個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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28話

 「コスチューム持ったな?本来公共の場じゃ着用禁止なわけだが……落としたりするなよ。特に上鳴」

 

 「なんで俺名指し!?」

 

 「ブフッ……アホになったらサムズアップで落とすんじゃない……フフフっ……」

 

 職場体験当日、大きな駅に集まった私たちに学校から運んできたコスチュームを相澤先生が配ってくれる。周りにはB組の姿もあったけど、こちらにやってくる物真くんをクラス委員長だという拳藤さんが華麗に当身で気絶させた。これから新幹線乗るのに大丈夫なのかな……あ、塩崎さんだ。手を小さく振ったら微笑んで振り返してくれる、いい人だ。

 

 「希械、おめー結局エンデヴァー事務所にしたんだな。轟と一緒か。轟!希械のこと頼んだぜ!」

 

 「ああ」

 

 「二人は私の事を自衛もできない大型犬か何かだと思ってるのかな?」

 

 「いや、そういう意味じゃねえんだ」

 

 「……轟くん……?」

 

 二人は顔を見合わせて頷きあってるんだけど多分えーくんが考えてることと轟くんが考えてることは違うような気がする。轟くんが言葉少なくてそこら辺の意思疎通がうまくいってないような、そんな感じ。でまあ、私の職場体験先であるエンデヴァー事務所に行くのは即決したらしい轟くんだ。お父さんの事務所に行くのはやっぱり個性が似通ってるからだろうか……?でも轟くん、お父さんの事嫌いなんだよねきっと。

 

 身内がヒーローと言えば飯田くんだけど……インゲニウムの事務所はいま活動停止状態だ。サイドキックの人たちが治安維持に努めてるんだろうけど職場体験に行く余裕はないみたい。それでも、それでも引っかかるのは飯田くんが選んだ指名先が保須市のヒーロー事務所だということだ。ノーマルヒーローのマニュアルが構える事務所、ビルボード圏外ではあれど堅実的な活動で知られている。

 

 保須というのはインゲニウムがヒーロー殺し「ステイン」にやられた場所……飯田くん、変なこと考えないといいけど……。いつもルールや規則を重んじる飯田くんが法律を越えて復讐に走る、そんなことはないと思いたい。だけど私は、新幹線に入る飯田くんの硬い横顔に、いまいち不安をぬぐえないのだった。

 

 

 「なあ……何でアイツの事務所を選んだ?№2だからか?」

 

 「え、あ、うん……弱点の克服かな。轟くん知らなかったっけ?私、熱に弱いの。だから轟くんの左側は私の天敵」

 

 「……弱点なのに使うよう煽ったのか?」

 

 「あはは、まあそうかもね。デクくんに触発されちゃった。轟くんはどうして?お父さん、多分きらいなんでしょ?」

 

 電車の中、エンデヴァー事務所は雄英から割と近い場所にあるので快速特急に乗って移動中。実は私、あんまり電車に乗ったことないからちょっとだけワクワク。でも私のようなビックサイズはやっぱり邪魔だね、でも空いててよかったぁ~。ぎゅうぎゅうづめで轟くんを潰したりしたら申し訳ないし、新幹線だと相席は隣の席取るから私のお尻が轟くんスペース侵略しちゃうし。快速特急でよかった……。

 

 轟くんはお話するのはそこまで得意じゃなさそうだから積極的にお話するのもと思って私は脳内でネットに接続してネットサーフィンと新装備の設計をしつつ割と嫌いじゃない沈黙の中にいたんだけどその沈黙を破ったのは轟くんだった。聞かれたのはエンデヴァー事務所を選んだ理由、確かに№2っていうのは大きな肩書だけど、私はあんまり気にしないかな。自分の糧になる場所を選びたい……そういう意味では~~!アナハイムとサナリィにも行きたかった!

 

 「俺は……確かめてぇことがある。クソ親父から俺は目を背け続けてきた。でも、知らなきゃならねぇこともあるってお前らに教わった、だから」

 

 「そうなんだ。轟くんの事情、私は全然知らないけど……知れるといいね。まあ、轟くんはエンデヴァーさんが直接見るだろうしいやでも知れるかも。私はきっとサイドキックの人と一緒だと思うし」

 

 「……なんでだ?」

 

 「いや、体育祭の時さ。デクくんで左を使った時、エンデヴァーさん何か叫んでたでしょ?多分、かなり入れ込んでるように見えたから……忙しくても轟くん自体は自分で見る為に指名したんだと思う。私は……余り?」

 

 「楪と一緒じゃねえのは……嫌だな」

 

 イ、イケメンが発動した……絶対轟くん中学校で告白祭りとバレンタインデーで机がチョコで埋まる現象が起きてたに違いないよ!そんなストレートに嫌だっていえる!?私は言えないよ!轟くんすごいね……!?あ、でも轟くんってお友達をあまり作らないタイプだったみたいだし、距離感が分かってないのかも?そうするとちょっとかわいいかもしれない。

