個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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16話

 「希械ちゃん一緒に帰ろ~」

 

 「あ、ごめんね。今日は用事があるの」

 

 「またか?最近お前ぇ忙しすぎだろ。今度はなんだ?サポート科か?オールマイトか?」

 

 「うーん、どっちも違くて。特訓?」

 

 「「特訓?」」

 

 デクくんのワンフォーオールを怪我させずに打たせる方法を発見した翌日の事、ヒーロー基礎学を終えて帰宅時間になった私に一緒に帰ろうと誘ってくれる三奈ちゃんとえーくんにまた手を合わせてごめんなさいする。ここから毎日夕方はデクくんのワンフォーオールの特訓をすることになってるんだ。あとついでに私が構想中の新兵器その他もろもろの特訓も!体育祭に向けてplus ultraしなきゃいけないし。脳無にかなわなかったゴリアテをバージョン2にもしたいし。

 

 「えっと、ね?デクくんの個性あるでしょ?私が協力すれば骨折無しで撃てることが分かったの。だから、威力の調整の練習でこれから毎日デクくんと個性のトレーニングするの」

 

 「なにそれ緑谷ずっこい!」

 

 「え、ええっ!?いやまあ確かに楪さんに協力させてるのはその……」

 

 「ず~~る~~い~~!!あたしも希械ちゃんと特訓する~~~!」

 

 デクくんと特訓するんだぁと私が告げた瞬間三奈ちゃんは脱兎のごとくデクくんの席まで走って机をバン!と叩き抗議する。その音に飛び上がったデクくんがあたふたしてブツブツ言ってるけど、それよりも三奈ちゃんだ。戻ってきて私に抱き着いてかまって~~~とお願いしてくる三奈ちゃん。確かに最近はあんまり一緒にいないもんね。よしよし、と抱きしめて頭を撫でてあげて、と。

 

 「じゃあ、一緒に特訓する?デクくんも、いいよね?」

 

 「あ、希械それ俺も入っていいか?体育祭ちけぇし」

 

 「うん、いいよ。いこっか」

 

 「勿論だよ!切島君と芦戸さんに聞きたいこともあるし……」

 

 「べっつに今聞いたっていんだぜ緑谷。クラスメイトだしよ」

 

 オールマイト先生に他の人を連れてきても構わないっていう話もされてるので二人を連れて行っても大丈夫なはずだ。二人の参加を決定したところでデクくんは特訓するんだといつも一緒に帰ってる飯田くんと麗日さんに謝ってるけど二人はむしろ応援モードだ。二人とも今日は別の用事があるっていう話で不参加だけど時間があったら参加させて欲しいっていうし、今後は人数増えそうだなあ。

 

 オールマイト先生が持ってる演習場、雄英から結構近いし……オールマイト先生もしかして雄英の出身なのかな?本拠地は東京だけどこっちにも家あるって言ってたし……もしかして今はそこに住んでるのかも。やった~~と背中に抱き着く三奈ちゃんをおんぶして私はえーくんとデクくんと一緒に学校を出るのだった。

 

 「そういえば特訓てどこでするんだ?」

 

 「オールマイト先生が個人的に持ってる演習場を貸してくれるらしいの」

 

 「「オールマイトの演習場っ!?」」

 

 「声が大きいよ!秘密だよ?」

 

 演習場までの道すがら、行き先が気になったらしいえーくんが三奈ちゃんをおんぶ状態で歩く私に尋ねる。素直にオールマイト先生から借りたんだよ~と言えばそれは驚くよね。流石は平和の象徴、名前のビッグさでは他の追随を許さない有名人だ。二人はオールマイト先生が使っている場所と聞いて俄然ワクワクしている様子。だけどやっぱり気になるのは……

 

 「なあ、どうしてそこ貸してもらえたんだ?オールマイトってそういう贔屓みたいなの嫌いそうじゃねぇか」

 

 「んー、端的に言えばデクくんがあまりにもヤバいからかな」

 

 「あ~~……」

 

 「確かに緑谷、いろんな意味でヤバいかも」

 

 「ヤバいってなに!?いや確かに遅れてるって意味ではヤバいかもしれないけど……」

 

 「いやだってよ。訓練で腕ぶっ壊したり、USJでも指個性で折ってたじゃねえか。ありゃ流石にヤベえってなるって。良かったじゃねえか緑谷、オールマイトは個人をちゃんと見ててくれたってことだよ」

 

 なんでオールマイト先生が演習場を貸してくれたのかっていう言い訳、それはデクくんの個性の発動の仕方に危機感を感じて、解決手段があるなら早急に身に着けたほうがいいと判断したから、という理由になる。簡単に言えばテレビに映る行事で骨折カーニバルを開催されたらコンプラ的にもやばいし学校的にもやばい、じゃあ特訓するしかないよね?っていう理由だ。さっきからヤバいがゲシュタルト崩壊しそう。

