個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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 本日2話目


35話

 「全く勉強してね―――!!!」

 

 「……時間は結構あったんじゃ……?」

 

 「希械ちゃんみたく覚えたら忘れないわけじゃないんだよ私たちは!この~~!!」

 

 「あ、ちょ、お腹揉まないで……」

 

 時は流れて6月の最終週、7月頭の期末テストに向けてラストスパートの追い込みの時期なんだけど……三奈ちゃんと上鳴くんはどうやら全く勉強してないみたい。私は勉強するのは好き、というか知識が個性と直結しているので学ばないと強くなれない。だからとりあえず学校の勉強は欠かさずやって、それから個性の方の勉強もやってる。中間テストは2位だったけど、百ちゃん凄いなあ……。国語という不俱戴天の仇がなければ私ももっと……言い訳ってかっこ悪いよね……。

 

 体育祭に職場体験とイベントが目白押しだったせいで勉強する時間が取れなかったという二人に、お休みの日とか勉強しなかったの?と尋ねれば青春してた!と返されたので勉強はしてないんだね……と私のお腹のくびれあたりを揉みまくる三奈ちゃんをあやしながらどうしたもんかと考える。峰田くんはそのよだれ拭いてね?

 

 「勉強するしかないよねえ……」

 

 「うう、希械ちゃんお助け……」

 

 「あの、それでしたら私お手伝いできると思いますわ!」

 

 「ヤ、ヤオモモ~~!!!」

 

 受験勉強の時みたく、楪先生によるマンツーマン授業を執り行おうかと考えてたら、それよりも早く控えめに手をあげた百ちゃんが教えますわ!と言ってくれて、三奈ちゃんは一も二もなくその蜘蛛の糸に縋り付いた。むむ、三奈ちゃんにお勉強を教えるのは私の役目だぞ、なんて嫉妬じみたことを言うつもりはないけど、ちょっと寂しいような、そうでないような。

 

 「あ、ウチも二次関数躓いちゃって……」

 

 「ワリ、俺も古文不安なんだわ!」

 

 「私も行っていい~~!?」

 

 「俺もいいかな?」

 

 「良いデストモ!!!」

 

 響香ちゃん、透ちゃんに瀬呂くん、尾白くんも百ちゃん勉強会に参加するみたい。当然それはそこで崩れ落ちている上鳴くんも。ふむぅ、そうなれば私はえーくんのお勉強を見てあげればよろしいのかな?えーくんも正直お勉強は得意じゃなくて、クラス内の順位は高い方じゃない。ちゃんと教えればわかるから、地頭は悪くないし、そもそも雄英に入ってる時点でお勉強は出来るハズなのだ。

 

 「みろよ、あれが人望ってやつだぜ爆豪」

 

 「俺にもあるわお前教え殺したろか……!」

 

 「おお!頼む!」

 

 どうやらえーくんにも私の手は必要ないらしい……ちょっと寂しいぞ、くすん。でも大丈夫、スタンドアローンでも私は動きます。メカなので。いいもんいいもん私はいつも通り勉強して心操くんのトレーニングに付き合ってついでに新装備を設計していつも通りに期末試験に挑むもんね。あ、心操くんの時間が空いてたら心操くんとお勉強会やってもいいかもしれない!

 

 「ヤオモモ~~~!希械ちゃんも一緒でいいよね!?私ずっと希械ちゃんに勉強教えてもらってるの!とってもわかりやすいし、教師役ヤオモモ一人だと大変でしょ?!いいよね、希械ちゃん!」

 

 「み、三奈ちゃん……!もちろんだよ!私頑張っちゃうよ!国語以外……!」

 

 「最後のそれで親近感湧くな」

 

 「まあそれでも俺たちより国語の点数は高いけどね……」

 

 「勿論構いませんわ!希械さんは文章問題で躓いてらっしゃるだけですものね、少し解き方を教えて差し上げればすぐですわ」

 

 私が予定立てていたところにブーメランのように百ちゃんの所から帰ってきた三奈ちゃんが私を引っ張って勉強会に誘ってくれる。三奈ちゃんの優しさに感動した私はぷしゅ、と気合の排気を見せつつむん!と頑張るぞのポーズ。国語という不倶戴天の敵も百ちゃんに教えてもらえれば大丈夫!他の教科は任せて欲しい!そこら辺なら私も役に立てますとも!

