「とりあえず学校と警察に連絡は済ませたよ!だけどここから雄英までは遠い……!オールマイト先生に至っては今東京にいるって!だから、早く見積もって他のヒーローたちが現着するには30分はかかっちゃう……!」
「ありがと楪さん!洸汰君きっと秘密基地にいるんだ。カレーを渡しにいった時にいた場所……!」
「なるほどな!ずっと居ねえと思ったらそういう場所があんのか!急ごうぜ!」
森の中を駆け抜けながら少しだけ声を抑えて会話する。多分既に雄英は動き出してると思うけど、オールマイト先生が東京からここまでどのくらいかかるか……!そもそもここはプッシーキャッツの所有する山だ。人里離れた私有地、警察署だって近くにない。交番がせいぜいだと思う。うぅ、確認すればするほど雄英の対策が裏目に出てる……!
そもそもなんでヴィランにこの場所がバレたのかだ。相澤先生があそこまで徹底したということは情報が洩れる余地がないはず。謎過ぎる、もしかして私たちあるいは先生方を捕捉する個性のようなもの。例えば黒霧の霧を通ったものにマーキングが付いてるとかそんな可能性が……?考えれば考えるほどドツボにはまる。
あそこだ、とデクくんが指さした先には切り立った崖の中腹に空いている洞窟があった。なるほど秘密基地、言い得て妙だ。授業で習ったクライミングを利用して崖を登攀していく。崖を昇り切ったその先には、恐れおののいて後ずさる洸汰くんと黒いマントで全身を隠して、仮面を被ったヴィランがすでに相対していた。まずいっ!ヴィランの手から筋のようなものが沸きだしてヴィランの手を覆う。それを振るって洸汰くんを襲おうとしているんだ!
私たち全員、考えるより先に体が動いた。フルカウルを纏って飛び出したデクくんが洸汰くんを抱え上げて退避し、私とえーくんが攻撃に割って入る。えーくんの硬化で受け、私が支える。それでやっと拮抗した。足元が岩にめり込む、なんて力……!間違いなく増強系だ!男は私たちが割って入り、自分の攻撃を受け止めたことに警戒したのかバックステップして距離を取り口を開いた。
「へぇ、いい!いいなお前ら……!んん?そっちのお前と女、リストにあったな」
「パパ……!ママ……!」
「大丈夫だぜ洸汰君!助けに来たからよ!」
「『血狂いマスキュラー』……!」
「っ!それってウォーターホースの……!」
最悪だ。仮面を外したヴィランの名前を私は知っている。えーくんが背後でデクくんに抱かれて震える洸汰くんをサムズアップで励ます、デクくんは私が呟いた名前にすぐさまあたりをつけたようで顔を歪ませた。洸汰くん事件、つまりはウォーターホース夫妻を殺した犯人としてニュースで顔写真が公開されている指名手配犯のヴィランだ。マグネといいなんでこんな凶悪ヴィランがこんなところに……!
顔写真と人相が少し違う、左目に大きな古傷がありそこには明らかに義眼と分かるものが埋め込まれていた。見た限りサポートアイテムのような機構を持ってるわけじゃない。3人とはいえこれは逃げ切れるか?デクくんに洸汰くんを任せて二人で足止め……無理だ。さっきの攻撃で分かった。このヴィラン、デクくんより足が速い。やるしかないんだ。
「助けに来た、ねえ。流石はヒーロー志望、どこにでも表れて正義面しやがる」
「おう、悪いかよ」
「いいや、全く。緑谷っつったなそっちのお前。お前は率先して殺せって話だ。あとそっちの女……楪だったか?お前は手足潰して連れて来いってよ。まあ景気づけに一発やらせろや!」
「くるよ!」
「洸汰くん、捕まって!」
「じっくりいたぶってやるからよ!血を見せろ!」
デクくんが洸汰君を抱えなおして、私とえーくんが飛びかかってくるマスキュラーを妨害する。気になることをいくつも口走った、聞きたい事が山ほどできたけどここは生き残ることが優先だ!えーくんがさっきと一緒に受け止めてくれる。だけど体表から現れた筋繊維たちがマスキュラーの攻撃を増強させている。踏ん張り切れずに後ろに押し込まれていくえーくん、関節を硬化させて全力で耐えてくれるえーくんがくれた隙を使って私は武装を構築する。
「フラッシュエッジ!
