「左!3頭来るよ!」
「空からも!」
「空は私がやるよ。ビームライフル、
「陸の方は僕らが!飯田くん!轟くん!」
「おお」
「了解した!」
地面にイヤホンジャックを指して周りの魔獣が何頭いるかを確認した響香ちゃんが索敵の結果を教えてくれる。空を見ていた梅雨ちゃんの言葉通り翼を持った如何とも形容しがたい形をした魔獣が飛びながらこちらにやってくる。右腕から変形させた新兵器、ビームライフルを構えて、撃つ。独特な射撃音と一瞬だけピンクの閃光が駆け抜けて魔獣を撃ち抜き、撃墜した。うん、快調だね!
「何それ!?SF!?」
「凄いでしょ!!ビーム兵器だよ!一撃必殺!」
「マジかよ楪それ男のロマンじゃん!俺にも貸してくれよ!」
「……私が接続してないと使えないの……」
空を飛んでいる魔獣を次々ピンクのビームで撃ち落とす。残念ながらビームサーベルもビームライフルも手のコネクタで私と接続してないとうんともすんとも言わない金属の塊になるので誰かに貸すことはできないの。ごめんね瀬呂くん、私はビームライフルの下部についてるエネルギーパックを地面に落として、腰の小型ボックスを手に取る。小型ボックスは一瞬で膨張するように姿を変えてエネルギーパックに変形した。超圧縮技術のたまものだよ。私が変形するよりずっと速い。
リロードを終えたビームライフルを照射モードにして横薙ぎに払い3頭の魔獣を真っ二つにする。最大発射回数は単射で15発、照射で3発、このエネルギーパックだとあと10発撃てるね。陸の魔獣はえーくんを始めとした近距離系の人たちが対処してくれる。アッパーで魔獣をぶっ飛ばすえーくん、爆破で粉微塵にする爆豪くん、氷結で行動不能にする轟くんにパンチで砕くデクくんのキルスコアが結構高いかも。
「希械さん!出来ればいろいろ詳しくお伺いいたしたいですわ!私にも作成できれば出来る幅が広がりますもの!」
「理論を説明するのはいいんだけど、サポートアイテムの免許取らないとこれ動かしちゃだめな奴だよ?」
「そうなんですの!残念!ですわっ!」
百ちゃんが私のビーム兵器に興味を示したらしく話を聞きたいと言ってくれるので後で理論から組み立てまでスライドショーで説明しようかな。残念ながら百ちゃんが動かすにはもう何ステップか準備がいると思うんだけど……大砲で魔獣を攻撃する百ちゃんの隣に立ってボックスの一つを解放、連装ロケットランチャーに変形させて目の前の魔獣を一掃する。
サポートアイテムの定義は色々あるんだけど、私のこれ、というか作ってる火器の大半はどうやら免許がいる奴らしい。自分で使うのはいいんだけど他人に教えたり他人が模倣したもので事故ったら私もやばいのです。あとビーム兵器は免許ないと動かしちゃダメな奴だってシールド博士が教えてくれた。作成した私みたいに分かってないと重大な事故につながる恐れがあるからだ。
「うぇ~~~い」
「やばい上鳴がアホになった!」
「陣形組みなおせ!直接戦えねえ奴は内にはいれ!」
「対空は私だけでいいよ!他は地上に集中して!」
「撃ち漏らしたら爆殺すんぞ楪ぁ!」
「任せるよ!楪さん!」
許容量の関係で個性が使えなくなってくる人たちが増えてきた。最初にダウンしたのは放電し続けていた上鳴くん。サムズアップの両手を振り回して隙だらけになってしまう。即座にフォローに入ったえーくんが魔獣の攻撃を受け止めカウンターで粉砕する。キリがないな魔獣!どれだけいる……ピクシーボブの個性だから無限か!なるほど!最悪ぅ!
空から迫る魔獣は私がビームで撃墜する。土を熱と圧力でガラス質に変えてしまうほどの熱量を持つビームのおかげで全部一撃だ。空に撃たないと森は燃えてしまうので地上の敵は超圧縮技術で封じ込めた腰ベルトのボックスたちで対処する。私は戦闘中に体を変形させて武器を作るのがデフォだったけど、結構集中力がいるから誰かと一緒じゃないと実は難しいの!特にオールマイト先生みたいな滅茶苦茶強い人相手だとほぼ無理だね!
でも、予め武器を作っておくことはできてもストックするのは無理だった。やれて背負うとかそういう形で両手合わせて4つが限度。でも、超圧縮技術を覚えた今は違う。予めいくつもの武装を作ってストックしておくことができる。超圧縮技術は優秀で、私が通常使用する普通の人にとっては巨大な兵器を指先サイズの小さな小さなボックスに収めてしまえる。これで私の戦闘に幅がかなり出てきた!どのボックスがどの兵器かを記憶するという新しい問題が出来たけどそれは私、メモリがあれば忘れない!ありがとう個性!
