訓練の日々は流れていき、本日がヒーロー仮免許の試験当日。バスの中に揺られていた私は抱っこしていたハロを撫でつつ、見えてきた会場に視線をやった。国立多古場競技場……滅茶苦茶でかい競技場だ。その大きさは小さめの街をすぽっとそのまま収めてしまえるほど。流石は国立、雄英と同じでお金があるね。
「いいな~希械ちゃんマスコットなんか作っちゃって」
『アイボウ!アイボウ!』
「ふふ、そうだね。ハロはマスコットじゃなくて私のパートナーだよ。三奈ちゃんも欲しい?作ってあげようか?」
「ん~~~悩むけど遠慮しとく!酸で溶かしたりしたら可哀想だし!希械ちゃんのハロ抱っこしてれば満足!」
『ダッコ!ダッコ!』
私の隣に座る三奈ちゃんが私が膝に抱くハロを撫でて可愛い可愛いと言ってくれる。ハロは爆誕した時から女子たちに大人気で、口田くんのペットのうさぎちゃんに次ぐ人気が出て1-A寮のマスコット的な存在になってしまった。マスコットを自認していたらしい峰田くんはハロに嫉妬心を燃やしているらしくオイラもと食って掛かってきたけど女子全員に拒否されて撃沈した。
側面にある耳をパタパタとさせて三奈ちゃんに返事をしたハロを私は三奈ちゃんの膝の上に置いてあげる。三奈ちゃんはハロをぎゅーっと覆い被さるように抱きしめて頬ずりをしている。うーん、我ながらハロはナイスデザインだね。丸っこくて抱っこしやすい上に女の子でも持ちやすい大きさと重さ。話しかければお返事も返してくれる!中身入れ替えてペットロボットとして発売を画策してもいいかもしれない。流石に量子コンピュータはオーバースペックだし、あと私は自前でどうにかできるけど値段にしたら天文学的な値段になる。わんこを譲り受けたほうがいいくらいだ。
ついたぞ、という相澤先生の声で私たちは気を引き締める。私は三奈ちゃんからハロを受け取って小さくし、右耳につけたイヤリングに嵌めた。ベルトのバックルにつけようかと思ってたんだけど、お腹あたりは被弾面積が広いので耳に変更したの。ベルトには超圧縮技術で圧縮した武器を懸架するのでスペースを確保したいし。結果的に耳に落ち着いたわけです。
「試験何やるんだろ……仮免とれっかなぁ」
「取る取らないの話じゃないぞ峰田。とってこい。お前らも、この試験を合格すれば晴れてヒヨッ子……受精卵から孵化できる。頑張ってこい」
「よぉし!期待しててくださいよ相澤先生!なってやろうじゃねえかみんな!ヒヨッ子によぉ!円陣組んで何時ものやろうぜ!」
峰田くんが胸に手をやってドキドキを隠さずにぼやく。相澤先生は珍しく励ますように峰田くんと私たちに激励をしてくれる。それに気合を入れなおした私たちはえーくんの音頭で円陣を組む。B組とは同校同士のつぶし合いを避けるために別会場になってしまったのでA組だけだ、そして私たちは雄英生!雄英高校で円陣といえば!
「「「「「「Plus!Ultra!」」」」」
「Ultra!」
……だれ?私たちの円陣の後ろから掛け声を被せてきたのは……士傑高校の帽子と制服を被った男の子……非常に元気そうでえーくん並みに暑苦しそう。士傑高校といえば雄英高校と並んでヒーロー科の名門として有名な高校のはずだ。勝手によそ様の円陣に加わるな、という同じ制服を着た人に注意されたその男の子は
「どうも!大変!失礼したしましたぁ!!!!!」
がっつん!と地面に頭をぶつけて謝罪をした。勢いだけで生きているような感じの人……うわっ!?頭めっちゃ流血してる!試験前なのに!これで脳震盪とか悪ければ脳内出血とかしてたらまずいよ!急いでタオルを取り出して彼に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?血が……とりあえずこれで拭いてください」
「や!大丈夫ッス!ご心配どうも!一度プルスウルトラ言ってみたかったッス!雄英の皆さんと競い合えるなんて光栄の極みッス!よろしくお願いしまぁす!!!」
「ひゃ、ひゃい……」
「行くぞ、イナサ。雄英高校の皆さん、うちのものがご迷惑をおかけしました」
嵐のような人だったな……結局イナサと呼ばれた男の子は私のタオルを使うことなく帽子を拾い上げて士傑高校の人と一緒に去っていった。相澤先生は彼のことを知っているようで、教えてくれるところのよるとフルネームは夜嵐イナサ、昨年度、つまり私たちの受験の時の推薦入試で……雄英の推薦入試をトップで合格にしたにもかかわらずなぜか入学を辞退した人とのこと。
