個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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27話

 「オイラはMtレディの所に行くぜ!」

 

 「峰田ちゃんいやらしい事考えてるのね、不潔だわ」

 

 「梅雨ちゃん……オイラなんもしてないんだけど!?」

 

 「アンタ楪に謝った?ウチらは制裁したけど、楪はなんもしなかったじゃん?」

 

 「オイラはそれに関しては謝る口は持たねえ!」

 

 「上鳴さんはきちんと謝罪いたしましたのに……」

 

 職場体験の行き先の話でクラス中が持ちきりだ。明日までに希望の体験先を記した書類を先生に出さないといけないので割と急ぎでもある。もう体育祭のチアの件に関しては諦めの域に入ったのでいいや、だけど峰田くんは私じゃなくてえーくんからお話があるみたいだよ?あ、連れてかれちゃった。えーくん騙すとかそういうの嫌いだからね、合掌。

 

 かくいう私も迷いに迷ってる最中で、だって時代を時めく最先端の技術の集まりである企業に体験に行くか、本分であるヒーロー事務所に体験に行くか……これほど悩ましいことがあるだろうか!?いやない!なので私は脳内CPUのクロック数を極限まで増幅して悩みに悩みぬいてる最中なんだ。こういう時に頼りになるのは……

 

 「ねえ、デクくん。デクくんは職場体験行くところ決めた?」

 

 「あ、楪さん。うん、僕はもう決めたよ……昨日オールマイトから勧められたところなんだけど

 

 「そうなんだ……私と一緒で最後までうんうん唸ってるかと思ってたのに……うらぎりもの~」

 

 「う、裏切り者!?いや別にそういうつもりはなくてその」

 

 「冗談だよ~。デクくんはからかい甲斐があるね。それでなんだけど……エンデヴァー事務所とアナハイムエレクトロニクス社で迷ってるんだ。どっちいけばいいと思う?」

 

 「どっちも超大手じゃないか……!エンデヴァー事務所は確かに№2で事件解決数に至っては間違いなくトップ、それでいて人命救助も怠らないがエンデヴァー本人は……」

 

 でた、デクくんの超速ブツブツ情報整理。デクくんはどうやらヒーローオタクというやつみたいでそれはヒーロー本人じゃなくてサポート会社にも及んでる。端的に言えばこのヒーローがつけてるスーツはどこの会社が作ったものでどういう機能が付いているかを把握してるんだ。ぶっちゃけヒーロー関連で言えばこのクラスの誰よりも頼りになると思う。ナードって爆豪くんはいうけどヒーロー科ならそれは武器だ、それに私は凄いと思うから。

 

 で、デクくんからの情報を整理するとエンデヴァー事務所は間違いなくトップクラスだけどエンデヴァー本人がファンサービスを一切しないお陰でそういう内情の情報がほとんどないみたい。幸いサイドキックの人たちはファンサービスに厚いみたいだから雰囲気的には悪い事務所じゃないと思うそうだ。

 

 打って変わってアナハイムエレクトロニクスはヒーロー業界では大手に位置にするけど作ってるのはスーツじゃなくて汎用サポートアイテムが多いらしい。そこまでは私でも知ってるけど、最近の傾向としては一気にお金が取れるサポートアイテムの中でも大型のもの、要は私のホバーバイクみたいなサポートビークルを主力に位置付け始めてるのだとか。ふぅむ、それは知らなかった……。

 

 「なるほどなるほど……デクくん詳しいね。そうするとやっぱり私はエンデヴァー事務所かなあ」

 

 「す、好きだから自然に……あの、聞いていいかな?」

 

 「ん、なあに?」

 

 「どうしてエンデヴァー事務所がいいって思ったの?楪さんならそれこそリューキュウ事務所とかホークスとか……飛べるし個性的に合ってる場所からも指名きてたんじゃ……」

 

 「ああ、それは私の弱点が関係してるの」

 

 「弱点って……オーバーヒート?」

 

 そう、私の弱点である個性のオーバーヒート問題。私の個性は使えば使うだけ熱がたまっていって最終的に許容量をオーバーすると個性が使えなくなっちゃう。これは外からの熱も関係していて、例えば轟くんの炎や爆豪くんの爆発の熱は私にとってはウィークポイント。ばれてたら体育祭負けてたかもしれない。一応ある程度は排熱とかで補うことができるんだけど……

 

 「裸になっちゃうから強制排熱は現実的じゃないし……エンデヴァー本人の弱点もそうでしょ?体に熱がこもって身体機能が下がる」

 

 「……確かにそうだね……轟くんは氷結が相互補完してるけどエンデヴァー本人はどう対策してるのかってことだよね?」

 

 「うん、そう」

 

 裸、というワードで死に体の峰田くんがガタッと椅子から立ち上がったけど耳郎さんにジャックを刺されてドックンと心音を聞かされて沈黙した。流石に色々と敏感だね……あとは私本人の熱耐性をあげられたらなって思う。それはそうとエンデヴァー事務所って炎系のヒーローがサイドキックとして沢山いるけど……なんで私にも指名を入れたのかな?

