいのだけちょっとだけ応急処置してから先頭車両に向かった。
「お疲れさん二人とも。で、エクスマキナこれ直せる?」
「無理です。作り直したほうが早いですけどこの状況じゃ……」
「だよねえ……リーダー、さっき空に飛ばしたんだけど苦し紛れにやってくれたんだよ」
「運転席めちゃくちゃじゃねえかよ……」
そう、えーくんが言った通り運転席がめちゃくちゃになってる。計器類、ブレーキ、アクセルは吹っ飛んでついでに火室の扉も吹っ飛んでそこからファイアーしてる。というか燃やしてるのこれ石炭じゃなくない?
「燃えてるのこれニトロですね。急いで止めないと火室から爆発して脱線しますよ!」
「うし、じゃあ停めるよ!私が火を消してブレーキかける。アンタら前からぶつかって停めてくれ」
「了解ッス!俺が前で希械が後ろだな!」
「ん、わかった。行ってきます!」
多分スターはここで火室の火を酸素を止めて消すのと、列車全体の車輪の回転を止めるのだと思う。私がアメリカで気づいたスターの個性のルール使用回数は2回。二つのルールを設定するとどちらかを消さないと新しいルールは設定できない。
火室の酸素を断つと車輪の回転を止めるで二つ使うから直接停めるのは私たちの役目、ってわけだね。さあ急がないと、レールが途切れちゃう。
えーくんを今一度抱っこして300m先まで行く。そこでえーくんを前に、私を後ろにした状態で着地。接触はえーくんだ。彼はすぐさま安無嶺過武瑠の状態になる。スターが車輪を止めたのか急ブレーキがかかりすべての車輪から火花が散る7両編成の機関車が私たちに衝突した。
「うおおおおおっ!!!」
「んん!んんんっ!!!」
満身の力を込めてぶつかる。ただし脱線させてはいけないので極めて精密に計算しつつだ。電車にはねられるなんて普通の人間からしたら全身がバラバラになっちゃうけどそれは私とえーくん、へいきのへっちゃら。枕木を吹き飛ばしつつ足を踏ん張ってブレーキをかける。
衝突の瞬間から私の背中にバーニアを生成して吹かし、徐々にパワーをあげてブレーキングをかける。私の力と機関車の力に挟まれるえーくんが一番つらいだろうけどさすがはえーくん、むしろ一歩踏み出して大きく足を固定した。
そこで、ハタと気づいた。足場が、安定している。枕木以外はほとんど土のはずの地面が、踏んでも陥没しない。むしろ硬く反発してくれるおかげで踏みしめやすく力を入れても力が逃げない。これならもっと!
ぐぐ、ぐぐぐ……とゆっくりと機関車が止まっていく。後ろの方ではホークスの剛翼がいくつも車両に張り付いて逆方向の力をかけつつバランスをとってくれている。ブレーキングで200mもかかったが、機関車は停止した。
「やったな!希械!……わりぃけど、どいてくんね?」
「あ。ごめんねえーくん」
後ろからえーくんに抱き着くような、要は壁ドンみたいな感じで機関車に両手をついていた私が胸の下から聞こえてくるえーくんの気恥ずかしそうな声に慌てて退く。えーくんが安無嶺過武瑠を解いたらいつの間にか地面の硬さが元に戻った。
そこで私の違和感の中身が明らかになった。車両内制圧で、えーくんの足元が陥没あるいは床を踏み抜いていなかったことだ。えーくんの個性を使ってないと思えないほどの規格外パワーは全力で踏みしめたら鉄板でもたやすく陥没あるいは貫通するのにそれでも、全く傷がついてなかったんだ。
……まだだ、まだこれは私の中の疑問点だ。えーくんの個性が外に影響を及ぼしてるのかあるいはえーくんが力のかけ方がうまくなったからなのか判別がつかない。えーくんなら気づいていれば多分私に教えてくれる。隠し事をするような人じゃないし、そんなに浅い関係じゃないから。
追いついてきたホークスと機関室から降りてきたスターを迎えて私は疑問を後で考えることにしてとりあえずは操作と手加減が苦手なスターが出した重傷者の応急手当をすることにした。まあ、私も人のことは全く言えないんだけどねー。