まず雄英の推薦入試をトップ合格というところですら凄いのに、そこから雄英を辞退して士傑高校に行ったってこと?推薦入試をトップってことは……今はどうか分からないけど当時の轟くんを上回ってたってことだ。なぜ入学を辞退したのかは知らないけど、この試験一筋縄ではいかないかも。私も頑張らなくちゃ、とハロをつけたイヤリングを撫でて私は士傑高校が行った先を見据えるのだった。
「えー、では、ね。仮免のやつやります。はい。あー、僕はヒーロー公安委員会の目良、好きなものはノンレム睡眠、嫌いなものは徹夜。どうぞよろしくお願いいたします」
あの後相澤先生の知り合いというか恋人疑惑が持ち上がったヒーロー、Ms.ジョークが先生をしているらしい傑物学園高校と出会ったりしたけど、気を引き締めた私たちは競技場の中に入ってヒーロースーツに着替えて会場の中で待機している。ざっと数えて1500人を超えるだろう。みんなヒーロースーツを改良してきていて並んでみると新鮮だなあ。うんうん、いくつか私が噛んだアイテムもあるし、メイドイン楪ちゃんのアイテムの使い心地は後でヒアリングしないとね。
目の前で壇上に立つ人に私は見覚えがある。職場体験で入院した時に、私をスカウトしに来た公安の人の後ろに控えていた人だ。目の下にクマが出来ててとても印象深かったのを覚えてる、あの時から輪をかけて顔色が悪化しているように思えるのだけど大丈夫なんだろうか?
「さて、ずばり最初に言わせてもらいますが、1次試験はここに居る1540人で勝ち抜けの演習を行ってもらいます」
勝ち抜けの演習……対人戦かな?うーん、対人戦は苦手じゃないにしろ得意って程でもないんだよ私……火力に制限がかかっちゃうからね。だけど対人用ビームの開発は終わっているし、自由度だけなら非常に増している。恐れることはない、かな。説明によると、現在のヒーロー飽和社会では事件発生から解決までの速度はすさまじくスピードアップしている。私たちがこれからその激流の中に身を投じる時に試されるのはスピード……それで先着100人を合格とする……。
突破率50%って聞いたけど10%以下になってる……!?雄英並みに狭き門になった、条件というかルールはボール当て、体につけるターゲット3つとそれに反応するボールを6個所持しターゲットにボールを当て合う。ライフは一人3つ、3つ目のターゲット当てた人が倒した扱いになって、二人倒したら勝ち抜き……見る限り機械だ。私の個性ならハッキングしてあれこれ悪いことが出来ちゃうだろうけど、それはやめよう。あ、でもボール増やすのはありかもね。一つ食べて中身解析して量産しよう。私だけ残弾沢山になるね!
「じゃ、展開後ターゲットとボール配るんで……全員にいきわたってから1分後スタートとします」
展開?と私たちの頭に疑問符が浮かぶ。周りの壁が振動して、向こう側に倒れた!?展開ってそういうこと?折り畳み式の部屋だったんだ、無駄に大掛かりだな!展開した周りは……USJみたいだ。山岳、水辺、市街地、工場地帯……あらゆるシチュエーションが用意されてるっぽいね。近くにいた公安の人からターゲットとボールを貰う。私はそうだな……左胸、みぞおち、背中かな。どうせ守る急所だし。
「このルールなら同校でのつぶし合いはない……チームアップの方がいいよね……!皆!余り離れず一塊で動こう!」
「ふざけろ、遠足じゃねえんだよ!」
「わりぃ、大所帯じゃ個性を活かせねえ」
「もぐもぐ……うん、私も。皆!合格して会おうね!」
デクくんがみんなに号令をかけてくれるけど、爆豪くんとえーくんと上鳴くんは揃って離脱、轟くんも範囲攻撃という都合上離脱せざるを得ない。そしてボールを一つ齧っている私も本気を出すと周りを巻き込みかねないので同じく離脱、1分しか時間がないので市街地に向かって移動する、途中で今回使うことにする武装を作っちゃおう。
「ホルスタービット、シールドビット、アームキャノン、
腰後ろからアームが伸びて両側に5機、緑色の縦長の武装を形成、左肩にも連結された8機の台形の形をした緑色の盾を形成。右腕が大砲の形に変形して準備完了。この右腕はボールをレールガンの要領で加速させて打ち出す物、あとミサイルも撃ち分けできる便利兵器。一気に体重が倍近くまで膨れ上がった私がガシャガシャと適当な広い場所に陣取る。
「うーん、見られてるね……」
