夏休みの大冒険というにはちょっと、いやかなりヘビーだったI・アイランドセントラルタワー占拠事件から一夜明けた。朝方に終わった事件だったんだけど私たちはまー、その……資格未取得にもかかわらず大立ち回りを繰り広げたので警察の世話になる必要があったんだよね……。怒られ、はしなかった。というのもヴィランを招き入れたのがI・アイランドの人間で私たちは巻き込まれてなし崩し的に戦うことになったのが大きいみたい。
I・アイランドの責任者、いわゆる市長とかそんなクラスのお偉いさんは私たちがやったことに対して感謝の意を直接伝えに来てくれて、この件を公にしない代わりに私たちの将来に傷がつく事態は回避されたということみたい。うーん、ステインの時と一緒かあ……現場検証でゴリアテとか色々持ってかれちゃったけど返してもらえるかな?法には触れてないけど私まだサポートアイテム資格取れてないから突かれたら痛いかも……。
まあ、そんなことはどうでも、よくはないけど置いとけばいい。今は、目の前にあるグリルでじゅうじゅうと油を滴らせながら焼けているお肉の焼き加減を見ることの方が大事なんだ。ん、今!ひっくり返して……ん~~!いい焼き加減!いいお肉だなあ、そろそろステーキの方は良さそう。え?何をしてるかって?
「さぁ食べなさい!」
「焼けたよ~~!」
「「「「いっただっきまーす!!!」」」」
四方八方からグリルに向かって手が伸びて、焼けたお肉と野菜が刺さった串を我先にと手に取って、口に運んでかぶりついた。あ、何してるかだったよね?私たち雄英高校ヒーロー科1年A組はいま、I・アイランドの人工湖のそばにあるテラスを貸し切って、BBQ大会を開いております!あ、えーくんこれ食べて?はいあーん。美味しい?えへへ、私がスパイス調合したんだよ?あ、峰田君もあーんね、頑張った話聞いたよ~?ハーレムは無理だけど、このくらいはしてあげよう、私でごめんね?
昨日?一昨日?時間が曖昧だけど、ヴィラン襲撃の件でエキスポの開催は延期されちゃったんだ。何と今このI・アイランドには1年A組が全員集合してたの!凄いことだよ!?ほんとに世間って狭いね!で、オールマイト先生が戦った私たちの労を労うという意味を込めてと、エキスポが延期になってしまったからその代わりを兼ねてBBQをご馳走してくれることになったの!
お料理と聞いては黙ってられないのが私こと楪希械なので、美味しいものをもっと美味しくしたいですとオールマイト先生にお願いして一緒に準備をさせてもらうことに成功して、ここにBBQ奉行希械ちゃんが誕生したわけです。寝かせてたアルミホイルを開けて~、んん!いい感じの熱の入り方!トマホークステーキ……一回でいいから丸ごとかぶりついてみたかったんだよね!
「おいし~~!」
「ええ、ほんとね。希械ちゃん、みんな大変だったって聞いたわ。私たちがホテルの中にいた時にそんなことが起こってたなんて……」
「あはは、まあレセプションパーティーに行った人たちだけしか分からなかったと思うよ?ああ、パーティーと言えば私のドレス……」
「あ!希械ちゃんあのドレスすっごい似合ってたよね!また着せてみせてよ~~!」
「うぅ、三奈ちゃん聞いて……あのドレス破れてなくなっちゃったの……」
「ええ~~~っ!もったいない!」
うん!ほんとにもったいない!最終的に私のドレスはアマゾネスみたいな襤褸切れと化して、ゴミ箱行きになってしまった。いやほんと、私のヒーロースーツより布面積少なかったよ!絶対下着見えてたよね……いやでも峰田くんが言わないってことはギリギリ見えてなかった説が……?
