「なし崩し的にやっちまったけどよ……何が起こってんだ?」
「…………放送、聞いてなかったの?」
「あー、なんか流れてたような……」
「えーっとね……?」
ステインに縄抜けされた前回を踏まえて脱出できないように手錠、足輪、重り、その他あらゆる手段を用いてヴィラン二人をぐるぐる巻きにしていく私にそういえば、といった感じのえーくんが手錠をガチャガチャと相手に嵌めながら聞いてきた。え、まさか何も知らずに当然のように加勢してくれたの……?そういえば爆豪くんも状況を分かってなかったような?
とりあえず私は知っている情報をえーくんに話す。ヴィランが島内のセキュリティを全部乗っ取ったこと、オールマイト先生を始めとしたヒーローたちは島内の人間を人質に取られて拘束されたせいで動けないこと、唯一自由の身である私たちでセキュリティを取り戻すことが出来ればオールマイト先生が自由に動けるようになり状況が逆転すること。全て話し終わった私が猿轡をヴィランに嚙ませてガンガン、と手をはたく。なるほど、と得心顔のえーくん。
「いや、お前が殴られそうだったからつい頭に血がなぁ。しかしまあ、状況は分かったぜ。さっさとみんな追いかけてオールマイトを助けようじゃねえか!」
「うん!あ、でも……その前にまだひと悶着ありそう」
「あ、あ~~……多くね?」
先を急ごう、と話しをまとめ上げたところで聞こえたサイレン、その方向に目を向けるとI・アイランドの警備ロボットが大挙して押し寄せているところだった。物量による消耗戦が苦手なえーくんが流石にこれは多い、と硬化して前に出ながらぼやく。あ、でもただの機械なら全然だ。というか……
「メカで私に挑むなら、このくらい対策しないとね」
「おお!一網打尽!」
ぽいっとハンドグレネードを投げる。警備ロボットの波の前に落ちたハンドグレネードは一瞬雷光を走らせて起爆、その瞬間警備ロボットたちは全身から火花を散らして機能を完全に停止した。私特性のEMPグレネード、威力範囲無制限バージョン。ちなみに私には効かないしえーくんは硬化してたので効かない。あ、でもこの階の電装系は死んだかもしれない。いやタルタロス級なら……?警備ロボット達には効果は抜群だったというわけです。
全身の電子機器に致命的な損傷を受けて黒煙を上げる警備ロボットたち、よしこれで次の階に……まだ来るの!?えー……きりないやつだこれ。どうしよう、あ!防火シャッター閉まってる!もう!あの状況でみんな逃げるとは全く思わないので目指すべきは上だから……最上階までどうやって行こう。えーくんに数発グレネードを渡して私が考えてる間えーくんが警備ロボットにグレネードを投げて対処してくれる。ふむ、うん……よし!
「えーくん!外から登ろう!」
「おお!……外出れるのか?」
「出口がないなら作ればいいんだよ!はい!」
「よしきた!」
元来た道を戻る様にして私とえーくんは植物プラントから飯田くんが壊したドアを抜けて廊下に戻る。私はえーくんにもう数発グレネードを渡して足から放熱、短くなったスカートが暴れる。一発でこの頑丈なセントラルタワーの外壁を破る装備は……これしかないよね。いくぞぉ……!
「サドンインパクト、
ゴリアテの右手だけを生成する。肘が稼働して杭がせりだす。そして思いっきりパンチと一緒に杭が撃ち込まれて圧縮された空気とオールマイト先生並みの馬力のパンチが壁に打ち込まれる。轟音を立てて壁に大きな穴が開く、溜まってしまった全身の熱を圧縮して右腕と一緒に捨てる、腕を再構成すると同時に私の足が変形する。
「ホバーバイク、
「……よし来た!」
生成されたホバーバイクに私は跨り、グレネードの残りを後ろに全部投げたえーくんが私の後ろに飛び乗る。壊れた警備ロボットを踏み越えて迫る警備ロボットが到達する直前で私たちはホバーバイクを発進させて上まで一直線に上る。それと同時に上階の方から爆発音が聞こえる。これは……!爆豪くんの爆破だ!おそらく最上階の一歩手前、風力発電エリア近く……!
「えーくん飛ばすよ!落ちないようにね!」
「俺は気にすんな!目いっぱい飛ばせ!」
えーくんが私のお腹に手を回したのを確認してホバーバイクのアクセルを全開にして、ロケットのように空を急上昇する。風力発電システムでひときわ大きな爆発が起こり、何かが打ち出される。あれは……!デクくんとメリッサさんだ!爆豪くんが上に送り出すために二人を爆破で飛ばしたんだね!?
