個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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134話

「むぅ」

 

「お前のその顔見るの久しぶりだなー。まあほら、誰もまだ被害受けてねーんだからよ。そんなにむくれんなって」

 

「いつも思うんだけど先手を打ったつもりなのに後手に回るのしてやられた感してきらい。許さないからねヒューマライズ」

 

「おうよ。そりゃみんなそうだぜ」

 

 ぶっすー、と頬をぱんぱんにふくらました私を宥めるえーくんという雄英にいたときによく見られた光景がニューヨークでのヒーロー待機所にて行われていた。

 

 もぬけの殻、その表現が正しい。確かにヒューマライズの団員たちはいたけど、とかげのしっぽ切りだった。トリガーボムどころかトリガーの存在すら知らない。テレビのテロはうちの仕業じゃないと言い切った犯人もいるほどだ。

 

 明らかな幹部格もいなかった。先手を打たれてトリガーボムをどこかにやったんだ。いまは警察犬や捜査に優れた個性の人たちが鋭意捜査中で戦闘班たる私たちは待機中。あとスターも任務中でいそがしいったらないね。

 

 むっきぃ、とわかりやすくぷんすかしてみるけど残念ながら怒ってもどうにもならないのは明白なのでぶすくれつつも常に頭の片隅でいろいろ考えてたりする。最近だとナノテクから一歩踏み込めそうなのでそこらへんかな。

 

 ナノから形を持たないエネルギーの世界に踏み込んでみようと鋭意画策してるけどまだまだだねえ。指向性エネルギー兵器の開発には成功してるんだけど、こう……もうちょいなんか行けるんじゃないかなって今なってるんだよ。

 

『キカイーダッコー。アトクッキーホシイ』

 

「はーいどうぞダークシャドウ、あーん。そーいえば、デクくんたちは今何をしてるかなー」

 

「そらあれだろ?爆豪が我慢しきれなくて爆発してるか緑谷が爆豪になんか言って爆発してるか轟が気づかずになんか言って爆発してんだろ」

 

「待て、ダークシャドウ!少しは慎みを……!」

 

「いくら何でもそんな着火した後のニトロみたいなことにはなってないと思うんだけど……」

 

 にょろ、と私のわきの下あたりから顔を出したダークシャドウを抱えるように抱っこしつつクッキーを口に放り込んであげてからえーくんと益体もないことをだらけながら話し合う。そういえば常闇くんとこんな風に作戦待機中に駄弁り合うのってなかなかないチャンスだよね。目いっぱいダークシャドウを可愛がってあげよう。

 

 常闇くんが私に甘えるダークシャドウに対してかなり取り乱しているけど大体会うといつもこんな感じじゃなかった?久しぶりだから私の感覚がマヒってるだけ?かわいいよねーダークシャドウ、私は結構好きだよ。

 

 むいむいむい~とダークシャドウのほっぺをむにむにして遊んでいるとそれを何とかやめさせようと常闇くんがあれそれ主張してくるので、しょうがないなあとダークシャドウを離して自由にさせるんだけど結局ダークシャドウはそのまま私の膝の上だ。

 

「アメリカのテレビってわけわかんねーんだよなー。マイク先生の授業のおかげで何となくわかるんだけどよ」

 

「俺は全くわかんねーぜ切島!」

 

「鉄哲くんはお勉強がんばろーねー」

 

 からっとした感じで入ってきた鉄哲くんに先生から送られてきた英語の課題の一部を立体映像にしてパスすると5秒で彼は頭から湯気をあげてフリーズした。うーん、ペーパーテストだとB組は優秀だって物間くんから聞いてるから解けると思うんだけど―。

 

 テレビの話題が出たのでベースボールかバスケットボールのニュースでも見ようかと私は壁掛け式の巨大テレビのリモコンを取りそのままスイッチを入れた。えーとニュースニュースっと。

 

『緊急ニュースです。オセオン国政府は日本より来国したヒーローチームの一人、イズク・ミドリヤ容疑者を殺人容疑で国際指名手配すると発表しました。詳しい事件の概要は公表されず、日本政府は詳細の開示を求めています』

 

「………………え?」

 

「はあ?」

 

「なんだと?」

 

 私、えーくん、常闇くんの時間が止まる。今テレビはなんて言った?デクくんが、国際指名手配ぃ?何ドッキリ?そんなことあるわけないじゃんか。あのさ、デクくんは良い人なんだよ、目標に向かって努力してるし、重い使命を背負おうと頑張ってるの。

 

 精神力も実力も仮免とはいえヒーローにふさわしいって私は思っているわけ。そのデクくんが殺人容疑で指名手配、それも国際?ありえないありえない、というか何かの間違いかデマでしょ。国際ってあれだよ?滅茶苦茶重いんだからね?