 

 「そうでしたらお母さまにお願いして講堂を開けて頂かないと……」

 

 ん?講堂?普通のお家にあるものだったっけ……?あれだよね?あのその、雄英の受験の時に私たちが入ったような場所。それが講堂、私の認識が間違ってなければ……?

 

 「皆さんお紅茶は御贔屓ありまして!?我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなのでご希望があればご用意させていただきますわ!」

 

 ハロッズ?それって確かイギリスの超老舗高級百貨店の紅茶ブランドで、ウェッジウッドは王室御用達のブランド……ぶ、ブルジョワジィ……!ナチュラルに産まれの違いを叩き込まれちゃった……みんなも同じような顔をしているけど正直ぷりぷりと嬉しそうに、楽しそうにそれを語る百ちゃんになごんでいる。あ、でも私は……

 

 「なんだっけ?いろはす?それでいいよ?」

 

 「ハロッズですわね!」

 

 「あの、私コーヒー党だったりして……」

 

 「まあ!お父様とお話がお合いになるかもしれません!もちろんご用意させていただきますわ!」

 

 実は私、コーヒーが好きなんです。ハロッズとかウェッジウッド……最高級の茶葉を嗜んでいる人の家にあるコーヒー、ずうずうしいけど気になっちゃう。あ、当日は私もお土産作っていかなきゃ。バターたっぷりのフィナンシェとかいいかも。よし、腕がなるぞ~~!。

 

 

 

 

 「え、ここ……?」

 

 「ウソだろ……?これどっかの公共施設とか大使館とかじゃねーの……??」

 

 「ちょ~~~豪邸!ヤオモモの家すっご!」

 

 「住所はここだから、ここが百ちゃんのお家だね。すごいね~~、私ですら小さいや」

 

 日付変わって週末、百ちゃんの勉強会に参加する人たちで駅に集合して、百ちゃんのお家に向かったんだけど……ものすごく大きい塀がずっと続いていて、それが目的地まで途切れないからまさかな~と思ってたら大正解で、ホワイトハウスとかといい勝負の大豪邸が姿を現して、ドラマとかでしか見ない門が私たちがそこについた瞬間に自動ですっと開き、初老の燕尾服を着た人が恭しく私たちを迎えてくれた。

 

 「耳郎様、芦戸様、葉隠様、楪様、上鳴様、尾白様、瀬呂様でございますね?ようこそお越しくださいました。私八百万家の執事の内村と申します。さ、どうぞこちらへ」

 

 「はいぃっ!」

 

 はずかし、声が裏返っちゃった!だって執事だよ!?本物だよ!?私以外もみんなどう反応したらいいのか分からないって感じだよ?!す、すごいんだね百ちゃんのお家……生まれの違いとか正直どうでもよくなるくらいの格差を感じるよ……途中で百ちゃんのお母さんに、三奈ちゃんがヤオママと恐れ多いあだ名を付けちゃったりしながら、講堂に案内される。本当にあるんだねお家に講堂……。

 

 「皆さんっ!お出迎えもできずごめんなさい。実はどの参考書がよろしいか今まで迷ってまして……」

 

 「それでは、私はこれにて。あとでお茶をお持ちするわ。百、しっかり教えて差し上げるのよ」

 

 「はいっ!頑張らせていただきますわ!」

 

 うわ、百ちゃんって形から入るタイプなんだね。先生っぽいレディススーツでバッチリ決めて、眼鏡をかけた百ちゃんがお出迎えしてくれた。頬が上気してほんのり赤くなってるところがまたカァイイなあ。多分、この日をずっと楽しみにしてたんだね。私もちょっと楽しみだったんだけど……ぷりぷりと輝く笑顔で参考書タワーを示す百ちゃんに上鳴くんがドン引きしてる。苦手そうだもんね、勉強。

