個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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62話

 「昨日話した通り、まず仮免の取得がお前らの当面の目標になる」

 

 1-Aの教室の壇上に立つ相澤先生が、ホームルームを開始した。寮に入寮して翌日の話、朝ご飯は何とランチラッシュ先生のデリバリーが届く、んだけど私は普通に自分で朝ごはん作りました。毎日の習慣だし、好きなもの食べたいしー。昨日のうちにお買い物を済ませて自分の部屋の冷蔵庫に収めてあるのです。レシート持ってくれば嗜好品以外はお金出るんだって、すごい!

 

 なので私はぶ厚めに切った食パンをピザトーストにして食卓に持っていった……ら三奈ちゃんにとられて、他の女の子たちも欲しがったと思ったらあれよあれよと私の分がなくなった。三奈ちゃんは学食でしょー!もう!仕方ないので作り直して私はピザトーストとついでにハニーバタートーストを堪能したのでありました。美味しかった~!

 

 「ヒーロー免許は人命にかかわる極めて重要な免許、仮免でも合格率は5割を切る」

 

 ヒーロー仮免許、それだけ厳しいんだ。私がとったサポートアイテム免許には仮なんてものはなかったけど、発行時に頂いた映像資料には私たちのアイテムで人命が左右されるという内容が口を酸っぱくして何度も出てきた。とれるかな……ちょっと最近自信喪失気味だ、私。気を引き締め直さなきゃ、心配してくれたメリッサさんやシールド博士に顔向けできない。

 

 「そこで今日から君らには最低でも二つ……必殺技を作ってもらう!」

 

 「「「ヒーローっぽくて……それでいて胸膨らむやつきたあああ!!!」」」

 

 相澤先生の必殺技開発宣言と一緒に教室の扉ががらりと開いて、セメントス先生、エクトプラズム先生、ミッドナイト先生が勢いよく教室の中にはいって怒涛の如く説明を始める。必殺技とは必勝の技、型のことで身に染みつかせたそれは他の追随を許さない。今日日必殺技を持たないヒーローは少数派……相澤先生とかなさそう……?捕縛布がそうなのかな?

 

 しかし必殺技……技かあ……。必殺武器とかならいくらでも思いついちゃうんだけど技となると難しい。だって技って。私いいとこ武器出して振り回す女だよ?………………………………自爆とか、そうなのかな?死柄木にも有効だったし、自爆。後で聞いてみよう、自爆って必殺技にしていいですかって。死ぬほど痛いけど。

 

 詳細は実技を交えて合理的に行いたい、という相澤先生の号令で私たちはコスチュームに着替えることになった。更衣室でコスチュームのケースを開ける。うん!申請した通りに変わってる!合宿前にサポートアイテム免許を取ったことを踏まえてコスチュームのデザイン変更を申請してたんだけど無事通ったみたい。

 

 私のコスチュームの変更点は主に下半身、スパッツだったのがショートパンツに変わってて、ふっと~いベルトが付いている。このベルトは超圧縮技術で封じ込めたボックスを懸架出来るようになってるの。要望通りだね、私が作ってもよかったんだけど、デザイン会社さんにお願いしたほうがいいかなと。で、太ももにはビームサーベルのホルダー、右足がビームサーベルで左足は実体剣がいいだろうってことでヒートナイフになってる。

 

 あとは……髪型、だね。左目を出すようにしてたけど、今回からは両目を出そう。けじめだし、もう隠す理由が私にはないからね。そんな感じでやってきました体育館γ!みんなの視線が何か痛い、そんな悲痛なものを見る顔しないで?見えてるし平気だからさ、しかしこの体育館、名前大丈夫なんだろうか?TDLって、略称だけどヤバそう。

 

 「ヒーローとは、あらゆる事故、事件、人災、天災などあらゆる事象から人々を救う仕事。試験ではその適性を見られる。試験内容も当然毎年違う」

 

 「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重要視される項目になります」

 

 「状況に左右されない行動をとれる人は高い適性を有しているってことになるんだよ」

 

 なるほど……要はどの状況でも安定して相手に押し付けられる技術を持っている人は相対的に戦闘力が高くなるって評価になるんだ。例えばと例に出された飯田くんのレシプロバースト、確かにあの高速移動は厄介極まりない、なるほどなるほど……つまり私の奥の手……タイタンシリーズとかは必殺技と言ってもいいのではないだろうか?3機動員すればオールマイト先生ともそれなりに渡り合えたし。相手が本気じゃなかったにしろ。

 

 「合宿では中断されたが個性伸ばしは必殺技を作る前段階の訓練だった。つまり後期までこれからは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

 コンクリートの岸壁が屹立し、分身を幾体も出したエクトプラズム先生が生徒それぞれについてくれる。なるほど実戦形式で……ちょっとワクワクしてきたね。でも、必殺技かぁ……どうしようかなあ……?

