個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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19話

 「ようやく全員戻ってきたわね!予選通過は上位42人よ!落ちちゃった人も見せ場は残ってるから安心ね!」

 

 『喜べマスメディア!こっからが本選!お前らごのみの番狂わせオンパレードだぜぇ!』

 

 全員が戻ってきて、ミッドナイト先生が通過者の人数を発表する。それ以外の人たちは終わったなどと言いながらため息をついて退出してそれぞれクラスに用意された席まで行くために競技場を出ていく。上位42人はヒーロー科で……いや違う。青山くんが43位で脱落だ。お腹を押さえながらとぼとぼと出ていく青山くんを見送って私たちはミッドナイト先生に向き直る。

 

 「本選の競技はこれ!騎馬戦よ!」

 

 「騎馬戦……あれ?個人競技じゃないんだ」

 

 「はいそこオダマリ!参加者は二人から四人のチームを組んでもらうわ!それで騎馬を作って頂戴!基本の騎馬戦とルールは一緒!ただし個性使用は自由!そして予選の順位に応じた持ちポイントがチームの合計点になる!ポイントの取り合いよ!」

 

 ミッドナイト先生がビシッと鞭を鳴らすと後ろの投影画面に騎馬戦の文字が表示される。なるほど騎馬戦……また私不利だよお!だってさ!だってさ!いろんな意味で大きい私のこの大きさだとまともに騎馬組めない!かといって上になんてなれるわけない!潰れるの必至!ふ、ふぐううう!こうなったら誰かをおんぶして私が全部やれば……!それじゃあ相方の子が可愛そう……あれ?私終わった?そんなあ……

 

 「わ、楪さんどうしたん!?急にふにゃふにゃになって……」

 

 「私……終わったかも……」

 

 「え、ええ!?」

 

 ぐんにゃぁ~とその場に折りたたむように崩れ落ちる私を心配したお茶子ちゃんに弱音を漏らす。こ、このままでは誰も騎馬を組んでくれないかもしれない……!ノー!それだけは絶対にノー!仲間外れになって戦えもしないだなんて情けない真似できないよ!ふわ~っと心配して思わず触ってしまったらしいお茶子ちゃんの個性で浮く私、すぐに降ろしてくれたけど……

 

 「そして1位の子に与えられるポイントは……1000万よ!」

 

 「あ、これデクくんヤバいやつだ」

 

 「上位の奴ほど狙われちゃう……下克上サバイバルよ!」

 

 サーーッと絶望的な顔でだらだらと冷や汗を流すデクくんとそれを見つめる私含めた参加者全員、これ実質1位の奪い合いだぁ……デクくんと目が合う……悲痛なくらいいっぱいに飽和した涙が浮かぶ目に書いてあるのは「助けて」の文字。私は微笑んで……目を逸らした。デクくんが驚愕する空気が伝わってくる。うん、私も組んであげても大丈夫だと思うんだけど……むしろ私でいいのだろうか?バランス酷いけど……

 

 「あぅ……あぅ……どうしよ」

 

 「ねぇ」

 

 「あ、はい!?」

 

 声をかけられたので返事をして振り返る。そこにいたのは確か宣戦布告をしに来た普通科の人……?なんだか頭に靄がかかったような感じがする。意識が落ちる、瞬間に脳内にバチンと衝撃が走って元に戻った。……?あれ?どうして意識が急に落ちそうになった時のセーフティーが働いたんだろう?頭を振って向き直る。

 

 「……??なにかな?」

 

 「っ!?いや、アンタじゃない。悪かったね」 

 

 「えっ!?ええ~~~!?」

 

 普通科の人は何かに驚くような雰囲気を出したけどプイっと顔を背けて別の場所に行ってしまった。もう!なんなの~~!あっ!?ちゃんと騎馬組まなきゃ!えっと!誰かいないか~~~!?

 

 「おい!クソメカ女!組め!」

 

 「ば、爆豪くん!?私でいいの!?」

 

 「何度も言わせんな!クソ髪のご指名だバァカ!俺の爆発に揺るがねえ騎馬がいるんだよ!」

 

 あたふたしてるとどうしたもんかどうしたもんかと焦りまくった私に後ろから爆発的なボイスが、片手をパチパチ言わせながら私に声をかけたのはなんとなんと爆豪くん。一番声をかけてこないと思ってた人なのであまりに驚いてしまった。後ろにはグッと親指を立てるえーくんと三奈ちゃんの姿が!ふ、ふたりとも……!

