個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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69話

 『集計ののちこの場で合否の発表を行いますので、怪我された方は医務室へ、他の方はスーツより着替えてしばし待機してください』

 

 試験が終わった、えーくんがバタバタと踵を返して轟くんと夜嵐くんを抱え上げている。けどすぐに士傑の毛むくじゃらの人に夜嵐くんを渡して轟くんをおんぶする形になった。私はギャングオルカに少しだけ用があったので彼に近づいて話しかけることにする。

 

 「あの、ギャングオルカさん……神野ではありがとうございました」

 

 「私は何もしていない。君が助かった経緯は聞いている、ヴィランごときにやりこめられて正直言えば私自身に腹が立つほどだ。君も、良く助かってくれた」

 

 「でも、ギャングオルカさんが言葉をかけてくれなかったら私、途中で折れてたかもしれませんから。助けに来てくれて、嬉しかったんです。ベストジーニストさんとかにもお礼を言えたらいいんですけど」

 

 「この後伝えておこう。彼がすぐさま復帰できたのは君が庇ったからだ。彼も君のことを気にしていた」

 

 オールフォーワンの攻撃をまともに浴びたベストジーニストだけど、最後のとどめに私が割り込んだおかげで治癒で対処できるレベルの重症にとどまっていたらしい、ベストジーニストが逃がした他のヒーローたちも軒並み軽症で神野以降すぐに現場復帰した人も沢山いたらしい。

 

 がぽ、とゴリアテのヘルメット内からハロを回収して抱っこする。ホルスタービットも含めて結局出番がなかったタイタンシリーズ3機をまた超圧縮技術で圧縮して腰ベルトに仕舞っておく。私はギャングオルカにお礼の気持ちを込めて深々と頭を下げた後に踵を返してクラスメイト達と合流する。

 

 えーくんに背負われている轟くんは無言だった、私たちも彼の気持ちを慮ることしかできないので深くどうこう言うことはできない。フレンドリーファイアはともかく、仲間割れはかなりの減点ポイントになってしまうだろう、採点基準は分からないけど、HUCの人がしてるのは確実、それ以外の行動はどうなってるのか……。着替えながらも私は不安がぬぐえなかった。

 

 

 

 

 「はー、こういう時間一番ヤダ……」

 

 「わかるわー」

 

 「やれるだけのことはやりましたもの。きっと大丈夫ですわ」

 

 「そうだよ、みんな頑張ったんだから平気!ね!」

 

 制服に着替え終えた私たちはそれぞれの学校順に固まって結果発表を待つ、響香ちゃんが高鳴る心臓を抑えるように胸を押さえながらの感想に同意する上鳴くん、上鳴くんに同意されたのが若干シャクだったらしい響香ちゃんが軽く頬を膨らませると上鳴くんはなんで!?とショックを受けている、確かに理不尽。

 

 『皆さん、お疲れさまでした。とりあえずは発表前に採点方式から説明させてもらいます』

 

 あ、目良さんだ。一気に姿勢を正した私たちに目良さんが説明するところによると、減点方式の内訳はヒーロー公安委員会とHUCの二重の減点方式、危機的状況下でどれだけ間違いのない行動をとれてるかどうか、ということらしい。なるほど、観客席にいるサングラス黒スーツの人はそういうことだったのね。一人だけ私をじーっと見てる人がいるのもそういうことだったんだ。じゃあその人にお礼を言わねば、とりあえず手を振っておこう。なんかえらく驚いてるや。

 

 『合格点は50点以上、今の言葉を踏まえたうえでご確認ください』

 

 その言葉と同時にバンッ!と電光掲示板に50音順で合格者の名前が映し出される、私はゆなので最後の方……!あった!あったよ!飛びあがりそうなほどうれしくなるけど必死で抑える、口元はきっとゆるゆるだけど……それでも超嬉しい!そして私の合格を確認できたので今度はクラスメイト達の名前があるのを確認する、梅雨ちゃんでしょ、お茶子ちゃんでしょ……ある、ある……爆豪くんと轟くんの名前が……ない?

 

 轟くん……きっと仲間割れで大きく減点されちゃったんだ。爆豪くんに至ってはちょっとわからないけど……どこにいたのかもわかんないし。でもヴィランがいたのに突っ込んでこなかったのはちょっと違和感。今までの爆豪くんなら多分救助そっちのけでヴィラン相手に大立ち回りするだろうし。もしかして……迷ってたのかな?それで減点されたのか?そしたら一緒に行動してたであろう上鳴くんは合格してるし……ううん?

