デクくんにワンフォーオールの100%でのパンチを撃たせる方法を見つけた、そう言った私に二人はかなりのびっくり顔を披露してくれてる。デクくんは顎が外れんばかりにポカンとしてるし。オールマイト先生は凄い勢いで吐血してる。その、病院行かなくて大丈夫なのかな?心配になってくるんだけど……
「その、楪さん……100%を打つ方法って……?」
「うん、説明するね。まずなんだけど、デクくんとオールマイト先生、個性の発動の仕方全然違うの。多分ワンフォーオールって継承者によって変わっちゃう部分があるんじゃないかな?」
「えっと、つまり?」
「オールマイト先生だと、個性は体の中のみで完結してるの。デクくんの場合、ワンフォーオールの力?そのものが腕から漏れてる。内と外両方に作用してるんだ」
私はゴリアテを着ていたことで強化されていた右目で解析してあった折れなかった時のデクくんのワンフォーオールのパンチと今見たオールマイト先生のSMASHを比べながらそう判断した。デクくんがワンフォーオールを使った時、緑色の電気のようなオーラと腕に浮き上がる赤っぽい力の流れが観測できた。これはオールマイト先生にはないものだ。オールマイト先生のエネルギー移動は体表に漏れだすことなく体内を移動し力として発動していた。
ワンフォーオールのことを説明された時、極まった身体能力の結晶という話をされた。身体能力ということは体の頑丈さも含まれてるはずなのに、デクくんは大怪我をしている。それはなぜか?器としてまだ未熟だからエネルギーが外に漏れてるのか?あるいはまた別の理由か……そもそも、腕を振って衝撃波が出る威力の拳を撃って反動がないというのも変な話。反動がないんじゃなくて、反動をものともしない頑丈さをワンフォーオールは与えているんだ。
それは体の中に作用する力で、きちんとデクくんにも作用している。じゃあなんでデクくんは大怪我するのっていうことなんだけど、外に漏れてる方のエネルギーのせい。これは威力を高めてると同時に反動も高めてるんだと思う。その反動が強烈すぎて、ワンフォーオールで頑丈になったはずのデクくんの体でも受け止めきれない。だから結果的に使ったら大怪我するんだ。
「オールマイト先生は最初からワンフォーオールを自由に扱うことが出来た。だから、外に何も漏れなかった。でもデクくんは違う、その漏れたエネルギーがデクくんを傷つけると同時に、強力な威力の増加を招いてる」
「じゃ、じゃあその漏れたエネルギーを何とかすれば……」
「いや多分それは無理じゃないかな……?器として完成すれば別かもしれないけど、今この段階でそれしたらデクくん破裂すると思うよ?安全装置みたいなものだよ、それ」
厄介なのが、ワンフォーオールという個性の性質、力を蓄えて次代に繋ぐ、つまり次代に繋がった状態の今デクくんのワンフォーオールはオールマイト先生のそれより強くなってる……んじゃないかな?エネルギーが漏れるというのがもし、収まりきらないエネルギーの有効利用みたいなものだったとすれば……蓋をした場合待ってるのは破裂だもの。エネルギーが漏れた状態のままで何とかしなければだめ、うん。
「は、破裂!?オールマイトも未熟な状態で受け取れば四肢が爆散するって言ってたような……」
「やっぱり」
「なるほど、緑谷少年と私の違いか……確かに入試の映像や戦闘訓練の映像を見る限りそういう状態なのは理解できる。して楪少女、緑谷少年に100%を打たせる方法とは?」
私の説明に納得してくれたオールマイト先生が口元に手を当てて記憶を思い出しながら肯定してくれた。私はそれに頷きながら、手を変形させる。デクくんのワンフォーオールで100%を打たせる方法、それは……
「外骨格、です。デクくんはこの手覚えてるよね?」
「あ、脳無と戦った時の……」
「そう、デクくんの腕が折れる原因は跳ね返ってくる衝撃とエネルギーに耐えられないから。じゃあ、耐えられるものを身に着けて打てば、大丈夫」
「サポートアイテムでの補助か!なるほど、私も一時期試したことはあるがあまり効果なくてね、盲点だったよ」
「サポートアイテムを着けたオールマイト!?なんだそれ全然知らないぞ……!?くそ、どこで見落としたんだ……?」
「わー、凄い早口」
「緑谷少年……君のことなんだぞ……」