 

 「ケッ!当然俺が騎手だぁ。文句あるか!後は好きにやれ!」

 

 「あ、ありがとう3人とも~~~!私頑張るよ~~!」

 

 「ま、このメンバーなら一番互いの事知ってるからな!一番やりやすいだろ!」

 

 「希械ちゃんかなり強いからね~~!爆豪が上なら勝ち確定だよ!」

 

 「あたりめえだろ!俺が目指すのは完膚なきまでの1位だ!足引っ張ったらぶっ殺してやるからな!」

 

 き、騎馬が組めた!持つべきものはやっぱり幼馴染と親友とクラスの爆発才能マン!……語呂がちょっと悪いけど割と完璧な布陣だと思う。基本的に爆豪くんは接近戦、一部中距離戦でかなりの実力がある、と思う。戦闘訓練の様子を見る限り好みなのは接近戦だ、なら私たちがそうできるように調整すればいい。

 

 「とりあえず俺が前だな!どう組む?」

 

 「私、背が高いから背中から別のアーム出して両手フリーにするよ。遠距離攻撃は私が防ぐから」

 

 「私はトラップかな!酸で地面を転ばない程度に滑りやすくすればチャンス出るよね!」

 

 「勝手にしろ!んだけど……まずは1000万取ってからだ」

 

 「15分経過よ!騎馬を組みなさい!」

 

 ミッドナイト先生の宣言で私たちは騎馬を組み始める。前がえーくん、右後ろが三奈ちゃん。左後ろが私。私は背の関係上騎馬がいびつになってしまうので二人の身長に会わせた位置にアームを増設してそれで騎馬を組んだ。ついでにそこから金属製の鐙も作って爆豪くんが踏ん張りやすいように努める。私の両手はフリー、銃器を腕に作って遠距離攻撃への防御を行う予定だ。あと万が一爆豪くんのフォローが必要になった時のために開けといたほうがよさそう。

 

 「爆豪くん調整必要なら今言って!すぐ対応するから!」

 

 「左もっと下げろ、んで踵部分に角度つけやがれ」

 

 「ん、これでいい?」

 

 「赤点だクソメカ女」

 

 「……これ合格ってことでいいんだよね?」

 

 「爆豪ツンデレ~」

 

 「るっせえてめえらから死にてえか!」

 

 爆豪くんの言葉を理解するのはちょっと大変だけど、指示は割と的確に改善点を指摘してくれるのでかなり頼りになりそうだ。騎馬戦開始のカウントダウンが始まる。ちょっと緊張して来たけど、大丈夫。なぜならえーくんと三奈ちゃんの二人がいるから。この3人チームなら私たちは……無敵だ。

 

 「スターート!!!」

 

 「クソメカ女!クソデクの動き止めろ!」

 

 「楪って呼んでよぉ……」

 

 開幕から飛んだ指示にすぐに対応する。スタングレネードを体内で製造して腕に発射口を設置、ポンッ!ポンッ!と若干間抜けな音を立てて発射されたスタングレネードがデクくんどころか全ての騎馬の周りに転がって、炸裂する。一瞬の閃光、それに完璧に対応したのは私が発射してすぐ狙いが自分だと気づいたデクくん、常闇くん、発目さん、麗日さんの騎馬、轟くん、ものを見て創造を始めた八百万さん、飯田くん、上鳴くんの二つの騎馬だけ。そして爆豪くんは、腕から爆破を発して空を飛び、デクくんに襲い掛かった!

 

 「死ねえクソデクゥ!んなっ!?」

 

 「防げ!ダークシャドウ!」

 

 「やっぱり楪さんの万能性は八百万さんと並んで脅威……!早く離れないと!」

 

 デクくんの前騎馬にいる常闇くんのお腹から出てきた黒い闇の塊みたいな生き物が、爆豪くんの攻撃を防いだ。私はワイヤーを発射して爆豪くんに巻き付けて巻き戻し、騎馬の上に戻す。あれはありなのかと文句が出るがミッドナイト先生はテクニカルだからありとの声。じゃあもうちょっと踏み込んでも大丈夫そうかな……?

 

 「んだありゃ……!」

 

 「……常闇くんの個性、もう一人敵が増えたと思った方がいいかも。あの騎馬の誰よりも手強い……」

 

 「関係ねえ!取りに行くだけだ!」

 

 「単純なんだよ、A組っ!?」

 

 「……私いるのに後ろからとりに来てよかったの?」

 

 三奈ちゃんの横からかすめ取る様に爆豪くんのハチマキに手を伸ばしたB組の人の手首を掴んで止める。途中で空気が固まった壁みたいなものがあったから力を強めてたたき壊した。当然掴む力はかなり力加減に気を付けたけど。確かに爆豪くんはデクくんで頭がいっぱいかもしれないけど、下の騎馬の私たちはそうでもない。少なくとも、爆豪くんがハチマキを守り切れば上位に行けるからね。

 

 「ぐっ!放しなよ!見た目通り随分と力が強いね、まるでゴリラだ!」

 

 「おい!てめえ!それは」

 

 「いいよ、放してあげる」

 

 カッチーンときた。B組の人の余りの言い草にちょっと、私は怒った。言うに事欠いてゴリラって!みてよ私の手機械じゃん!あんなに毛深くないもん!三奈ちゃんもえーくんも私がそう言われたのが腹に据えかねたらしく言い返してくれるけど私が怒ってるのを察して黙った。私は肩から腕を自切してその人を解放する。自切した手はその子の手についたままだ。手の部分はサークル状に変形して手錠のようになり、そのB組の人は片手に70㎏を超えるおもりを付ける形になった。

 

 「ほら、放したよ?爆豪くん……取りやすいでしょ?」

 

 「ああ、よくやったメカ女ぁ!」

 

