個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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6話

 「では最初の組み合わせだ!Aコンビがヒーロー!Dコンビがヴィラン!ヴィランは先に入って準備をして、5分後にヒーローが突入する!」

 

 雄英に入って初めての戦闘訓練、初っ端の組み合わせは爆豪くんとメガネが特徴的な飯田くん、緑谷くんと全体的にほわほわしてる麗日さん。どうしよう、すごく心配だ。なぜか知らないけど爆豪くんは緑谷くんを目の敵にしてるように感じる。昨日の個性把握テストの時に抱き留めて無理やり止めた時、本気で爆豪くんは緑谷くんに攻撃するつもりだった。

 

 まるでそれが当然のように躊躇いがないほど自然体、普通なら個性で人を攻撃するのはいけないことだと習う。特に、私みたいなやろうと思えば人を殺せてしまう個性だと特にそうだ。それがあんなに躊躇なく攻撃しにかかるなんて……とてもとても心配だ。緑谷くんが大怪我しないといいけど……

 

 「では開始だ!ヒーローは突入!」

 

 始まった。観戦用の監視カメラを確認するに飯田くんは最後まで作戦会議をしようとしていたみたいだけど始まった瞬間にすべて無視した爆豪くんが勝手に飛び出していってしまった。麗日さんと緑谷くんを動物的としか言えないほどの直感で見つけ出してすぐに奇襲をかける。

 

 「爆豪、奇襲か!俺ぁ正面からの方が好きだけどやるじゃねえか!」

 

 「うん、曲がり角の死角から速攻で攻撃したのかな。緑谷くんよく気付けたね」

 

 爆豪くん、個性把握テストの時から思ってたけど、色々とうまい。自分の個性をどう使えばいいのかというセンスがすごく突出してるように思える。爆発で空を飛んだりとか、そういう柔軟な発想にシンプルかつ応用性が高い個性、性格に目をつぶればヒーロー候補生として満点ではないだろうか。

 

 その初撃を麗日さんを抱えて躱した緑谷くんも、すごい。それと同時に、やられ慣れてるから避けられたという事実に気づいてしまって何とも言えない気分になった。右目が勝手に攻撃がかすってマスクが破損した緑谷くんの口元の動きから言葉を割り出した。最初は大抵右の大振り、つまりそれを理解するほどやられてたんだ。あんまりいい印象じゃなかったけど、爆豪くん……君は彼に何をしてたの?

 

 私心丸出しの緑谷くん狙い、麗日さんは眼中に入ってないんだろう。麗日さんがその場を離れて核を確保しに向かっても無視している。これ以上は知るべきじゃないと思って、意図して右目の機能を抑える。確保テープを巻こうとする緑谷くんを苛烈に攻める爆豪くん。逃げるヒーロー側を負うヴィラン側。その追いかけっこは、私にとって一線を越える形で終息した。

 

 オールマイト先生がストップをかけたにもかかわらずビルの壁が吹っ飛ぶ。やったのは爆豪くん、コスチュームの機能なのだろうか今までにないほどの規模の大爆発だ。当然当たれば人は死ぬほどの……クラスメイトがざわつく。だって、明らかに殺しにかかってるように見えるから。しかも訓練の趣旨である核があるという前提を無視してまで。私はオールマイト先生に駆け寄って止めるように催促する。

 

 「お、オールマイト先生……これ、だめです。止めないと、緑谷くん大怪我じゃすまないですよ!」

 

 「……双方中止、これ以上は……むっ!?」

 

 オールマイト先生が画面を注視する。するとそこには、初めて右腕に個性を発動した緑谷くんが爆豪くんに反撃……してない?する様に見せて上に放った超パワーは直上の部屋を粉砕して核の部屋の床を抜いた。そのがれきを麗日さんが柱をフルスイングして散弾のように発射、飯田くんが避けた隙に核に抱き着いて回収してしまった。

 

 無傷のヴィランと満身創痍のヒーロー、特に緑谷くんの腕は……おそらく複雑骨折以上の怪我をしている。はちゃめちゃだ、こんなの訓練じゃない。チームを迎えに行ったオールマイト先生の後ろ姿を見ながら、私は授業続行できるかなと一人心配になるのだった。

 

 

 

 

 「では次はヒーローチームB!ヴィランチームはJだ!」

 

 「お!次は俺たちだぜ希械!俺たちで空気変えてこうぜ。勝つぞ!」

 

 「……うん!頑張ろうえーくん!」

 

 帰ってきた爆豪くんは講評の時間ずっとさっきまでの苛烈さが嘘のように静かだった。八百万さんの分析はなるほどと頷けるものでオールマイト先生も太鼓判を押す程。なんか若干震えてるけどどうしたんだろう?それはともかく緑谷くんは保健室へ搬送され、気を取り直して別のビルを使って訓練を再開することになった。そしてその順番が来たのは、私たち。

 

 相手は轟焦凍くん、障子目蔵くん、お昼を一緒した瀬呂くんの3人チームだ。私たちは先にビルに入って準備&作戦会議タイム。さて、どうしようかな……

 

