個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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70話

 「……え?」

 

 「なっ!?」

 

 「お、おじさま……!?」

 

 オールマイト先生は今なんて言った……?死ぬ?オールマイト先生が?なんで……?私たちの三者三様の驚きを見たオールマイト先生の顔は極めて真面目、ユーモアではなさそうだ。というかオールマイト先生はこんなブラックユーモアを言う人でない。本気の話だと受け取った方がいいかもしれない。

 

 「トシ、冗談じゃないんだな……?」

 

 「……ああ。楪少女、サー・ナイトアイを知っているね?」

 

 「は、はい!私の職場体験の時にも指名を下さりました!確か元々オールマイト先生のサイドキック……」

 

 「ああ、そうだ。彼の熱意に負けてサイドキックとしてコンビを組んで5年ほど一緒に活動してた。今は訳あって不仲だが……私の死を予知したのは彼の個性だ」

 

 あ……!そうだ、サー・ナイトアイの個性は予知!詳細は不明だけど未来を見る力!サー・ナイトアイとオールマイトがコンビを解消したのは今から約5年前だから……その時にはもうオールマイト先生は自分が死ぬことを理解していたんだ……!だから、死ぬ前にデクくんという後継を見つけて育てている……!?

 

 「予知を聞いてから今までね、私は自分の死を受け入れるつもりでいた。ゴールがあればそこに向けてひた走ろうと。神野のソレが私のゴールだと思っていた」

 

 「マイトおじさま、その……デクくんには……?」

 

 「今はまだ、言うつもりはない。出来ることなら隠しておきたいんだ。彼は私のファンだから」

 

 「トシ……」

 

 それで、デクくんは呼ばずに私だけを呼んだんだ。だけど、余計に腑に落ちない。それなら、私に言う必要も、メリッサさんに言う必要もないはずだ。親友だというシールド博士に伝えるのは分かるし、大人同士の話し合いもあるだろう。まだ、受精卵から孵化したての私と、メリッサさんを呼んだ理由は何なんだろうか?

 

 「トシ、その予知……変えられないのか?」

 

 「未だかつて、彼の予知が変えられたことはないらしい」

 

 「そんな……マイトおじさまが、死ぬ?いや、いやだ……!」

 

 「すまないメリッサ、楪少女。君たちの気持ちを慮ることが出来ずにこんな話をしてしまったことを許して欲しい。だが、君たちにこれを話したことにはきちんと理由があるんだ」

 

 「……これが本題ですね?」

 

 ただ死ぬ、という話ではないことは安心した。これでたとえば死んだ後のあれこれをお願いされるのだとしたら全力で断るんだけど……どうやらそういう話じゃないらしい。そこだけは安心できる。冷めてしまった料理をよそにオールマイト先生はマッスルフォームに変身してバン!と机を叩いて深々と私たちに頭を下げる。

 

 「頼みがある!どうか私を……終わってしまった象徴、オールマイトにもう一度、生きる力を貰えないだろうか……!」

 

 「……どういうことか、聞かせてくれ。もう一度、戦うと言っているのか、君は」

 

 「そうです!もう休んでもいいんですよオールマイト先生!貴方がこれ以上傷つく必要なんて……!」

 

 平坦な声でオールマイト先生を問いただすシールド博士に、私もオールマイト先生にこれ以上戦ってほしくなくて言葉を重ねる。だって今、先生は無個性だ。残り火は消え、内臓も半壊状態、古傷は治らずたまに開く始末、喀血は日常で激しい運動には向かない体なんだ。極限状態と言っても過言ではない。ここからさらに戦うなんて自殺行為だ、私じゃなくたって誰でも止める、それが予知をしたサー・ナイトアイなら猶更。きっと彼も必死に止めたに違いない。

 

 「……おそらく私の死因はヴィランによる他殺だ。他でもないナイトアイが断言した、対峙したヴィランによって言い表せないほど凄惨な死を遂げると」

 

 「そん、な……!」

 

 「メリッサ……!」

 

 ふらり、と気が遠くなってふらついたメリッサさんをシールド博士が抱き留める。じゃあつまり、オールマイト先生はここから1年前後でヴィランに遭遇して、殺されるかもしれないということ……?戦う力を持たないオールマイト先生がそんなことになれば、殺されるのも無理はない……他のヒーローを護衛か何かにつけるべきじゃないの……?

