『さぁいよいよ決まるぜマスメディア!雄英の1年生の頂点がここで決まる!轟VS楪!』
「……目、出したんだな。初めて見た、両目」
「そう……だっけ?爆豪くんのおかげで前髪滅茶苦茶になっちゃって……」
「そうか」
「お揃いだね、オッドアイ」
決勝の舞台で向かい合う、私と轟くん。轟くんとの交流は爆豪くんより薄いし、私は授業でも右目を余りだしたことはない。でも恥ずかしくはあっても見られて不快ってわけじゃないから露出したことは何度かあったはず……?多分それだけ周りに興味がなかったのかそれ以上に何かを強く追い求めて周りの情報をシャットアウトしてたのか……。
轟くんが言う通り私は爆豪くんの爆発で前髪が見事に溶けて癒着しちゃったのでぱっつんと切って露出してる。個性使って伸ばせなくもないけど、余計な出費は後で響く。僅かな差で勝利が決まることもあるんだから全部終わらせてから余分を考えるべきだ。お揃いだね、と轟くんの左右で色が違う目を見ながら言うと、彼は少しだけ目を見開いてそのまま黙ってしまう。
「轟くんってさ、どうしてヒーローになりたいの?」
「お前に、関係あるか?」
「ないかもね。だけどクラスメイトだから……あなたの事知りたいの。だって轟くん、誰とも話さないから」
「仲良しごっこするつもりはねえ」
「……私はね、誰かを守りたいからヒーローになりたいの。なりたい自分になりたいから。轟くんもそうでしょ?なりたい自分になるためにヒーロー科に来た、そうじゃない?」
『決勝戦、スタートォ!」
「うるせぇ……」
「お節介かもしれないけど、それがヒーローだから!本気を出せない理由があるなら、それでいい!でも、私は……全力の轟くんと戦いたい!」
スタートの合図とともに轟くんの右側から規模の大きい氷結が襲ってくる。左の炎はうんともすんとも出してこない。しっかりと両目を捉えた彼の目は、揺れに揺れていて、私を見ていない。遠いどこかを憎むようなそんな目をしてる。どこ見てるの?誰を思ってるの?上の空で勝てると思われてるほど……私って弱く見えるのかな……?
「リヴァイアサンテイル、
右手からの断続的な機械音、形成されたのは青いエネルギーの棘が生えた鉄球を備えた武装。リヴァイアサンテイル、端的に言えば衝撃波発生装置を内蔵した棘付き鉄球、要は力押しの象徴みたいな武装だ。いわゆるモーニングスターっていう可愛くない武装。金属製の鎖でつながってる鉄球を柄から伸ばして、思いっきり眼前の氷壁に叩き付ける。
『楪氷結を一蹴ぅぅぅ!!!』
「氷は私に通用しないって、知ってるよね?」
音を立てて私の手足が変形する。戦闘形態、バーニア増設。脹脛のスラスターを噴射して飛びあがり、轟くんの近くの地面に向けて思いっきり叩き付ける。ステージに叩き付けられた鉄球の中にある衝撃波発生装置が起動して、周りにショックを振りまいていく。それに押された轟くんは背後に氷の壁を出して吹き飛ばされるのを耐える。
炎はでない。どうも轟くんは私と接近戦をするのがお気に召さないみたいで、距離を取って氷結を連打してくる。けど私は都度それを丁寧に砕いていく。振り回される鉄球がステージを穴だらけに変えていく。別に轟くんが本気を出さないなら出さないでもいいと、私は思うけど……でもさ、自分に嘘をつくのは良くないと思う。
多分轟くんは、勝ちたい。勝ちたいはずなんだ、だけどデクくんに無理やり心の柔らかい所をつつかれて、炎を使って……分からなくなってる。自分がどうしてここに立ってるのか、流されてるだけなのか、目標があったのか……いろいろ全部ぐちゃぐちゃになっちゃってる。本来の目的を見失ってる。みんな、勝つためにここにいる。それだけは間違いない筈なんだ。
「勝ちに来ないと!本当に何もできずにこのまま私に譲っていいの!?じゃあなんで勝ち上がってきたのっ!?」
「っ……!」
「デクくんとの試合で言ってたよね!?俺だってって!ヒーローになりたいって!なりたいんならなればいいんだよ!なりたい自分になっていいんだよ!」
あとから録画で見返した時に気づいた轟くんの言葉、音声では聞こえなかったけど、口元の動きで分かった。轟くんの底の底にあった本音が。ヒーローになりたいって言ったんだ、氷結だけっていう縛りを取っ払ったその先にもあったその言葉が本音!
