個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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3話

 『私が投影されたぁ!』

 

 「ふおっ!?」

 

 「おおお!オールマイトじゃん!」

 

 「っか~~!やっぱ画風が違うなあ!」

 

 受験日から約1週間、私たちは今までの受験勉強の鬱憤を晴らすかのように遊びまくり、ついでに自主トレをしていた。やっぱり思ったけどえーくん硬すぎるよ、金属の私より硬いって何?300㎏ある私を持ち上げたりするしさあ……ホントに個性硬いだけ?ビックリしちゃう。

 

 それはともかく、やっと雄英高校からの合否通知が届いたのだ。それで、三奈ちゃんとえーくんと3人で集まって一緒に合否通知を開けようと私の部屋に集まって頂いたのだ。そんなわけで3人同時に封筒を開けたら、入ってたのはなんか機械だった。よくわからないそれを3人で弄り倒していると、唐突にパッと空間に画面が投影された。そこに映っているのは、日本の平和の象徴、№1ヒーローのオールマイトだ。

 

 筋骨隆々で常に笑顔を絶やさない超強いヒーロー、えーくんと三奈ちゃんの機械にも同じようにオールマイトが投影されて、HAHAHA驚いただろうと笑っている。この日本にオールマイトを知らない人間はいないので、実は私も含め3人ともテンションが上がりまくっている。

 

 『なぜ私が雄英の合格発表をしてるって!?それはね、今年度から私も雄英に入るからさ!教師としてね!え?巻きで?しょうがないなあ……んっん!では、嬉し恥ずかし合格発表だ!』

 

 「き、きた!」

 

 「やっべなんか心臓飛び出しそう」

 

 「わかるよ~」

 

 同時に起動したせいか、同じセリフを同じ速度で読み上げるオールマイト。というか春から教師になるってすごくない!?オールマイトに教えてもらう……これは是非とも合格であってほしい!高鳴る心臓の音を聞きながら遂にみんなで押し黙って続きを唾飲んで待つ。

 

 『では、楪少女!筆記は国語が若干低いが文句なしの大合格だ!続いて実技だが、敵ポイント33!結構頑張ったね!そしてもう一つ!この試験には裏のポイントがある!』

 

 「裏の、ポイント?」

 

 「あー、俺は敵ポイント43点かあ」

 

 「あたしの倍じゃん。ちょっと分けてよ」

 

 「できるか!」

 

 『それはレスキューポイント!他を蹴落とす試験の場でどれだけ他人のために動けたか!審査制の特別ポイントだ!楪希械!レスキューポイント45点!総合78点で同率2位で合格だ!おめでとう!ここが君のヒーローアカデミアさ!』

 

 レスキューポイント、なんだそれ。思わず笑ってしまった、ヒーローならこの場でどうするかの資質を先に見ていたなんて。そして、同率2位、一位はもっとすごかったんだろうか。

 

 「お、希械、俺と同じ同率2位だってよ。って合格!?マジで!?やった!」

 

 「あたしも合格だ~~~!!!ふぇえええん!勉強教えてくれてありがとう希械ちゃん~~~!!」

 

 「み、皆合格……!やったぁ!」

 

 えーくんと同じだったのか、と飛び上がって喜んだ三奈ちゃんが胸の中に飛び込んできたので抱き留めながらそう考える。えーくんすごいな、私はあの大きいお邪魔メカを倒して得た30点のレスキューポイントが大きいんだけどえーくんはそれなしで人を助けて助けて助けまくった証拠だ。やっぱりえーくんは凄いなあ、自覚あるけど私は力こそパワーなので人助け、上手にできないもの。

 

 とりあえず盛り上げようとスピーカー作ってファンファーレ鳴らしまくったらしつこいと怒られてしまった。とりあえず頭に作った猫耳型スピーカーを解体して体の中にしまい込み、そこでようやく3人ともへたっと力が抜けて座り込んだ。ここ1週間、遊びながらもどうも緊張感とか不安感に襲われてたけど、最高の形で終わることが出来た!

 

 「ね~、春からまたよろしくね」

 

 「おう、クラス一緒だといいな!」

 

 「切島だけクラス違うもんね~」

 

 「う、うん。一緒だと嬉しいな……」 

 

 

 

 

 

 「お、希械!おはよう!」

 

 「うん、おはようえー……くん……?」

 

 「どうした?」

 

 「えーくんが……グレちゃった……!」

 

 「ちっげーよ!」

 

 そんなことがあって今は4月某日、入学手続きを済ませた私とえーくんと三奈ちゃん。制服も届いて見せ合いっこしたりもした、私の特大サイズの制服、なんと特注ではなく普通にサイズ表にあったのだ。雄英すごい、異形型の個性で普通の人より大きいっていうこともあると理解してくれているというのを完全に確信した。合格してよかった~~。

 