腕部分だけゴリアテを纏った私がデクくんへの解決法、つまり衝撃とエネルギーを受け止めてくれるものを付ければ理論上100%のスマッシュを打つことができるはずなのだ。肝心要のデクくんはオールマイト先生がサポートアイテムを着けていた時期があると知ってスマートフォンとにらめっこしながらとんでもない早口でブツブツ呟いている。オールマイト先生はそれに若干呆れ気味だけど、好きなことに没頭できるのはいいことだと思うよ。私相手でよかったね、爆豪くんならキレて爆破されてたと思うよ多分。
「それで……んしょっと」
「わっ!?楪さん!?」
「けーそくちゅーだから動かないで。うーん、と。ここ、こうして……強度的には、構造的にもこれがいいよねえ。はい完成!」
「うわあ……凄いや楪さん。カッコいいねこれ」
「でしょ~~」
正気に戻すのもめんどくさかったので私は腕を元に戻してデクくんの後ろからもたれかかるようにして両手を緑谷くんの腕に重ねる。急に重くなったせいかびっくりしたのかひどく慌てるデクくんをほって意識を集中。するとそこから私が即興で設計&ビルドした細かい装甲が重ね合わさったような無骨な籠手がデクくんの肩から先を覆った。
「名付けて……チョバムガントレット!というわけでデクくん一発スマッシュ!」
「え!?ええっ!?流石に今からは少し……」
「……だめなの?ほら、オールマイト先生が見てくれるうちにやった方がいいと思うよ?大丈夫、計算上は問題ないから!」
「緑谷少年、仮に怪我をしたらこの路線はやめて別の方法を探ろう。希望が見えている以上やった方がいいとおじさんは思うな」
「オールマイトはおじさんじゃないです!」
そこじゃないんだけど……でも正直安心した。ここで二つ返事でやります!って言われてたら私は問答無用でリカバリーガールのメンタルヘルスにデクくんを突っ込んでいたところだ。あんなひどい折れ方、痛いに決まってる。自分の体の状態に頓着してないわけじゃなくてちょっと安心した、かな?まあやってもらわないと進まないからどのみちやってもらわないと困るんだけどさ。
オールマイト先生のおじさん発言に慌てて訂正を入れたデクくん、大丈夫かな?怖くないかな……?ちょっと発破かけようかな……挑発に乗ってくれるといいんだけど……
「正直私、デクくんがこのまま体育祭に行ってもいいと思うよ?怖いなら怖いでしょうがないし……ただ、今のデクくんがどう逆立ちしても私に勝てるビジョンはないもの」
「うっ……」
「デクくんの100%は脅威だけど、一発きりの大砲なんて攻略手段山ほどあるもん。現時点で私、10通りくらいデクくんを何もさせずに封殺する方法思いついてる。少しでもワンフォーオールが使えたら別だけど。今のままなら確実に何とでもできるって断言してあげる」
「うん、そうだね……僕は弱いんだ」
「あ、それは違うよデクくん。デクくんは弱くない、私が胸を張っていってあげる。あの時、脳無に向かっていったデクくんの勇気、無謀だったかもしれないけど……強い人じゃなきゃアレはできないから」
いきなりおかしなことを言いだしたデクくんに私は否定の言葉を返す。弱いって何さ。弱かったらみんなを助ける為にヴィラン相手に飛び出せるわけないじゃない。私は物理的な強さってすごく曖昧なものだって思ってるの。だって、力があっても立ち向かえなければ意味がない、逃げてしまえば力があっても何もできない。心の強さこそ、本当の強さだって私は思ってる。
「楪さん……」
「わー、デクくん思ってたけど泣き虫さんだね。涙腺どうなってるの~?」
どばぁ、とまるでコミックの表現のようにデクくんの両目から滝のように溢れる涙、そんなに私おかしいこと言ったかなあ?オールマイト先生はにっこにこで何も言わないし、しょうがないのでハンカチを取りだして優しく両目を拭いてあげるとそこでようやく覚悟が決まったらしいデクくんが口を開いた。
「うん、やるよ。折角楪さんがここまで協力してくれたのに僕が怖気づいてたら意味ないもんね」
「よし!それでこそだ緑谷少年!」
「はいっ!じゃあいきます!スゥマァッッッシュ!!!!」
デクくんが気合を込めて思いっきり殴るモーションを取ると、バリィと私の観測通りにチョバムガントレットの上から緑色の雷みたいなエネルギーが迸って、殴ると同時に開放される。さっきのオールマイト先生の100%並みの威力を持ったデクくんのパンチはすさまじい風圧を伴って演習場を駆け抜けていった。
バリィ、ガラガラとデクくんの腕から破損したチョバムガントレットが外れて落ちる。その下の手は……無傷。よし!計算通り!この状態からデクくんのワンフォーオールを調節可能にする下準備が出来たとみていいはず!たぶん!何せ私も譲渡可能な個性の使い方を考えるなんてやったことないからぶっちゃけ手探りだ!
