個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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46話

 ふぅ、ふぅと息を吐く。あんまりやりたくないけど……これをやらないと脱出できない。右隣で同じように潰されているデクくんに被害がいかないように……私は左手を自爆させた。至近距離での大爆発が鉄柱ごと私を吹き飛ばす。声にならない悲鳴が口から洩れたけど、これで自由になった。片腕の状態で鉄柱を引き裂いてデクくんを助け出す。

 

 「ごめん……デクくん、大丈夫?」

 

 「楪さん……僕は大丈夫だけど、楪さんは……」

 

 「大丈夫、ちょっと痛かったけど……それよりも」

 

 「うん、博士を助けないと」

 

 もうぼろきれと化したドレスを翻して走り出す。左手を作り直し、下半身から思いっきり排熱して体の温度を下げる。これでまだしばらくは個性が使える……!デクくんも鉄柱であちこち痛めてしまったのだろう。少し動きがぎこちないが歯を食いしばってヴィランの後を追う。多分ウォルフラムは逃げるつもりだ。目的のものであるシールド博士とその発明品を手に入れたのなら。脱出手段も確保してるはず……それは恐らく空路!おあつらえ向きに屋上はヘリポートだ。

 

 タックルするように屋上のドアを開ける。やはりヘリポートには軍用らしいヘリが止まっていて、拘束されたシールド博士を後部に無理やり乗せたウォルフラムとその部下が今にもヘリを飛ばしそうだった。デクくんはその光景を前にして叫ぶ。

 

 「待て!!」

 

 「なるほど、そこまでする価値がこの男にあるのか?身内から犯罪者を出したこの男を」

 

 「関係ない!私たちは博士を救けにきたの!エクスカリバー、形成開始(レディ)!!!」

 

 「ははっ!!出来もしないことも言うなよ、ガキ!」

 

 ウォルフラムの個性が襲ってくる。もう何も奪わせない!何人の人の命を弄べば気が済むの!私の両手が変形して大型の刀剣型武装が姿を現す。連結状態だったそれを切り離して鉄柱に向けて振るうと、レーザーの刀身が鉄柱を焼き切った。私の後ろからデクくんが飛び出してウォルフラムに迫る。私もバーニアを吹かして両手のエクスカリバーで鉄柱を次々切断しながらデクくんと挟撃するようにウォルフラムに迫る。

 

 「なっ!?」

 

 「うっ!?」

 

 「はっはぁ!ヒーローってのは不自由だよなあ!何度も同じ手に引っ掛からないといけないなんて!」

 

 攻撃を当てようとした瞬間に私たちの動きが止まる。ウォルフラムが部下から受け取っていたらしい拳銃をシールド博士に向けていたからだ。そして、動きを止めた私たちを見のがさずにウォルフラムは巨大な鉄柱をぶつけて私たちを吹き飛ばした。何度か地面をバウンドしつつも立ち上がった私たちをあざ笑うかのようにヘリは発進する。だけど、軍用ヘリなのが残念だったね……!後部座席のドアがないタイプのヘリだ!

 

 「デクくん!私を信じてくれる!?」

 

 「楪さん……!もちろん!博士を救けよう!」

 

 デクくんの返事を聞いてすぐさま私はデクくんを抱えて飛び立った。ウォルフラムの鉄柱は、こない。やっぱり一回触らないと金属は操れないんだ!腰からもブースターを生成して速度を上げた私がヘリコプターに追いついて……!デクくんを思いっきり投げる。デクくんはワンフォーオールを発動して私の手を蹴り、加速する。そしてそのまま……銃を向けようとするウォルフラムの隙をついて後部座席を通り抜けるようにシールド博士をさらうことに成功した!

 

 「デクくん!きゃあっ!?」

 

 「楪さんっ!?」

 

 デクくんをキャッチしようとした私に、ヘリから発射された近接誘導ミサイルが直撃する。とっさに足で蹴りつけて逸らしたけど爆発によって大幅に吹き飛ばされてしまった。このままじゃデクくんとシールド博士が地面に激突しちゃう!間に合え……間に合え!間に合ってええええ!!!加速しつつ手を伸ばす、だけど遠い、遠すぎる!誰か、お願い……!二人を助けて……!