 

「なんかの間違いじゃねえのか!?緑谷が殺人って……!ありえねぇよ!なぁ!?」

 

「ああ、ありえん。あの緑谷がよりにもよって殺人など……!先ずそんなことがあれば!」

 

「……轟くんと爆豪くんが止めてるはず……!」

 

 混乱した状態の私たちが口々にありえないと声を出す。そりゃそうだもん、絶対絶対あり得ないって!あのデクくんが殺人なんてさ。ヘヤノスミスで体育座りをしていた天喰先輩も顔つきを鋭くして立ち上がりソファにもたれかかってニュースを睨んでいる。

 

「切島君おるか!」

 

「常闇くんもちょっと」

 

「楪少女!少しいいかい!」

 

「はいっす!」

 

「承知」

 

「分かりました!」

 

 ニュースが次の話題に移った瞬間に沸騰しかかった私たちを正気に戻してくれたのはファットガムとホークス、オールマイト先生だった。3人そろって呼び出されたってことはまず間違いなく今のニュース関連だ。話を詰めなきゃ。

 

 会議室の中に通された私たち、オールマイト先生もホークスもファットガムも険しい顔をしている。重苦しい雰囲気だけどとりなすようにホークスが口を開いた。

 

「2時間前に一報入ってたんだけど、やられてしまったな……!今のニュース、聞いてたと思うけど緑谷出久くんが指名手配された。罪状は第一級の殺人、オセオン政府に聞いてみたが真実だそうだ」

 

「ちょっと待ってくださいよ!いくらなんでもありえねえ!緑谷がそんなこと」

 

「切島君、話は最後まで聞きいや。オレはその子に会うたことはあらへんが、そんなことをしでかす子やあらへんっちゅーのは信じとる。問題はここからや」

 

「……緑谷少年がそんなことをするはずがない、だからオセオン内部にいるヒーロー職員に確認した。答えは……被害者が特定できない、そうだ」

 

「被害者が、わからない?オールマイト、それは変だ。殺人なら被害者がいなければ成り立たんはず」

 

「そこさ、常闇くん。第一級の殺人というのは偶発的な事故の側面や突発的な場合の第二級殺人と違って周到な準備、計画性、あるいは強盗なんかの情状酌量の余地がない殺人のことだ。被害者が分からないのに裁判所飛び越えて国際指名手配なんて説明がつかなすぎる」

 

「……デクくん、はめられた……!?」

 

 思わずぽろっと言葉が零れ落ちる。確かオセオンって、三権分立が怪しいって話をスターから聞いていた。だからヒューマライズのようなヴィラン団体の本部が狙うって話も。オセオンにはスラム街もあって治安が悪いわりにヒーローの数が足りてないって話も聞いた。

 

 この警察組織の連携の早さとかも考えると、確かにこれは何か巨大な陰謀にデクくんが巻き込まれたとしか思えない。もしも、これがオセオン国の思惑だったなら外国のヒーローであるデクくんを狙い撃ちした意味もあるだろう。

 

 問題はなぜそうなったかだ。デクくんが何に巻き込まれたかを考える必要がある。そうじゃないと、わからないから。これがデクくんを狙い撃ちにした……つまり私とオールマイト先生の間でしか分からないけどワンフォーオールを狙ったオールフォーワン絡みの話なのか、はたまた別なのかがね。

 

「楪少女の言う通りはめられた可能性も考えなければならない。被害者の情報が出そろわなければまず疑ってかかるべきだ」

 

「緑谷に連絡入れるわけにはいかねーしなぁ」

 

「あの……デクくんに連絡とれなくはないんですけど……」

 

「ワッツ!?どういうことだい楪少女!?」

 

 ガタッとオールマイト先生が立ち上がる。私が控えめに手をあげながらした発言のせいなんだけど。皆が最初から言えよという風に私を見つめるので首をすくめながら話し始める。

 

「正確には語弊があるんですけど、デクくんが今使ってるサポートアイテムのナノガントレット、アレに封入されてるナノ粒子を私からハッキングして位置特定と相互通信ができるかと」

 

「楪少女、すぐお願いできないか?」

 

「今ここじゃ無理です。やったら衛星通信を使うことになるので向こう側にデクくんの居場所が筒抜けになっちゃいます。量子通信ならその心配がないんですけど最低でもオセオン本国に行かないとどうしても……」

 

 私とシールド博士が開発したナノ粒子はあらゆる機械の要素を詰め込んだ夢の粒子だ。それぞれが様々な物質の特性を示してなんにでも変ずることができる。デクくんに渡したナノガントレットの制御モジュールにはガントレット用にしかならないようにロックがかかってるけど……開発者の私から直で命令すれば通信ができるはずだ。