視線がささる、とはこのことだろうか。どの高校の人も私を見ている、思い当たる節はある。私たち雄英は体育祭でいち早くメディアに個性の詳細と戦闘映像を晒したんだ、全国に。これが毎年行われてるってことは、情報が明るみに出た雄英を真っ先に狙ういわゆる雄英潰しみたいなことが試験では定石になってる可能性が高い。そして私は体育祭で1位をとっている、だから彼らにとっては最も警戒するべき敵であり、もっとも狙いやすい相手でもあるんだね。
「よろしくね、ハロ。初陣だよ」
『ウイジン!ウイジン!』
『3,2,1……スタート!』
「まずはあの雄英のやつからだ!」
「この人数で攻めれば!」
「いっけええええ!!!」
予想通りだ。私に向かって投げられるボール、燃えたりなんだりして個性が作用しているであろう物もある。私一人だけに豪華だなあ、と他人事のように考えながら私は……その場から動かず、右耳のハロを撫でた。
『ビットテンカイ!ビットテンカイ!』
「ん、ハロ上出来」
『ヒダンゼロ!ヒダンゼロ!』
「ウソだろ……?」
「あれだけの数を防いだのかよ……」
ハロの音声と同時に左肩のシールドビットと両腰のホルスタービットが外れて総計18機の遠隔誘導端末がシールドとなり向かってくるボールを全て防いだ。私の周りに浮かんでいるシールドビット、ホルスタービットは時に組み合わさって面積を大きくしたり、時には分割したりと複雑な動きを見せつつ向かってくるボールから私を守り切る。私の周りにはただただ弾かれたりしたボールがむなしく地面に落ちる音が聞こえるだけ。
さて、次は私の番……と思ったところで私対その他という乱戦状態の戦場にふわりと風が吹いた。その風は徐々に勢いを強くして、私の足元にあるボールや他の人が投げたボールを拾い、そして上空へ持ち上げていく。個性だ、これ……!しかもボールだけを持ち上げて、さらには風の強さ形状を操っての繊細なコントロール……!
「俺!ヒーローって熱血だと思うんです!皆さんの戦い!熱いッス!」
「夜嵐、イナサくん……」
彼、だったんだ。なるほど、この個性なら雄英の推薦入試をトップ合格したというのも頷ける、まるでフライトジャケットのようなヒーロースーツとマントを身に着けた夜嵐くんは自分の上空に集めたボールを渦巻かせるように巻き上げて加速させていく。ちらりと私を見た夜嵐くんはすさまじいほどの凄絶な笑みを浮かべる。
「雄英の人!体育祭みてたッス!貴方と戦えるとは光栄の極み!是非一手!ご指導頼むッス!」
「いいよ、私でよければ。どこからでも」
「よろしくお願いしまっッス!!!!!」
一際大きな風が吹き荒れボールが暴れ狂う。私は下げていた両目の機能を一気に引き上げる。風の向き、風速、次に吹く風の予想図までをシミュレートした私、瞬時にハロと情報を共有して彼の攻撃に備える。ハロは私のもたらした情報を元に数千パターンの攻撃を予測、ビットを操ってそれに備える。
夜嵐君が腕を振り下ろした。それに合わせて上空に舞っていたボールたち、軽く400個ほどはあるそれが一斉に私を中心とした範囲に殺到する。私どころか他の人も巻き込んでの旋風、いやボールの暴風雨が炸裂した。でも、問題ない。ハロと私の操作でビットたちが動き出す、ホルスタービットからまるで拳銃のようなビットが飛び出し、シールドビットに仕込まれてあるビームガンと一緒に弾幕を吐き出した。
ビームによって私に当たるボールだけを溶かし、余波はホルスタービットが2枚一組で合体してシールドとなり守る。私はその状態で狙いを済まし、右手のアームキャノンに紫電を迸らせ3発ボールを発射した。暴風に負けない加速を得た私のボールは腕を振り下ろした状態から態勢を立て直そうとする夜嵐くんのターゲットに見事突き刺さる、1つ、2つ……!3つ目は体をねじって防がれた!
『脱落者120名!一人で120名脱落させて合格した!』
「危なかったッス……!」
「先、越されちゃった」
「ありがとうございましたっ!アンタは絶対合格するッス!先で待ってるっス!」
「うん、ありがとね。夜嵐くん」
私に向かってきた攻撃の余波だけで120人を脱落させたのかあ……!凄いな、夜嵐くん。でも、オールレンジ攻撃は好調だね。あのボールの嵐でも、私に攻撃が当たらなかった。最後のターゲットを両手で掴んで冷や汗を流す夜嵐くんに左手をひらひらと振ってから私は戦場を移動する。その場にいる他の人たちは私とそれを見下ろす夜嵐くんを交互に見て、驚いていた。
夜嵐くんと絡む楪ちゃん。ハロの加入により戦力爆増です。そして対人用ビーム兵器実装。誤射っても火傷ですみます
では感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