 

 

 

 「とりあえず今確実に必殺技と言えるのは……ビーム兵器くらいですかね?ゴリアテとかは別にするとしてもです」

 

 「成程……デハ新シク開発シテミルカ?ナニカ目指ス物ハ?」

 

 「そうですねえ……」

 

 必殺技のビジョンというものは案外難しいもので、どういうものがいいかという方向性から考えることになった。私がなりたいものと言えばえーくんのように誰かを守れるヒーローなわけで、そうすると防御系の技というかそういうものを考えた方がいいのかな?というか!

 

 「私に新しく必殺技作れって言うってことは新技術開発しろってことですよね。どれ実証しようかな……」 

 

 「手当たり次第に試していくのも有効だよ。その中からヴィジョンを固めたらどうかな?」

 

 「成程……それならば!」

 

 確かに技っぽいものはいくつかあるし、実証したい理論も試したい技術も沢山あるのは間違いない。片っ端から試していくには丁度いいのかも。そういうわけでセメントス先生のアドバイスに従って脳内アイデア倉庫からいくつかのイメージを急ピッチで形にする。よし!行くぞ!先ずは1年位前えーくんの部屋を片付けしてた時に見つけたノートの中に書いてあったやつ!多分幼稚園の時のお絵かきノートから拝借させてもらいます!

 

 「私のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!爆熱っ!」

 

 「ちょっ!おいそれどこで見つけたんだよ!」

 

 右手が変形し、青い籠手に覆われたマニピュレーターに変わる。指の関節が稼働し、高熱を纏った液体金属が噴出して掌全体を覆う。真っ赤に灼熱した手を籠手に包み、眼前のコンクリート塊に向かって貫手の形で突っ込む。思い当たる節がありまくりだったらしいえーくんが慌てふためいているけど私もかっこいいと思ったのでやってみたくなったの。ごめんね?

 

 「ゴッド!フィンガアアアア!!!!」

 

 貫手を突き刺した瞬間にコンクリートが真っ赤になって溶けて、エネルギーに耐えられず爆発する。おお!結構すごいじゃんえーくんが考えてた必殺技!ここからさらにエネルギーを収束させる工程もあるんだけどコンクリートが耐えられないっぽいね。えー、評価は……威力過剰ですね。人に使えません!ボツ……強いのに……。ええい、次!

 

 右手を天に掲げる。右手が変形し手首から先が私の身の丈以上ある巨大なドリルに変形する。これの元ネタは明ちゃんから!何でもドリルはすべてを貫くスーパーウェポンらしいので、天を貫くドリルは何が何でも前に突き進む証なのだとか。なのでドリルはロマンですとのこと。今作成したドリルはレアアロイブレードに使う超硬金属を使用しているのでとても強くてそれで超重い。つまりは超強い。

 

 「ギガドリルブレイクゥゥゥゥ!!!」

 

 正面にドリルを構えて足のスラスターを全開にしてコンクリートの山に突っ込む。すさまじい音を立てて山を貫通した私が壁にドリルが突き刺さるギリギリで止まる。なるほどドリル、これいいかも。こんな大きい必要はないんだけど方向性としてはありだ。相手の防御ごと貫通できるかも。

 

 「必殺技の名前叫ばなきゃダメですか?」

 

 「決め技って使うのを仲間に知らせる役目があるわ。オールマイトも技名叫ぶでしょ?ギャラリーにも安心感を与えることもできる。技名を言うのは重要よ」

 

 「そうですかぁ……恥ずかしいんですけど」

 

 必殺技は叫ぶべしというヒーロー基礎学の授業に習ってシャウトしてみるけどやっぱり恥ずかしい。ぶっちゃけヤケクソに近い。何でこんな恥ずかしい……うぅ……やらなきゃダメなんだよね……うぅん……必殺技って言うとどうしてもオールマイト先生のスマッシュの印象が強くって私の全力でやっちゃうんだよ。いっそのこと武器に頼らず素手という選択肢もあるんじゃないかな?ふぅむ……必殺技……スマッシュ……これだっ!

