「えー、峰田くん。流石にこれは私としてもフォローのしようがありません。間違いなく犯罪行為です。分かるよね?」
「なんだよ!風呂場で服着てんじゃねえよ!反則だろ!」
「峰田ちゃん、貴方が覗くって昨日のうちに分かってたからこうやって罠を張っていたのよ?」
「お仕置きされちゃえばいいんだ!もう!」
鹿威しがいい音でなる露天風呂、私たちはロープとその他さまざまな拘束具を使い思いつく限りの方法で目の前にいる性欲モンスター、峰田実を捕獲していた。昨日覗かれるっていうのを察した私たちはマンダレイの許可を取り私と百ちゃんプレゼンツによる女湯の要塞化を済ませていたのだ。そして峰田くんは案の定引っかかった。当然だ、私と百ちゃんが本気を出した&I・アイランドの技術力の無駄遣いの双璧を搔い潜れたのだとしたらそれはプロの技量だからね。
久しぶりに私も本気で怒っている、結局峰田くんチア服の件頑として謝ってくれなかったし。ぷんすこと私がお説教をしていても峰田くんはどこ吹く風、怒ったぞ!私怒ったぞ!百ちゃんに目配せすると彼女もこくりと頷く。これからB組女子のお風呂で、私たちも峰田くんを捕獲出来たらそこで混ぜてもらうことになっている。
ひょい、と峰田くんの首根っこを掴んでお風呂場の脱衣所を出てマンダレイたちがいる管理人室に運ぶ。女子全員怒ってるので無言で。きっと私たちの目には今ハイライトがない事だろう、持ち方もまるで腐った牛乳がしみ込んだ雑巾を摘まむような感じだ。私たちの怒りが伝わったのか峰田くんはゴクリと唾を呑んで無言になった。
「失礼します、マンダレイ」
「あら……昨日で懲りなかったのね。全く、思春期の男の子はこれだから……」
「で、どうするにゃん?」
「相澤先生に女子からお仕置きする案の許可を貰っています。その際ここでやれと言われてるので少しだけ間借りさせてください。ていっ」
「んぎゃっ?!おいもっと優しく……ひょぇ……」
ぽい、と峰田くんを床に転がすと、彼は扱いの悪さに文句を言おうと私たちを振り返って固まった。多分、にっこりと笑う私たちを見たからに違いない。私はどうか分からないけど、他のみんなは確実に怒ってるのが分かる笑顔なのでお仕置きされるのが確定だというのを察したのだろう。私がVRゴーグルとヘッドフォンを、百ちゃんが拘束椅子を作り出して、峰田くんをセットする。私がそこで峰田くんにゴーグルとヘッドフォンを付けて、スイッチを入れる。
「なんだ、なんだよこれ!?AV流してくれるのならかんげ……うぎゃああああああっ!?止めてくれ!救けてくれ!筋肉が!筋肉が迫ってくる!?」
「2時間くらいこの状況でいてね。聞こえてないだろうけど……」
「はー、これで安心。希械ちゃんお風呂はいろお風呂!B組の子たちと一緒に!」
「そやね~。峰田くんおらへんからゆっくりできるわ~」
彼のゴーグルとヘルメットの中で流れているのは三奈ちゃん発案のボディビルダーの筋トレ画像、さわやかかつ暑苦しい笑顔でバルクアップをするマッチョたちに囲まれてさぞ幸せだろうね峰田くん。ちゃんとASMRもしてるし、どこ向いても筋肉がいるからね。よかったね峰田くん、裸の人たちと一緒にいれて、ね。
「えげつないにゃん」
「あちしでもちょっとのーさんきゅ~」
悲鳴を上げる峰田くんをほって、私たちはお風呂に向かうのだった。次覗いたらもっとひどいことするからね。流石にライン超えちゃうと私たちも庇えなくなっちゃうからここら辺でやめて欲しいなあ。ああ、暖かいお風呂が染みるよお。
「あー峰田、まだ叫んでるね」
「しょうがないよ、ウチがやられても叫ぶから、アレ」
「や、やり過ぎたかなあ……?」
「峰田くんにはあのくらい必要だよ!もう!」
ぷんすこぷんすこと怒る透ちゃんが私にもたれかかりながら文句を言っている。実は透ちゃんと私はそれなりに仲良しだ、というのも現状透ちゃんの顔を認識できて過たず目を合わせて会話できるのが私であり、今までそういう人間がいなかったらしい透ちゃんはよくよく話しかけてくれることが多くなった。きっかけがなくて名前で呼ぶタイミングを逃してたけど、三奈ちゃんをのぞいたら一番仲がいいかも。その次は席が近い百ちゃんかな?
