「えーくん、帰ろー」
「おーう、しかしまあやっぱまだ勝てねーかぁ」
「えーくんの強みは私とは別じゃないかな?私はほら、便利なだけだもの」
「……待て!切島ァお前、楪さんとどういう関係なんだ!?きりきり吐けオラァ!」
「何って……家が隣で幼馴染」
「はああああああ!?」
体力テストが終わって着替えも済んで、相澤先生から解散の命令を貰った私たちA組はガイダンスそっちのけでもう帰ってしまった他クラスの後を追うように帰宅準備をして、今帰るところだった。私とえーくんは家が隣同士なので帰り道も一緒、じゃあ別々に帰る理由はないので一緒に帰ろうと誘って、えーくんも了承してくれた。
そこに待ったをかけたのはえーくんのコミュ力ですぐに仲良くなったらしい男子たち、えーと上鳴くんと瀬呂くん。彼らは私が当たり前のようにえーくんと一緒に帰ろうとするのが不思議でしょうがなかったらしく、えーくんの制服の胸倉を掴んですごい剣幕でいろいろ言ってる。
「お前こんな美女と幼馴染とかどうなってるんだ!?もしかして付き合ってるのか!?」
「いや別に付き合ってないぜ?そういう感情とか、もうお互いないよな?」
「……そう、かも?でもお付き合いするんだったらえーくんが基準になっちゃうかも」
「おう、俺をぶっ倒さねえと認めねえかんな」
「私、誰ともお付き合い出来なさそう……」
すでにえーくんは私がぶっ叩いても堪えないくらいにはガッチガチに硬いのに。倒せる人なんているのだろうか?葡萄頭の子……峰田くんの怨嗟の表情が結構迫真で怖い、思わず縮こまってえーくんを盾にしたら余計怖くなった。私は縮こまってもえーくんには隠れられないけど、怖いものは怖い。これもいずれ克服しないとヒーローにはなれないだろうなあ。
「……こんな関係の幼馴染って存在したんだな」
「俺はある意味感動を覚えてるぜ瀬呂」
「オイラも、ワンチャンあるかな」
「多分ないだろなあ」
「えーくん、明日お弁当何食べたい?」
「やっぱ肉だろ」
「「「弁当作ってもらうの!?」」」
「あー!希械ちゃんあたしもー!」
明日からは通常授業が始まるらしいのでお昼ご飯が必要になる。一応ランチラッシュというヒーローがやっている学食があるんだけど、なにせ私は目立つうえに邪魔くさいし椅子も壊しちゃうかもしれない。だから、自分でご飯を作ってくるのだ。料理の腕にはそれなりに自信がある、というか鉄とかゴムとかのまずいものを食べたあとどうしても口直しに美味しいものが食べたいという理由で料理をする様になりました。でもいつか学食にも行ってみたいな。
えーくんも学食に行きたいなら学食でいいと思うんだけど、一つ作るのも二つ作るのも一緒なので中学でお弁当になってからは私がよくえーくんのお弁当も一緒に作ってた。学食に行きたいなら断ってくれると思うし、三奈ちゃんもお弁当食べたいみたいだから作ってあげないと。
「じゃあ、帰りにお買い物行かないとね。お肉……唐揚げでいいかな?」
「いいな!荷物持ちは任せとけ!」
「希械ちゃんのから揚げ私好きー!」
翌日のこと、雄英の普通の授業ってどんなだろうと思ってたけど案外普通だったなあ。DJやってるプレゼントマイク先生の授業とかどんなとんでも授業かと思ってたけど進む速度以外は普通に中学校と一緒の学生授業って感じだった。三奈ちゃんはお勉強は苦手なので助けを求められたら教えてあげられるようにしとかないと。
「はい、えーくんの分のお弁当。こっちは三奈ちゃんのだよ」
「お、さんきゅな!あー腹減ったぜ!」
「わーありがとう希械ちゃん!」
「お三方ー、俺たちも入れてくんね?」
「おう、一緒に食おうぜ!」
「私も、いいかしら?」
「いいよー!蛙吹さんだっけ?」
「ええ、蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
今は昼時、クラスのみんなはお弁当派と学食派、購買派に分かれてそれぞれご飯を食べているところ。お弁当組の私とえーくんと三奈ちゃん、購買組の瀬呂くんと上鳴くん、あとえーくんが引っ張ってきた不満げな爆豪くん、お弁当らしい蛙吹梅雨さんで机を寄せた。