「うわわわ!近づきすぎた!」
「透ちゃん!大丈夫!?」
「わ!希械ちゃんさんきゅー!あ!ライトセーバーだ!」
「ビームサーベルだよぅ……プラズマじゃなくてビームなの……」
「……どう違うの?」
「3時間くらいかかるけど聞く?」
「後で3分でわかるように教えて!」
「3分!?」
魔獣相手に囮を務めてた透ちゃんが距離を誤って魔獣に潰されそうになってしまったので咄嗟にビームサーベルを抜いて魔獣を切り捨てて助け出す。違うの透ちゃん、ライトセーバーはプラズマの光剣であってビームサーベルは粒子を加速させたビームなの……違いを説明すると長くなるんだけどカップラーメン感覚で教えるのは……いや、プルスウルトラだ。これくらいできなくてヒーローには成れないと思う!
「きりがねえ!」
「でも近づけてるよ!あと少し!」
「つーか3時間ってウソだろ!もう夕方だぞ!」
「直線距離で3時間って意味かな……?戦闘しっぱなしでそんな速くは無理だと思う……」
もう無理だ、うん。3時間?いやいや8時間近くかかってるんですけど……。最後に残った魔獣をビームサーベルで消し飛ばしてため息をつく。とっぷり茜色の夕日が私たちを照らしていた。みんな個性を使いすぎてヘロヘロなうえに全身の疲労で言葉が少なくなっている。かくいう私もくぅくぅお腹がなっていて、エネルギーが足りない中無理やり個性を捻りだしている状態。ビームライフルもとっくに弾切れして残弾を補充する暇もなかった。ふぇえん、お腹空いたよぅ……美味しいものが食べたい……。
「ねこねこねこ……とりあえずお昼は抜くまでもなかったねえ」
「なにが……3時間ですか……!」
「悪いね、それ私たちって意味なの」
「実力差自慢かよ……やらしいな」
あぁ~~、やっと着いた……みんなドロドロのボロボロ状態でようやく相澤先生やプッシーキャッツのいる合宿所にたどり着くことができた。なお上鳴くんはアホ面から戻らず、峰田くんの頭皮は限界を迎えて流血し、砂藤くんは半分寝ている。そして脂質を使い果たした百ちゃんを私がおんぶしている。乗り心地悪くてごめんね~
「百ちゃん、大丈夫~?着いたよ~」
「ええ、申し訳ありませんわ……ご迷惑をおかけしました……」
「ぜーんぜん!もうちょっと待っててね~」
「でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣を簡単に攻略してくれちゃってもう……!3年後が楽しみ!唾つけとこ~~!」
ピクシーボブが指し示したのは私を含むえーくん、デクくんに爆豪くん、飯田くん轟くんの6人、ちょっと離れたところに立ってた私に被害はいかなかったけど物理的に唾をつけられてる5人はちょっと気の毒かも……え?ピクシーボブは焦ってる……適齢期的な意味で。ヒーローも婚活に苦労するんだね……結婚かあ、私はどんな人とするのかな。いやむしろこんな大きい女(半分メカ)を貰ってくれる人がいるのかしら……悲しくなってきたので考えるのを辞めよう……。
「適齢期と言えば」
「と言えば!?」
「もがっ!?いやその、ずっと気になっていたんですがその子はどちらのお子さんで!?」
「あー、いや違うの。この子は私の従妹の子ども。ほら洸汰!1週間一緒なんだから挨拶しなさい」
なんてひどい話のつなげ方だよデクくん。ピクシーボブのネコハンドに顔面を掴まれた状態のデクくんがさっきからマンダレイと一緒にいた男の子、幼稚園か保育園に通ってくるくらい幼い男の子を指さしてどっちかのお子さんですかと尋ねる。マンダレイは手を振って否定し、自分の従妹の子供で事情があって預かっていると説明してくれた。あんまり私たちにいい印象は抱いてないみたいだけど……。
「あ、僕は雄英高校ヒーロー科の緑谷出久、よろしくね……っっっ!?!?!?!?!?……きゅう……」
「いやあああっ!?デクくん!?しっかりして!?」
「いってーわ、あれ……おい緑谷大丈夫か!?」
「何してるの洸汰!?」
「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ」
洸汰くんに握手しようと手を差し出したデクくんに向けて、容赦なく突き刺さる小さな拳。普段というか戦闘訓練で痛いのは慣れっこだと思うけど……その、男の子、しか分からない痛みだよねきっと。どこがどうなったかはあまりにも悲惨すぎてちょっと考えられない。泡を噴いて倒れ伏したデクくんを慌てて抱き起す。えーくんが酷く同情的な顔でデクくんの顔をぺしぺしと気付けしてくれてる。
洸汰くんは、私たちのことがよっぽど気にくわないみたいでマンダレイの注意を無視して合宿所の中に入っていった。それよりもデクくんだよ!思いっきり入ったから凄い痛いんだよね!?想像できないけど!えーくんも女子には分からねえよ……って言ってるからね……男の子は大変だなあ……。
「茶番はいい、さっさとバスから荷物を下ろして部屋に置いてこい。そのあと食堂で夕食、のちそのまま就寝だ。明日の起床時間は午前5時30分!」
「茶番で重症者出てるんですけど……」
「それに関しては同情しよう」
相澤先生も同情する一撃だったんだ……洸汰くん、おそるべし。次やったら謝るまで無言で見つめてやる。
「いただきまーす!」
「お腹減ったよぅ……自分で料理しろって言われなくてよかった~」
「そしたらアタシ希械ちゃんに作ってもらおうかな」
「いいけど~、三奈ちゃんのご飯も食べてみたいな~」
もっしゃもっしゃ、と我ながら少しお行儀悪いかもしれないけど個性の使い過ぎでエネルギーがデッドゾーンに突入してる私は卓上にあるおかずと奇麗につやつやと輝いてる白米を口の中に詰め込んで咀嚼もそこそこに嚥下していく。今なら多分大食いの自己記録を達成できそうな気がするよ……にしてもおいしいなぁ。お腹が減りすぎてるせいもあるかもしれないけどプッシーキャッツのお二人お料理とっても上手だ!時間あったらレシピ聞きたい!
