「さて、待たせたね楪少女!君の試験概要を説明しよう!」
「ええ、お願いします。オールマイト先生」
二人が自立可動式のレスキューロボットに担架で運ばれていったのを見送った私に、予想通りというか何というかコスチュームが汚れただけにしか見えないオールマイト先生がいつも通りの人を安心させる包み込むような笑顔で私の前に現れた。あれだけ二人が必死になって攻撃して、応えてないどころかノーダメージとしか思えない。でも、唯一の懸念点と言えば……
「時間は、大丈夫なんですか?」
「HAHAHA!大丈夫!まだまだたっぷりあるさ!終了してない組もいるからね!」
オールマイト先生の戦闘可能時間。2時間くらいだったはず、だけどどうやら今日のために時間を残してくれていたみたい。試験官を心配するなんておかしいかもしれないけど、秘密を知っているのは私を含めたごく少数だから……それに、今回私はデクくんを見て武装の加減を辞めて本気で挑むつもりでいる。それこそUSJの時の脳無のように。それですら、当てられるかも分からない。
「さて、ではルールの追加についてお話しよう。君の場合、一人ということを勘案して勝利条件を追加する!それは「制限時間いっぱいまで行動不能にならず生き残ること!」当然逃げてよし、私に向かってきてもよし!隠れるもよしだ!」
「それは、タイムアップの脱落と矛盾しちゃうんじゃ……?」
「おいおい、行動不能になったらダメだぜ?」
「確かに、あなた相手に30分無傷はむりですね」
「それに、ヒーローとしての行動も期待しているぜ。私というヴィラン相手に、な」
うわ、遠回しに逃げるだけなら不合格だぜって言って来た。ルールとしては何しても生き残ればいい、だけどそれが期末テストの合格じゃない。演習に合格できても期末では赤点かもしれない、そういうことか。なら猶更やることは一つだよね……私は受け取った拘束用カフスをバリ、ゴリとかじって食べてしまう。ああ、美味しくない。
「……どういうつもりかな?」
「ええ、まあ……これでカフスを量産できますので」
材質、構造はこれで解析できた。ふざけてるわけじゃないんですよオールマイト先生。ありとあらゆる手段を使って今から私は貴方を出し抜きにかかります。オールマイト先生はそれで私が自棄になったわけじゃないということを理解してくれたみたいでうん、と頷いて位置に着くように促してくれる。その間にもリカバリーガールから演習の合格を告げる放送が響いてる。その中には、えーくんの名前もあった。
『では、楪希械、期末演習、スタートだよ!』
「ギガ・クラスター、
開始と同時に、私は私の何倍もある大型のコンテナ型ミサイルを背中に3つ、作り出す。これが、最初の仕込み。私が時間を貰って組み上げたすべてがそこに詰まっている。オールマイト先生が気づく前に、と打ち上げたミサイル3基は、上空に打ちあがり、うち一基から生じた白煙で姿を隠した。そして、夥しい数のミサイルが解放されて、右目でロックオンしたオールマイト先生に襲い掛かる。
幸い彼が陣取っている場所は彼自身が更地にしてしまっている。一点集中の火力、私はそのまま続けて、もう一つ体内で作り上げていたものを解放した。
「
出し惜しみはなし、私の身体を機械が覆う、ヘッドギア、一つ目の金属製のマスク、サブアームを4本、肩にはギガランチャー、背中には動力炉を入れたミサイルランチャー兼ブースター、脚はジェットエンジン内蔵型のホバークラフト、腰にはレールランチャー、それぞれをサブアームで掴む。手にはこれ専用に開発した、ミサイルランチャー、ガトリング砲、レーザーキャノンを一纏めにした武装「シェキナー」、もう片手には盾、レーザーガン、大型の杭を打ち出す機構、レーザーブレードを複合した兵装「トリケロス」を装備。前腕にトリケロスを固定して両手でシェキナ―を持ち、私は滑る様にその場から離れて、オールマイト先生の所に向かった。
50発はくだらないマイクロミサイルがオールマイト先生を襲う、彼は両手を構えて、クロスチョップをミサイルたちに放った。その途端、ありえないほどの衝撃が既に更地だったはずの場所を広げるほどの威力をもってミサイルを全て叩き落してしまった。当たるとは思ってなかったけど……!当然だよね!