 

 「よくやってくれた!有精卵たちよ!もう大丈夫、なぜって?私が来た!!!」

 

 「おーる、まいと先生……!」

 

 私と、デクくん、そしてシールド博士を抱き上げて助けてくれたのは……平和の象徴、オールマイト。彼は私にデクくんとシールド博士を託すとヘリに向かって拳を握り締める。ここまで来て不利になったと察したらしいヴィランが逃げようとするけどそれを見逃す彼じゃない。オールマイト先生の鉄拳に殴り飛ばされたヘリは、ヘリポートへ逆戻りして墜落した。空中を蹴ってヘリポートに向かうオールマイト先生を追って二人を抱えた私もヘリポートに着地する。

 

 「パパ!!」

 

 「メリッサ……!済まない、怖い思いをさせてしまった……!ミドリヤ君もユズリハ君も、ありがとう……!」

 

 シールド博士が私たちにお礼を言ってくれる。それだけで救われた気持ちになった、無理をした、無茶苦茶をやったけど……助けることができた。その事実だけでこんなにも嬉しい、それをあざ笑うかのように突然また鉄柱が飛び出してきてオールマイト先生を吹き飛ばしてしまう。即座に警戒に移行した私とデクくんはメリッサさんとシールド博士を鉄柱から庇う。

 

 「オールマイトォ!」

 

 「メリッサさん、博士!私たちの後ろから出ないで!」

 

 近くに落ちていたエクスカリバーを拾い上げて私や博士に襲い掛かる鉄柱やパイプを熔断して無力化する。あまりにも数が多いそれはヘリポートをめくりあげて蠕動し、まるで魔王が住む塔のようなまがまがしい物体を組み上げていった。その頂点にいるのは、ウォルフラム……!仮面を外した彼の頭に見慣れない機械が付いている。シールド博士がそれを見て叫んだ。

 

 「よせ!その装置は未完成だ!個性は暴走し寿命を削る!目的が何かは知らないが死ぬ気なのか!?」

 

 「……この期に及んで俺の心配とはお優しいことだ。当然、生き残るために使わせてもらう」

 

 「往生際が悪いな!TEXASSMASH!!!なにっ!?」

 

 「……うそ」

 

 防がれた。ただの鉄塊に、オールマイト先生の打撃が。一振りで天候を変える打撃をただの鉄塊が防ぐ、個性増幅装置といったそれは流石シールド博士の発明品ということだろうか……!そして、また鉄塊に吹き飛ばされるオールマイト先生、金属の蠕動は続き、まるで静脈のような青い線があたりに走って、金属がめくれあがって塔の一部になっていく。セントラルタワーそのものが敵に回ったような、そんな感覚に陥る。

 

 高笑いするウォルフラムが操る鉄塊が私に降り注ぐ。エクスカリバーを捨てて私はメリッサさんとシールド博士を抱えて避ける。デクくんもフルカウルを纏って避けた。オールマイト先生に降り注ぐ鉄塊を全て受け止める彼の身体から、薄く蒸気が上がってるのが見える。そうか、活動限界……!さらに降り注ぐ鉄塊に、オールマイト先生が膝をついた。

 

 「オールマイト!」

 

 デクくんの叫びと同時に、オールマイトに迫っていた鉄柱たちが凍り付く。この個性は轟くん!そして聞き慣れた爆発音が響いて空を駆けているのは爆豪くんだ!くたばれ、といういつもの口の悪い言葉と共に爆豪くんの爆発がウォルフラムを直接襲う。ウォルフラムは壁を出して爆破を防ぐ、かなり個性を酷使したのだろう、腕を抑えて此方に戻ってくる爆豪くん。そして、誰一人欠けることなくみんながここに到着した。

 

 「えーくん!シールド博士とメリッサさんをお願い!デクくん、轟くん、爆豪くん!オールマイト先生を助けよう!」

 

 「うん!行こう!」

 

 「けっ!言われんでも分かるわ!」

 

 「ああ、やるぞ!」

 

 4人で並び立つ。ウォルフラムは私たちを邪魔だと感じたのか鉄柱を増やして押しつぶそうとしてくる。轟くんの氷結がそれを凍らせて、爆豪くんが爆破で粉砕した。そうか!温度差で脆くすれば壊せるのか!二人が壊してくれた鉄柱の隙間を縫ってオールマイト先生の所まで行ったデクくんと私、私がオールマイト先生を支えて、デクくんが……全力のスマッシュを鉄柱に叩き付けた。フルガントレットに包まれた手は、傷一つない。

 

 「二人とも……なんて無茶を……!」

 

 「だって……オールマイト先生、困ってたじゃないですか……!」

 

 「困ってる人を助けるのがヒーロー、そうでしょ……オールマイト……!」

 

 「……HAHAHA、確かにそうだとも。ありがとう二人とも!少年少女たちよ!しばし手を貸してくれないか!」

 

 オールマイト先生が立ち上がり、私とデクくんはおろかその場にいるクラスメイト全員にそう問いかける。当然答えは決まっている、イエスだ!えーくんも、爆豪くんも轟くんもみんな!私と同じように肯定の言葉を帰した。それににっと笑ったオールマイト先生が何時ものようにマッスルポーズを決める。その体から蒸気が消えうせた。

 

 「行くぞ!二人とも!」

 

 「「はいっ!」」

 

 「くそ、ごみの分際で往生際が悪いんだよ!」

 

 「そりゃてめえだろうがぁ!!!」

 

 「邪魔はさせねえ!」

 

 ウォルフラムはいっそ狂気を感じさせるほどの表情で金属を操り私たちに向けてくる。轟くんがその大部分を凍らせて爆豪くんが粉砕する。オールマイト先生とデクくんが一直線に走りだして、私も付いていく、二人が作ってくれた隙に体を変形させながら、纏う。もうここで終わらせる、オーバーヒート前提、出し惜しみはなしだ!