「ぐおぉっ!?」
左の腕から取り出したブーメランを真っ二つにした片方だけのような機械。簡易的な無線誘導を搭載した投げるビーム兵器、ビームブーメランだ。あの分厚い筋肉を断ち切りダメージを与えるにはそれ相応の火力がいる。ビームの熱量がマスキュラーの腕を覆う筋繊維を焼き切り、その腕を真っ二つにするぎりぎりでマスキュラーは腕を引いて難を逃れる。高速回転して戻ってきたフラッシュエッジをキャッチし、手足を戦闘形態に変形させる。
「えーくん、大丈夫?」
「全く以て問題ねえ!元気一杯だぜ」
「オッケー、デクくん!これっ!」
私はデクくんにフラッシュエッジを投げた時から作り出していた腕輪を投げる。洸汰くんを後ろに避難させて戦線に復帰したデクくんがそれをキャッチして、目を開く。腕を指して付けてみてと示すとデクくんはそれを付けて、腕輪をタッチした。タッチした瞬間、超圧縮技術で封じられていたバンテージがデクくんの右手から背中を伝って左手、さらには両脚にも巻きついて手甲と足甲を形成する。
「まだ改良途中だけど、ないよりはマシだよ。フルガントレット&フルグリーヴ!メリッサさんと私の合作!」
「ありがとう、楪さん!これなら……!」
「ああ、それがありゃあ……とどめは緑谷だな。一発かましたれよ!」
「やりやがるな……!ああ、そうだ。忘れる前に聞いとくぜ。爆豪ってガキはどこにいる?楪と一緒に連れて来いって仕事でな」
「かっちゃんを……!?」
相手の目的が定まってきた。デクくんの殺害、私と爆豪くんの拉致……!?統一性が見えない。その先に何を目的にして動いてるんだ?焼けて焦げ、熔けた筋繊維をいったん体の中に仕舞ったマスキュラーが首をゴキゴキと動かして、そう尋ねてくる。ヴィランに情報をやる必要はない、言わないのが正解だよ、デクくん。
「答えは、言わねえってことだな。オーケー、これで集中できるぜ!さあ!遊ぼう!」
「ふざけんなっ!ぐっ!」
「えーくん!」
今度は腕だけではなく全身に筋繊維を纏ったマスキュラーがえーくんを潰す様に殴りつけるのではなく、横から殴る形で壁に吹き飛ばした。戦い慣れしてる!踏ん張りがきかないように殴り飛ばされた、ダメージはないにしろ……!そこで止まるならよかった、だけどマスキュラーは止まらない!目的は私、じゃない!
「デクくんっ!避けて!」
「そう来るよなあ!?だけどな、お前らはヒーローなんだぜ?」
「あなたっ!!」
よけようとしたデクくんだけど、寸前で押しとどまる。マスキュラーは後ろに洸汰くんがいる射角で攻撃を放ってきた。避ければ洸汰くんが巻き込まれる。フラッシュエッジを投げようとしたが、マスキュラーがよければデクくんに直撃するのが分かり、投げられない。デクくんに攻撃が直撃する!?