 

 「だけどね、3人とも。私は今……生きたい。緑谷少年や、楪少女、メリッサが作る新しい平和の時代をこの目で見たいんだ。だから私は、何が何でも生き抜きたい。情けなくとも、誰かにすがろうとも……予知に抗いたい、そう決意した」

 

 「トシ……分かった。俺を呼んだということは……科学方面か。そしてメリッサに希械君……新しく君専用のヒーロースーツ、サポートメカを作れと言いたいんだな?」

 

 「そういうことなら、私も協力します。未来は確定してなんかいません、行動次第で捻じ曲げられるはずです」

 

 「私も!マイトおじさまを助けられるんだったらいくらだって協力するわ!」

 

 そうか、オールマイト先生は運命を、予知を受け入れていたけど……デクくんによってその意識は変わった。彼の存在が、オールマイト先生に生きる意志を灯したんだ。そういうことなら私たちだって協力しないわけにはいかない、もしもオールマイト先生が私たちに協力をお願いする理由が、象徴が不在になってまた社会が混乱し始めているから、という自分をすりつぶすような理由だったら断ってたけど……違った。

 

 生きる為に、明日を、未来を掴むために、力が欲しい。そういうことだったら是非とも協力しなければならない。だって、オールマイト先生は十分に頑張った、平和の象徴として長い期間君臨し、人を守り続けていた。その最後がただむごたらしく殺されるだけなんて、あんまりすぎる。報われるべきなのだ、報われなければならないんだ。その絶望の壁を乗り越えるための力が必要なら、用意しよう。今世紀最大の発明家であるシールド博士と、その娘のメリッサさん、彼らには劣るかもしれないけど機械系個性の持ち主である私……これならきっと、いいものができるはずだ。

 

 「ありがとう、3人とも……!私は必ずこの手で運命を捻じ曲げてみせる!楪少女、メリッサ……君たちが来た!と世界に羽ばたく日まで、私は生き残ろう」

 

 「これ以上言わないでくれ、トシ。お前に生きていて欲しいなんて当たり前の話だ、礼なんていらない。俺のやることは変わらない、お前のスーツを作ってたのは誰だ?俺だろう。お前が望むものは全部用意してやる。しかも今回は、頼もしいパートナーたちが二人もいる。お前の全盛期を超えるものを作ってやるさ」

 

 シールド博士の言葉に、私とメリッサさんは深く頷いた。私とメリッサさんはもう、サポートアイテムについてはプロライセンスを取っている。これがプロとしての初仕事だけど、私のやることは変わらない、作り出すだけだ。絶望の壁を粉砕する力を。プルスウルトラ、さらに向こうへ行く力を。やるぞ!うん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オールマイト先生、ありがとうございました。メリッサさんとシールド博士も、また。サポート科に顔を出しますので」

 

 「ええ、頑張りましょう!希械さん!」

 

 「トシ、とりあえずこの後お前の要望をまとめるから付き合ってくれ。メリッサは寮の方に挨拶に行ってきなさい。希械君、頼りにしてるよ」

 

 「はい!」

 

 「楪少女、突然の話を了承してくれてありがとう。近いうちにまた、話し合おう。それまでは、学業に専念して欲しい」

 

 あの後、雄英の夕食の時間を過ぎてしまったので、冷めてしまった料理を美味しく頂いた私たちはオールマイト先生の運転する車に乗って雄英に帰ってきていた。メリッサさんとシールド博士は今日届いているはずの荷物で部屋を整理するとのことなので明日明後日は学校に行かないで寮にいるのだそうだ。それなので私はオールマイト先生たちとはここで別れて自分の寮に帰ることにした。

 

 多分だけど近いうちにシールド博士にメリッサさんと一緒に呼び出されることになると思う。メリッサさんは雄英のサポート科3年生に留学という形になるから、私と一緒で学業優先になっちゃうのかな。と言っても私の個性最大の長所である機械の組み立て速度があれば試作品もブラッシュアップも思いのままなので、バンバン頼ってほしい。必要なことは何でもさせてもらいます。

 

 「大変なことになっちゃったね、ハロ。あ、紹介し忘れちゃった」

 

 『ヒドイ、ヒドイ』

 

 「ごめんってば」

 

 完成したら教えてね、と言われていた量子コンピュータを搭載したサポートAIメカ、ハロ。イオリア教授には完成したことを伝えていたんだけど、シールド博士とメリッサさんに紹介し忘れてしまった。空気を読んでくれていたのかイヤリング状態のままずっと黙っていてくれたハロの大きさを元に戻して私はあやすように抱っこする。そのまま玄関のドアを開いて寮の中に入った。

 

 「ただいまー、みんなお疲れさまでした~」

 

 「あ~~っ!希械ちゃんやっと帰ってきた!三奈ちゃんが寂しがってたぞ!もう寝ちゃったけど!」

 

 「あ、ごめんね。透ちゃん、起きてたんだ」

 

 「うん、見たいドッキリ番組がやってたの!」

 

 「あ、楪さん。オールマイトに呼び出されてたけど……どうしたの?」

 

 「デクくん、うん。実はね……空港にメリッサさんとシールド博士を迎えに行ってたの!何と二人、雄英にくるんだって!」

 

 「ええっ!?それは凄いね!」

 

