個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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135話

「とりあえずこれでオッケーです。秘匿回線の長距離レーザー通信デバイスになります。向こうについたら連絡入れます」

 

「ああ、ありがとう楪少女。すまないね、嫌な役回りをさせて」

 

「何言ってるんですか、デクくんが無実だって信じてるんですから行くんですよ。いやだったらやってませーん」

 

 ぷすぅとわざとらしく膨らんでみせるとオールマイト先生は両手をあげて参った参ったのポーズ。いやな役回りかと言われたらそうなのかな?確かに不法入国になるからそうなのかも、行って帰ってくるのもバレちゃいけないしねぇ。

 

 まあそんなことはどうでもいいのだ。問題はどうやって太平洋の中にあるオセオンの中に行けるかーって話なんだけどそこらへんはこう……力技で解決することにしました。具体的に言うとミスアメリカナンバーワンヒーローことスター&ストライプの協力を得ることで……。

 

「マッハ20でアンタらを打ちだせばいいんだね?普通なら死ぬよ?」

 

「あ、慣性その他重力関係は私が、断熱圧縮はえーくんが何とかします。見てくださいこの硬さ!ちなみにモース硬度で測定不能です。壊れないので」

 

「オッス!ミサイルビーム隕石何でもござれだぜ!最近は希械にレールガンで鍛えてもらってるッス!」

 

「何だい日本ってのは原石の集まりなのかい?アメリカでもなかなかここまで鍛えてるのはみないよ。マスター、先は明るいじゃないかい」

 

「HAHAHA!そうさ!日本のヒーローは皆!平和の象徴になり得るのさ!」

 

 スターの褒めとオールマイトの特大の激励を貰った私とえーくんはにっこりと笑い合って私は左手、えーくんは右手につけていた腕輪をお互いにぶつけあう。起動を認識した腕輪はナノマテリアルを解放して私とえーくんのヒーロースーツの上から新しいスーツを形どる。

 

 真っ黒のジャケットとズボン、フード。私は青の、えーくんは赤のラインが入ったものだ。ステルススーツ兼高高度作戦用スーツでございます。急ピッチで作ったからデザインはオセオン本国に行ったデクくんたちが新しく作ったやつから丸パクリだけども。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

 

「そっちは頼んます!」

 

「ああ、任せておきなさい!キャシー!」

 

「アイ・サー![楪希械、切島鋭児郎はマッハ20で前方に吹っ飛ぶ!]行ってきな!」

 

「えーくん!」

 

「烈怒頼雄斗!安無嶺過武瑠!」

 

 正確にオセオンに向けて並んだ私たちに同時に触れたスターがルールを付与する。マッハ20の速度で前方に吹っ飛ぶ私とえーくん、私はえーくんの腰に抱き着いて足の各所からスラスターで態勢を制動し、最高速度まで硬くなったえーくんを盾にしてオセオン方面に75度の角度で放り出された。

 

「ぐっ……お、お、お……!」

 

「あと2分耐えて!」

 

「ま、か……せ……ろ!」

 

 当然ながらマッハ20なんて速度で放り出されれば断熱圧縮、つまりは私たちの前方の空気が圧縮されてそれに伴いとんでもない熱が発生する。意図的にアメリカが明けた防空網の穴を通るためにいったんここで弾道飛行、つまりは成層圏まで抜ける。

 

 腕から冷却ガスを噴出しえーくんが耐えられるように摩擦熱の温度を下げる。口元では既にナノマシンが酸素マスクとゴーグルを作り出している。摩擦熱は私が、前方の衝撃波はえーくんが受け持ち、弾道飛行の頂点にまで上がっていく。

 

『お疲れ様、えーくん。ここからは自由落下で落ちていくからね』

 

『まだまだいけたんだけどよー。鉄哲と違って熱はやべーな、くそ』

 

 防空識別網の網を通るにはエンジンなんかの燃焼による熱なんかも探知されないようにしなきゃいけない。だから一回軍事衛星の索敵範囲外まで上がって……私がオセオンの軍事防衛線の穴を見つける必要がある。

 

 浮いているにも限度がある、アメリカが守ってくれてる範囲から出るまでおよそ2分、速度は落ちて既に静止状態。脳みそとハロが何テラバイトもの情報を次々処理していく。どこだ、どこ、どこ……見つけた!南方に穴がある!