 それで今日が雄英の入学式、なんだけど。家の前でえーくんと合流したら、思わず鞄を地面に落としちゃうくらいにびっくりしてしまった。というのもえーくんの髪の毛、黒髪だった髪の毛が目に鮮やかな真っ赤に染まって滅茶苦茶尖って逆立ってたのだ。えーくんがグレちゃった!?と混乱したら違う!と突っ込まれる。

 

 「えっと、悩みがあるなら聞くよ?幼馴染だし……?」

 

 「だからちげーって!これはだな……ちょっと色々あるんだよ。戒めっつーかなんつーか……」

 

 「……似合ってる。カッコイイよ、えーくん」

 

 「お、おう!さんきゅな!」

 

 何となく、歯切れが悪い。多分、私に知られたくない理由がえーくんの中にあるんだろう。何が原因で、どうしてそうなったかという理由に心当たりがないわけじゃないけどそれを無理やり聞き出そうとはとても思えないので、実際似合っててかっこよかったので素直に褒めることにした。気持ちは素直に伝えるべし、それが誉め言葉なら猶更。お母さんの教えに従って褒めるとえーくんははにかみながら返事をしてくれる。

 

 「あーっ!切島それなに!?高校デビュー!?」

 

 「まあ、そんなとこ。お前はやらねーの?」

 

 「アタシはすでにインパクトの塊だからね!」

 

 「……ちょっとこのえーくんも新鮮かも」

 

 「ねー、深くは聞かないけどさ。話せるようになったら教えてよ。高校デビューマンってみんなに言うから!」

 

 雄英の校門前で、家の方向が違う三奈ちゃんと合流する、やっぱり三奈ちゃんもえーくんの変貌っぷりには驚いたみたいだけど、何となく察するものはあるみたいで茶化しながらもあまり突っ込む様子はない。下駄箱前のクラス分け表を見る、3人一緒だといいなあ。えーっと、ヒーロー科ヒーロー科……2クラスしかないんだ。A組から、三奈ちゃん、えーくんはあった。私はゆだから最後の方……あった!A組だ!

 

 「やったね希械ちゃん!切島も!みんな揃ってA組じゃん!」

 

 「うん、よかった……電源切れるかと思った……」

 

 「お前のジョークはいちいちこえーわ!電源切れるとどうなるんだ!?」

 

 「……切ってみる?」

 

 「「やめろ」」

 

 いつものように足をうち履き用に変形させて、校舎の中に入る。うーん、一回でいいからサンダルとか履いてみたいなあ。足元のおしゃれってやつを体験してみたい。まあ生足じゃないから魅力はないかもしれないけど気分的に?私だって女の子なのでおしゃれというやつをやってみたいんだ。可愛い服はサイズがないし、あったらあったで手足のせいでコレジャナイ感出ちゃうし。三奈ちゃんのぼでーが羨ましい。

 

 校舎内も大きくて歩きやすいなあ、中学校の時はドアとかは必ずくぐらないといけなかったから凄い楽ちんだ。3人でこれからのことにわくわくしながら1-Aの教室を目指す。私は歩幅が大きいので二人に合わせてゆっくり目に歩く。

 

 「よし、開けるぞ……」

 

 「う、うん!」

 

 「いけ、切島~!」

 

 私が先陣を切って知らない人ばかりの教室の中に飛び込むとか考えただけでフリーズしてしまうので二人が一緒でホントに良かった。多分別クラスだったら本当に機能停止して教室前で止まってたに違いない。内心ほっと息をつきつつ勢いよくスライドドアを開けて中に入るえーくんと三奈ちゃんに便乗して私も中に入る。

 

 「おはよー!こっから1年よろしく頼むぜ!俺は切島鋭児郎!仲良くしてくれよな!」

 

 「アタシ、芦戸三奈!こっちが楪希械ちゃん!みんな同中なんだ!よろしくね~~!」

 

 「ゆ、楪希械です……えっと、その……仲良くしてくれると嬉しいデス……」

 

 シーン、と一瞬教室が静かになる。まあ、今までもそうだった。教室にいる人たちの視線が集まるのは私、中学校の入学式もこうだったな、懐かしい。私は大概の高身長と呼ばれる人でも見降ろすくらいの身長を持っているので初めて見る人はみんな私に視線をやってしまうのだ。それも一瞬で、同じクラスの人たちはそういう個性なのだと納得したのか、各々視線を元に戻したり、ノリのいい人はよろしく!と返事をしてくれた。嬉しいな、皆優しそうで。

 

 とりあえず教卓の座席表に従って席に座ろう、名前順みたいだからいったんここで二人とはお別れだ。と言っても同じ教室だから一緒は一緒か。ぽふ、と三奈ちゃんに背中を叩かれてからばらける。衝撃で手足をばらけさせて一発芸を、と思ったけど絶対引かれるのでやめよう。奇抜なことすると後に響くし。

 

 「……初めまして、よろしくお願いします……」

 

 「ええ、よろしくお願いいたしますわ。随分大きな机だと思っていたら、そういうことですのね」

 