 

 「そういえば、切島君はどこに行くか決めたの?」

 

 「お?俺か?俺ぁBMIヒーロー、ファットガムの所に行くぜ!指名来てたしな!」

 

 「えーくんにぴったりだよね。ファットガムって防御系のヒーローだし……でもクラストからも来てなかった?」

 

 「ああ……考えたんだけどなあ、クラストはシールド出して守るだろ?んでファットガムは体で受けるだろ?ファットガムの方が俺にちけーかなって」

 

 「ファットガム事務所は対都市犯罪のスペシャリストだし、切島君の個性は魅力的に映ったんだね!すごくいい選択だと思うよ!」

 

 デクくんのお話を参考にしつつ、私はやっぱりヒーロー事務所に行きたいから、記入用紙にエンデヴァー事務所と書いて、相澤先生に提出に行くことにした。

 

 

 

 

 「いました!!」

 

 「へうっ!?は、発目さん!?」

 

 「はい!発目明です!というわけでサポート科に行きましょうすぐ行きましょう!」

 

 「いや、行かないけど……」

 

 「どうしていかないんですか~~!」

 

 相澤先生に職場体験の紙を提出したすぐ後で、職員室前にて作業服姿でオイルと煤にまみれた発目さんに見つかった。次のサポート科に行く日は職場体験が終了してからなので私としては用がないと言いますか……まあいろいろ我慢させたのはそうだけど、気になるんだね私の技術……うーん、やろうと思えば公開されてる技術だけしか使ってないから再現は出来るハズなんだけど……

 

 私の腕を引っ張ったり、背中を押しくらまんじゅうのように押して私を移動させようとする発目さんだけど残念ながら私は常人の力では移動させることは不可能なんだ。何キロあると思ってる?成長したぜ主に肉体部分が。嬉しくないです。

 

 「楪さんは……楪さんは私がきらいなんですかぁ……?」

 

 「いやきらいってわけじゃうっ……」

 

 私を見上げる発目さんのスコープのような十字が入った目からぽろり、ぽろりと涙がこぼれ出る。うえ、まさか泣かれるだなんて思ってなかった!どうしようヒーロー科のくせして他クラスの一応優秀な女の子を傷つけたとあってはどんなおしばきが待ってるか分からない……ん?あれ?

 

 「目薬じゃん!」

 

 「あーだめですよねえ……なので普通にお願いします。分解とかそういうことは一切しませんので、少しだけお話して欲しいのです」

 

 「最初からそう言えばいいのに……」

 

 「フフ、あわよくばということもあるじゃないですか」

 

 「あったら困るのは私です、もう」

 

 じっと彼女の顔を伝う涙……よく見たらっていうか隠すつもりもなく右手に目薬が握られていた。危ない危ない、峰田くんたちと同じようにまたまた騙されるところだった。まあずっと私がほったらかしにしたせいというのもあるし、今回ばかりはちゃんとお話を聞いてあげようじゃない。分解しないって言ってるし……

 

 「さー着きましたよ!私の3代目研究室です!」

 

 「3代目……?」

 

 「前二つは爆発で木っ端みじんになりました」

 

 「良く生きてたね……」

 

 何度かサポート科にはお邪魔してるのでまあ顔見知りの人はそれなりに。一番強烈だったのは3年生の人かなあ、根掘り葉掘り聞いてきてパワーローダー先生から締め出されたりとか。パワーローダー先生も私のことをよく助けてくれるんだけど根は発目さんたちと一緒なようで私の武器が気になるというのは変わらないみたい。

 

 3代目らしい研究室のドアを開けると、腕を組んだパワーローダー先生が指をトントンと動かして若干いら立っている様子。せ、先生怒らせるなんて発目さん何しちゃったの!?はぁ、とため息をついたパワーローダー先生は

 

 「残念ながらここは僕の研究室で君はここを間借りしてるだけだよ。初めてだよ入学してそう経たないのに研究室をダメにした学生は」

 

 「失敗は成功の母と昔から言います!どんなことでも恐れずチャレンジしてこそ成功への道が開けるのです!」

 

 「言ってることは正しいがリカバリをもっと考えなさい。それで?楪まで連れてきたのはどういう理由かな?」

 