どうも透ちゃんは無意識のうちに透明な自分を見れる人物を探してたようで、鏡にも映らない自分の容姿がどんなのか私に聞いたりして、髪型変じゃない?とか頼ってくるようになった。というのも透ちゃん、誰にも見えないもんだから髪の毛は感覚で自分で切ってるみたいだし、自分がどんな顔をしてるのかを知らなかったのだそう。これも個性の弊害だね、私の体重とかと一緒。
まあつまり、何といえばいいのか分からないけど私は透ちゃんが好きだし透ちゃんもきっと私のことを好いてくれてると思う。三奈ちゃん並みにスキンシップが好きみたいだし。今もほら、体勢変えて私のお腹を枕にして寝転び始めた。いくら私が寝転んでるからって自由な。三奈ちゃんも三奈ちゃんで私の隣で寝てるし。嬉しいです。みんな大好き。
「ごめーん、拳藤だけど少しいい?さっきはありがとね、これほんの少しだけど気持ち程度のお礼。受け取ってよ」
「おー、お菓子や」
「峰田さんのことでしたらお礼を言われることではありませんわ!寧ろ私たちのクラスの男子が皆さんに迷惑をかけるところでしたもの」
うんうん、とみんなで頷く。やってきたのはB組の拳藤さんに塩崎さん、角取さんに取陰さんだ。どうやら私たちA組の困ったちゃんで性欲モンスターの峰田くんの件で私たちにお礼を言いに来たらしい。そう、お礼を言われると逆に困ってしまうのです。なぜならアレは間違いなくA組のクラスメイトなので連帯責任というか何というか……ねえ?やっぱり峰田くんきらい。
「ありがたく貰うけど……折角だしみんなで食べようよ!女子会しよ女子会!」
「オゥ、ジョシカイ!実はやってみたかったんデス!」
「あー、折角の合宿だしね。悪くないじゃん」
「女子かーい!いいね!ね、ね!」
「透ちゃん、好きね」
なるほど、女子会。三奈ちゃんが提案したそれに乗っかるA組女子たち、私もまあB組の人とは話してみたいし塩崎さんいるし、賛成かなあ。どうも他のB組の女の子は個性猛特訓の件で先生に呼ばれてるみたいで不在みたい。女子会、女子会かあ~。何話せばいいんだろう?私の会話デッキって科学の話とかそういう女の子らしくないものが多い気が。あ!でもお料理の話ならたくさんできるぞ?
みんなで廊下に出て自販機でジュースを買って戻ってくる。お菓子を真ん中に置いて車座でそれを囲んで乾杯。思い思いの体勢で話し出した。けど、皆何を話したらいいかわかんなくてうーん、と考えてるとここで頼りになるのは賑やかしに定評がある三奈ちゃん、元気よく手を挙げて発言した。
「女子会と言えば恋バナ!というわけで~~!付き合ってる人がいる人~!」
「あー、そういうやつ……」
「オツキアイ……私イナイデス!」
「わ、私たちにはまだ早すぎますわ!」
ああ、そういう話題に行っちゃうんだ……流石は三奈ちゃん、恋バナ大好きだね。私たちも女の子なのでそういう、恋とかいうふわふわした青春の一幕みたいなものには俄然興味があるわけで、なんだけど皆ワクワク顔で誰か名乗り出るのかな、と見まわしてみるが結局誰も名乗り出ない。というかあれだね、作ってる暇ないよねヒーロー科って。
「えっ!?誰もいないの!?」
「流石に危機感出てくるよ!?」
「中学の時は受験勉強で、入ってからはそれどころじゃないもんなー」
「あー、友達が言ってたね。付き合うことになったとか……え、私らかなり遅れてる……?」
取陰さんの言葉に私たちは雄英ではなく別の学校に進んでいった中学のお友達を思い出す。繋がり自体は薄味になってしまったけどグループSNSとかでたまに流れてくる彼氏が出来たとか友達にお付き合いしてる人がいるだとかそういう話、割と多くない?もしかして私たち、青春とかそういうものに乗り遅れてるのではなかろうか?