 「ご、ごめんなさい大きくて!」

 

 「あ、その……謝罪させたかったわけでは……こほん、八百万百ですわ。仲良くしてくださいね」

 

 「ゆ、楪希械です!その、お友達になってくれると、嬉しいな」

 

 「勿論、喜んで」

 

 八百万さん、私の前の席にいるポニーテールの女の子と自己紹介をする。凄く落ち着いてて、でも優しそうな女の子。座高から推測するに女の子にしては背が高いかもしれない。私?私はほら、例外というか測定外というか……私が座るために私の机は他のみんなの机より大きいし頑丈そうだ。だって私重いから、中学校の時椅子をいくつか潰しちゃったりとか……アハハ……

 

 二人の方を見ると既に他の男子や女子と話していて私も負けてられないと思った。折角新しい環境にいるんだから二人に頼ってばっかりじゃダメだ、えーくんじゃないけど高校デビュー、頑張っちゃうぞ!初めに八百万さんともっと仲良くなりたいな、どんな話題がいいんだろう。やっぱり入試の話かな?

 

 「八百万さんは、入試どうだった?私その、街をたくさん壊しちゃって減点貰っちゃって……」

 

 「まあ、私実は推薦入学でして……皆さんと同じ入試は受けていませんの」

 

 「推薦!八百万さん凄いんだねえ。頼りになりそう」

 

 「え、ええ!頼って頂いて構いませんわ!」

 

 ふおっ!?なんか褒めたらすごい嬉しそう。プリプリとしててなんか可愛い。早速新しいクラスメイトの意外な一面を知れてホクホクかもしれない。そう思ってると前の席から女子制服が歩いてきた。んんっ!?いや待ってこれもしかして……視界を切り替える。サーモグラフィ……ダメ。紫外線、ダメ……通常の光学観測に頼ってちゃ見えないのかな?じゃあ反響定位……見えた!一応超音波を調整して……よし!

 

 「おっはよー!初めまして!私葉隠透って言うんだ!前の席で寂しかったから私も仲間に入れてよ~~!」

 

 「勿論ですわ、八百万百です、仲良くしてくださいましね」

 

 「初めまして、楪希械っていいます。葉隠さんでいい?」

 

 「うん!透でもいいよ~!……?……!?」

 

 「どうしましたの?」

 

 反響定位で視界を作っているので彼女の顔形がはっきり見える。だから前髪越しに彼女に目を合わせて自己紹介したら目線があったことに疑問を覚えてしまったらしく、私の机の周りをまわってみる葉隠さん、とりあえず何してるの?という八百万さんの疑問をよそに目を合わせ続けてると彼女の表情が疑問から確信に変わる。

 

 「もしかして……私の事見えてる!?」

 

 「見えてる……っていうのは正確には違うんだけど葉隠さんの顔は分かるよ。凄い美人さんだねえ」

 

 「ふぇっ!?……私そんなこと言われたの初めて。だって誰にも見えないから……」

 

 「あ、もしかして見られるの嫌だった?だったらやめるけど」

 

 「ううん!凄い、人と目線が合うのってこんななんだ……」

 

 「どうやって彼女を見てますの?」

 

 「ソナー……反響定位っていうやつなんだけど、わかる?超音波を出して跳ね返ってきた音の反響を映像にして右目の網膜に映してるの」

 

 こんな感じ、と前髪を書き上げて目を露出する。私の右目は生身じゃなくて機械だ。真っ赤な色でレティクルの照準補正用の目盛が常に浮いている。左目は両親から継いだマリンブルー、オッドアイなんだ。覗き込めばわかるけど今は葉隠さんの顔が白黒で映ってるのが網膜にあるだろう。

 

 「へーーーっ!」

 

 「反響定位……音に関する個性でしょうか?」

 

 「えーっとね、違うんだ。私の個性はこういうの」

 

 カチャカチャ、と音を立てて私の頭に機械で出来たうさぎの耳のカチューシャが組みあがる。うさぎ耳型集音機&ヘッドセットだ。片耳が折れてるのがこだわり、重量約100gの軽量合金製の逸品である。すぽんと頭からとって机の上に置くと八百万さんがガタッと席から立った。

 

 「創造系の個性ですの!?」

 

 「うーん、ちょっと違うかも。私の個性は「メ化」って言って機械に関することなら大体できるんだ」

 

 「へー、なんか音楽鳴ってるって思ったらアンタだったんだ?」

 

 「ふぇ?」

 

 私たちの会話に割って入ってきたのは、耳たぶからイヤホンジャックが伸びてる女の子だった。

 

 




 本日は2話投稿します。まずは入学編から。

 実は目の色が違う楪ちゃん。右目は完全に機械の目、虹彩に文字とか何やらが浮いてる。左目は生身、機械の自分の数少ないみんなと一緒な部分だからお気に入りらしい

 感想評価よろしくお願いいたします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ

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