「それじゃ、行ってきな」
「はい、行ってきます。スターも任務頑張ってください」
「あー、ほんとにいいね弟子っていうのは。このまま残ってくれてもいいんだよ?」
「ふふ、私もスターは大好きです」
別任務に分かれるスターに力強く頭をかき回されてから私は身をかがめて装甲車に乗った。最近手足の金属の組成を変えて軽くかつ頑強にし、マイナス50㎏の減量に成功した私でもやっぱり重すぎてきしんでいるのをえーくんを隠れ蓑にしてやり過ごす。
あの機関車を根城にしてたヴィランの襲撃で、得たものは……特になかった。マジでずっこけたんだけどまあそれはそれでしょうがない。提携とは言ったものの実質的には傭兵の引き抜きだったらしくリーダーはヒューマライズこき下ろしてたし。
その翌日に私たちはヒューマライズの襲撃に加わっている。オールマイト先生を指揮官とした世界20数か所にあるヒューマライズの施設に同時に襲撃をかける。車内で私たちは無針注射器に入ったトリガーボムの解毒剤を打つ。これで4時間は大丈夫だ。
『諸君、施設では団員の激しい抵抗が予想される。また、団員たちのほとんどは無個性であるが故トリガーボムを起爆されるかもしれない。起爆されないよう、ボムの回収を第一に考えて動いてほしい』
「エクスマキナ、君と俺が捜索役だ。俺が剛翼で、君はメカで可及的速やかにトリガーボムを確保する。よかね?」
「はい。えーくん、前まかせていい?」
「ああ。任せとけよ。お前の邪魔はぜってぇさせねえから」
「うん」
オールマイト先生のブリーフィングを聞きながらえーくんの手に私の手を重ねる。いつも、いつだってそう。作戦前のこの緊張感と空気。あんまり好きじゃない。だけど、切り替えることはできるし今回は頼りになる私のヒーローが一緒だから……無限に勇気が湧いてくるんだ。
オールマイト先生のカウントダウンがゼロになった瞬間、私たちは装甲車を飛び出し、ファットガムが脂肪から令状を取り出し掲げながら扉をぶち破って屋敷に侵入する。
「ここで個性を使うなんて!」
「俺はつこうてへんで!ついとるだけさかい悪く思わんといてや!サンイーター!」
「キメラオクトパス!」
「全館探索開始します!カメラガジェット、音響探知!レーダー探知!」
「いけっ!剛翼!」
門番の二人を頓智を利かせたようなそうでないようなセリフを言ったファットガムが脂肪に沈めて黙らせる。続いて突入した私たちが館を走り回りながらトリガーボムを探す。
ない、ない、ない!レーダーにも、赤外線探知にも、音響探知、私が行えるありとあらゆる科学的探知を行ってトリガーボムを探すけどどこにもそれらしきものは見当たらない。念のため地下室とか隠し部屋とかがないかも探してみるけどそんなものはなかった。
どういうことなの、と私とホークスが困惑顔を隠せないで顔を見合わせている間にあっという間にヒーローたちによってヒューマライズの団員たちが拘束されていく。
『こちらオセオン!フレクト及びトリガーボムはここにはない!』
『こちらフランス!トリガーボムはありませんでした!』
「こちらアメリカ、同じく。エクスマキナの科学探知にも引っ掛かりません。物そのものがないかと」
次々と世界各地で同時に襲撃をかけていたヒーローから連絡が入ってくる。どこにもトリガーボムはなかったと。やられた、の4文字が頭の中をよぎる。エンデヴァーの怒声とヘルフレイムの轟音が向こうのマイクから拾われているのを聞いて、私はとりあえず拘束に参加するのだった。
とりあえず映画本編合流です。あとえーくんの強化フラグが建ちました。ではまた次回に。
感想評価よろしくお願いいたします。
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