すさまじい速度で料理を消費していく私たちに怒ることなく次々補充してくれるお二人に感謝しつつ私も対抗してご飯を食べる。明日からも大変そうだし食いだめをしておかないと……。
「浮く……んだね」
「ういてるね!」
「……ほんまやねえ」
「ケロケロ」
「みんなしてどこを見てるの……別に大きくてもいいことないよ?下は見にくいし……時々邪魔だし……」
「ええ、そうですわ」
「これは私のだよ~」
「いやちがうよ?私のだよ?三奈ちゃんは自分のがあるでしょ?」
かぽーんと、鹿威しの音がする露天風呂。露天風呂だよ?凄いね合宿所、至れり尽くせりだ。そういえばこのクラスのみんな、正確には三奈ちゃん以外と一緒にお風呂に入るのは初めてだな~。あ、手足はちゃんと防水加工しております。漏電したらセルフ電気風呂になっちゃう。普通の人が入ったら死んじゃうくらい高電圧だけど。じーっと私の胸を見つめてくる皆。そっかー、お湯に浮いてるのが珍しいんだね~。大きくても別にいい事無いんだけど……。
髪を纏めて、頭にタオルを乗せた私、温泉の深さの関係上仰向けに寝転ぶみたいな感じで温泉を堪能中であります。個性の関係上肩こりとは無縁だけど邪魔だなあって思うことは多々あるよ。特に下が見えないせいで何度か峰田くんを気づかず踏みつぶしちゃったことあるし……あ、でも私のぱんつ覗きに来たからお相子なのか、えーくんから何度もお話されてるのに懲りないよね峰田くんも。
「壁とは!超えるためにある!プルスウルトラぁぁぁぁ!!!」
「……もしかして峰田くん、覗きにきてる?」
「げ、まじ!?あいつさあ……」
「こりないねー峰田。切島に殴ってもらおうか?」
「えー!峰田くんに見られるのはなんかヤダ!」
「普通に男子に見られるのは嫌なんやけど……」
「ケロ、流石に相澤先生に怒ってもらった方がいいと思うわ」
「とりあえず全力で迎撃いたしましょう!」
「私、撃ち落とすね」
体を起こして腕を変形、怒りの6連ガトリングが顔をのぞかせる。圧搾空気なのは慈悲だと思ってほしい、峰田くん、覚悟!ってあれ!?洸汰くんだ!洸汰くんが柵を乗り越えてこちら側にやってこようとした峰田くんを柵の合間から顔を出して落としてくれる。クソガキィィ!という峰田くんの叫びが響くけど、自業自得だよね。
「ありがとう、洸汰くん~」
「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」
「中に水はいっちゃった……後で錆び止めしないと……」
「あっいけない洸汰くんっ!?」
覗きを防いでくれた洸汰くんにお礼を言うと、彼は反射的に私たちの方を見て、驚いてしまったのか男湯側に落ちてしまった。立ち上がって柵まで走っていく。ヤバいよ、下石畳だよ!?頭を打ったり……それでなくても骨折とかしちゃう!
「おーい男子~~!洸汰くん無事~~っ!?」
「大丈夫だ!緑谷が受け止めた!おいマンダレイのとこ行くぞ!」
「うん!行こう切島くん!」
えーくんとデクくんからの返事を受けて、私たちはほっと胸をなでおろしたのだった。峰田くんには後で三奈ちゃんが考えたお仕置きを実行しようかな……でも効果あるのかな?ひたすら筋トレ中のパンツ一丁ボディビルダーの動画を見せ続けるのって。
峰田はそろそろ自重せよ。書いてるのわしだけどほとんど原作の所業やぞ。あ、当然の話ですが楪ちゃんはでかいです。ナニがとは言いませんがでかいです。この作品の根幹なのでお許しください
では感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