 「しかしまあ、ヴィラン役ってどういう風にやったらいいんだ?希械はどう思う?」

 

 「えっと、ね。多分ヒーロー側がやられたらいやなことをやればいいんだと思う。えーくんは苦手だと思うけど、協力してくれる?」

 

 「あー……しゃーねーな!何せ俺たちゃ今ヴィランだ!嫌がらせ、やってやろうぜ!」

 

 「じゃ、じゃあ頑張ろうね。まずは核なんだけど……私が取り込んじゃおうかなって」

 

 「おお!希械ならできるもんな!」

 

 作戦会議、私は崩れた正座で、えーくんは胡坐をかいて向かい合い、ハリボテの核を前にして考えてた作戦を説明する。ハリボテだけど、核爆弾なら機械だ。つまり私の個性の範疇内、利用しない手は一切ない。オールマイト先生はビル内に隠せばいいって言ってたから、私がビル外に出なければルール違反じゃないし、意表も付ける。

 

 そんなわけで私は真っ白の機械腕をハリボテの核に当てる。私の手から広がって蠢く微細な鉄片やチューブなどが核爆弾を覆う。一応オールマイト先生に何か言われても大丈夫なように大きさから予想される構造の爆弾の起爆解除処理を並行して行った後に思いっきり力を込めて、ぐしゃりと核を圧縮。私の顔くらいになった核をバリボリと音を立てて平らげる。

 

 「美味しくないぃ……」

 

 「あー、帰りになんか奢ってやるよ。ラーメンでも行こうぜ」

 

 「……ラーメン……元気出た!」

 

 座った状態で美味しくないハリボテを食べ切って、率直な感想を漏らす私。美味しい昼食の後にこれでテンションが下がってしまった。しょうがないなあという顔をして立ち上がったえーくんが私の頭を軽く叩いてそんなことを言ってくれるお陰で元気を取り戻し、すくっと立ち上がる。えーくんと一緒なら負ける気がしない!

 

 えーくんに向かって手を差し出す。入試の時と同じだけど今度は私から。えーくんはそれに笑顔で硬化した拳を合わしてくれる。気合いのグータッチはここぞという時こそ。よし、頑張るぞ!

 

 『では、2試合目スタートだ!』

 

 オールマイト先生の宣言、それと同時に私たちのいる部屋が凍り付いた。いや、多分違う。ビルごと凍り付いたんだ。それは私たちの足もそう、なるほどこれは凄い個性だ。誰だろう、轟くんかな?ビルごと凍らせて核兵器を無力化しつつ私たちも無力化かあ……でもなあ。

 

 「じゃ、行くか希械。真正面から男らしく正面突破だ!」

 

 「あ!だめえーくん。守勢なのに攻めに行ったら本末転倒だよ。それに、折角だからこのまま利用しちゃおうよ。嫌がらせ第2弾、油断させて奇襲しよ」

 

 「だー……やっぱこういうの性に合わねえわ。男らしくねえ。でも負けるのも男らしくねえしなあ」

 

 暢気に会話する私たちにはあまり関係ない。私の機械の足なら凍り付いても強引に砕けるし、脚を硬化してるえーくんも同じ。動けないと見せかけてだまし討ちしたほうがいいと思う、えーくんのやりたいことからは遠ざかっちゃうけど私たちは今ヴィランなので飯田くんがなりきっていたように私たちも真剣に徹するべきだ。ヴィランはヴィランらしく、相手の嫌がることを徹底的に。

 

 「……核が見当たらない。轟、どうする」

 

 「関係ねえ、無理やり動いても脚の皮剝がれちゃ満足に動けねえだろ。確保して終わりだ」

 

 「ひえ~~なんだこれ、轟お前も才能マンかよ」

 

 来た!どうやら私たちが完全に動けないという前提でいるらしく、3人とも少し気が緩んでいる様子。部屋に入ってくる前にえーくんとアイコンタクトして頷きあう。作戦開始だ。部屋の中に入ってきた3人に対してえーくんががっくしと肩を落とす。

 

 「んだよこれ、こんなん反則じゃねえかよ。動けねえ!」

 

 「えーこれで終わりかよ。俺のテープ出番ゼロじゃねえか!」

 

 「すさまじいな。個性テスト1位を張り付けか」

 

 「わりぃな。レベルが違い過ぎた」

 

 確保テープを持った瀬呂くんと障子くんがこちらに近づいてテープを巻こうとしてくる。あと少し、ちらりとえーくんに合図を送る。頷いたえーくんと私は同時にバキン!と足元の氷を割って、動き出す。突然のことに3人は動きを一瞬止めた。

 

 「えーくん!障子くんをおねがい!」

 

 「任された!うらあああああ!!!」

 