「負けるな!頑張れ!二人とも!」
「……緑谷」
「デクくん……!」
観客席から届いた、応援。私たち両方に届いたエール、その流れは会場の全てに伝播して……私たち二人を応援してくれる。降り注ぐエールの雨に、少しだけ顔がほころんだ。
「一回さ、全部忘れちゃおうよ。全力って出したらすっきりするよ。考えるのはそのあとでもできる。今は、今できることを本気で取り組むのが一番だと私は思うな」
「……緑谷も、お前も……変な奴だ。なんも知らねえのに俺の中かきまわして……どうなっても知らねえからな」
「望むところ!」
パキパキ、ゴウゴウと轟くんの左右から氷結と炎が顔を出した。リヴァイアサンテイルを作り変えてスラストハンマーに、そしてもう一方、チャージジャベリンを新しく作り出す。大型の武器を二つ両手で構えて、背中のジャージを破ってゴリアテの背中についてるブースターが生成される。
襲い掛かる氷結に恐れず突っ込む。バカみたいな加速を生み出すブースターの勢いに乗せてチャージジャベリンを構えて氷結に突っ込んだ。最大威力の氷結の中をジャベリンの突破力だけを頼りに掘り進む。氷結を突破した私が勢いに負けて折れ曲がったジャベリンを捨てる。そのままスラストハンマーの噴射口から思いっきり噴射炎を吹かして大上段に構えて轟くんに向けて流星のように突っ込んだ。
「あっ!?」
炎での迎撃が来ると思ったけど、無視して一撃くらいは行ける、そう考えて迫る熱に向けて覚悟を決めた私と反比例するように、轟くんの左から出てた赤い炎は収まってしまった。私は迎撃される前提だった攻撃を無理やり逸らして轟くんの手前の地面に無理やり軌道変更する。勢いは殺せず、そのまま轟くんの近くに着弾した私の攻撃は、轟くんを吹き飛ばして……場外に押しやってしまった。
「……私じゃ、足りなかったんだね」
『試合終了!!!今年の1年生のトップを飾ったのは……メカガール!楪希械だぁぁぁ!!!』
ぽつりと呟く私の言葉をかき消すように、マイク先生の絶叫と健闘をたたえる拍手が降り注ぐ。私は腕と足を元に戻して、焦げちゃった背中丸出し状態のジャージ一枚のままステージを降りて轟くんの元に向かう。座り込んで私を見た轟くんは、すっと目を逸らした。
「はい、お疲れ様轟くん。ごめんね、勝手に色々好き勝手言って。嫌だったよね」
「……いや、俺の方こそ……悪かった。最後の最後でまた……迷っちまった」
ちょうどよく背中が開いてたので排気口を作って排熱した私は、轟くんに謝りつつ手を差し出した。戦ってる最中とか気が高ぶっていつもより饒舌になっちゃうのが私の悪いところかもしれない。目をそらしていた轟くんだったけど、差し出された私の手を見て、ついで私を見てくれた。うーん、結局私は轟くんが抱えてる事情を知らずに好き勝手やっただけなんだよね。迷惑千万極まりない。
「なりてえ自分、か……小せえ頃、おかあさんにも同じこと言われた」
「おかあさんが、私と?優しいお母さんなんだね」
「……そうだな。そうだった。ずっと忘れてたんだ、俺のおかあさん……優しかったんだ」
「……」
「どうした?」
「轟くん、イケメンってよく言われない……?」
「……何の話だ?」
咄嗟に出た照れ隠しに轟くんが首をかしげる。おかあさんの事を思い出して語る轟くん、その微笑みはまさに絵画のようで思わず見惚れそうになってしまうくらい絵になっていた。半分機械でビックサイズな私だけど一応、女の子なんです。そういうのを直視しちゃうとその、こう……言葉にできない気持ちになる。しかも私、今目を隠してないからその爆撃を直視してダイレクトアタックを貰った。そういえば三奈ちゃんが轟って顔がいいよね~って言ってたのを思い出した。超納得した、うん。
「ねえ、轟くん」
「何だ?」
「仲良しごっこ、するつもりはない?」
「……いや」
「私と友達になってほしいの、オッドアイ仲間、初めて見つけたし」
私の手を取ろうか迷っているらしい轟くんの手を掴んで強引に立ち上がらせながらそう尋ねる。轟くん、何となく体育祭前と雰囲気が違う。氷のようだった拒絶の色が、今はない。その原因は私じゃなくてデクくんだろうけど、折角雰囲気が柔らかくなったし、クラスメイトになったんだからずっと一人でいるのも寂しくないかな?それこそ余計なお世話だけど、まあ私の欲望だ。轟くんとお友達になりたい、それだけ。
「……俺で、いいなら」
「轟くんがいいんだよ。きっと私以外も、轟くんと友達になりたいって思ってる」
「……そう、か」
「だから反則だってそれ……」
またまたイケメンフェイスを緩やかに微笑みの形にした轟くんからダメージを貰いつつ、私は一緒に出張保健室に向かうのだった。
「それではこれより!表彰式を行います!」
「ん~~~~!!!!」
「爆豪くんどうしちゃったの……!?」
ミッドナイト先生の音頭で上空にぽんぽんと花火が撃ちあがる、表彰式、保健室で新品のジャージに着替えて個性を使ってまた目を隠せるくらいに髪を伸ばした私と、何となくそれを残念そうに見る轟くんが会場に戻ってくるとセメントス先生の個性によって作られた表彰台の3位の場所にありとあらゆる方法で雁字搦めにされた爆豪くんがご丁寧に猿轡を噛み砕く勢いで暴れていた。