 「楪だってば!」

 

 自分のハチマキを取ろうとした、というのがかなり怒りポイントだったらしい爆豪くんは特徴的な三白眼をさらに釣り上げてヒートアップする。私たちの上から飛んだ爆豪くんは途中の空気の壁を全て爆破でたたき割って、挑発してきたB組の男の子は死ねえといういつもの爆豪くんの叫びと共にポイントが入った鉢巻を全てぶんどられる。今一度ワイヤーで回収した爆豪くんの目の先にあるのは……デクくんだけだ。

 

 「全員、飛ぶよ!上鳴くんから放電が来る!」

 

 「爆豪!掴まってろよ!」

 

 「希械ちゃんおねがいっ!」

 

 「指図すんじゃねえ!」

 

 右目からのデータで高電圧の気配がある。ここで固められたら厄介だ、私は増えたアームで全員をひっつかんで持ちあげる。さらに足にジェットエンジンを増設してジャンプと同時にブーストして空中に浮かんだ。意外なことに爆豪くんが爆発でバランスを取ってアシストしてくれる。その隙にとろうとしてくる人もいるけど甘い、噴射熱が邪魔になって近づけないからだ。そして、上鳴くんの電撃が来た。

 

 「このままタイムアップまで耐えるって方法もあるぜ爆豪!?」

 

 「クソ下らねえ冗談はやめろクソ髪!俺がとるのは完膚なきまでの一位だ!」

 

 「だって、希械ちゃん」

 

 「じゃ、取りに行こう!」

 

 「だから指図するんじゃねえ!」

 

 既に時間は3分の1を切ってしまった。マイク先生のちょっとだけやかましい実況を頭の隅に追いやってどうやったらこの状況からデクくんが持ってる1000万を奪えるか思案する。言うまでもないけど、私と一緒に特訓したワンフォーオール、たとえそれが一瞬でもどの部位で使ってくるかわからない以上迂闊に近寄れない。麗日さんのゼログラビティも常闇くんのダークシャドウも、そして発目さんのサポートアイテムも厄介だ。何をしてくるかが分からない。

 

 「悪いが、後には引かねえ。他は我慢しろ」

 

 「しまっ!?着地を!」

 

 やられた。轟くんは私たちが電撃を避けることは予想してたんだ。避けた上で、氷結を打ってきた。私とえーくんはすぐに足の氷結を砕いたけど、パワー型じゃない三奈ちゃんはそうはいかない。凍り付いてしまった足を動かせずにいる。酸で氷を溶かさなきゃまずい。強引に砕いたら三奈ちゃんの足も大変なことになる。それを理解してるのか爆豪くんは無茶なことは言わずに歯ぎしりだけして待ちの体勢に入った。

 

 『あーーっっと残り1分にしてぇ!轟氷結でサシの状態を作ったぁ!!』

 

 「ごめん溶けた!どうする!?」

 

 「時間がねえ!おいクソ髪!あのクソ氷突っ込んで割れるよなあ!?」

 

 「当然!3人でやるぞ!希械、芦戸!」

 

 「まっかせて~!酸で道を作る!」

 

 「私が推進力っ!」

 

 「俺が!破壊力ぅ!」

 

 時間がないので、突貫作業だけど!足が自由になった三奈ちゃんが名誉挽回とばかりに前方のフィールドを酸で溶かして滑りやすくしてくれる。私はそこで背中にバーニアを作って点火し、轟くんが作った氷結に向かって一直線に加速して突っ込む。えーくんは全身を硬化して推進力をそのまま破壊力に転換して氷結に突っ込む。爆豪くんはまた意外にも突入のタイミングに合わせて両手で爆破を放っていきすぎないように勢いを殺しつつ氷結を破砕してくれる。

 

 『あ~!ここで爆豪チーム!氷結ぶっ壊して侵入だあ!』

 

 「クソデク!1000万よこしやがれ!」

 

 「違う!爆豪くん1000万は轟くんが!」

 

 電光掲示板をチラ見するとポイントが変動している。両手にワンフォーオールを纏ったデクくんとデクくんに飛びかかろうとして途中で爆破で向きを変えた爆豪くんが同時に空中で轟くんに飛びかかる。八百万さんが創造しようとした何かを私は腕を変形させた機関銃で潰した。この攻防で終わりだ、どうなる!?

 

 『しゅ~~~~りょ~~~~!!!!1位は轟チーーーーム!!!』

 

 ……!やられた。爆豪くんが轟くんに目を奪われた瞬間に、デクくんは標的を爆豪くんに変更して、ハチマキを一つ奪っていった。爆豪くんはそれに気づいて片手で防御しながらも、轟くんが持ってたハチマキの内二つをもぎ取った。だけど轟くんの方が一枚上手で、1000万は一番下に隠されており、爆豪くんの手は今一歩届かなかったのだ。

 

 クソが、という爆豪くんが地面を殴りつける音を聞きながらも、2位通過ということを知った私たち3人は、笑って頷くのであった。あ、B組の人につけた手を回収しないと




 ちょっと柔らか爆豪くん。次回トーナメントはガッツリと変えますのでお楽しみに
 では感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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