「させねえ!俺の前で!ダチに当てられると思うなぁ!」
「ほざけ!力が足りねえよ!」
デクくんに当たる直前にえーくんが復帰して割り込んでくれた!だけど、威力が高すぎる!筋繊維の塊相手に全力で個性を使い抗う二人、一瞬の拮抗は二人が跳ね飛ばされる結果で終わる。洸汰くんの前ギリギリで地面を削りながら止まる。威力のすさまじさに一瞬二人ががくりと膝をつく。けど射線が開いた!フラッシュエッジを投げ、一旦二人からマスキュラーを遠ざけて私も二人の所に急ぐ。
「出来もしねえきれいごと並べて、今しくじりかけたなあヒーロー志望!笑いが止まんねえよ!力が足りねえ!速さも足りねえ!お前らは俺の完全な劣等だ!」
「出来る出来ねえじゃねえんだよ、なあ緑谷、希械。やらなきゃならねえんだよ!後ろに守りてぇもん抱えてんだから!」
「キレイごとで何が悪い!ヒーローは、命を賭してきれいごと実践するお仕事だ!洸汰くんは僕らが助ける!」
「貴方みたいな人には一生分からない!守るものすらないヴィランには!」
「はっはー!じゃあやってみなガキどもぉ!」
「止めるよ!えーくん!」
「任せとけ!」
今にも泣きそうな顔の洸汰くんが後ろにいる。絶対に、一歩も後ろに引くことはできない。大丈夫、ヒーローは強いからヒーローじゃない、守るものがあるから強いんだ!止めてみせる!さらに太くなった筋繊維に覆われた腕を振るい、まっすぐに右ストレートを叩き込んでくるマスキュラー。私はフラッシュエッジを捨てて、えーくんと一緒にそれを受け止める。一瞬で踏みしめた地面が陥没して、えーくんと私の体から異音が聞こえる。けど、止めた。止められた。
歯を食いしばってマスキュラーの右手を離さないように強くつかむ。戦闘形態の鋭い爪がマスキュラーの筋繊維を切断しながら強く大本の腕を握りしめた。えーくんはマスキュラーの腹部に硬化した腕を貫手で刺し入れて完全に固定してしまう。マスキュラーは私たちよりも速い、速いけど……!拘束すれば関係ない。
「緑谷ぁ!かましたれぇぇぇぇ!!!」
「させ、ぐぬぅあああっ!?」
「にがさ、ない!」
「デトロイト……!スゥマッシュッッ!!!」
私たちの拘束を振りほどこうとしたマスキュラーを私が腕から電気を放って体を硬直させて妨害した。私たちが止めた隙を縫って、デクくんがマスキュラーの懐に飛び込み、フルガントレットで守られた手でワンフォーオールの100%を引き出し、マスキュラーの体のど真ん中に思いっきり叩き込んだ。
すさまじい衝撃波を伴いながら、マスキュラーが岸壁に突っ込む。デクくんの100%、オールマイト先生のそれに匹敵する一撃だ。悲鳴すら上げることが出来なかったマスキュラーは、岸壁を抉りぬいて、ガラガラと落ちてくる岩石の中に埋もれていく。だけど……!
「おい、マジかよ……!!」
「ウソだろ……?」
「あれで立つんだ……!あれだけやって!えーくん、デクくん。脳無を思い出して、あいつと同じだよ」
「やってくれるね、だが腰が入ってねえ。テレフォンパンチだ。しかしやるなあ!お前ら……遊びは終わったほうがいいな……」
岩石を押しのけて、筋繊維を体の中に収めたマスキュラーが立ち上がる、がダメージは確実に入っている。二人には脳無を思い出して、と言ったけど脳無の方が厄介だ、効かなくて、再生していった。だけど目の前の男は?効いている、確実に。デクくんのパンチを受けたであろう部分は青紫色に変色している。骨くらいは折れているかもしれない。
「舐めてたのは謝るぜヒーロー志望!もう遊びなんてふざけたこと言わねえよ!こっからは……本気の義眼だ」
「緑谷、まだいけるな!?1発でダメなら2発、それでだめなら10発でも叩き込め!」
「それまでは何度だって私とえーくんが止める!洸汰くん!私たちがぶつかったら全力で後ろに逃げて!」
「当然だよ……!何度だってやる!お願い!二人とも!」
「なんでだよ……!効かなかったじゃん。倒せなかったじゃん……パパとママと一緒だったのに……!どうして、どうして……!?」
私たちに駆け寄ってなんでそこまでするのか、という疑問の声をあげる洸汰君に対して無言でえーくんが洸汰くんの背中を叩き、デクくんは肩に手を置いて前に出る。私も洸汰くんのずれてしまったカッコイイ帽子を直してあげてから前に出る。マスキュラーは左目の義眼を取り出して、ポケットの中からいくつかの義眼を取り出し、その中から一つを選んで自分の目に取り付けた。
わさ、わさわさと筋繊維がマスキュラーの体に巻き付いて覆っていく。先ほどより量が多い、けど……!ダメージが隠しきれてない。衝撃に耐えられずに切れてしまった筋繊維がいくつかぶら下がってる。ビームで熔けたのもだ。確実にダメージを与えられているし、回復するわけじゃない。増強系の宿命である上限値があるんだ!