「HAHAHA!その程度かい楪少女!」
「いいえ!ここからです!」
「むっ!それは……!」
ドリフト走行をしながらオールマイト先生の前に現れた私に彼はゴリアテの事を思い出したのか、少しだけ警戒の様子を見せる。だけどこれは違う、圧倒的な弾幕の手数量をもって、貴方をそこに縫い付ける!そしてすれ違いざまにカフスをかける!作戦その1!私は6本の腕を全て操って同時にオールマイト先生に照準をつける。マスクの単眼、高性能射撃用センサーで彼を捕らえて一斉に弾幕を吐き出した。
「どこに撃ってるんだい!?」
「外れるのも想定済み!」
当たるわけがない、とは思っていたけど一瞬でその場から姿を消したオールマイト先生は私の後ろに現れて、背中のブースターを壊そうとしてくる。だけど当たるわけがない、とは思ってた!だから、一拍おいてミサイルを真後ろに発射していた。これは近接爆発型……!当たらなくても近くによれば爆発する!私は至近距離で爆発したミサイルに吹っ飛ばされるがなんとか空中で体勢を立て直して着地する。オールマイト先生は……!
「なぜ、そうなんだい?」
「……?何のお話ですか?」
「君の戦い方の話さ、誰かを守ろうとするその戦い方は素晴らしい……だが、そこになぜ君がいない?」
「おっしゃっていることがよくわからないのですが……?」
「自分の負傷を勘定に入れてないのは何故か、という話さ」
ミサイルで多少煤けたオールマイト先生はそう聞いてくる。私が自分を勘定に入れてない……ああ、そういうことか。何のことはない話だと思う。べつに
「え、だって私の手と足はほっとけば生えますし、生身を怪我してたとしても個性で補えます。即死しなければ内臓が吹っ飛んでも個性で代用できると思います。えーと、つまりですね……私の方が頑丈だから、です」
「だが、痛いはずだ」
「ええ、まあ……でも私よりも他の人の方が痛いに決まってます。私は、機械ですから」
どこかで話したかもしれないけど、生身の身体は私の秘かな憧れだ。だから私は自分の左目が好きだし、他の人の体が大事だと思う。ただ、他の人は私にみたいに頑丈じゃないし、怪我すれば直すのだって時間がかかるし……失えば、戻らない。なら、私がそうなったほうが合理的だ。失っても戻るし、直すのだって一瞬。じゃあ、それでいいと思う。そりゃ、見る側からすれば気持ち悪いかもしれないけど……
話は終わり、と私は腰のレールキャノンを連射してオールマイト先生に弾幕を張る。彼は一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、すぐに顔を引き締めてレールキャノンを手刀で迎撃した。嘘っ!?手刀で弾丸切るの!?しかも音速越えのレールキャノンを!?冗談でしょ!?いやそれでこそ平和の象徴か!
毎分100発の連射力を誇るギガランチャーの榴弾が連続でオールマイト先生に迫る、ついでシェキナーとトリケロスのレーザーも。だが、スマッシュの一撃ですべてなかったことになる。シェキナーのミサイルを握りつぶしたオールマイト先生がぶれる、そして、両肩が軽くなった。
「そうか、君は分かった上で……そうしてるのか」
「はい、私のそれは受け入れがたいものかもしれません。ですけど、私は保身して他人の命を投げ出せない。出し惜しみして、助けられなければ一生後悔するからです」
根元から切断されたサブアーム2本と、ギガランチャー。それはオールマイト先生の手の中で握りつぶされて拉げる。被害想定、戦闘行動支障なしなれど最大火力を喪失……ヘカトンケイルはここまでにした方がよさそうだ。作戦を2段階目に移行しよう。
「だが私は断言するぞ、君はいつも自分を機械というが、君は人間だ。私と何も変わらない、君は君を大事にするべきだ」
オールマイト先生の強い瞳にそう見据えられて、マスク越しでも気圧されてしまう。私自身を大事に、かあ……私は確かに傷ついちゃいけない戦い方が得意じゃない。避ける、躱す……それをできるほど私の体は身軽じゃないから。どうしたって避けれないものがある。言い訳か……そうかも。考えるのは後だ、今は試験に集中!
「後で考えてみます。ですけど、今は置いておかせてくださいっ!」
「むぅっ!?」
残りの武装をオールマイト先生の周りにばらまきながら突撃する。自分ではなく周り、更地に突き刺さる鋼の豪雨がオールマイト先生の動きを少しだけ鈍くする。そのまま突撃してタックル……ではなく私は手足を切り離して、ヘカトンケイルを脱ぎ捨てた。交錯するようにオールマイト先生を飛び越えて、周りにバラバラになったヘカトンケイルが、熱風を吹き出してさらにオールマイト先生をその場に固定する。
エンデヴァーから理論を教わった赫灼の極意「熱の圧縮」……それは一部だけ成功して私は手足に熱を圧縮することで生身の中枢を熱から守り、さらに切り離して熱のコントロールを行ってオーバーヒートへの対抗手段として身に着けることができた。だけど、今の私は手足がないだるま状態、だからこそ最初の仕込みが生きてくる!
