個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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20話

 「午後の応援合戦だけどよ、みんなあの格好でチアリーダーするらしいぜ」

 

 「……そうなんだ?私の入る服あるかな?」

 

 「いや楪さ、こいつらの言ってることあっさり信じすぎでしょ」

 

 騎馬戦が終わってお昼休憩、さすがに今日は体力を温存したかったのでお弁当はなし。おにぎりはおかあさんが握ってくれたものだけど。そんなわけでなんと今日は女子全員で集まって女子会的なお昼を楽しんでいるのだ。私のお盆の上に載った特大のかつ丼が目を引くかもしれないけど、今回は私、恥を捨ててるのでがっつり食べます!例年通りならここからガチバトルがあるはずなので!

 

 実は初体験の学食なんだよね。オールマイト先生に突撃した時はお昼食べ損ねたし。午後の基礎学大変だったなあ……パクっとスプーンでかつ丼を食べてみると、すっごい美味しい!流石はランチラッシュ!災害現場での炊き出しが主な活動だけど、逆にその料理が食べたいと被災者以外まで集まっちゃうだけあるなあ。それはそうと、上鳴くんと峰田くんの言葉、本当かな?

 

 「まー信じるも信じねえも自由だけどよ、相澤先生の言伝だからな」

 

 「オイラたちも飯食うからこれでな~」

 

 「……相澤先生からの連絡なんだ?」

 

 「じゃ、じゃあチアやらないとダメなん?」

 

 「えー!ヤダよウチ!」

 

 「いーじゃん!おもしろそー!私透明だから目立てるの好き!」

 

 「チア服ないのかな?ヤオモモだせる?あれ」

 

 「え、ええ。出せはしますけど……」

 

 「ケロ、しょうがないわね。学校行事だもの」

 

 上鳴くんと峰田くんが生真面目な顔で手短に応援合戦はチアの服でという相澤先生の言伝を伝えてくれる。伝えてきたのがこの二人だというのがいまいち信用できないんだけど、相澤先生だったらたまたま通りがかった二人に言伝を頼む可能性は十分にある。さらには峰田くんが一切セクハラじみたことをしないで去っていったのが情報の信ぴょう性を高めてるし……着なきゃだめなのかぁ。チア

 

 「私、手足機械だからあんまりこういう場で出したくないんだ……誰も見てうれしくないと思うんだけど……」

 

 「その発育の大敗北があってその言い草は看過できないんじゃよ希械ちゃん!」

 

 「ひゃっ!?も、揉まないで……」

 

 「ほんと……すごいよね……」

 

 な、なんか耳郎さんの顔というか目が怖い!?ち、違うんです手足という生身と一緒に成長していく部分がない私の体は何故かそこを成長させただけなんです!あれ?そう考えたらこれって贅肉なのかな……?だ、ダイエットしなきゃ!明日から!私は半分平らげた特大カツ丼を見ながらそう決意するのだった。

 

 

 

 『ヘイ1-A組ィ!!!なんだそのサービスはぁ!!!』

 

 「上鳴くんと峰田くん!騙したんだね!きらい!」

 

 「上鳴さんに峰田さん!騙したのですね!!」

 

 「うわ、希械ちゃんからきらいって言葉がでた。しばらく口聞いてもらえないねあの二人」

 

 お昼休憩を終えた私たちは応援合戦のためにチア服に着替えて競技場に戻ってきた。けど、全員でポンポン持って並んだタイミングで騙されたことを知った。折角八百万さんがわざわざ創造でチア服出して、着替えて、それでやらなきゃダメなのッて言いながら出てきたらこれだよ!もう私体育祭の間二人と口きかないから!もう!

 

 「デッッ!?」

 

 「でっっっか」

 

 「キタコレ」

 

 『ヘイ観客ぅ!うちの生徒を邪な目でみるのは厳禁だぜぇ!!』

 

 ほら~~、ヒーロースーツなら必要だから別に出してていいんだけど、必要じゃないならこんな大きいもの出しててもしょうがないんだよ!変に悪目立ちしちゃうし注目だって集めちゃう!は、恥ずかし~~!恥は捨てたっていうけどこの類の恥はまだ持ってないといけないやつだと思うの!

 

 「どうしてあの二人の策略にまんまと騙されてしまいますの私……!」

 

 「アホだろあいつら……そこまでしてみたいの?」

 

 「まあ本選まで時間開いちゃうし……いいんじゃないやったろ!?」

 

 「透ちゃん好きね」

 

 葉隠さんと三奈ちゃんは割と乗り気みたい。私はぽんぽんで顔を隠しつつ小さくふりふりと動かすしかできない。みんなやるから恥ずかしくないと思ってたけどそれが私たちだけなら恥ずかしさを忘れるなんて無理だよ!う、う~~~!!