「最っ高じゃねえか……!もう仕事とかどうでもいいぜ!殺す、殺してやるよ!さあ!血ぃみせろやあああああ!!!」
「えーくん、来るよ」
「俺の男気、見せてやるよ!」
斜め上から潰すようにマスキュラーの筋肉の塊と化した腕が降ってくる。これは受けるとかそういう問題じゃないね。けど、下がらない、下がってあげるもんか!私より一歩前に出たえーくんが手をクロスして全身でそれを受け止める。私はえーくんが接触してコンマ数秒開けずにえーくんに覆いかぶさるようにして全身でえーくんとマスキュラーの筋肉を支えにかかる。油圧システムを全力で動かして、うなりをあげる私の関節たちがマスキュラーの超膂力に対抗する。
「はは!潰してやるよ!」
「つぶされるかああああああああ!!」
「うううううっ!ゴリアテェェェェ!!」
気合で持ちこたえる。あたりを衝撃波が駆け抜けて、私とえーくんの足が膝まで埋まるほどの力が私たちを潰そうと牙をむいている。私は右手にゴリアテのサドンインパクトを形成して、接射の状態でかました。マスキュラーの攻撃の威力を弱めることには成功したけど、代わりに右手が根元から折れて脱落する。でも、バチバチとエネルギーが弾ける音がする。緑色に光るワンフォーオールのエネルギーを纏ったデクくんが、崖を一部崩壊させるほどの踏み込みでマスキュラーの懐に今一度入る!
「緑谷ああああ!!いけええええ!」
「デクくん!やっちゃえっ!!!」
「はああああああっ!!!!アーカンソースマッシュッッッ!!!」
デクくんが繰り出したのは、踏み込みの威力をそのまま使った膝蹴り、左回し蹴り、右と左のラッシュ、そして最後に右の後ろ回し蹴りだ。限界を迎えてフルガントレットとフルグリーヴが両方とも崩壊する。一撃が台風を超え、天候を変えてしまうワンフォーオールの超ラッシュを一瞬で叩き込まれたマスキュラーの筋繊維が全てブチブチと音を立てて千切れて、背後の岸壁に突っ込んでいく。
岸壁を真っ二つに割ってしまうほどの威力のデクくんのラッシュを受けたマスキュラーは全身にあざを作り、口から盛大に血を吐いた後、沈黙した。私たちは、そこで終わったことを理解し、その場に座り込んでしまうのだった。
悲報 マスキュラーさん、ほぼ無傷で撃破される。フラッシュエッジはあれですね、種世界最強の切断力を誇るビームブーメランのことです。つよい。というかマスキュラーといい序盤脳無といい当然のごとくオールマイト並みのパワーのヴィランがポンポン出てくるあたりヤバいっすねヒロアカ世界。
ちなみにアーカンソースマッシュはオリジナル技です。端的に言えば両手両足を使ったラッシュ攻撃。マスキュラーくん良く生きてたな(棒)
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