「うあー!悔しい!でも恋バナしたい!キュンキュンしたいよぉ!ねね、片思いでもいいから誰か好きな人いないの!?」
両手をぶんぶんと振る透ちゃんがそんなことを言う、片思いかぁ……残念ながら私はそういうのないかなあ?何せ毎日がエブリデイで滅茶苦茶忙しいからね!特にI・アイランド行ってからなんてそれに輪をかけて凄いことになってるもん!恋に生きるより科学とテクノロジーだぜ!って感じ。メリッサさんとエナドリで乾杯するのが日課になりつつある。
「お茶子ちゃん、どうしたの?」
「あー!もしかして好きな人いるの!?」
「おっおっおらんよ!?おるわけないしっ!」
片思いでも好きな人、という話題になった途端か~~~っともちもちしたまあるいほっぺをリンゴのように真っ赤にしていくお茶子ちゃん。ほほう、この反応は脈ありですね?なるほどお茶子ちゃんが……ふ~~~ん。面白くなってきたね、これは根掘り葉掘り、もとい優しく相談に乗ってあげないとなあ、うふふ。
「その焦り方は怪しいね、お茶子ちゃん?ふふ、秘密にするから教えてよ~」
「いや、これはその!そういんじゃなくてっ!」
「そういうのってどういうのさ?」
「ほらほら!恋、してるんでしょ!?」
「ちゃうちゃう!そういう話が久しぶり過ぎて動揺しちゃったんよ!そういうのじゃないから!」
ぶんぶんぶん、とお茶子ちゃんが手を振って全否定する。ここまで否定されちゃったら私たちとしても引き下がらざるを得ないのでお茶子ちゃんを解放する私たち、なおもえー、ぶーぶーつまんなーいという三奈ちゃんを抱えて撤去して私の膝の上に置いておく。ややあって平静を取り戻したらしいお茶子ちゃんがぷくぅと頬を膨らませて今度は私に詰め寄った。
「そんなこと言ったら~!希械ちゃんはどうなん!?切島君との関係!」
「私とえーくん?」
「あー!確かに仲いいよね切島くんと希械ちゃん!どうなの!?ねえ!?」
「……仲がいいのはいいことです。貞淑な関係をお築きください……」
ありゃ、矛先が私に代わっちゃった。私とえーくんねえ……どうだろなあ。言っての通りお互いに好きとかそういうの、恋愛感情?みたいな部分は通り越してる気がするの。一番近いんだったら家族、双子の姉弟?とかそんな感じじゃないかな?そもそもえーくんには私よりも素敵な人が現れるに違いないのだ。えーくんの彼女……気になるなあ、いつになるかわからないけどちょっとした楽しみなの。
「うーん、確かに男の子の基準はえーくんになるかもだけど……お付き合いとかそういうのをしたい、とは思わないかなあ?」
「冷静や……」
「切島ってあの鉄哲殴り倒したヤツ?なに?どんな関係?」
「希械ちゃんと切島は~幼馴染なんだよ!あと中学校も私と希械ちゃんと一緒!」
「でもさ~、希械って毎日切島の分の弁当準備してくるじゃん?もう付き合っちゃいなよ」
「でもそれ三奈ちゃんも一緒だよ?」
「尽くすタイプね、希械ちゃん。ケロケロ」
どうやら切り口を変えて私に攻め入るつもりらしい響香ちゃんをさらりとかわす。ふふふ、お弁当は三奈ちゃんにも作ってるのでえーくんにだけ特別ということはないのだ!お弁当の部分で色めき立ったB組の人たちには申し訳ないけどね、でもさ、と三奈ちゃんが
「切島って、暑苦しいけど悪くないやつなんだよね。さらっと気遣いができるし、優しいし。さり気に守ってくれるし」
「あー確かに!戦闘訓練で組むとすっごいやりやすいの!ほとんど攻撃効かないし、普通に強いし!」
「楪とまともに殴り合ってたもんなあ。体育祭の時」
「あの鉄哲が一方的に殴り倒されてたしね~。鉄哲悔しがってたな」
えーくんの評価はおおむね好意的、話題に上がる上鳴くんとか物間くんとかよりも好印象な様子。暑苦しいのが玉に瑕って言うけれどもそれを含めてえーくんなので、私はそのままでいいと思っている。まあ、彼の言う男らしさをたまに理解できないのがちょっとばかり私の足りない部分でもあるのかな、反省。勉強しないとね。
「嬉しそうですわね、希械さん」
「うれしいよ~?どこに出しても恥ずかしくない自慢の幼馴染だから。皆が高評価してくれるなら私は嬉しいの。カッコいいでしょ?えーくん」
「大好きなのね、切島ちゃんの事」
「うん、恋愛的な意味じゃないけど勿論大好きだよ?だってね、私が最初に見たヒーローだからね」
「何それ気になる!?」
「ふふ、教えて欲しい?でもざんねーん。三奈ちゃんは補習の時間だし、私たちは消灯だよ。さ、解散解散」
私がそういうとみんなしてブーイングが返ってきた。特に最後の方にのめり込んでいたB組の面々はずっこける始末。気になる~と取陰さんが言ってくれるけど、また時間があるときにお話しするよ。というか三奈ちゃんは知ってるでしょ~?幼稚園の時のあの話だってば。さ、補習いってらっしゃいな。
※恋愛感情はありません(大本営発表)
峰田はお仕置きを受けました。マッチョ神の思し召しです
では感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