「希械!あれ!麗日が!」
「えーくん!お茶子ちゃんをお願い!」
「任せろぉ!」
風力発電システムのある階まで一気に登り切った私が見たのは、風にあおられて進路が変わってしまったデクくんとメリッサさん、警備ロボットにのまれようとしてるお茶子ちゃんとそれを助けようとする爆豪くんだった。とっさの判断でえーくんにお茶子ちゃんのことをお願いすると彼は二つ返事でバイクから飛び降り、お茶子ちゃんの目の前に着地して警備ロボットを殴りつぶした。
「切島君!希械ちゃんも!」
「遅えんだよ切島ぁ!楪ぁ!」
「悪ぃ爆豪!希械!こっちは任せとけ!」
「うん!」
お茶子ちゃんが私たちに気づいて嬉しそうに声をあげた。警備ロボットに邪魔されてお茶子ちゃんの元に遅れてたどり着いた爆豪くんがわっるい顔で笑っている。いやほんとに遅くなって申し訳ない、他の人はどうなったんだろう?轟くんが残ったってことは無事だと思うんだけど……!
空中で風にあおられているデクくんの手を取ってメリッサさんごと引き寄せる。抱きかかえるように私の前に座らせて覆いかぶさるようにふたりを固定した。そのまま目指してるであろう非常口にまっすぐ突っ込む。寸前で二人を抱きかかえてホバーバイクを質量弾扱いして非常口を無理やりぶち破り、バーニアで移動してその中に入った。私たちが着地したのが見えたのかゼログラビティ状態だった二人の体に重さが戻る。
「潜入成功だね、二人とも怪我無い?」
「ありがとう楪さん、僕は大丈夫」
「私も大丈夫。それよりも急がなきゃ……!」
「っ!?デクくん!メリッサさん抱えて先に!」
安否確認をしてたらデクくんの背後にヴィランの影が見えた。とっさに二人を腕で引いて私が前に出る。体から刃物を生やす個性……!メキバキ、と私の手がヴィランの刃物を握りつぶしたのを見てヴィランは一歩後ろに下がった。デクくんはメリッサさんを横抱きにして背後の階段に一目散に昇っていく。
「胸糞悪いガキどもめ!」
「どっちが!」
「やかましい!ヒーロー気取りかよ!」
「んんっ!!!!」
手の刃物を新しく生やして襲い掛かってくるヴィラン、けど80階で対処したさっきのやつと違って単純な物理攻撃だ!無視できる!武装を作ってる時間も惜しいので私はカウンター気味に思いっきり戦闘形態の拳を突き入れてヴィランと壁をサンドイッチする様に殴りつける。刃物が全て砕かれ、蜘蛛の巣状の罅が入った壁をずり落ちるようにしてヴィランは意識を失った。簡易的な拘束具を作ってすぐさまデクくんたちを追いかける。銃声がなっている、心配だよ……!
ブーストジャンプで階段を一足飛びに上る。ドレスのスカートは戦闘に巻き込まれて焦げたり解けたりなんだりしてミニスカートより正直頼りないかもしれない。階段の途中でデクくんが倒したらしいヴィランが気絶している。拘束する時間も惜しいのでそのまま進み、出遅れたのがわずかだったのもあって200階到達と同時あたりで二人に追いつけた。
一番ヴィランの警備が厳重な場所である制御ルームまで何があるか分からないので一気に駆け抜ける。やはりヴィランは大挙して押し寄せてるわけじゃなくて少数精鋭でI・アイランドを乗っ取りに来たみたい。一番防御が硬いはずなのに誰もいない、そして制御ルームの入り口……!あれは!
「パパ!?」
「シールド博士……!?助手の人!?」
「サムさん……!なんでパパに銃を……!?」
制御ルームの入り口少し前にある保管室とプレートに書いてある部屋にいるのはシールド博士と助手のサムさん……!だけど様子がおかしい、サムさんはシールド博士の背中に拳銃を押し付け、シールド博士は信じられないようなものを見る面持ちで端末を操作し、何かのブロックの鍵を開けた。サムさんはそこからトランクを取り出して、抱える。
「パパ!サムさん!何してるの!?」
「……メリッサ!?逃げなさい!サム!止めろ!」
「お嬢さん……申し訳ないね。見られた以上帰すわけには……!」
「動かないでください」
メリッサさんが飛び出してしまい、私たちもあわてて後を追う。メリッサさんに拳銃を突き付けるサムさんにシールド博士は「よせ!」と叫ぶ。私が彼に機関銃を突き付けるとサムさんはそれでも拳銃を下ろさずに引き金に指をかけた。
「よせ!サム!なぜだ……!なぜヴィランを島に手引するようなことを……!」
「なぜ?あなたがなぜというか!この研究成果を奪われ、凍結させられてあっさり引き下がった貴方が!何年貴方に仕えてきたと思ってるんです!?地位も名誉も、全てが泡沫と消えた!せめて、金くらい手に入らなければ割が合いません!」
「そんな、理由で……?言ったじゃないか!これがダメなら別の方法を探るべきだと!政府の言う通りだ!この研究は危険すぎる!個性社会そのものを揺るがしてしまうかもしれないんだぞ!?」
「……あなたには、分かりませんよ……!」
サムさんの目に浮かぶ苦悩の色は長年仕えていたシールド博士が完成しかけの研究をあっさり諦めて自分の時間を無駄にしたことに対する侮蔑と憎悪が入り混じり、とても正気とは思えなかった。この人……!何のためかと思えば……!お金!?たったそれだけのために島民を犠牲にしようとしてたの!?