 

 「一応俺から言ってみる。呼んだんならてめぇが見ろって」

 

 「いやいやダメだよ!?向こうはお仕事で見てくれるんだから!私情入れたらだめ!」

 

 とんでもないことを言う轟くんにぶんぶんと腕を振って否定する。体育祭より前は全然関わりなかったんだけどこういうキャラクターだったのか轟くん……!私は目的地に着いた電車から降りるため、立ち上がる。遅れて立ち上がった轟くんの半分に分かれた髪の毛を見ながら、心配されるのは轟くんじゃないかな?と失礼なことを考えてしまうのだった。

 

 「よく来た焦凍ォ!それと君もよく来たな。俺がエンデヴァーだ」

 

 「……うるせェ……!」

 

 「え、え、とその……楪希械です。よろしくお願いいたします」

 

 「よし、事務所に行くぞ。そこで職場体験の内容について説明する。急いで乗り込め」

 

 歩きかタクシーで事務所まで行くと思ってたんだけど、駅の前にヒーロースーツ姿のエンデヴァーがメラメラと髭を燃やして仁王立ちしながら待っていた。後ろでは待っている間に捕まえたと思しき犯罪者が山積みになっていて警察が対応してる。うわぁ、あつぅい……!やっぱり私ついで説高いなこれ?エンデヴァーに促されて車高が高めの車に乗り込んだ。私の体重でぎしっと沈む車に真っ赤になりながらも、車はスムーズに発進する。あ、エンジン音からしてこの車アナハイム製だ。何でも作ってるなあの会社。

 

 流石に車の中では炎を消したエンデヴァーさん、そして彼が来てから一気に不機嫌になった轟くん。気、気まずいよぅ……!電車の中でのほわほわ轟くんじゃなくて、氷みたいに無表情になっちゃった轟くん。こ、この状態で1週間職場体験するのぉ……?私、耐えられるかなこの重さに……。物理的な重さなら電車一両くらい持ち上げられる私だけど精神的な重さはどうにもならないんだよぉ……うぅ、たすけてえーくん……。

 

 「先に事務所に戻っていろ」

 

 「え!?エンデヴァーさん!?」

 

 そう言うや否やドアを開けて飛び出したエンデヴァーさんが足の炎を推進力にして空を飛び、ビルの向こうへ消えてった。エンデヴァーさんがドアを開けた瞬間に、遠くから小さな女性の悲鳴がかすかに聞こえた。ま、まさか……今のを車の中から見抜いたってこと!?私だって無理だよそんなの!?だってまだ何も起きてないんだから!すごい……ひたすらに見えない高みにいるとしか思えないよ……!

 

 「あいつ……いつの段階で見抜いてたんだ……?」

 

 「何も起こってない時から警戒を怠らない……凄い、これがエンデヴァー……」

 

 運転手さんはそれが日常のように無反応で車を運転し続けている。そして私と轟くんでさえも№2との圧倒的な差にただただ驚くしかなかったのだった。

 

 

 「ようこそエンデヴァー事務所へ!案内させてもらうよ!」

 

 「バーニンさん」

 

 「久しぶりショート君!貴方は初めましてだよね!?体育祭みてたよ~!エンデヴァーが焦凍君以外に票を入れるなんて前代未聞!1週間みっちりヒーローを体験させてあげましょう!私たち!」

 

 「「「「炎のサイドキッカーズ!」」」」

 

 「あぅ……よろしくお願いします」

 

 事務所の中に入るなり歓迎の言葉をくれたのはエンデヴァー事務所の筆頭サイドキックの一人であるバーニンさん。緑色に燃える髪をした彼女はうん、おっきいね~~!と私を評してくれる。ビシ、とお決まりらしい決めポーズをサービスしてくれたサイドキッカーズに若干圧されつつもガチャガチャと拍手を返す私、見慣れてるのか無反応の轟くん。

 

 「じゃあエンデヴァーが帰ってくる前にヒーロースーツに着替えちゃいなさい!楪ちゃんは私が案内するよ!ショートくんは」

 

 「いらねェ。知ってる」

 

 「だよね~!」

 

 轟くんは何度か事務所に来たことがあるみたいで迷いなくヒーロースーツを手に部屋を出ていった。私はどうしたらいいのか全く分からないのでバーニンさんについて女性用の更衣室に案内された。流石は№2の事務所だけあってどこもかしこもきれいだ。ひぇ、ロッカールームまである……!電子錠だ!私にはあんまり意味ないけど。機械だから。

 

 「それじゃ、着替えたらすぐに出ておいでよ!お化粧必要なら洗面台はあそこね!」

 

 「お化粧!?女性ヒーローはそれもするんですか?」

 