というわけで今日のお弁当!えーくんリクエストのから揚げ、三奈ちゃんリクエストの甘い卵焼き、お新香とプチトマト、ブロッコリー。ご飯の上には鶏そぼろ。ちょっと茶色いけど普通のお弁当だと思う。あ、これも。朝のうちに作ったタルタルソースの蓋を開けて置いておく。私唐揚げはタルタルソースが好きなんだよね。レモンもいいけど、素でもいい。
「にしても、量よ」
「しょうがないよ、希械ちゃん体大きいんだもん」
「あと午後動くからその分の補給も兼ねてんだよな?」
「うん、午後のヒーロー基礎学、実技って聞いたから」
言えない、実は気合を入れて作り過ぎちゃったからお重になっただなんて。成長期だし動くからえーくんも三奈ちゃんも大きめのお弁当だけど私は3段のお重、唐揚げがほとんどを占めている。だって昨日鶏もも肉が安くて……
「美味しそうね、楪ちゃんが作ったのかしら?」
「うん、良かったら食べていいよ。たくさんあるから、上鳴くんも瀬呂くんもどうぞ。爆豪くんも、良かったら」
「あら、ありがとう」
「まじで!?女子の手料理!?」
「食いつくとこそこかよ……ありがたく貰うわ、楪」
「いらねぇ」
「まーうまいから食ってみろって爆豪!」
「いらねぇっつってんだろクソ髪!」
えーくん、いつも見てて思うんだけれどそのバイタリティーはどこから来るんだろう。爆豪くん、本気で嫌がってるわけじゃないってわかってるのかな?それはそうと、美味しく食べてくれるなら作り甲斐はあるなあ。皆美味しいって言ってくれて私は嬉しい、にぎやかな昼食はゆっくり過ぎていくのだった。
「わーたーしーがー!普通にドアからきたあああああ!!!!」
そんな声と共に勢いの割には優しめのドアが開く音がして陰影の濃いお顔をしたヒーローが教室に入ってきた。生で直接見るのは初めてだけど、メディアではよく見る№1ヒーローのオールマイト。上鳴くんの感想じゃないけど本当に先生やってたんだ。折角直接見れたんだし、と多少失礼ながら右目をフル稼働させて動きやら何やら解析をかける。うわ、すごいエネルギー量……?このエネルギーの個性パターン、緑谷君が個性を発動した時と同じ……?……???どういうことなんだろう。
「まず初っ端から戦闘訓練だ!それに伴って、こちら!君たちの要望通りにあつらえたコスチューム!着替えたら順次グラウンドβに集まるんだぞ!形から入るってのも大事だ!今日から君たちもヒーローなんだと自覚するのだ!!」
オールマイト先生が大袈裟なほどの手ぶりでその手に持った小さなリモコンを操作するとクラスの壁がせりだしてきて、そこには学籍番号が振られたアタッシュケースが収められていた。私の番号も、ある。皆と同じ大きさで、私からしたら結構小さいけど、要望が通ってればそんなにかさばるものじゃないから。
オールマイト先生からアタッシュケースを受け取って胸に抱く。これが、私のコスチューム……私の力からすればかなり軽い筈なのに、とてもとても重い物を持ったような感じがした。
「ぶっ!?」
「ヒーロー科最高……」
「ああ……」
今回の女の子たちはみんな自分のコスチュームに夢中だったので私は特に揉まれたりすることもなく着替えを終えて早めにグラウンドβに到着した。私の姿を確認した男子たちは噴き出して驚いたり、サムズアップしたり、同意したりと予想通りな反応をしている。だって今の私、かなり露出がすごいことになってるから……
私のヒーロースーツはまず短いタンクトップ、スパッツを身に着けてて色はスカイブルー、へそ出しのデザイン、タンクトップのすそを結んでるのがポイントでさらに上からマリンブルーに銀色の線が一本入ったぶかぶかのフード付きジャンパー。実はお願いの段階ではジャンパーなかったんだけど法に引っかかるから追加されたみたい。私は肌からメカを出すので服を着ると破けちゃうんだけど、このジャンパーとタンクトップにスパッツは再生機能が付いてるらしいの!すっごいね技術の進歩!