 

 「あ、こんな凄いお家に出すのは恥ずかしいんだけど……お土産にフィナンシェ焼いてきたの。休憩するときに食べてくれると嬉しいな」

 

 「やったー!希械ちゃんのお菓子~~!」

 

 「まじ?!やった!」

 

 「まあ、是非とも!希械さんのお菓子とても楽しみですわ!」

 

 「希械ちゃん、料理上手だもん!美味しいよ~~!この前のアイスクリームもおいしかった!」

 

 中身の温度を適温に保ってくれる機械式のバスケットを見せながらそういうと、皆楽しみだ、と言ってくれる。頑張った人にはご褒美があって然るべき、というのは私の勝手な考えだけど。美味しく食べてくれるようならそれでいいや。それはともかく勉強開始!頑張るぞ~~!

 

 

 

 「XとYが助動詞でインカの目覚めがペルシアでメンデルの法則が……あばばばば……」

 

 「上鳴、頭破裂してるんじゃない?もうしてるか」

 

 「若干アホ面になってきてるよね」

 

 開始1時間ほどで、すでに限界になっている子が一人。何を隠そう、上鳴くんである。百ちゃんの勉強プランは完璧で、私たちのレベルに合わせた問題を選別、プリントまで作ってしまう力の入れようでみんなするすると自然に勉強が進む作りになっていた。私は国語以外は全然平気だから、教える側に回っていたけど……最初に集中が切れたのがやっぱりというか予想通りというか上鳴くんだった。

 

 「うおおお……誰か俺の頭を取り換えてくれぇぇ……」

 

 「えっとね、上鳴くんどこが分からないか、わかる?」

 

 「わかんねえ!」

 

 「そこからかあ……じゃあ、分かりやすいように教えるよ?とりあえず数学から、はい注目!」

 

 参考書に沈む上鳴くんがあまりにも悲哀に満ちているので、私はどこが分からないのか聞くと、どこが分からないかもわからない、つまり全部わかんないとお返しされた。上鳴くん、いちおう偏差値79のヒーロー科に合格してるんだよね……?百ちゃんが心配そうに駆け寄ってきたけど、三奈ちゃんがヘルプを求めてるので私が教えるよ~と百ちゃんに伝えて、私は空中に画面を投影する。

 

 「二次関数の基本なんだけど、まずはここからね」

 

 「お、おお……?」

 

 画面の中で、計算式と公式を表示して、ヒーローのアニメーションなどを挟んでどこをどうするか、なんでこうなるのかをスライド形式で上鳴くんに細部の細部まで噛み砕いて説明する。理解を示してくれれば思いっきり褒めて、出来なかったら躓いた部分を見つけて一緒に修正、パズルを組み立てるようにステップを踏んで一緒に問題を解いていく。そして5分後……

 

 「と、解けた!全然わかんなかったのに!楪すげえ!」

 

 「ぜーんぜん!私は説明しただけだよ。上鳴くんが頑張ったから解けたの。それじゃあ、次はこの問題!同じやり方で解けるから、やってみて!」

 

 「うおおお!!今の俺はクソ強ええ!!」

 

 「か、上鳴が勉強できてる……!?」

 

 「響香ちゃんそれは流石にひどいような……」

 

 「流石は希械さんですわ。非常に分かりやすくて、私も聞き入ってしまいましたもの」

 

 バリバリ、とやる気を見せつつ問題を雷の勢いで解いていく上鳴くんにみんなが驚いてる。流石にひどくないかな~?やってること相澤先生とそんな変わんないよ?興味を持続させて、やる気を引き出して、出来たら自信がついてるうちに身に着けさせる。それこそが勉強を続ける秘訣なのです。私は褒めて伸ばすのが好き、だってそっちの方がお互いに幸せだから。

 

 「皆さん、そろそろ休憩にしたらいかがでしょう?お茶をもって参りましたの」

 

 「ヤオママ~~!!」

 

 そこからさらに1時間でそろそろ他の人の集中が切れ始めていた時百ちゃんのお母さんがメイドさんと一緒にお部屋に入ってきて、私たちの前に紅茶とクッキーを置いてくれた。しかも私にはちゃんとコーヒーだ……!な、なんとも申し訳ない。私が変な好奇心をうずかせたばっかりに……!

