『ヴィランによるテロが発生!規模は市全域、建物倒壊により傷病者多数!』
「始まった……!」
「ケロ、頑張りましょう」
「やるよ、皆!」
ジリリリ!と非常用ベルが鳴り響く中でマイクによる状況説明が行われる。シナリオはテロによる大規模災害、ヴィランによるものということは戦闘を想定しておかないとダメかも……!救助、戦闘、そして指揮……ヒーローに必要な3要素がまんべんなく含まれている試験だ。飛び跳ねていたハロを右耳のイヤリングに嵌めなおして、脹脛のバーニアを増設、細かく動けるように変更した。
採点基準は一切明かされず、さらにはどうやって、誰が採点するのかもわからない。これは不安になるやつ……だけど!訓練通りに、落ち着いてやれば大丈夫。確かに先輩方の方が経験はあるかもしれない、それでも私たちだって雄英に入って少なからず何度もやってきたことだ。13号先生に教わったことを思い出して、頑張るべし!
「えーくん、私たちは近い都市部じゃなくて山岳部に行こう。私たちの力が一番生かせるはず」
「おう、やろうぜ!」
「三奈ちゃんは都市部かな?酸で溶かして道を作ったりとかね」
「そうかも!希械ちゃんあったまいい~~!」
私の体の大きさだと倒壊した家屋の隙間や細い路地での活動はしにくいのでその部分は他の人に任せるべき、同時に馬力が物を言う山岳救助なら私は有利、えーくんもそう。硬化の個性は咄嗟にテコとして使えたり、支えになれたりととても有利だ。さらにえーくんは力持ち、重い岩石をどかす必要がある山岳救助にうってつけ。
スタート、の合図とともにまた控室が展開する。私はえーくんの手を取ってその場からブーストを吹かして飛んだ。他の候補生たちの誰よりも早く山岳部にたどり着いた私たちは、山岳部の無事な広い場所に簡易救護所を設置したほうがいいと判断する。私は個性をフル活用して、簡易救護所を作って設置する。簡易ベッド、椅子……それとある程度の応急治療用具を出しつつ、えーくんにはハロと一緒に先に救助に行ってもらった。ハロがいれば人を見つけることができる。
「……救護所が出来てる!?いや、雄英の君が作ってるのか!」
「はい!一人先行して救助をしてます。私もここが終わったらすぐに」
「よし!みんなここが一時救護所だ!ここである程度応急手当てを終えたらヘリの離発着場を作った控室の救護所に送るぞ!」
私たちに追いついてきた他校の人たちが私が作った救護所を見てからサクサクッと指揮系統を確立して指示を出してくれる。それに異論はないので私は完成させた救護所の跡に超圧縮技術で圧縮済みのボックスを50個ほど作成して聞こえるように声を張り上げた。
「皆さん!これストレッチャーです!中央部の丸い部分を押すと超圧縮が解けます!反重力で浮くので山岳部でも使えると思います!」
「これ、すごいな!みんな、一つは持っていった方がいい!」
実際にボタンを押して反重力で浮き続けるストレッチャーを見せたら皆有効性を理解してくれたのか一つずつそれをもって、崩れた崖や山に走っていった。私も遅れるわけにはいかないとハロがマッピングしたハザードマップを受信して救護所に立体投影してから救助に向かう。ストレッチャーとハロに仕組まれた発信機が全体マップを通して探索済みの場所をマーキングしてある。見落としがない限りはこれで次にどこへ行くべきか分かるはずだ。
ハロの反応を頼りに空を飛んでえーくんに合流する、えーくんはどうやらもう既に一人助けてたみたいで、一人の人を背負ってた。私は彼の傍に着地すると、そのまま反重力ストレッチャーを超圧縮から元に戻す。
「烈怒頼雄斗!これ使って!意識はある?」
「いや、意識はねえ、けど脳内の出血とかはない。気絶してるだけだ」
えーくんはストレッチャーに気絶した男の人を乗せる。途中で私たちを見つけた人がトリアージと応急治療をやるからこのまま引き継ぐと言ってくれたのでその人に男の人をストレッチャーごと託してすぐさま救助現場にとんぼ返りする。ストレッチャーの位置情報で共有されてるマップのまだ未探索の場所にえーくんと一緒にやってきた。
「ハロ、生体探査!」
『ミギ!ミギ!』
「……助けてくれぇ……」