 

 「構成拡張(オーバード)、重装近接格闘型強化外骨格『ゴリアテ』機能更新(スタンバイ)形成開始(レディ)!!」

 

 久しぶりに直接身に纏うゴリアテ、サドンインパクトで眼前の鉄柱を薙ぎ払い、余波がウォルフラムの塔を揺らす。両肩から発射される連装ミサイルが爆豪くんが処理しきれなかった鉄柱を粉砕した。えーくんがメリッサさんに迫る鉄柱を受け止め、飯田くんがエンスト寸前の足を酷使してぶち壊す。頭皮から血を流してももぎもぎをもぎった峰田くんが即席のシェルターを作り出してそこにもう戦えない人たちを避難させ、八百万さんが盾で覆う。

 

 「うぐおおおおおっ!!!」

 

 ウォルフラムが、吠えた。全ての力を振り絞る様に両手を上にあげる。すると、ウォルフラムの塔の天辺に今まで操っていた鉄、パイプ、捻子……ありとあらゆる金属が集まって巨大な金属塊を作り出す。人がありんこのように思えるサイズ、お茶子ちゃんが驚愕に目を見開くのが視界の端に見える。

 

 「潰れちまえ!」

 

 「デクくん、オールマイト先生!私に任せてください!血路を開きます!後はお願いしますね!」

 

 「楪少女……!任せよう!緑谷少年!力を込めろ!限界を超えて!プルスウルトラだ!」

 

 「はいっ!楪さん!任せるよ!だから、僕らに思いっきり託して!」

 

 「ありがとう、二人とも!これで最後!50(フィフティ)ガーベラ・ストレート!形成開始(レディ)!!!」

 

 ゴリアテの両手から金属が伸びて、大きな大きな刀を作り出す。まさかこんな形で役に立つとは思わなかった、どれだけ大きなものが作り出せるかという限界値を見極めるためだけに設計した武器……!50mの長さを誇る刀、50ガーベラ・ストレート!ゴリアテの手と融合し、大上段に構えたそれを金属塊に向けて思いっきり振り下ろす。こちらに迫る金属塊を真っ二つにした50ガーベラ・ストレートがセントラルタワーの屋上にめり込んだ瞬間ぎりぎりで、全て体内に再吸収した。被害はギリギリ、ゴリアテの両手は肩からもげた!それでも活路は開けた!後はお願い!ヒーロー!

 

 「いって!二人とも!」

 

 「「緑谷!」」

 

 「「ぶちかませぇぇっ!!!」」

 

 「「DOUBLE DETROIT SMAAAAAAASH!!!!」」

 

 二つに分かれた金属塊の間を吹き飛ぶように通った二人の拳がウォルフラムを襲う。苦し紛れの鉄壁を粉砕して、ウォルフラムの塔を真正面から粉砕していく。衝撃波があたり一面を叩く、デクくんのフルガントレットが耐え切れずに砕けた、それでも二人の雄たけびはウォルフラムの企てごと全てを打ち破り、粉砕する力を二人の拳に与えている。

 

 そして、一瞬の静寂と共に塔が爆散して崩れ去る。ガラガラとセントラルタワーの屋上にウォルフラムが好き勝手に操っていた金属たちが自由を取り戻したのを喜ぶように甲高い音を立てて次々と落下し、積み重なっていく。私たちは、しばらく動けなかった。ただ、デクくんとオールマイト先生が塔があった部分に着地して、オールマイト先生の手にやせ細ったウォルフラムが気絶している状態で持たれているのを見て、ようやく状況を理解した。

 

 「……倒した!ヴィランを倒したんだ!」

 

 「うおおおっ!やったな!希械!緑谷!オールマイト!」

 

 「うんっ!やった!やった!守れたよ!」

 

 皆、ボロボロで元気なんて欠片も残ってないはずなのに広がった喜びが伝播して手を取り合って喜んだり、思いっきり両手を振り上げたり……各々の方法でみんなが喜びを表現する。私はゴリアテから転がり落ちるように降りる。両手を失った私を見越していたかのようにえーくんが受け止めてくれる。私は彼に、とびっきりの笑顔を向けてから、白んできた空の朝日を見つめるのだった。

 

 




 戦闘は終了になります。150ガーベラストレートは流石にでかすぎたんで50にしましたけどそれでもクソデカですね。映画最後のウォルフラムの鉄塊はそのくらいの大きさだったんでそれで押し通しました。エクスカリバーは約束された剣じゃなくてインパルスが持ってる対艦刀の方です。

 あ、匿名解除しました。というのも活動報告で少しだけご協力を賜ることが出来ればなということがありまして。良ければ覗いていってください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=296431&uid=88429

 では感想評価よろしくお願いします。

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ

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