 

 すとん、と三奈ちゃんが背中から降りて私は猫背だった背中を伸ばした。にしし~と笑う三奈ちゃんに緑谷くんはたじたじだ。三奈ちゃんは距離近いもんねえ、えーくんも最初のころはタジタジだったよ。雄英に入る前のえーくんはちょっぴり内気だったからね、でも困った人は見捨てなかったしいじめも率先して割って入って解決してた。根本は全く変わってないんだけど。

 

 「お~~、おっきい~」

 

 「希械ちゃん最近それよく言うようになったよね」

 

 「うん、皆が私をおっきいっていう理由が分かったよ。ポロっと出ちゃうね」

 

 「確かにでけえなぁ。雄英にあるのとそんな変わんねえんじゃねえの?」

 

 「お、来たね少年少女!」

 

 「オールマイト!?」

 

 「HAHAHA!実は今日は非番でね!少しだけ様子を見に来たってわけさ!」

 

 雄英のグラウンドくらい大きな演習場、郊外にあるから人家の距離も結構離れてるぽつんとした演習場から、私たちが来た事を察したらしいマッスルフォームのオールマイト先生が出てきた。彼の今のマッスルフォームの維持時間は2時間ほど、活動時間は1時間と15分らしい。この後用事があるから管理人とバトンタッチするけどねと笑っているから、今日の活動時間を使い切り、マッスルフォームの時間も残りわずかなんだろう。

 

 「あ、それと楪少女、これここの鍵ね。体育祭終わったらかえして頂戴な。緑谷少年もハイ」

 

 「見たこともないオールマイトキーホルダーだ……!」

 

 「そこ気にするんだデクくん……お借りします」

 

 「いいなー」

 

 「HAHAHA!メインで使うのはこの二人だからね!使いたかったらこの二人と一緒にくるんだぞ!着替える場所はあそこだ!鍵はかかるから安心したまえ!」

 

 頑丈そうな金属製の高い塀で囲まれてる演習場の機密扉を開けたオールマイト先生が私たちを中に入れてくれる。中には、更衣室と思われるプレハブ小屋と、ただ広いだけの演習場があった。正直十分すぎるんだけど、個性を自由に使っていい場所というのはもんのすごく貴重なの。だって危険だから。遠慮会釈なしに個性を使えるなら大丈夫、必要なものは私が作っちゃえばいいので!便利でしょ~。

 

 

 

 「じゃあ、さっそく始めようかデクくん。はい、手だして~」

 

 「う、うん」

 

 「緑谷少年、君のパワーは非常に有用だが抑え方に難がある。少し力を抜いてみるイメージを持つといい。USJで使った時の感覚を思い出すんだ」

 

 「はいっ!スマァッッシュ!!!」

 

 「うおおお緑谷やべええええ!?」

 

 「やっぱパワーあるねえ!」

 

 プレハブ小屋は一室しかないのでえーくんは女子は中で着替えろよっていってデクくんと一緒に外で着替えてくれた。私は三奈ちゃんと一緒に中で着替えて荷物を置いて雄英のジャージ姿で演習場にコンニチハする。オールマイト先生が最初の一発だけは見てくれるというのでデクくんの手にチョバムガントレットを装着、デクくんはもう自損しないのを知ってるので躊躇なく空に向かってアッパーをぶちかました。右目のデータを見ると、昨日よりもちょっと抑え気味。

 

 「うん、デクくん昨日より抑えられてるよ。100%が98%くらいになってるだけだけど……」

 

 「み、道は遠いね……」

 

 「やっぱりデクくんの個性発動のイメージを捉えないとだめかなあ。出来れば出力が調整出来て自分で分かりやすいもの……」

 

 「僕のイメージ、何があるんだろうでも今のやり方だとまずいし言う通り何かかんがえないとえーと」

 

 「でた、緑谷ブツブツ」

 

 バラバラになったガントレットを金属製の熊手を作って一塊にしながら右目のデータと合わせてデクくんに伝える。ワンフォーオールは上限がかなり大きいので僅かな出力の低下が威力を格段に減らす結果につながる。簡単に言えばとても分かりやすいのだ。あとは数を打って試行回数を増やし、その中でデクくんにイメージを掴んでもらうしかない。

 

 「うむ、では私はこれから用事があるので失礼するよ。管理人がいるから彼によろしくね」

 

 「あ、オールマイト先生!帰る前に一つお願いいいですか!?」

 

 「うん、何かな切島少年!サインかな!?」

 

 「サインも欲しいっすけど!俺を一発殴ってほしいんス!」

 

 「バイオレンス!何か理由があるのかい?」

 