ハロの生体探査で生命反応をサーチ、すると右の土砂崩れの現場で大きな岩に挟まる様に潰されかかってる老人を発見した。どうやってそんなところに入ったの!?それはまあ後回しにして、急いでえーくんと一緒に現場に駆け付ける。
「大丈夫ですか!?すぐ助けます、烈怒頼雄斗、これ!」
「おう!やるぞ!エクスマキナ!」
バランスが崩れれば潰されることは必至だ。幸い意識はあるようだから致命的な潰され方はしてないだろう、私は二つジャッキを作りだして片方をえーくんに渡し、老人を挟むようにセットする。ジャッキを起動させると、電動のそれがすぐさまジャッキアップを始めて老人を助け出す隙間を作り出す。すぐにえーくんが老人を引っ張り出してストレッチャーに乗せた。
「……レントゲンは大丈夫、脳内出血もなし。打撲で済んでる。このまま救護所に運びます」
「お爺さん!大丈夫ッスよ!絶対助けますから!」
「……ああ、ありがとうよ」
HUCの人を簡易的に両目で診断する。彼の設定がどうなのかは分からないけど簡易的とはいえ全身くまなく見た。おそらく奇跡的な挟まれ方をして怪我は軽いタイプという設定かな?ストレッチャーは勝手に人の後ろについて聞きてくれるのでえーくんと一緒に一時救護所まで行ってもらう。私はそのまま、土砂崩れの中を掘る。さっきハロが探査した時に土砂崩れの土の中から生命反応が3つあったからだ。
小さな掘削機を作り出した私はトンネルを掘る様に堀った周りの土を速乾セメントと金属の梁で補強して道を作りながら穴を掘り続ける。これ探索系の個性無かったら見つけられないやつじゃないかな?そうして1分もかからずに要救護者の所にたどり着く。
「助けに来ました!もう安心ですよ!」
「ああ!この子が意識がないの!」
「少し失礼しますね……うん、はい。大丈夫です!絶対助かりますし、私が助けます!一緒に行きましょう!」
ストレッチャーを3つだす。多分家族の設定で小さな子が意識を失っている。両目でサーチして骨折とかがないのを確認した私はストレッチャーにその子を優しく置いて、両親に笑顔を向けた。それを見た両親はほっとした顔をしてストレッチャーに自分で乗ってくれる。私はそのままストレッチャーを3つ引き連れて土砂の中から脱出、急いで一時救護所に向かった。
「トリアージお願いします!脳内出血及び骨折はありません!」
「分かった!おい!次きたぞ!運んでいってくれ!」
「エクスマキナ!」
「烈怒頼雄斗!こっちはもうそろそろ終わりそうだね!別の場所に……」
運び終えてこっちに戻ってきたえーくんと合流して私が作った一時救護所に3人の要救護者を運んでいく、トリアージを務めてくれている先輩に3人を引き渡すと、移動に適した個性を持った別の先輩が応急処置を終えた人たちを救護所にしている控室に運んでいく。マップを見る限り山岳地帯はほぼ全て探索が終わっているみたいなので、次はえーくんと一緒に一番ヤバそうな繁華街方面を、と思ってたら開始前のステージ破壊に匹敵する大爆発が起こった。
何事!?とえーくんとシンクロして爆発の方を見ると……人影が多数……?ズームして見て見ると……ギャングオルカだ!ってことはこれヴィランによるテロでヴィランが追撃かけてきたってことだよね?ちょっと距離あるし……ここの避難は大分終わってる。なら私たちは戦闘をした方がいいかもしれない。幸い前衛としてとても優秀なえーくんがここに居る。
「烈怒頼雄斗、私はここから援護するよ。皆の盾になってあげて。ドダイ、
「おう!頼んだぜ!」
人一人が上に乗れる小型の飛行機を作り出した私はそれにえーくんを乗せてギャングオルカたちがいる地区に向かって全速力で送り出す。私は崩れてない山の天辺に飛んで、フィールド全域を俯瞰する。あの方向からしかヴィランがやってこないとは限らない、ならどこから何が現れてもいいように準備をすればいい。
「GNスナイパーライフル、
『リョウカイ!リョウカイ!』
GNスナイパーライフル、Generation Nextスナイパーライフルの略。ビームライフルの発展形だけど。新たに開発した狙撃用のものだ、次世代に突入した装備なのでかっこつけでそんな名前を付けたけど、対人用のビームと通常威力のビームをデフォルトで打ち分けできる便利な子なんです。ありがとうイオリア教授、でもビーム関係本職じゃないってほんと……?