 

 「これを機に改めよ?言葉って大事よ?」

 

 「うるせぇ……」

 

 「まさか要救助者相手に暴言吐いてたの……!?」

 

 私の戦々恐々とした声に爆豪くんは反射的に言い返そうとしてそれをグッとこらえた。図星だったのか……そりゃ減点されるよ、不安になってる時に汚い言葉を投げかけられてしまったらそりゃあね……。そして、轟くんは無言。夜嵐くんがきて彼に謝っているけどお互い様だと轟くんは返して、お前のおかげで気づけたものがあるという明るい形で終わることができたみたい、よかった~。

 

 『えー全員ご確認いただけますでしょうか?今から配布するプリントは採点内容が記載されておりますのでしっかり目を通してください』

 

 その言葉と同時に公安委員会の人が私たちに採点内容が載ったプリントを配ってくれる。私にも配られたので中身を確認してみると……96点!これ凄いんじゃない!?減点内容は……ギャングオルカに放ったイナズマキックの大規模攻撃による二次災害の恐れ……なるほど。今まで戦場じゃ基本遠慮なしにぶっ放してたけどここからはそういうのも注意しないといけないのね、反省。

 

 でもHUCの人からの減点が無ーい!嬉しい!つまり救助では間違った行動はとってない!ってことだ!かなり自信が出てくるねこれ!私のニコニコ顔が気になったのか三奈ちゃんが私の背中にジャンプして飛び乗り、私の採点内容の紙を見る。

 

 「うそ!希械ちゃんすごーい!96点!」

 

 「まあ!私94点でしたの……流石ですわ、希械さん」

 

 「だー……俺は82点だ、すげえな希械」

 

 「訓練の成果が出た感じだよ。頑張ったんだ。私だけじゃなく、みんなね」

 

 「よこせや……」

 

 「爆豪くんこれとっても合格にはならないよ……」

 

 地獄の底から手をこまねいている亡者のようなひっくい声で私やえーくんの採点用紙を奪おうとする爆豪くん、よっぽど悔しかったのか声に覇気がない。そして続く注意事項、オールマイト先生が引退したこと、そして彼の存在によって抑圧されていた犯罪者たちが動き出していること。それを踏まえての今回の試験……私たちがヒーローになる頃には象徴が不在となった社会がどうなっているかは分からないから。

 

 『そして、落ちてしまった人。しょげている暇はありません。もし君たちが望むのであれば、3か月の特別講習ののち個別テストで結果を出せば、君たちにも仮免許を発行するつもりです』

 

 おお!目良さんが話すところによると一次は落とす試験だったけど、それで残した100人は出来るだけ育てていきたい、だから2次試験で落ちてしまった人にはチャンスを与える、ということね!よかったね轟くんに爆豪くん!これで仮免許に合格できれば晴れて1-A全員合格になるよ!

 

 とにかく私たちの仮免試験は、こういう形で終わりを迎えるのだった。帰ったら何か美味しいもの食べたーい!何作ろうかなあ、でもなんも仕込んでないなあ。

 

 

 

 

 「楪少女、ちょっと」

 

 「あ、はい何でしょうかオールマイト先生!デクくん呼びますか!?」

 

 「あ、いや君だけに用があるのさ。相澤君には話を通しているからこのまま私の車で少し付き合ってもらいたい」

 

 「……なんでしょう?」

 

 仮免試験の会場を後にする私たち、私に声をかけたのはオールマイト先生だ。どうやら私だけに用があるみたい、デクくんセットじゃないのは初めてじゃないかな?荷物をオールマイト先生の車に乗せて、とりあえずみんなに寮でね、と手を振る。オールマイト先生専用らしい黒い車の助手席に乗り込んだ私がシートベルトをしたのを確認してオールマイト先生はそのまま上手な運転で車を発進させた。

 

 「悪いね楪少女、仮免試験を終えたばかりで疲れているだろう。合格おめでとう、君ならば合格できると思っていたよ」

 

 「ありがとうございます。あの、どうしてデクくんじゃなくて私に……?」

 

 「ああ、今から空港にとある人たちを迎えに行くことになっていてね、君も知っている人たちさ。その人たちを含めての話があるんだ」

 

 「私が知ってる人……?」

 

 「デイヴと、メリッサだよ」

 

 「シールド博士とメリッサさん!?」

 

 滅茶苦茶驚いた。だってそんな話メリッサさんとは全然してないもん!なんでなんだろう?というかI・アイランドの渡航制限とかどうなったんだろうか?私が疑問符を浮かべている間にも車はジャンクションから高速道路に入って空港までの道のりをずんずん進んでいく。え、ちょっと待って私シャワーとか浴びてない!?いくら何でもこの状態でシールド博士やメリッサさんに会うのは失礼が過ぎるよ!?慌てて汗拭きシートで顔を拭いている私にオールマイト先生は申し訳なさそうにしながら。

 

 「私が象徴から降りて一か月たたないが……それでも犯罪傾向は上がってきている。君たちを育てる側に回る私にもできることをしようと思ってね。人脈を頼ることにした」

 

 「つまり、シールド博士とメリッサさんが雄英に……?」

 