 共用スペースでテレビを見ていた透ちゃんがソファを乗り越えて此方にやってくる。ごめんね~、反省会する約束だったんだけどブッチしちゃって。すりすりと私にすり寄る透ちゃん、かわゆい。ハロを落として透ちゃんをなでなで、足元からハロの抗議の声が聞こえるけど今はこっちの方が大事、ああ、癒される~。拗ねたハロは跳ね回って一緒にテレビを見てたお茶子ちゃんの膝に着地する。フフフ、と笑ったお茶子ちゃんが掌でハロを撫でている。

 

 お風呂上りらしいデクくんが髪をふきながら共用スペースに入ってきて、私が呼び出された理由を尋ねてくる。うーん、デクくんも入学時よりだいぶがっしりしたね、ナイス腹筋シックスパック!顔と体のバランス凄いよ、まあえーくんにはまだまだ遠く及ばないけど!だってえーくん硬化しなくても筋肉だけで鋼レベルに硬いし……。

 

 実はメリッサさんとシールド博士が雄英にくるんだ、という話をしたら共用スペースにいてテレビを見ていた他の人は大盛り上がりだ、なんせI・アイランドの事件では事件にかかわった人だけじゃなくて1-A全員がI・アイランドに入島していたので全員メリッサさんと面識がある、なので大盛り上がりだ。ヒーロースーツについて聞いてみようという話も出ている。

 

 「そっか……オールマイト、僕も連れてってくれればよかったのに」

 

 「あはは、私を呼んでほしいってシールド博士がいったみたいで。色々話してきました」

 

 「もしかしてI・アイランドの最新サポートアイテムの話!?」

 

 「うーん、どっちかというと研究発表会というか私の進捗状況の共有というか……」

 

 デクくんにオールマイト先生の死期の話をするわけにはいかないのであらかじめ車の中で4人で示し合わせていたカバーストーリーを展開して誤魔化す。ごめんねデクくん、貴方に秘密を持つことになっちゃったけど、オールマイト先生はいつかきっとあなたにも話してくれると思うから、それまでは私は話せません。

 

 「あ、青山くん。明ちゃんからネビルレーザーについての……」

 

 「あ、ありがとうレディ☆明日聞いてみるよ、僕はこれで☆」

 

 「あ、行っちゃった……」

 

 うーん、おかしいなあ。圧縮訓練の時から青山くん、私を見ると挙動不審になってるんだよね。私と遭遇すると一瞬固まるし、視線は左目に行くし。もしかして、目がなくなっても生えてくるのが気持ち悪いとかそう思われちゃってるのかな?いや、ありえるな。だって再生するといえば脳無で、脳無と言えばUSJで私たちに少なくない心理的ダメージを与えてる。きっと同じように見えちゃってるんだね。彼の心の傷がいえるまで、私は少し距離を置くことにしよう。寂しいけど、仕方ない。

 

 「あ、私お風呂入ってくるね。皆も早めに休むんだよ~」

 

 「峰田ちゃん、希械ちゃんが出てくるまでソファから離れちゃだめよ。さもなくば切島ちゃんに通報するわ」

 

 「ええい離せ梅雨ちゃん!男の夢がそこにあるんだ!ビッグボインがオイラを待っているんだ!」

 

 「ビ、ビッグボイン……」

 

 み、峰田くんが私の胸部に穴が開くほどの視線を注ぎながらソファから立ち上がろうとするのを梅雨ちゃんが舌で叩いて止めて、瀬呂くんがテープでぐるぐる巻きにする。まさかストレートにそんなことを言われるなんて思ってもいなくて思わずオウム返ししてしまう。うう、大きいのは分かるんだよ実際大きいもの。だけどその、恥ずかしぃ……あぅ、デクくんまでも……。

 

 「デクくんのえっち」

 

 「えっち!?待って楪さん誤解だから!弁明させて!お願いだから!」

 

 両胸を手で掻き抱いた私がデクくんに一言文句を言ってからお風呂に突入する。後ろから必死で声をかけるデクくんだけど、今回はがっつり見てたねデクくん、男の子だね。まあ峰田くんのように覗いたりとかそういうことはしないと信じてるよ。それに話題に上がってつい見ちゃったんだよね、そういうことにしておこう。私は真っ赤になった顔で、洗面所でしゃがみ込みながら深呼吸をするのだった。

 

 




 意外とそういう目で見られるのは恥ずかしい楪ちゃん。他意がなければ平気。そしてとばっちりの緑谷君、かわいそうに。

 オールマイトはここから3人の技術力により超絶強化されます。まあいざという時のための備えなので最終決戦時の「私が来た!」まで封印されますが。たとえ強化されても全盛期には及ばないだろうし。全盛期オールマイト怪物過ぎる。


 では感想評価よろしくお願いします。

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