「そう、お前にはわからない。デヴィット・シールド……その研究、個性増幅装置の真の価値など。それによって引き起こされる混沌に莫大な金。素晴らしいじゃないか……!」
「ウォルフラムさん……!約束のものです!これで……」
「ああ、ご苦労。そこのでかいの、邪魔だ」
「きゃあっ!?」
「楪さん!?」
私たちの後ろから入ってきたヴィラン、ウォルフラムと呼ばれた筋骨隆々の仮面の男は個性なのか金属を操って私にぶつけてきた。真後ろからの奇襲に私は対処しきれずまともにもらって保管庫の壁に埋められる。その隙にウォルフラムに駆け寄ったサムさん、いやサムがケースをウォルフラムに渡してしまう。パワーはある個性だけど私の方がまだ強い、鉄塊を無理やり押しのけて壁から復帰する。
「報酬を渡さないとな」
「なにを……ぐああああっ!?」
「いやあああっ!?」
「……サム……!」
ウォルフラムはケースを受け取るやいなや懐から出した拳銃をサムに向けて発砲する。至近距離で膝を撃ち抜かれたサムが膝を抑えてのたうち回る。メリッサさんの悲鳴が響く中、ウォルフラムはごり、と拳銃をサムの頭に押し付ける。まずい、デクくんと私が同時に動いた。
「おまええええっ!!!」
「やめなさい!!!」
デクくんのフルガントレットに守られた拳がウォルフラムに叩き付けられ、その隙に私が拳銃を奪って握りつぶした。ガードしたらしいウォルフラムが吹っ飛ばされるがデクくんの制御を誤ったらしい攻撃を受けたのにも関わらずダメージが少ない。私はメリッサさんに叫んだ。
「メリッサさん!制御ルームへ!お願い!みんなを助けて!」
「ここは僕たちが食い止めます!だから!」
「っ……!わかったわ!」
「させると思うかぁ!?」
「「するんだよ!!」」
メリッサさんが駆け出していくのを阻止しようとするウォルフラムに私とデクくんは叫んで突っ込んだ。ウォルフラムが触った壁の鉄板が剥がれてまるで生き物のように襲い掛かってくる。私は戦闘形態の両手の爪を利用して鉄板を引き裂き、殴りつぶしながら接近し、打って変わってデクくんは身軽に壁や向かってくる鉄板を飛び越えて迫る。
「スマッシュ!」
「このおお!!!」
デクくんの蹴りと私の振り下ろしはウォルフラムが操った鉄の壁に防がれる。そのまま壁に押されて生き埋めにされた。デクくんを庇って背中で壁を受け、サンドイッチ状態で腕を伸ばして耐える。デクくんが私の脇の下からワンフォーオールを纏った拳を突き出して壁を壊してくれる。脱出した私たちに対してウォルフラムは攻撃を私たちに集中するのではなく、非戦闘員のシールド博士と彼に手当てされているサムに鉄柱による攻撃を向けだした。いけない!
「そうだよなあ?動いちまうよなあ?ヒーローってのは難儀だ。たったこれだけで、身動きできなくなる」
「う、うぐぐぐ……」
「くぅぅ……」
全方位から迫る鉄柱を私たちはシールド博士とサムを庇って受けざるを得ない。そして鉄柱はどんどん数を増し、私の力でも支えきれないほどの重量で私とデクくんを地面に埋めてしまう。それでもなお、鉄柱の衝撃は数を増し、それが20を超えたところでようやく止まった。
「やめろ!!」
「チッ、警備システムを復旧されたか……博士、そこのガキどもはまだ殺してない。生かしたいんだったら、大人しくついてくることだ」
「は、博士……ダメ……」
「黙ってろ」
「あああああっ!?」
鉄柱の隙間から博士に声をかけるが、ウォルフラムはさらに鉄柱を追加して私に重量を追加した。ねじりつぶされるような痛みに私の口から悲鳴が上がる。辛うじてデクくんは潰されてない……私もまだ、息ができる……!博士を守らないと……背に腹は代えられない。
「わかった……ついていこう」
「賢明だ」
ダメ、ダメ……!声が出ない。ウォルフラムの悪党らしい三日月のような笑みだけが残され、保管庫から二人が去っていく。サムは気絶してる、デクくんは動けない……私がやるしかない……!
シールド博士には今後出演予定があるので今回ヴィランを招き入れたのは助手のサムの独断という形にしました。すまんなサムさん
では次回もよろしくお願いします。感想評価をいただけると励みになるのでよろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