 

 「や、やったろうじゃないの!」

 

 「お、希械ちゃんがヤケクソだ」

 

 「むおおおお~~~!!」

 

 色々メーターが振り切れた私は葉隠さんと三奈ちゃんに習って大きく手を振りながら観客の前に飛び出すのだった。あっ!?下着のホックが……!跳ねすぎたぁ……!

 

 

 

 

 

 「わ、忘れてください……」

 

 「無理やねえ」

 

 「無理ですわ」

 

 「無理かな~!」

 

 「か、かくなるうえはこの頭を吹き飛ばして全てに片を……」

 

 「わーちょっとストップストップ!体育祭でスプラッタはだめ!」

 

 えー、懺悔します。わたくしこと楪希械は恥ずかしさを忘れる為に全力でチアリーディングを行い、結果的に後になってから激しく後悔をして黒歴史を作りました。誰かレクリエーション前の私の手足を吹き飛ばしてでも止めて欲しかったです。意外と私みたいな体にもニッチな需要があると知りました。知りたくなかったです助けて。あと峰田くんと上鳴くんはきらい。

 

 「いっそ自爆を……」

 

 「もう怖いことばっかいわないの!ほら!本選始まるんだから頑張る!ね!?」

 

 「それよりもほら!試合始まるから!」

 

 「えぅ……デクくんの出番だぁ……」

 

 「半泣きだ……どんだけ恥ずかしがってるのよ……」

 

 ほぼ泣いてる私がクラスに用意された客席からタイマン用にセメントス先生が作ったステージを見る。黒歴史の前に引いたくじにより体育祭の最大注目競技であるガチバトルの組み合わせが決まっている。尾白くんとB組の庄田くんの二人は辞退をするって決めたらしいけど、同じく心操くんのチームだった瀬呂くんは出るつもりみたい。

 

 組み合わせとしては1試合目からデクくんと心操くん、轟くんと瀬呂くん、上鳴くんと三奈ちゃん、飯田くんと発目さん、私とB組の塩崎さん、えーくんとB組の鉄哲くん、常闇くんと八百万さん、麗日さんと爆豪くんの順番。私、勝ったらえーくんと戦うかもしれないんだ……えーくんが負ける、という可能性もあるけど。えーくんを真正面から倒せる人はなかなかいないと思う。爆豪くんの持久戦、デクくんの30%以上、轟くんの全身凍結……少なくともこれくらいはいると思う。

 

 「心操……頼むよ緑谷……」

 

 「尾白くん、その……辞退したのって心操くんと関係あるの?」

 

 「あ、楪さん……うん、あいつの声に答えたら意識が飛んで、気づいたら結果発表の所だった。洗脳、されたとしか思えないんだ」

 

 「精神系の個性なんだ……道理で私に声をかけた後に驚いたわけだね。かかってなかったから驚いたんだ」

 

 「楪さんはどうやって彼の個性から抜け出したの?」

 

 「えっと、ほぼ偶然なんだけど……私、大きくて重いでしょう?変なタイミングで気絶とかしちゃうと危ないから……急に意識が落ちると再起動がかかる様になってるの。意識が覚醒したから効かなかったんじゃないかな?」

 

 「へぇ……不便じゃないのかい?」

 

 「オンオフは効くんだよ。意識的にやってることだから。授業中とかはずっとオンだけどね、今回みたいな行事でも。私が倒れた時運べるのは……えーくんぐらいだから」

 

 これは、中学校の時に炎天下での体育でオーバーヒートを起こして倒れてしまった時、私を誰も運べなくて救急車が来るまで放置されざるを得なくなったことがあった時にこれから必要かもと思って作ったプログラムなんだ。結局そのあとからは自分でも気を付けるようになって同じことは起こってないけど……人生何があるか分からないね。

 

 『さあ結局これだぜガチンコ勝負!成績の割になんだその顔!ヒーロー科緑谷出久!ヴァアアアサス!どこからやってきたダークホース!普通科心操人使ぃ!』

 

 「うそっ……デクくん、かかっちゃった……!」

 

 「ああ、もう!言ったのに!」

 

 壇上に上がった二人、試合開始のゴングと同時に一歩前に進んだデクくんが完全に動きを止めた。ここからじゃ遠すぎて読唇は難しいんだけど心操くんの口元が動いてたから何かしらの言葉がトリガーになってデクくんの精神に作用した、んだと思う。尾白くん曰くおそらく言葉に返答することが条件……凄い個性だ。その気になれば戦闘全てを無血で終わらせられるし、ヴィラン相手にはめっぽう頼りになる個性、宣戦布告だってしたくなるわけだよ。

 

 一歩、また一歩と自分から外に歩いて行ってしまうデクくん、このままじゃ場外アウトで負けちゃう……!最後の一歩、というところでデクくんを中心にすさまじい衝撃波と突風が駆け抜けた。思わず立ち上がって手すりまで走ってしまう。デクくん、ワンフォーオールを暴発させた……!手段がない、とは言ってもあれじゃ指が……!