 

『おちるよ』

 

『おう』

 

 吐息だけの言葉のやり取りののち私はえーくんを抱きしめてその穴に向かって圧搾空気を使い身を投じる。さらにナノマシンで平べったい円錐型のシャトルを形どって私とえーくんを覆ってあとはレーダーだよりだ。

 

 レーダーのピッピッという音を頼りにして外の光景を機械の網膜に映しながらグライダーで滑空するように態勢の変化だけで防空網の穴を通っていく。オセオンは今は夜、デクくんが逃げだしてから半日経ってるかどうかってところかな。

 

 艶消しの黒色で構成されている私たちを覆っているシャトルはこの暗闇なら非常に認識しづらいだろう。前方に圧搾空気を噴射して速度を落としながら量子通信でデクくんが持ってるナノガントレットの反応を探す。

 

『みつけた』

 

『はえーな!んじゃあ早いとこ緑谷と合流しようぜ』

 

『待った。近くにヘリコプターがいる。着地してるみたいだけど……あれ?デクくんどうしてそっちに……?』

 

 デクくんの反応を見つけた私が安心して息を吐く、ガッツポーズのえーくんも安心したみたい、だけどおかしいな。どうしてわざわざ軍用ヘリコプターの方向に行ってるんだろう?それも速度的にワンフォーオールを使ってるっぽいし。

 

 んんん?とシャトル外部に高精度センサーカメラを作り出した私はナイトビジョンでヘリを観察する。上空500mからの空撮の結果は、ヘリの前で私たちと同じくらいの年齢の男の子が誰かにアタッシュケースを投げ渡すところだった。取引相手の男の背中には……ヒューマライズのマーク!デクくんはこれを追ってるんだ!

 

『えーくん、緊急事態。デクくんはヒューマライズが何らかの取引をしてる場所に向かってるみたい。合流して叩こう。100mくらいだったらフリーフォールで行けるよね?』

 

『ああ!急ごうぜ!』

 

 バシュッとシャトルが4分割に割れて私たちが露出する。上空100mからの紐なしバンジー。まあ私たちには関係ないか。よいしょ、とえーくんを離して男の子と取引相手の男を挟み込むように同時に墜落した。隕石が墜落するような音を立てた私たちがそれぞれクレーターの中から歩み寄る。

 

「こんにちは、ヒューマライズさん。色々あるけど大人しく捕まってくれないかな」

 

「あー、そっちのお前。そうお前な、腹ばいになって頭の後ろで腕組んでくれ。伝わってるか?」

 

「貴様……!図ったなぁ!?」

 

「な、何の事だよ……!!俺はただ、家に帰りたかっただけだ!」

 

 声紋には嘘をついてる感じはなし、巻き込まれたのかな彼は。それはともかくとしてなんだけどヒューマライズの男の方は激高して姿をメリメリと音を立てて変えていく。両手が金棒になった鬼の姿。発動型の異形かぁ、無個性シンパなのに個性持ちとは矛盾してるね。

 

「スマッシュ!」

 

「緑谷!」

 

「デクくーん!」

 

「切島君楪さん!?なんで!?」

 

「詳しい話は後ー!片付けるか逃げよー!いよいしょっ!」

 

 構えた瞬間、空気砲が鬼男に直撃する。その先にはデコピンを振りぬいた状態のデクくんが目を丸くしていた。合流できたことに一安心しつつ私は鬼男に突っ込んで顔に思いっきり拳を捻じ込んでやった。うーん、同じくらいの身長だから実に攻撃が入れやすい。体勢崩して防御できなかった相手はヘリに突っ込んで滅茶苦茶になる。

 

「おっ!?あぶねえなおい!」

 

「二人とも!引こう!話さなきゃならないことが山ほどあるんだ!」

 

「了解!ハイそこの君舌嚙まないように気を付けてー!せーのっ!じゃーんぷ!」

 

「緑谷頼んだ!」

 

 デクくんから撤退の提案がなされたので私はスタングレネードと煙幕をばらまく。男の子に向かって放たれた矢はえーくんが弾いてくれた。私はアタッシュケースと男の子を纏めて抱っこすると煙に紛れてスラスターで飛び立つ。えーくんはデクくんの新しい力『黒鞭』に巻き取られてデクくんと一緒に離脱した。

 

 とりあえず無言で一キロほど移動した後に洞窟を見つけてそこに入ることにした。少しだけ息を乱した私が胸の中でもごもご言ってた男の子を解放してどちゃっと落とし適当な照明を用意してそれを腕と繋ぎ灯にした。あとは適当なステルス迷彩を洞窟の入り口にやってっと。

 

「おし、緑谷無事だったな。信じてたぜ!」

 

「うん、ありがとう切島君、楪さん。それはそうとどうしてここに?」

 

「だーってデクくんが殺人犯になったーってニュースやってるからさー。心配になってアメリカから助けに来てあげたんたぞー?とにかく無事でよかったー!!」

 

「わあああっ!?楪さん離して近い近い近い!」

 

 感極まっちゃった私はデクくんを持ち上げて思いっきりハグする。うーんこの慌てかた、実にデクくん。デクくんも心細かったのか目尻には涙が浮かんでいた。それはそうとデクくんに合流できたので連絡を……の前に。