「あいつ……顔すげえな」
「否定できないけど出る感想それなんだ……」
ひぃ……もともと怖いと思ってたけどより怖さが倍増してるよ爆豪くん……。目の血走り方と吊り上がり方がコミックもかくやみたいな感じ。というか手枷の中で小爆発が連続して起こってるみたい、だってみるみる間に手枷が内側からボコボコになってるもん。大丈夫だよね?襲ってこないよね……?とびくびくしながらミッドナイト先生に促されて1位の台に上がらせてもらう。
「折角カワイイ顔してるのに、もう隠しちゃったの?もったいないわ」
「い、いいんです。私はやっぱりこの方が落ち着きますから」
ミッドナイト先生の残念そうな言葉に私ははっきりとそう返す。やっぱり私は目が隠れてる方が落ち着くし、周りの目線も気にならなくなってちょうどいい。1位の表彰台に注がれる視線は強烈でいつもの私だったら縮こまって誰かの後ろに隠れてたかもしれないけど今だけは胸を張ってこの場所に立とう。どんな形であれ、私はこの場所を勝ち取ったなら、それにふさわしい姿であるべきだから。
「じゃ、早速表彰に移らせてもらうわ!今年のメダル贈呈は勿論この人!」
「私がメダルを持って「我らがヒーロー!オールマイト!」……」
か、被っちゃった……!凄い、すごい気まずい……!表彰台に漂うこのいたたまれない空気、何時もの陰影の濃い画風の違う笑顔で無言のままミッドナイト先生を見るオールマイト先生、暴れる爆豪くん、我関せずの轟くん……なんて個性的なんだろう。どうすればいいのこの空気……助けてえーくん……。
「本来なら3位には飯田くんもいましたが、おうちの都合で早退となりました。ご了承くださいな」
「気を取り直してメダルを授与させてもらうよ!まずは爆豪少年……これはあんまりだな……」
「オールマイトォ……そんなメダル要らねえからさっさと終わらせろォ……!俺は負けた!それで十分だクソが!次は絶対に1位になってやる!」
「む、上昇志向なのはいいことだ爆豪少年。有言不実行は残念だが、受け取りなさい。これは君が努力し、勝ち取った証なのだから」
「いらねンガッ!?ん”ん”ん”~~~~~!!!」
爆豪くんの猿轡を外したオールマイト先生が入れ替えるように猿轡を爆豪くんに咥えさせてメダルを授与する。授与って言っていいのかな……?めっちゃ歯がギリギリ言ってる。その、すり減って折れちゃいそう……
「顔つきが変わったね轟少年!決勝で左を収めてしまったのには理由があるのかな?」
「……分からなくなったんです。緑谷にきっかけ貰って、俺だけ吹っ切れて……それじゃダメだと思った。全部清算してからじゃないと使えないと、思ったんです」
「そうか、今の君なら必ずできる。準優勝おめでとう轟少年!次の年も期待しているぞ!」
轟くんをぎゅっとハグしたオールマイト先生が、彼の首に銀色のメダルをかける。そのメダルを手に取って見つめた轟くんは静かに頭を下げて前を向いた。それを満足気に見つめたオールマイト先生が今度は私の前にやってくる。私より少し背が低いオールマイト先生は、グッと右手のサムズアップをくれた。
「優勝おめでとう楪少女!頑張ったね!今君は雄英の1年生の頂点に立った!プロの目からも君を欲しがるところは沢山あることだろう!」
「はい、ありがとうございますオールマイト先生」
「多くを語る必要はないみたいだね!君の応用力の高い個性はどの現場でも必要とされる素晴らしいものだ!いつか同じ舞台で君と肩を並べるのを楽しみにしているよ!」
オールマイト先生はそう言って、私の首に金メダルをかけてくれる。そしてそのまま、大きな暖かい手で頭を撫でてくれた。オールマイト先生に促されて、私は片手をあげる。ガッツポーズだ。その瞬間に爆発するように観客が沸く。クラスの席からもみんな、歓声を上げていた。私はそれに満面の笑みで返す。
初めての体育祭は私の優勝という結果で終わった。だけど、それだけじゃなく沢山変わったこともある。クラスメイトの新たな一面を知れたり、お友達が増えたり。つまり何を言いたいかと言えば……私にとっては考え得る限り最高の結果だったってことだ。
楪ちゃん、優勝。これが炎を完全開放したガチろきくんなら話は違いましたが流石に氷結だけならメッタメタのメタが成り立つのでね。あとお友達も増えたよ、やったね。
この作品の轟くんはゆるゆるド天然イケメンです。主に女子の心を撃ち抜く役割を担ってもらいます。原作でもイケメンって言われてるしいいよね?
元ネタ紹介
リヴァイアサンテイル ラチェクラ4における友情破壊兵器。超強いガンダムハンマー、多分ゴックを真正面からぺちゃんこにできる。小惑星を粉砕できるという設定もあるほど。ロマン。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