うわあああん!と言いながら焼きそばを作り焼きおにぎりを焼き、さらには揚げニンニク、アヒージョなどを高速で作っていく私、うう、お料理してると癒されるよ……あ、焼きそば美味しい?やった~~。あ、爆豪くんこれ試してみて?辛いの好きだって聞いたから、唐辛子多めのスパイスと麻辣風のスパイス別で調合しておいたの!爆豪くんに瓶に入った二つのスパイスを差し出すと彼は無言で受け取った後、デクくんに「気持ち悪い事教えてんじゃねええええ!!!」と卓上に丁寧に全部置いてから襲い掛かった。うーん、いつも通り。
「ごめんなさい!遅れちゃったわ!」
「すまない、お招きいただき感謝するよ。トシ……オールマイト。少し取り調べが長引いてね」
「デイヴ!メリッサ!HAHAHA!気にする必要はないさ!皆!紹介しよう、私の親友のデイヴとその娘、メリッサだ!仲良くしてくれよ!」
「よろしくね!」
「やあ、君らがオールマイトの教え子たちか。よろしく頼むよ」
よろしくお願いしまーす!とそこかしこから挨拶の声が聞こえるのは流石物怖じしないヒーロー科、やってきたのはメリッサさんとシールド博士!どうやらオールマイト先生が誘ってくれたみたい。シールド博士はそのままオールマイト先生と雑談に興じ始め、メリッサさんはデクくんに軽く挨拶したら私の方にやってきた。
「ユズリハさん!こんにちは!やっと落ち着いて話せるわ」
「えへへ、大変でしたものね。色々聞かれるとは思ってましたよ~、技術者ですから」
「うふふ、お見通しかしら。でもね、さっきデクくんにも言ったのだけど、先にこれだけ言わせて欲しいわ。助けてくれてありがとうね、ヒーロー」
「メリッサさんもですよ。助かりました、ヒーロー」
メリッサさんがお礼を言ってくれるのに、そう返すと彼女は少し目を丸くしてから花が咲くように笑った。そのあと開始された技術者トークを料理しながら繰り広げていると他のみんなの頭に?マークが飛び始める。ギリギリついていけてるの百ちゃんくらい?あ、上鳴くんショートした。難しい話かもしれないけどこれ私にとってはすっごく楽しいの!あ、メリッサさん忘れてた!連絡先交換!お願いします!やった~~!お友達が増えた!炭火でバケット焼いて、アヒージョのオイルとニンニク、アンチョビが混ざった残りを塗ると美味しいんだよ~~?女の子的には口臭が気になるからそこまで食べられないけどね!
「な、な、な……なして、こんなことに……?」
「あはは、ユズリハさんのことみんな気になってたんだよ?パパがディベートするって言ったら、あれよあれよとこんなことに……」
「私の心臓が持たないよぅ……」
BBQの翌日、私はI・アイランドの学校、通称アカデミーにヒーロースーツでやってきた。というのもシールド博士からサポートアイテム国際免許の結果が出たので取りに来るついでに約束してたディベートをやろうというお話を貰ったのでメリッサさんとシールド博士と楽しく科学について語り合いあわよくば詰まってる所のアドバイスを戴こうかな~~とうきうきしながらアカデミーにやってきたんだ。
ちなみになんだけど他のクラスのみんなはそれぞれ思い思いのことをして過ごしている。だけどオールマイト先生はアカデミーにやって来てて、それについてきたのがえーくん、デクくん、飯田くんに轟くん、お茶子ちゃんに百ちゃんだね!三奈ちゃんはお勉強というワードが出た瞬間に別行動になっちゃった。えーくんは私が緊張で硬化するのが分かってるのでそれを緩和するためについてきてくれたらしい、ありがたや。
それで、なんだけど……現在私の目の前にいるのはシールド博士!だけじゃなくて……アカデミーはおろかI・アイランドで研究をしている高名な科学者の方々、それがデェェェェンと私の前に鎮座してるの……違うんです……会ってみたいとは思ってたけど会えるなんて思ってなかったから何も考えてなかったんです……。
わ、わぁ……ミノフスキー博士もいらっしゃる……ひぃ、ビーム物理学を確立したドクターJ博士……!あ、駆動装置の権威老子O!……それら様々な科学分野のトップをひた走るエキスパート達。エキスポの関係でI・アイランド以外からも科学者が集まって忙しいだろうにそれを縫ってここに居ると思うとお腹が痛くなってくる……!
「は、はひぃ……!?」
「あはは、大丈夫大丈夫。みんないい人たちだし、気さくで優しい方たちよ。パパ、そろそろ」
「ああ、すまん。じゃあユズリハ君、少々遅れたが君の国際サポートアイテムの免許についてだが、協議の結果合格ということになった!おめでとう!これが、免許証だ。再発行は日本でもできるけど、なくさないようにね」
「は、はい!ありがとうございますぅ!」
シールド博士が卓上からケースを取り出してそのまま私に渡してくれる。ケースの中に入ってるのは証書と、金属製のカードに文字と私の顔写真が刻印された免許証。わ、わ~~~~!!!ほんとに取れちゃった免許!オールマイト先生の名前を使ってるから裏口みたいな感じかもしれないけど!あれ?もしかして私不正にとったのに近い……!?精進します……。
「さて、大勢で押し掛けて申し訳ないね、君の作品であるホバーバイク、あれの完成度の高さは学内でも話題になったんだ。オールマイトからの推薦というネームバリューもある。仮に君が雄英のサポート科所属だったら十中八九、上が引き抜き交渉を根津さんに持ち掛けてただろう」
「そ、そこまでですかっ!?」
「ふむ、どうやら君はいささか自分が持ってる技術に無頓着のようだな。よいかね?超小型化した反重力生成装置、それを動かすエネルギー発生装置、慣性の制御による加速装置……確かに既存の技術を使ってるのだが、今の最先端を超えることに違いはないのだ。現に、エキスポの反重力発生装置は出力の都合こそあれ、建物サイズなのだから」
途中で口を挟んできたのはミノフスキー博士、な、なるほど……確かにそうだったけど!でもそれ私の個性ですから!そこまで最先端を突き進んでるとは思えません!あーでも褒め、られ、てる?のかな?