 

 ただ、それをアメリカからオセオンに向けてやるには遠すぎる。今のとこハロを持つ私にしかできない量子通信は距離に制限があってオセオンに入らないと届かないし、軍事衛星を使うとその通信から場所を特定される可能性が高い。何せ今デクくんの携帯はオフラインだ、電池ごと抜いている可能性が高い。授業でそう習ったし。

 

「なるほどそういうことねえ。ねえキカイ、アンタ……オセオンに行ってきなよ。ただし、不法入国でね」

 

「……もう驚きませんけどいつの間にいたんですか?」

 

「んー?マスターたちがどうも深刻そうな顔で会議室に入って行ってから……存在消して話を聞いていたわけさ」

 

「キャシー!?キミのそういう癖は良くないといつも言っているじゃないか!」

 

 いつの間にか私の後ろに登場していたスターが話に割って入ってくる。スターなんだけど、ドッキリが好きなのか個性を使って存在を完璧に隠蔽して唐突に現れたりするんだよね……オールマイト先生もそれを知っているからか顔を顰めていた。

 

「悪かったってマスター。それよりも、イズク・ミドリヤの件だよ。話を聞く限りじゃあマスターたちからの信頼も篤いみたいだね。ただ、ヒーローが堕ちるって話はよくある、悲しいけど。それも含めて……確かめなきゃいけないだろう?」

 

「かといって不法入国というのも問題があるんちゃうか?正規の手段に則るのがオレらやろ」

 

「なぁにいってるのさファットガム、法なんぞ無視して光を示し続けた偉大なヒーローが目の前にいるのにその後輩がコレかい?それに、だ。オセオンの中が汚染されてるなら正規手段は跳ねられるし監視もつく。自由に動かないとダメ、そうだろう?」

 

「なるほど、オセオンの上空から防空識別圏を抜けて直でデクくんに会いに行く感じですか。これ私かスターじゃないと無理ですね」

 

「だからアンタにいけっつってんの。事は一刻を争うよ、アンタが抜けた穴はアタシがいりゃ埋まる。オセオンは恐らく黒だ、ここに居るやつらだけに言うがUSAの調査員でも被害者はつかめなかったからね」

 

「了解しました。オールマイト先生、オセオンへの増援を……見逃してください。その代わりデクくんは確実に助けます」

 

 これはもうやるしかないと私は腹をくくった。うーん、相澤先生にするなら正規の活躍をしろと言われている手前不法入国は正直少し後ろめたいんだけど、デクくんが巻き込まれた何かがあまりにも不穏が過ぎるので何とかしないといけない。

 

「……エンデヴァーの報告では緑谷少年はたった一人で逃走を続けているようだ。その心細さは私が推し量れるものではない……!故に楪少女、どうか彼を……助けてやってくれ!」

 

「はいっ!じゃあ「待った!オールマイト先生!ファットガム!俺も行かせてくれ!」えーくん?」

 

「切島君、それどういうイミか分かっていっとんのか?」

 

「完璧に100%分かってるとは言えねぇッス。だけど、緑谷もこいつも、自分の怪我を無視するんだ!自分で傷つこうとしたり死にかけても動こうとしたら……止める奴がいる、絶対に二人よりも傷つかねえ奴がそうしなきゃなんねえ」

 

 えーくんの言うことには確かに一定の理がある。まあその?私もデクくんもほら、他人の方が大事っていうメンタリティなので……そういう意味じゃ行き過ぎるなって止めてくれるえーくんの存在は大事だと思う。私が死にかけた時ってえーくんがいない時ばっかりだし。

 

「ハンッ!いっちょ前のこと言うやないけ!どや、楪さん。君の幼馴染はええ男になっとるで」

 

「そんなことファットガムよりもずーっと分かってますよ!オールマイト先生、いいですよね?」

 

「ああ、私は相澤君にどう言い訳するか考えておかないとな」

 

 えーくんがついてきてくれる、前まではしょうがねえなあと見送ってくれてた彼が、今度は私の隣に立とうとしてくれる。嬉しさ大爆発だよこんな時だけど。さて、やることは決まった、オセオンに向かってデクくんを助けなくちゃ!えーくんと、ふたりで。




 というわけでGO!オセオン!切島君といっしょを次回よりお送りしたいと思います。ちなみに個人的に一番楽にワールドヒーローズミッションを攻略する場合はミリオ先輩を連れてくれば反射貫通透過で一撃KOだと思ってます。なのでミリオ先輩はエジプトに行ってもらう必要があったんですね。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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