 

 紅茶はみんなの口にあったみたいで、美味しい美味しいと声をあげてみんな飲んでる。コーヒーも香り高くて苦みのキレがいい……脳みそが覚めていくのを感じるよ……。そこで私たちは目の前にあるこんがりと焼けたクッキーを何の疑いもなく口に入れた。その味は……何とも表現しがたいものだった。何だろう、何の味が近いんだろう……?いや、ゴムとか鉄とか人が食べるものじゃないのと比べ初めてあれれ?となってきた。クッキーだよね、これ?

 

 「不思議な味だね~」

 

 「……??っ!?し、失礼いたしますわ!」

 

 皆が筆舌に尽くしがたい顔をしてるのに疑問符を浮かべた百ちゃんがクッキーを食べると、口を押えて血相を変えて出ていっちゃった。それを見ながら2枚目に手を伸ばす私にみんながあり得ないものを見るような目をしているけど、まあなんだ……焦げた配線とか、そんなものよりは美味しいのでまだ食べられる部類。多分、塩と砂糖間違えて、それでクッキーに入れちゃいけないものを入れたんだと思う。もしかして百ちゃんのお母さんの手作りかな?そう思うとありがたいなあ。

 

 「楪お前……よくぽりぽり食べれるな」

 

 「まあその、ゴムとかよりは美味しいかなって。残すのも可哀想だしもったいないし……甘いもの食べたいよね?はい、フィナンシェどーぞ!」

 

 紅茶で口をゆすぐ形になっちゃった皆に、私はバスケットからフィナンシェを取り出してみんなに配る。こっちは味見もちゃんとしたし、美味しく焼けてるよ~。漂うバターの香りにみんなは唾をのんで、フィナンシェに手を伸ばしてくれる。美味しく食べてくれるみたいで嬉しいな。

 

 

 

 

 

 「すまねえ!勉強教えてくれ!!」

 

 あの後色々あって友情を深めた私たちの勉強会は滞りなく終了し、私たちはそれぞれの家に帰った。私は百ちゃんから教わった文章問題の解き方を忘れないようにメモリに焼き付けて、夜ご飯の支度に精を出していた。私の両親は基本夜勤なので朝食、夕食の時間が合わない。なのでお料理は私の役目、作り置きや焼くだけなどの状態で冷蔵庫に放り込んでおいて両親が食べる。翌日感想のメモ書きがあったりとかするとガッツポーズ!やる気が出るよ~。

 

 なのでお料理に精を出そうとしていると、玄関からピンポン、と音がして来客を知らせた。エプロン姿のままで玄関の扉を開けると、直角90度の角度で頭を下げて勉強を教えて欲しいと懇願するえーくんの姿が。あれ?爆豪くんにお勉強教えてもらってたんじゃないの?

 

 「爆豪くんとのお勉強は?」

 

 「ああ、教えてもらったんだけど……その、だな」

 

 「……お夕飯、生姜焼きでいい?」

 

 「すまねえ!!!」

 

 私はえーくんを家に招きつつ、夕飯の献立を伝えるのだった  




 重要なお知らせです。夏休み前半のエピソードである映画ですが、この作品でもやろうと思います。端的に言えばやった方が面白そうだからです。お許しください。

 ちなみに切島くんですが当然の権利のようにこの後マンツーマンでお勉強を教えてもらってご飯食べてます。爆豪くんですが教えるのがクソ下手ということが小説で判明してるのでこうなりました。

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