 えーくんは私の声に大きく返して障子くんにタックル、全身を硬化させて障子くんごと壁を突き破り隣の部屋に消えていった。私は近くにいた瀬呂くんに加減しつつもぶつかって壁に押し付ける。そのままホッチキスの芯を大きくしたような拘束具を作りバスバスバス!と手足を壁に縫い付ける。そこで拘束具が起動して微量の電撃を流して瀬呂くんの筋肉を麻痺させて固定し無力化した。

 

 「……っ!」

 

 そこまでやってようやく事態を飲み込んだらしい轟くんが私に向かって氷結を放ち、私の左半身が凍り付く。けど私は左手と左足の油圧システムを思いっきり加圧して手足を動かして氷を砕き、轟くんに向かって手を向ける。ガシャコンと音を立てて左手が変形、前腕から手の甲までが上にせりあがって前腕内部から機関砲が姿を現した。

 

 もちろん中身はゴム弾で火薬で発射するんじゃなくて空気圧を利用した威力調整版、バシュシュシュ!と音を立てて連射されたゴム弾を轟くんは前に氷の壁を作って防御する。目の前に氷つくっちゃったら相手が見えない!好都合!私は全力でダッシュして右手で思いっきり氷を殴り砕いて轟くんに接近する。

 

 「効かないよ!」

 

 「……ちぃ!」

 

 「おらぁっ!!」

 

 「なに!?」

 

 私の平手をスウェーで回避して距離を取ろうとする轟くんの横の壁をまたタックルでぶち抜いてきたえーくんが奇襲をかける。どうやら障子くんの無力化に成功したみたい!流石はえーくん!まあえーくんが負けるってことは私の全力パンチより強いってことなのでそうそうないとは思ってたけど!それでもナイスタイミングで戻ってきてくれて最高にうれしい!大きくバックステップを取って躱した轟くん、仕切り直しかな。

 

 「形勢逆転だぜ、轟」

 

 「えへへ、作戦成功だね。えーくん」

 

 「おう、ちなみに核の場所なんだけどな。希械が核を取り込んでるんだ、だから俺たちを確保しない限り終わらねーぜ」

 

 「どっちが反則だ」

 

 「だって私たち、いまヴィランだから」

 

 「まあこっからは男らしく真正面からガチンコだぜ。やるんだろ、轟」

 

 返答は攻撃だった。そう来なくっちゃと笑った。私に向かって迫る氷の柱を割って入ったえーくんが受けてくれる。その隙に私は腕の側面を開いて、小型徹甲ミサイルを3発、氷に向かって打ち込んだ。全身氷漬けになったえーくんの周りの氷が吹き飛んで彼の自由を取り戻す。雄たけびを上げたえーくんの突進をもう一度いなす轟くんだけど、動きが鈍い。右目の視界を切り替える、サーモグラフィーで理解した、轟くんの体温がどんどん下がっていってる。個性を使用しすぎると体温が下がってしまうのか!それで身体機能に障害が出てる。

 

 「希械!なんかアイツ動きが鈍いぜ!速攻だ!逃げ道塞いでくれ!」

 

 「わかった!クアドラプルガトリング!形成開始(レディ)!」

 

 両手を変形させる。機械音が積み重なり、6連装の大型ガトリング砲を上下くっつけた重火器二門が両手に出現する。耳をつんざく金切り声をあげて弾丸を吐き出すガトリング砲が轟くんの逃げ場を奪う。当てても大丈夫、死ぬほど痛いけど。まあ当てないように外してるし、えーくんなら当たっても全然平気。私は轟くんの逃げ場を奪えばいい。

 

 両目で行き場がないことを確認した轟くんは真正面から突っ込むえーくんに向かって今一度の氷結を見舞う、が正面突破をするえーくんはまさに重戦車、硬化して氷漬けになっても私のガトリング砲が氷を砕いてしまい、その歩みを止められない。逃げ場を失った轟くんをえーくんは片腕で壁に押し付け、硬化した貫手を突き付ける。

 

 「今回は俺たちの勝ちだぜ、轟」

 

 「……ああ」

 

 『ヴィランチーム、WIIIIIIN!!!!!』

 

 「よっしゃああああああ!」

 

 「やった!」

 

 轟君を解放したえーくんは両手をあげて喜んで、こっちに走ってくる。私も手を元に戻してえーくんに走り寄る。そのままどちらともなくガチン!と私の機械の手とえーくんの硬化した手をハイタッチでぶつけて、私たちは勝利の喜びを共有したのであった。

 

 「あの~、お二人さん。喜ぶのはいいんだけど、これ外して……」

 

 「あっ!!!ごごごめん瀬呂くん!すぐ外すから!」

 

 若干締まらなかったけど、これはこれで私らしいかも。

 




 今作の切島くんは原作より強いし硬いです。というのも

 木刀を使った受打訓練
 ↓
 幼馴染が振るう鎖での殴打
 ↓
 幼馴染による平手打ち
 ↓
 幼馴染の全力パンチ
 
 という感じで楪さん全面協力の元雄英受験に向けて個性を磨いてきたので現在、硬くて力持ちという感じのメインタンクとしてとても便利な感じに強くなってます。

 感想評価よろしくお願いいたします

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