腰に圧縮して懸架しておいたホルスタービットを解放しハロの操作で中に入っているビットが出てくる、連射力に特化したピストルビットではなく、一撃の威力と射程を重視してピストルビットにパーツを接続したライフルビットだ。10基のライフルビットが私の周りに浮かび、ホルスタービットは後ろで組みあがって待機する。
両目を狙撃用に切り替えた私はGNスナイパーライフルと目を連動させてスコープとして使い、狙いをつける。既にギャングオルカたちによる対ヴィラン想定戦は始まっている。ドダイに乗ったえーくんが飛び降りるのに合わせて私はギャングオルカの周りにいるヴィランの役をやっているサイドキックたちの右手、おそらく武器と思われるものを破壊するために狙撃を開始した。
「エクスマキナ、ダイレクトカノンサポートに入ります!」
独特な音を立ててGNスナイパーライフルとライフルビットからビームを連射する、降り注ぐ熱線の雨がサイドキックたちの武器を遠距離から破壊していく。中の人に損害を与えるわけにはいかないので、武器だけの破壊に徹する。ギャングオルカに相対してるのは……轟くんと夜嵐くんだ!彼らなら……あれ?なんか、喧嘩してない……?えーくんは私が武器を破壊した人の無力化で忙しいし……いけない!
「そっちに行くしかない……!?まずい!」
二人の連携のまずさがいけない方向に噛み合ってしまい、傑物学園高校の真堂さんにフレンドリーファイアしそうになる。デクくんが助けてくれたみたいだけどそこで終わりだ、戦線が完全に瓦解した。多対一はえーくんあまり得意じゃない!しょうがない、長距離ミサイルをいくつか発射して爆発によって足止めする。遠距離攻撃に徹していたけど、私も前線に行かないとまずそう。
ここで、轟くんと夜嵐くんの最後の攻撃が完全に嚙み合った。ギャングオルカを炎で足止めし、その炎を夜嵐くんの風が竜巻にしてギャングオルカを閉じ込めたのだ。炎の牢獄……!ギャングオルカは乾燥と熱に弱い、弱点を突いた完璧な攻撃だ、私はその隙にスラスターを吹かして前線に飛んでいく。
「ハロ、タイタンフォール!スタンバイ!」
『タイタンフォール!タイタンフォール!』
腰ベルトから3つ圧縮ボックスが分離して、それぞれゴリアテ、ヘカトンケイル、アルビオンを形作る。自立機能で組みあがった彼らのうち、ゴリアテのヘルメット内にハロを移動させて3機の自立起動の要として動いてもらう。そして私はそのまま、熱風牢獄を超音波で弾き飛ばしたギャングオルカに向かって突っ込む。
「で、次は?」
「私です!」
没になってしまった必殺技、イナズマキックをギャングオルカの目の前に着地と同時に放って足止めをする。めくりあがった岩石と石の散弾に怯んだギャングオルカの隙をついてタイタンたちがギャングオルカを囲う。ゴリアテが背後、ヘカトンケイルが右、アルビオンが左、そしてそのままそれぞれの武装をフルオープンさせてギャングオルカに狙いをつける。
「動かないでください、大怪我じゃ済みませんよ」
「いい判断をする……!並みのヴィランならこの時点で戦意喪失するだろう。だが、次を考えているのか」
「はい、次は彼らです」
私のその言葉と同時にえーくんとデクくんが私の両側から雄たけびを上げて突っ込んでいく。ビットがギャングオルカの逃げ場を潰し、彼らの攻撃を受けるしかなくなる。デクくんの蹴りとえーくんのパンチをギャングオルカが受けて、凄まじい勢いで後ろに滑っていく、そう……ゴリアテの所まで。
ゴリアテが拳を構え、ギャングオルカに当てる!というところで演習開始と同時に鳴り響いたベルの音と演習終了を知らせる目良さんの声が放送される。ハロに攻撃中止の命令を出してゴリアテが拳をぴたりと止めて、下ろした。デクくんとえーくんも追撃の拳を下ろしてぱちくりとしている。
ちょ、ちょっと消化不良かもしれないけど、試験終了だね?と私はホルスタービットにライフルビットを戻して二人とギャングオルカに近づいていくのだった
GN系の装備をどうこじつけようと考えた結果当て字になりました。ハロ君は優秀ですね、何でもできます。
超圧縮技術のおかげで外骨格を容易に運ぶことができる、便利。そして狙撃任務もできる楪ちゃん。今までは戦闘開始時に傷を負ってたりとかして戦績が悪かったですが万全な状態でやればクソ強いです。クソツヨ個性ですし。
では感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