私自身はヒーロースーツに合わせてちょっとおしゃれしてるんだ。鉄の色だった手足を真っ白にして、髪の毛も光らせることができるのを利用して青のメッシュを入れて、私の体で一番大好きなところ、蒼い左目を出している。右目は引き続き隠してるけど、あんまり関係ないから。青と白で統一された、私の印象はどうだろう……?
ちなみに追加されたジャンパーには大事な意味があって、なんと私の体の放熱を助けてくれる機能があるらしいの!オーバーヒートすると個性が使えなくなるから、排熱の手助けになる機能があるのは嬉しいなあ……
「おお!希械それかっけぇじゃん!似合ってるぜ!」
「あ、えーくん。えーくんも凄い似合ってるね!」
私に声をかけてくれたのはえーくん、彼のヒーロースーツは個性を活かすために上半身はほとんど裸だ。でも顔を防護しているプロテクターとか、凄いかっこいいと思う。まあ、生半可な防具や服だとえーくんのほうが丈夫なので着る意味がないというのは実に理にかなってる、と思う。私にも一応羞恥心というものはあるにはあるんだけど、私みたいな大きくて体の半分が機械の人間に興奮するような人はいないので、私自身はそんなに気にならない。直接触られたりしなければ平気だ。
「ん~~~みんな似合ってるぜ有精卵ども!では本日の訓練は、入試のもう二歩先!屋内戦闘訓練だ!君らにはこれから2対2の屋内戦を行ってもらう!」
「基礎訓練もなしにですか!?」
「基礎を知るための訓練さ!いいかい!?設定はこうだ!ヴィランが核爆弾と共にビルに籠城している!ヒーローは核爆弾を回収するかヴィランを捕まえねばならない!制限時間は10分だ!過ぎれば核爆弾が起爆する!」
おお、ドラマとかで見るアメリカンな設定……核爆弾かあ……それが機械の範囲なら私がどうにかできるんだけど。重水素での核融合炉も作ったことあるし、割と核への対策はばっちり出来てるのだ。両親には滅茶苦茶怒られたけど、もう安全対策ばっちりだもんね。イエローケーキだって食べる女の子なのだ私は、食べたことないけど。
「そしてコンビの決め方は……くじだ!現場でのチームアップということを念頭に入れて欲しい!では引いてみよう!」
なるほど、誰とコンビかなあ。出来ればえーくんか三奈ちゃんが気心知れててやりやすいな、って思うんだけど。逆に爆豪くんとかはダメかも、連携取れる気がしないよ。あと希望を言うなら……八百万さんとは組んでみたい。彼女の個性の創造は私より作れるものの範囲が広い。弱点かどうかわからないけど構造を知らない物は作れないというものも私が機械化してしまえばどうとでもなる、あと上鳴くん!大容量の電気を帯電させることができるらしいので夢のガトリングレールガンを作れるかもしれない!火力過剰だからこの訓練では使えないけど!
仮に爆豪くんと組んだらどうなるんだろう……スタンドプレーしか見えないし、私に合わせるということもしないだろうな……それはそれで私も好き勝手出来るということではあるんだけど、訓練の趣旨とは違うし……あとは誰と組んだらいいだろう……緑谷君は正直心配になっちゃう。あの0か100かしかない超パワーは魅力的ではあるけど屋内戦には適さないし、ついでに行動不能のデメリットが結構いたい。あと、怪我ばっかりしてたらいずれ体が追い付かなくて壊れちゃうよ。うーん、うーん……
「Jチーム!楪少女!切島少年!」
「……やった!えーくんと一緒だ!」
「だー!気持ちは分かったから抱き着いて持ち上げないでくれ!ハズい!」
「……ごめん」
オールマイト先生のくじの結果を聞いて、嬉しくなった私はえーくんを抱き上げて嬉しさを表現してしまった。えーくんに言われてシュンとなって下ろしたけど、オールマイト先生の微笑ましいものを見る視線と、クラスの大多数からみる何か可愛いものを見たという感じの緩い視線に私は、蒸気を吹き出して黙り込んでしまうのであった。
ヒーロースーツ紹介話 いや八百万さんと一緒ですね。肌からメカが出るので普通の服だと破けるという。取蔭さんのヒーロースーツのおかげで再生機能付きの服があるというのはわかってよかったです
感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