 「今の俺の硬さがどれだけのものなのか、知りてぇんすよ。いざ前に出た時防御力が足りねぇなんて男らしくないんで、上を知りたいんス」

 

 ガツン、と硬化した手を打ち合わせながらえーくんはそんなことを言った。えーくん、カッコいいな。私の全力パンチをものをもしない時点で十分にすごいことだと思うんだけど……いっちゃなんだけど私そこらの重機くらいには馬力あるんだよ?メカだから。あ、でも戦闘形態でのパンチは試してないかも……

 

 「ふむ、そういうことならいいだろう。構えなさい切島少年」

 

 「ウッス!ありがとうございます!」

 

 そう言ってえーくんは全身を硬化して防御の構えに入る。いくよ、と声をかけたオールマイト先生が力を込めた拳をぶつける。えーくんは地面を抉りながら後ろに押されて塀に背中をぶつけてようやく止まった。肩で息をするえーくんに駆け寄って無事を確かめる。

 

 「ぐぅ……って~~!全然耐えられねえ、やっぱすげえわオールマイト先生!」

 

 「HAHAHA!だが今のを無傷でしのぐとはすばらしい硬さだ切島少年!正直私の拳もヒリヒリしてるよ……ではな少年少女!頑張りなさいよ!」

 

 目をキラキラさせてオールマイト先生を褒めるえーくんを褒め返したオールマイト先生はぐっとサムズアップした後大ジャンプをして去っていってしまった。えーくんは今ので頗るやる気が迸ったみたいでよしやるぞオラアアア!と叫んでいる。三奈ちゃんは私も頑張る!とふんすと鼻息荒く準備運動を始めた。

 

 「オールマイト先生、全く本気じゃなかったけどあの威力……デクくんと何が違うんだろうな……」

 

 「緑谷のパワーもやべえけどやっぱオールマイト先生の年季が違わなあ。緑谷は個性使いまくって調整の練習か?」

 

 「うん、楪さんが大変になっちゃうけど……」

 

 「いーよー。何かイメージを探すことを優先して打ってみよ?スイッチ、レバー、電化製品でも何でもイメージしやすいものを」

 

 「うーん、あたしのイメージってなんだろう?……手汗?なんか汚くてヤダー!あっ!手洗いだ!多分!」

 

 「俺が多分一番緑谷とちけーんじゃねえかな。ホレ、俺これ腕力んでるだけなんだぜ?」

 

 「そっか!切島君がかなり僕と近いんだ!ごめんだけど詳しく話聞いてもいいかな!?」

 

 「おお、いいぜ!」

 

 ガキンと片腕だけ硬化した状態の手をデクくんに見せて自分の個性の発動のイメージを語るえーくんに食いついたデクくんが矢継ぎ早に質問していくのを見ながら、私はがらがらと音を立ててチョバムガントレットを量産していく。三奈ちゃんがみてみて~と言うのでそっちに目を向けるとぶおんぶおんとトーマスフレアを決める三奈ちゃんの姿が!そういえばダンスが趣味なんだったね、凄いパワフル……

 

 「じゃあ、デクくんはひたすらスマッシュしまくってイメージのきっかけをつかもっか」

 

 「うん!頑張るよ!ありがとう楪さん!」

 

 「俺は……どうすっかな。希械さ、何時もみたいに俺殴ってくれね?」

 

 「いいけど~そしたら三奈ちゃんなにする?」

 

 「うぇ~~あたしだけ仲間外れにしないでよ~寂しいじゃーん」

 

 「あー、んならあれだな!組手!授業でやったやつ3人でやろうぜ!緑谷も疲れたら混ざって来いよ!」

 

 「うん!ありがと切島君!スマァッッシュ!!!」

 

 演習場の隅に私が作った台車の上に山積みになったチョバムガントレットと一緒に移動したデクくんはそこでひたすらスマッシュを上に向かって打ち始める。一発ごとにばらばらになるチョバムガントレットを見つめつつも口はブツブツと何かを呟いていて一発ごとに自分の中でイメージを固めつつあるみたい。

 

 私とえーくん、三奈ちゃんはそのまま3人で授業で習いだした近接格闘術の訓練を始める。これがなかなか面白くて、投げ方によっては私だって投げ飛ばされたりするのだ。体育祭の例年の目玉であるトーナメント式のガチバトル。それは個性ありの対人戦なのでこういう練習も超大事、私たちは日が暮れるまで、特訓に明け暮れるのだった。




 特訓パート。原作では数を打てずに制御に苦労していたOFAですが、この作品では材料さえあれば無限にガントレットを量産できる便利なメカむちむち少女がいるので試行回数を増やせます。便利。

 次回にもう一回特訓挟んで体育祭いきます。

 感想評価よろしくお願いいたします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ

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