「あ、あの楪さん!こ、これ……!」
「あ、ガントレット?大丈夫計算通りだよ。それ、壊れるように作ってるから。それよりもほら、腕……折れてないでしょ?」
「ほ、ホントだ……!痛くない!」
「やったな緑谷少年!ワンフォーオールを全力で放てる機会が増えるということは力み方のパターンを試せるということだ!調整に一歩近づいたぞ!」
チョバムガントレットは、壊れることで衝撃を吸収し中身を守る構造になっている。というのもさっきのオールマイト先生のデモンストレーションで私が今作り出せる物質ではワンフォーオールを耐えきれないということが分かっていたからだ。なので、使い捨てと割り切り中身を守ることだけに専念したガントレットを作ったというわけ。喜んでる所悪いんだけど……
「まあ、私がずっと協力するっていう前提の話ですけどね~」
「「え」」
「あの、楪少女?協力してくれる、ヨネ?」
喜ぶ二人に水を差す形になってしまった私のつぶやきにびしりと二人が固まる。オールマイト先生がつんつんと指と指を突っつきながら非常に申し訳なさそうに聞いてくるんだけど、私も私で事情があるんですよ。それこそ体育祭が近いというやつが。
「協力するのは吝かじゃないんですけど……私も体育祭に向けて準備がしたいんです。デクくんのワンフォーオールの特訓にずっと付き合ってあげられる時間も場所もないわけですし……」
「あ、そうだよね。みんな体育祭頑張りたいに決まってるんだ……僕だけのために楪さんの時間を消費するのも……」
「ふむ……確かに正論だ。ならばこうしよう楪少女!雄英ではないが、私が個人的に使っている演習場を、体育祭まで授業後私の名で貸切る!そして、私も時間があれば君の特訓に付き合おうじゃないか!必要なら他の生徒を連れてきても構わないよ!トゥルーフォームの時は申し訳ないけど私のことは管理人で通して欲しいが……どうかな?」
「それは……よろしいのですか?」
すごいな、言ってみるもの、という言葉があるけどまさにそれだ。実際私も体育祭ではかなり本腰を入れて頑張りたいので個性が使える広い場所を探していた。雄英の演習場には限りがあるし取り合いになるので望むべくもなかったけど、オールマイト先生が持っている演習場を使えるというのは物凄い魅力的な響きだ。まあ元からこのまま放置なんてする気は一切なかったけど、棚から牡丹餅かも。
「そこまで言っていただけるのなら、協力させてもらいますけど……いいんですか?贔屓とかそういうの」
「まァ……そういうやっかみはあるかもね。だけど、緑谷少年は私の弟子なんだから多少は贔屓したって許されるはずだ。世間一般に公表できないから、こういうところでは師匠面をさせて欲しいな」
「お、オールマイトォ……」
「わー、また泣いちゃって……デクくん水分補給しなよ?脱水症状出ちゃう」
大丈夫なんですか?という私の問いにオールマイト先生はぽりぽりと痩せた手でガリガリの頬を掻いて、デクくんの頭にポンと手を置いた。直接弟子、と言われたことがそんなに嬉しかったのかデクくんはまた滝のような滂沱の涙を流して喜んでいる。いいな、デクくん。№1ヒーローがお師匠様なんて、でもそれだけその身にかかる期待と重圧は重い物だと思うから、少しでも早く背負えるように私も手伝うことにしよう。もしも、許されるのならその重荷を少し分けてもらえたらなと私はまた考えて、今度はタオルでデクくんの顔を拭ってあげるのだった。
解決法はやっぱこれですよね。OFAについては少し独自解釈入ってるのはお許しください。内側で爆竹が爆発したようにって原作で表現されてますけど、ガントレッドとかを付けて壊れないなら多分外からの力じゃないかなって思いますし。中からならガントレッドつけても、というかガントレッド付けたら圧力の逃げ場がなくて多分もっとひどいことになる。
豆知識 楪ちゃんがことあるごとに人に抱き着いたりして止めるのは抵抗が一気になくなって楽なのと自分の体で包み込めば盾になるからです。邪な思いは一切ありません。
感想評価よろしくお願いいたします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