 「はい!実はこのベイビーについて意見を聞きたくて……楪さんはヒーロー科ですけどサポート科(こっち)寄りでしょうし、御詳しいんじゃないですか?」

 

 そう言って発目さんが見せてくれたのは明らかに開発途中らしいパワードスーツだった。あ、もしかしてUSJで回収されたゴリアテの残りから発想を受けたのかな?ゴリアテの方はほとんどスクラップみたいなもんだったけど技術的には結構最先端な方だったという自負がある。特にパワーには自信が、というかそれ目的で設計したわけで……特に自信作なのが関節に搭載されてるパワーシリンダー!あれが無かったら間違いなく脳無に力負けしてた。

 

 で、右目を使いつつパワードスーツを見てみると……ありゃ?これいかんやつだ。熱の排気どうなってる?主電源はバッテリーみたいだけど……中の人火傷しちゃうよこれ……。

 

 「もしかして熱問題?」

 

 「はいっ!流石楪さんこのベイビーの問題点を見抜くなんて!排熱が追い付かないのですっ!あの楪さんのおっきなパワードスーツを参考にしてみたのですが……現在の技術では排熱よりも籠る熱の方が凄いもので……楪さんはどうやって解決したのでしょうか?」

 

 「私の場合はこれかな。冷却ジェル……私が個性で作ったものなんだけど……熱を奪う性質があるの。これを全身に回して熱を回収して、気化させて排気と一緒に放出する。冷却専用のシステムを組み上げる必要があるけど、それを補うほど便利だと思うよ」

 

 「……楪、君これどうやって作った?」

 

 「え?素材の方は発表されたものの組み合わせで、あとは試行回数を踏みました。失敗しても私の個性ならすぐに別のものを組み立てられるので。これの場合はざっと……600回くらい成分を変えてたと思います」

 

 気化しやすくそれでいて熱を奪う性質を持つ液体、デクくんが個性テストで指を折ってしまった時に使った冷却ジェルはこの完成品の失敗作の一つだが、冷却効率が良くて尚且つ気化しない性質を持ってたので使ったんだよね。私の個性があれば他の実験室とは比べ物にならない速度で実験を繰り返すことができるから。机の上に置いたケースになみなみ入った冷却ジェルに発目さんは目を輝かせ、パワーローダー先生はむっつりと黙ってしまう。

 

 「このジェルの構成は後でメモで教えてあげるね。雄英の施設ならすぐ作れると思う」

 

 「ありがとうございますっ!いやーやはり相談してみるものですねぇ。出来ればベイビーについてもっと語り合いたいものですが!」

 

 「楪……君、免許取るつもりはない?」

 

 「免許、ですか?」

 

 ジェルをかがげて喜んでくれる発目さんを微笑ましく思っているとパワーローダー先生がそんなことを言う。免許ってヒーロー免許かな?でもそれはまだ無理のハズで……いや、このタイミングで言われるってことはサポートアイテムの免許のことか。

 

 「サポートアイテムの免許のことですか?」

 

 「そう、僕も持ってるけどね。いずれは君も必要になるだろう、例えば他の人に君が作った武器を貸し出す必要が出た時とかね。持っておけば違法じゃなくなる」

 

 「そんなに簡単に取れるものじゃないんじゃ……」

 

 「いや、君の場合……まあ発目もだが取得要件は満たしているんだよ。オリジナルのサポートアイテムの開発という要件をね。あとは法律関係を暗記すればいいが……君はそこら辺も得意だろう?」

 

 「あ、法律なら全部覚えてます!違法実験を家でしたくなかったので!」

 

 「君、隠してるだけで実は発目とおんなじだね?」

 

 「え、技術者ってみんな大なり小なりそういうものなんじゃ……?」

 

 ねえ?と発目さんをみるけど彼女は目をキラキラさせてジェルに夢中、ちょっとかわいい。というかパワーローダー先生だって人のこと言えないのでは、だってだって私のアロンダイトとかナンバーナッシング分解したかったんでしょ!?レーザー技術は軍に持ってかれてるからあまり見ませんもんね!でも苦労したんですよ、特にあのナンバーナッシング!

 

 技術者にしかできないトークを展開する私に当然のようについてくる発目さんとパワーローダー先生に突っ込んだ話を振る。理解が早いうえに私じゃ気付かなかったところまで突っ込んできてくれる!私の周りじゃそういう話ができる人はいなかったから楽しいなあ。用が無くてもサポート科来てもいいかもしれない。

 




 実は割と技術者としては発目よりな楪ちゃん。単純に表に出してないし自制できるけどお家では実験を繰り返しています

 いくぜエンデヴァー事務所!が次回です。感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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