 「そうなる。デイヴはサポート科の教員に、メリッサは留学という形でね」

 

 「渡航制限は……?」

 

 「HAHAHA!私がお願いしたらなぜかあっさり通った!」

 

 「そりゃオールマイト先生のお願いを断れる人がいたら見て見たいですけど……」

 

 この人、今は何でもないただの人のように自分のことを語ってるけど……日本に平和をもたらした本物のヒーローなんだよ?その名声は海外にも届いていて、海外のヒーローたちもこぞって彼にはかなわないと言ってるくらい。その人が直々に、お願い。それを断るということはかなりの無茶振りか、周りの目を気にしない人くらいだ。この人にそのつもりなくても自動で圧力がかかる感じだよね……。

 

 「……あれ?でもシールド博士とメリッサさんが来るなら猶更デクくんを呼んだ方が良かったんじゃ……?」

 

 「……それについては全員そろってから話そう。緑谷少年をなぜ呼ばなかったのかも含めて、ね」

 

 「……分かりました」

 

 ハンドルを握るオールマイト先生の横顔があまりにもシリアスだったから、私はそれ以上突っ込むのをやめることにした。きっと何か重要なことがあって、それに私が必要だから……呼ばれた。好意的に解釈すれば頼ってもらえたということだよね!?オールマイト先生に!頼ってもらえた!いけないな、この事実だけで私のやる気が有頂天だ。

 

 

 

 「マイトおじさま!希械さん!心配してたの!」

 

 「トシ!それに楪君も!話は聞いた、大丈夫なのか!?」

 

 I・アイランドからのプライベートジェットのタラップを駆け下りるようにメリッサさんとシールド教授が降りてくる。長時間のフライトを感じさせないほどの必死さだ。メリッサさんは私に思いっきり抱き着いて、無事でよかった……と言ってくれる。やっぱり神野の件は外国でもビックニュースみたいだね……。

 

 「メリッサさん、心配かけてごめんなさい。私はちゃんと大丈夫だから」

 

 「……希械さん、目が……!」

 

 「うん、取られちゃったの」

 

 「そんな……!」

 

 「……I・アイランドでも大騒動だった。教授たちは軒並み君を心配していたよ。トシ、ここから暫く俺は日本にいる。何でも頼ってくれ」

 

 「ああ、ありがとうデイヴ。ここじゃ人目につく、場所を抑えてあるからそこに移動しよう」

 

 私の髪の間から色が揃った両目がチラ見えしてしまったらしく、メリッサさんは瞳に涙を浮かべながら我が事のように悲しんでくれている。連絡を取り合ってはいても基本的にメールが主なので直接私を見るのは今日が初めてになるのか、驚かせて申し訳ないことをした。そして、オールマイト先生の言葉で気を取り直して入国審査をすっ飛ばし乗り入れした車に乗って私たちは空港を後にする。

 

 正直、ちょっと不気味だ。何が不気味ってオールマイト先生、何時も鷹揚でユーモアを忘れない先生が、今日に限っては嫌にシリアスでどうも何かを急いでいる感じが拭えない。何が彼をそこまで突き動かすのか、象徴を引退した彼にそこまで何かを焦らせるわけがあるのか……私には見当もつかない。

 

 何度も大丈夫なのか、ちゃんと目は見えているのかと心配してくれるメリッサさんに大丈夫だよ、見えていますと返事をする。そこまでしてようやく私が一応の一応無事だと理解したメリッサさんはハンカチで目尻を拭ってほっと一息ついた、本当だったら有意義なはずの留学も日本がこんな状態だと素直に喜んでいいかわからないよね……いやホント、申し訳ないよ。

 

 オールマイト先生は車を一つの高級そうな料亭に駐めて、そのまま入っていく。私たちも荷物を車に残してそのまま料亭の中へ、オールマイト先生は顔パスなのか綺麗な着物を着た仲居さんに案内されるがまま私たちも付いていく、案内されたのは、壁の一部が仕込みドアになってる隠し部屋。私たちが中に入るとオールマイト先生はそのまま中から鍵をかけてしまう。

 

 時間を指定してあったのか既に湯気が立っている料理がスタンバイされていて、食欲をそそるいい匂いが部屋の中に充満していた。私はオールマイト先生の隣の座布団に正座させてもらい、シールド博士とメリッサさんは対面に座る。オールマイト先生は、そこから2度ほど躊躇うように言いよどんでから、口を開いた。

 

 「来て早々申し訳ないけど、大事な話をしたい。皆、落ち着いて聞いて欲しい。私は恐らく……今年か来年、死ぬ」




 原作改変、雄英にシールド博士とメリッサさん加入。のちに出番があると書きましたがこれですね。これにより雄英の技術力が爆上がりします。そして、予知についてオールマイトから共有がありました。それについては次回。

 では感想評価よろしくお願いします。

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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