「タイタンフォール!スタンバイ!」
空から、何かが落ちてくる。そう、最初に打ち上げたミサイルは3つ、クラスターミサイルだったのは1発だけだ、残り二つは……私の残弾。ヘカトンケイルが通じなかった場合の別の手段だ。鈍足ではあっても威力と範囲に優れたヘカトンケイルならばオールマイト先生の動きを止めて脱出ゲートをくぐれるかと思ったけど、甘かった。
それならば次の手を。私の強みを押し付ける。手段の豊富さこそが私の真の強み。機械の力でも、硬い体でも、再生する手足のどれでもない。あれが通じなかったからこれ、を特化していくらでも試せるのが私の個性の最大の利点。トライ&エラー、それこそが今までの私とここに押し上げてきたものだから。
「
オールマイト先生が熱風牢獄から脱出する前に、圧搾空気で空中で態勢を整えた私に迫った外骨格、アルビオンが結合する。肩口のユニバーサルブースターポッド、腰後ろにメインスラスターであるテールバインダーを両腰2つづつの計4機、脚はまるで鳥の足のように二股に分かれて足の内部にはバーストタービンエンジンがうなりをあげている。バイザー型のヘルメット、全体的にシルエットは細め、大きさも何時もの私を逸脱してない。
しゃりん、とこの外骨格の唯一の装備、レアアロイブレードを抜いて構える。黄金色の刀身は希少金属をありとあらゆる方法で鍛え上げた西洋剣、折れず、曲がらずを体現した最硬の剣だ。全身スラスターの塊になった私が、ホバリングしながらオールマイト先生を見下ろす。遠距離でのつるべ打ちはダメだった。ならこれなら!
熱風牢獄を腕の一振りでかき消してしまったオールマイト先生に、私はレアアロイブレードを構えて突撃する。背中のスラスター達がうなりをあげて私を射出する。音を突破してソニックブームを連れてオールマイト先生に突っ込む、けど……目で、追われてるのが分かった。振りかぶるレアアロイブレードと先生の拳が衝突して、私は押し負けて吹き飛ばされる。
「大分、速くなったね!だが、そろそろ私もエンジンがかかってきたぞ!」
「私もです、まだトップスピードじゃありません!」
この外骨格は私の弱点であるスピードを埋める為に開発したものだ。背中のブースターポッドも、テールバインダーも、脚のバーストタービンエンジンもそれぞれが単騎で私を飛行させることができる推力を持っている!ならそれを8機、同時に運用すればどうなるか……答えはこれ!
「ふぐぐぐ……!」
バイザーの下で歯を食いしばる。上下左右に滅茶苦茶にスラスターを向けてオールマイト先生から逃げる。当然のように、追いついてくるし、気を抜けば攻撃がクリーンヒットする。軽装、の名の通りアルビオンはヘカトンケイルと比べて紙装甲だ。オールマイト先生の攻撃をまともに食らえば落ちる。でもそれを補っても初速から前を凌駕できるこれならば!
「はあああああっ!!!」
「DETROITSMASH!!!」
私の両手で振りかぶった剣と、オールマイト先生の拳が衝突して、凄まじい衝撃波が周囲を駆け抜けた。
VSオールマイト前編でした。以下設定解説
重装中距離殲滅型強化外骨格『ヘカトンケイル』
端的に言えば6本腕のドムのバックパックをZZのものにした感じ。地走専用、飛べない。武装はベルト給弾式バズーカ2門にミサイル、腰についたレールガン、ブリッツのトリケロスにホワイトライダーのシェキナ―を手持ちにしてる。圧倒的弾薬庫。人に向ける火力じゃないが相手が人間かも怪しいのでセーフ。
軽装近接速度特化強化外骨格『アルビオン』
体のシルエットは流線型、イメージ的にはガンダム00のマスラオとかフラッグが近い。色は白。ただし背中に試作1号機FBのスラスターと腰に試作3号機のバインダーを4つ、さらに足はマクロスのバルキリーの足を積んでる。全身スラスターの塊、強化外骨格の中でも法外な最高速度を誇ってる。武器はバエルソード2本のみ。パワーはあまりないけど加速力で補う設計、そして一番紙装甲。アストレイのガーベラストレート持たせようか最後まで悩んだけど刀として使わない、叩き付ける切り方をするのが楪ちゃんなのでバエルソードになった。満足。
では次回後編をお楽しみに。感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