 

 そこからは速攻だった。デクくんは反転するとワンフォーオールを両脚に発動して一足飛びにジャンプ、爆豪くんの動きを参考したらしい飛び膝蹴りを心操くんの胸ど真ん中に叩き込んだのだ。何かを言おうとする心操くんの顔に必死な色が色濃く出てくる。そこで分かった、言いたくないんだきっと。どんなことを言ってるかは分からないけど、挑発して返事を言わせようとしているんだと思う。

 

 その挑発にはきっと、ひどい言葉も含まれているんだろう。心操くんはそれを言いたくない、だけど勝つためにはひどい言葉を使わなければいけない。それでも彼は、勝ちたいんだ。ヒーロー科に入ってヒーローになるために。だからデクくんも、彼を真正面から打ち倒すために、今できる全力のワンフォーオールを使うことにしたらしい。

 

 せき込んで膝をついた心操くんが何とか立ち上がる。けどデクくんは既に準備を終えて、折れてない右腕でのスマッシュを彼の顔に思いっきりぶつけた。それが決定打となり、吹き飛んだ心操くんは場外に落ちる。意識が飛ぶほどじゃなかったらしい心操くんが呆然と座り込む中、デクくんはステージから駆け降りて、彼に手を差し伸べた。

 

 心操くんは一瞬だけ悔しそうな顔になったけど、すぐにそれを引っ込めてデクくんの手を借りて立ち上がる。そして、普通科を中心として拍手が彼に降り注いだ。プロヒーローからの賞賛の言葉もちらほらとあるが、それよりも大きいのは普通科の人たちから心操くんへの誉め言葉とエールの量。きっと彼がヒーロー科に行きたいということはクラスメイトにとっては周知の事実で、みんな応援してたんだと思う。ひどい言葉は上っ面だけで、本当はみんなに慕われてるいい人なんだね、心操くんは。

 

 『第二試合!強すぎイケメンプリンス!轟焦凍!ヴァアアアサス!優秀だけど地味!地味だけど優秀!瀬呂範太!』

 

 二試合目、デクくんと心操くんがフィールドを入れ替わる様に同じクラスの二人が姿を現した。轟くんの氷結と炎……炎の方は授業でも氷を溶かす以外で使ったのは見たことないけどかなり強い人だ。特に熱は私の天敵なので戦うなら対策必須だけど……なんで彼は氷結ばっかりこだわるんだろう……?

 

 一方瀬呂くんの個性、テープは遠距離向けの個性で、肘からテープを射出し、巻き戻したりもできる便利な個性だ。直接的な攻撃力はないけど拘束力に非常に長けている。もしも私が彼の個性で轟くんに挑むとしたら速攻をかけての場外狙いが一番可能性が高いとおもっているけど……。

 

 『試合開始ぃ!』

 

 パキィン……と音がして観客席の眼前に巨大な氷山が出現した。轟くんの氷結だ……試合は一瞬だったけど、やっぱりテープで拘束したのちに場外に出そうとした瀬呂くん、轟くんは拘束されつつも氷結ですべて凍り付かせて終わらせた。ビル一棟丸ごと凍らせた時に思ったけどなんて出力なんだろう。

 

 会場はドームだ。そのドームの半分を埋め尽くす氷山、もしもあれが最大規模じゃないとしたらいくら私でも強引に真正面から迎撃するのは難しい。入試でも実践したけど、質量は正義なんだ。私の馬力がいくら強かろうと馬力以上の重さを被せられたらどうしようもない。流石に氷山は動かすことは……このサイズならできなくもないけどちょっときついのは変わらない。

 

 「すごいね、轟くんは」

 

 「あーやだやだ、才能マンだねこりゃ」

 

 「……」

 

 「え!?なに無視!?」

 

 「上鳴、希械ちゃんホントに怒ってるから暫く口きいてもらえないと思うよ?」

 

 「えっ!?ちょっと待って無視は流石に心にくる!楪みてーな奴だと特に!」

 

 「楪ちゃん、優しいから怒らせたら多分その分怖いと思うわ。無視だけでよかったわね上鳴ちゃん」

 

 謝ってくれないから許してあげないもんね。峰田くんにもべーっと舌を出して私は次の試合の準備に向かうために席を立った三奈ちゃんを応援するのだった。上鳴くんも同じ試合だけど、私は三奈ちゃんの親友なので三奈ちゃんを贔屓することにします。でも、クラスメイトとしてちょっぴりは応援してあげる。三奈ちゃんの次あたりに。

 

 




 激おこ楪ちゃん。ハメられてチアやらされて黒歴史作ったらそりゃそうなるよね
 
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