 

「君は?」

 

「あっ、オ、オレ!?お、おほん。オレはロディ・ソウル……」

 

「彼は巻き込まれたんだ、詳しい話をさせて欲しい……だから離して楪さん……」

 

 えーこのままでもいいじゃーんとは思ったけどしょうがないのでデクくんを解放してから私はオールマイト先生に直通の通信を繋ぐ。いけるかなー出れるかなー、長距離レーザー通信は実戦投入が初だから不安だー。盗聴その他に引っかからないのが利点なのだけど。

 

『楪少女!首尾は……!っ!!!緑谷少年!よかった……!』

 

「オールマイト!すいません、何かはめられたみたいで……!詳しく話させてください」

 

 画面いっぱいに移ったオールマイト先生にびっくりしちゃったけど決壊したデクくんの涙腺にもびっくりした。うーんそれ最早個性だよねえとえーくんと隣り合って体育座りしながら師弟のやり取りを見守る。ロディくんは凄い手持無沙汰&ビックリ状態。オールマイト先生いるもんねえ。

 

 それでデクくんの話を聞くに始まりはオセオンで起こった宝石店の強盗事件で、アタッシュケースに入ってた宝石を追いかけていくうちにロディくんとかち合い、なぜか警察がケースを追っていることに不信を覚えて逃げていると襲撃に会って今は隣国のクレイドに逃げようとしてるってところなのね。

 

『なるほど、楪少女』

 

「中身に不審な点はないんですオールマイト。だからどうしてこれをオセオンが追いかけてるのか……」

 

「これ、中身が見えません。どの手段の透視も、音響探知しても何も見えない。作った人はシールド博士ばりの天才ですね。むむむむ……」

 

『そう、か。とにかくだ少年少女。今は危ないオセオンから抜けるんだ。幸い各国は緑谷少年のニュースに懐疑的だ。世界各国に散ったヒーローたちが一斉に非を唱えているからね。決して無理はしないように』

 

 むっきぃぃぃ!!!見えない!中身に不審なものはないってことは大体スーツケースになんかあるってことなのにX線は通らないし音は乱反射してわかんないし、赤外線だと真っ暗だし!何なのこのスーツケース!私が技術力で負けるなんてえええええ!!!

 

「おし、そこでぐるぐるしてる希械はほっといていいぞ。んでまあ、とりあえずはクレイドっつーとこにいくか。ロディは……付いてくるしかねーけどいいか?」

 

「なあ……なんでアンタらオレを助けようとするんだ。話聞いてて分かっただろ……オレはこいつを裏切ってケースをあいつらに渡そうとしてたんだ」

 

「あー、らしいな。でもよ、それ割と普通だと思うぜ。巻き込まれた側なんだしよお前」

 

「状況の変化が目まぐるしいよねえ事件って。だから、何とかして元の生活に戻りたいって思うのは当然だよ。まあもうしばらく付き合ってね?」

 

「昼間だってヴィランが盗んだ宝石を運んでたんだ、あんたらの嫌いなヴィランってやつだぜ?俺のことなんか置いて逃げればよかったんだ」

 

「そんなことできないよ。困っている人は放っておけない。なりたい自分になるために」

 

「……それで指名手配なんかされちゃわりに合わねえだろ」

 

 うーん、ロディくんはリアリストってよりも卑屈よりなのかなあ。初めて会った時の心操くんみたいな目をしてらっしゃる。そもそも割に合う合わないで私たちヒーロー活動してないからなあ。

 

「お腹が減ってるからそういう卑屈な考えが浮かんでくるんだよ。はいこれ、カロリーだけは保証するよ。味は私基準でそこそこだけど」

 

「……悪かったな卑屈で。俺たちにとっちゃそれでもご馳走なんだ。弟妹たちにも食わせたいくらいだよ」

 

「……弟さんたちと連絡取れてるの?」

 

「……いや、家には電話はねえ。知り合いにも拒否された。心配なんだ」

 

「住所教えて、それとはいこれ。手紙書いて。メッセージ届けてあげるから」

 

「……いいのかよ」

 

 持ってきていた米軍の缶詰を湯煎で温めてわたすと、ロディくんには弟さんと妹さんがいるという話を聞いた。うーん、直で送り届けるのは無理でもメッセージくらいならいけるんじゃないかな。住所あるって聞いたらあるっていうから私はレターセットを作り出し、お届けロボットを組み立てるのだった。

 

 なにデクくん?流石は楪さん万能だ?えへ~、褒めても何も出ないよ~事件解決したらかつ丼つくるからね~。さて、やることは山盛りだけど頑張ろうかな!

 

 




 切島くんがいれば成層圏までひとっとびさ。二人がいればなんでもできる。物理は大体頼れる幼馴染が、それ意外は主人公がなんとかします。便利。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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