 「あー、する人としない人がいるよ。私は燃えちゃってブサイクになるからしないけど!前線ヒーローはしない人が多いんじゃないかな?ただ、ヒーローがお化粧できるってことがそれくらいヒーローが暇ってことだからね!いいことなのさ!」

 

 ぐっと背伸びをして私の頭、後頭部をポンと叩いてバーニンは部屋を出ていく。お化粧かぁ……あんまり考えたことなかったんだよね……だって私、顔の上半分は髪で隠れてるし、ひどくなったら体が熱を持っちゃうからお化粧浮いてきちゃうかも。うん、私には必要ないかな、お化粧。

 

 ブアッと髪の毛に青いメッシュが入り、左目を露出して髪の毛を固定する。下着のラインが出ない特注の下着、授業以外で初めて袖を通すヒーロースーツ。着心地よく、私の意識を塗りかえてくれる。着ると、やるぞと勇気と自信が沸いてくる。だってこれが、小さいころからあこがれたヒーローの姿だったから。

 

 「お待たせしました~……」

 

 「おお、いいデザインしてるじゃない!さ、エンデヴァー戻ってきたよ!ショートくんももう行ってる!」

 

 「はいっ!」

 

 溌剌としたバーニンに促されて広いエンデヴァー事務所の中を歩く。他の部屋とは少し豪華な扉の前で止まり、礼儀正しくノックした。入室を許可する声は部屋の中から聞こえてくる。それを確認してバーニンはドアを開けて入室する。

 

 「失礼します、エンデヴァー。職場体験のヒーロー候補生をお連れしました」

 

 「来たか、バーニン。ご苦労、二人は俺がみる。お前たちは俺が抜けた穴を埋めろ、いいな?」

 

 「えっ……わたし、も?」

 

 №2ヒーローの言葉に私は驚きの言葉を返し、轟くんの視線は一層鋭くなる。バーニンはおお~という顔をして頑張れと私の背中をはたいてから部屋を出ていった。今にも飛びかかろうとする轟くん、すでに個性が出そうだ。私はオロオロするしかない、こんなに確執があるものなの?エンデヴァーと轟くんって……!

 

 「てめぇ!今になって何を企んでやがる!おかあさんと同じことを楪にするってんなら俺が……!」

 

 「どうやら勘違いしているようだな、焦凍。俺は今貴様の父親であると同時に、この事務所のトップヒーローだ。事務所を成長させ得る強さを持つ候補生を指名して何がおかしい」

 

 「なっ……!?」

 

 「貴様に勝った候補生だぞ。くだらん反抗期に入ってるとはいえ、俺が訓練を施した貴様にだ。俺はここの責任者として、30人を超えるサイドキック、事務、受付、管理人、警備員……全ての人間を養う責任がある。事務所を構えるなら当然以前の話だ、よく覚えておけ」

 

 そう言って話を切ったエンデヴァーに轟くんは、まさか自分の父親にこんな一面があったのか、という顔で口を開け驚いている。私は正直、全くついていけなくてあたふたしてる状態の私は会話のワードを拾ってさらに混乱を深める。おかあさんにしたことってなに!?エンデヴァーさんは轟くんのおかあさんに何をしちゃったの!?唇をかみしめた轟くんはぽつりと。

 

 「そう、かよ……」

 

 「納得したようだな。では楪希械、所属とヒーロー名を言え」

 

 「は、はい!雄英高校ヒーロー科1年A組!楪希械です!ヒーロー名はエクスマキナ!よろしくお願いします!」

 

 「ふむ、ではエクスマキナ。貴様は何を求めて俺の事務所にやってきた?ただビルボードチャートが高いからか?」

 

 「……いえ!私はここに弱点を克服しに来ました!体にたまる熱が許容量を超えれば私は個性を使えなくなります!炎熱系の事務所で、弱点をカバーする方法を探しに来ました!」

 

 それを伝えるとエンデヴァーはピクリと目を動かしたが、私の理由は合格点を越えていたようで、それを塗りつぶすようににやりと笑う。彼は勢いよく椅子から立ち上がり、私たちを通り過ぎてドアへ向かう。

 

 「では初日は訓練をする。俺が直々に貴様らの練度を測る!俺に一撃入れてみろ!」

 

 「……はいっ!」

 

 「……おう」

 

 ドアを開けて出ていったエンデヴァーを慌てて追いかける私たち、轟くんの思いつめた顔に、私は不安を感じるのだった。

 

 




 轟くんがなんとなく過保護だったのは自分と楪さんが個性婚させられるんじゃって焦ってたからですね。まだエンデヴァーをちゃんとみてない時期ですからそんな勘違いもありうるかと。

 ちなみにこの作品のエンデヴァーですがヒーローとしては有能オブ有能です。ほぼ完璧超人。ですが私生活はまあ原作通りということで....

 感想評価よろしくお願いします

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