「まあ、難しい話は置いておこう。つまりここに集まった私たちは、君と有意義に話したいだけなのだ。聞けば詰まっているところがあるそうじゃないか。私たちなら君の技術を理解できるだろうし、解決の手段も提案できる……未知の才能というのはいつだって研究者をワクワクさせるものなのだよ」
「はは、そういうことだよユズリハ君。メリッサも通った道だ、存分に私たちに質問をぶつけてくれ」
「そ、そういうことでしたら……こちらなんですけど……」
「……ほう、シンプルな形だね。これは?」
「試作中の荷電粒子ビームを発射するライフルと荷電粒子を刀剣型に固定する装置です。名前を付けるとしたらビームライフルとビームサーベルでしょうか」
「ビームの個人使用が可能な装置だと!?今どこまで!?」
「ビームライフルの方は一応発射出来るところまではいってるんですけど……発射後のビームの収束率に難がありまして、拳銃よりも射程が短いんです。ですけど荷電粒子をため込むエネルギーパックの容量が上がらないと収束率をあげることが出来ず……とん挫してます。サーベルの方は荷電粒子を斥力フィールドで包んで刀剣型に固定してるんですけど……若干むらがあってビームが漏れちゃうんです。私と接続し続けないとビームは維持できませんし……使うエネルギーも膨大でとても実戦には……」
「そこまで実用化出来てるのか……!ドクターJ、彼女になら開示しても問題ないのではないか?」
「……とにかく今どこまで出来ているかを確認してからでも遅くあるまい。差し支えなければ稼働しているところを見たいものだな」
「え、と動かすこと自体は可能ですけど……」
「パパ、実験場どこかあいてないかしら?」
「大丈夫だ、多分こういうことになると思って一つ抑えてる。行こうか」
私が今一番実用化したい技術であるビーム、あるいは荷電粒子砲の試作品を手から作り出すと、やっぱりその道の権威である博士たちは食いついた。ビームサーベルの方は救助に使いたいので実装を急いでるんだ。というのもレーザーブレードより高出力なのでだいたいのものを切ることができる、つまりがれきの撤去などに有用!完成したらヒーロースーツに組み込みたいの。私はわたわたと試作品を両手に抱えて実験場に急ぐのだった。
「とっても楽しかったわ!ユズリハさんアカデミーに転校するつもりない!?皆歓迎してくれるわ!」
「ふふ、もし雄英を除籍されちゃったら留学を考えてみますね。ヒーロー科は厳しいですから」
「そうね、ヒーロー志望だものね。私も頑張らなくちゃ」
「おっ!希械にメリッサさん!戻ってきたんだな!オールマイトが飯奢ってくれるってよ!行こうぜ!」
この1日で私の持つ技術がジョグレス進化したこと間違いないディベート&実験を終えて、メリッサさんと一緒にアカデミーを出た。私の質問や技術的な疑問に対して嫌な顔一つすることなく答えてくれた偉大な博士たちは今日のことをレポートにまとめるとかなんかでアカデミーの研究室にこもっちゃったみたい。でも、祝!荷電粒子実用化!ビバビーム!まさかこんなあっさりと実用出来るなんて思わなかった。超圧縮技術とミノフスキー博士のE-CAP技術とドクターJのエネルギー縮退技術のおかげだよ!他にも私の持ってる技術は進化したので帰って実験をするのが楽しみだなあ……。
そんな私たちをアカデミーの前で待っててくれたのはえーくん。どうやら他の人たちは別の場所にいるクラスメイトにご飯のお知らせをするために先に行ったみたい。待っててくれたえーくんにお礼を言って私たちもオールマイト先生が抑えてくれたご飯屋さんにいこう。お腹減った!たくさん食べるぞー!
これにて映画のお話は終了です。他の博士はともかくメリッサとシールド博士は後々まで出番がありますはい。
そしてこのタイミングでビームが実装されました。楪ちゃん強化です強化。そし超圧縮技術も習得。進化する楪ちゃんをお楽しみに
次回はアンケートと取ってた番外編を1話挟んでから夏合宿に行きます
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