 

 私は背中にスラスターを作り出しジャンプ、天井スレスレまで飛びあがった私は右足を下に向けてセメントス先生が新しく出してくれたコンクリートの塊に向かって思いっきり突っ込む。背中のスラスターを全開にして一瞬で音速を突破した私は衝撃波を引き連れてコンクリートをキックで粉砕、どころか床まで突っ込んでクレーターを形成した。

 

 「名付けてイナズマキック!どうですか!?」

 

 「脚が壊れてるぞ。それ何とかしたら必殺技でもいい」

 

 「素材の選定からですね……むむむ……」

 

 片足が耐え切れず粉砕されたけどこれ結構いい気がする。ぴょいんぴょいんと残った左足とスラスターでコンクリのクレーターから脱出するとすぐさまセメントス先生がクレーターを埋めてくれる。相澤先生のご指摘通り、脚が壊れるのはダメだから、脚の素材の選定を考えよう。どっちにしろ戦闘形態で放つかもしれないし、新素材を採用するのもいいかも。

 

 「お前の場合、テクノロジーを前面に押し出した方がいいだろうな。武術系のものに転換する必要はない」

 

 「そうですよねえ……あ!」

 

 ピコン、と私の脳内に天啓が走る。両目が機械になった今だからこそ実現可能な兵装がある!しかもそれの有効性は正しく必殺技と言っても過言じゃない!よしよしよし!脳内でピックアップした設計図にビーム兵器の仕組みを搭載して新兵器の実証を終える。シミュレーション上は問題なし!これならば!

 

 「エスカッシャン、形成開始(レディ)

 

 私の左手が変形して大型のシールドを作り出す、青と白を基調にした大型シールド、エスカッシャン。レーザー、実弾、衝撃、果てはビームまで耐性がある。当然ながらこれだけならタダの盾だが、それだけじゃない。ガシャ!と音を立ててシールドがばらける。11個の部品に分離されたシールド、部品一つ一つが意思を持つようにふよふよと浮いて私の周りを不規則に周回する。

 

 「ホウ……ソレヲ如何スル?」

 

 「こうします。ビットステイヴ、一斉射!」

 

 私の号令でエスカッシャンの部品、ビットステイヴが一瞬止まってからビームを連射する。ランダムの周回軌道で連射されるビームは標的のコンクリートを撃ち抜いてバラバラに切断していく、みじん切りになったあたりで私はビットステイヴのビーム掃射を終了して、左手に呼び戻し、再びシールド状態に戻した。

 

 「使えた……!」

 

 「成程、全方位からの一斉攻撃か……非常に合理的だ。一つ目、完成でいいだろう」

 

 「やった!」

 

 この技術は私の中で長いこと眠っていたビジョンだった。名付けるならオールレンジ攻撃、複数の攻撃端末を同時に操って対象を攻撃するシステム。これが実現不可能だったのは高い空間認識能力が必要で、今までの私じゃそれがなかったからだ。片目が機械で片目が生身、性能差があって難しかった。身もふたもない言い方をすると左目のおかげで空間の認識にずれが生じてシステムをうまく操れなかったんだ。

 

 だけど今は事故とはいえ両方とも機械の目だ。認識にずれは生じないどころかさらに高性能になっている。座標を認識することなんてお茶の子さいさい、スコープいらず!ちなみにビットステイヴの中身なんだけど反重力発生装置と慣性制御装置をメインにスラスターをサブ、メインアームは貫通力に特化させたビーム!切断するように照射することもできるよ。便利だね!

 

 「とりあえずこれを自在に使いながら戦闘できるように目指します!」

 

 「イイダロウ、ソコ、ナニヲボーットシテイル」

 

 「あっ!すいません……!うまくヴィジョンが浮かばなくて……!」

 

 当面の目標が決まった私がフンスと気合を入れる。ビットステイヴを動かしつつ戦闘をすることが出来ればかなりの戦力アップが見込める。オールレンジ攻撃は脳みそから信号を量子通信で送り操作するので脳みそをフル回転させる必要がある。端末の操作に集中して私自身の動きが止まったら意味がない。動きながらオールレンジ攻撃をする、暫くの目標はこれかな。

 

 気合を入れる私の近くでデクくんが考え込んだまま動きを止めてしまい、エクトプラズム先生に蹴りを入れられる。デクくんはどんな必殺技を考えるんだろう?オールマイト先生から拝借するのかな?ちょっと楽しみだ。

 




 必殺技その1、オールレンジ攻撃。どこかで絶対出したいと思っていました。だって、ロマンやん?無数の誘導端末を一人で操って同時に攻撃を仕掛けるとか。ゆくゆくは逆シャアの天パVSロリコンみたいな動きをさせたい。

 黒歴史を掘り返された切島君に合掌。

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