個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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72話

 「ご迷惑おかけしました!」

 

 「デクくんオツトメご苦労様―」

 

 「緑谷何息巻いてるの?」

 

 「この3日間でついた差を取り戻したくて!」

 

 ふんす、と鼻息荒く朝のホームルーム前にみんなに頭を下げて回るデクくん、もう、ホントだよ~?始業式含めて3日経ったんだけど、毎日毎日座学も訓練も新しいことのオンパレードで1学期より濃ゆいの、色々と。これでB組から聞いた話だとB組との合同授業も増えていくんでしょ?1日だけで凄い置いて行かれるわけで、そのもどかしさを3日間デクくんは味わったというわけ。

 

 それは鼻息荒くもなるよ、と私は一人うんうんと頷きながら、ホームルームが近いので響香ちゃんの机の上で彼女に遊んでもらっているハロを呼び戻した。私に呼ばれたハロは机と地面を撥ねて、私の机の上にやってくる。遊んでもらえてよかったね、ハロ。それからすぐ、時間ぴったりで相澤先生が教室に入ってくる。一瞬でみんな席について静かになった。

 

 「じゃ、緑谷も戻ったところで、本格的にインターンについて話していこう。入っておいで」

 

 単刀直入という言葉がとてもよく似合う要点だけしかないホームルームを始めた相澤先生がドアの外に声をかける。誰かいるのかな?建付けのいい教室のドアが開いて3人の人が中に入ってくる。金髪でとってもガタイがいい人と、黒髪で三白眼の人、そしてとってもきれいなツイストがかかったロングヘアの女の人だ。

 

 「あーーーーーっ!天喰先輩!?」

 

 「えーくんどうしたの?知り合い?」

 

 「そうなんだよ!ファットガム事務所にいた先輩!すっげえ良くしてくれてるいい人なんだぜ!」

 

 「一部知り合いがいるようだが、彼らは通称ビッグ3、雄英ヒーロー科のトップに君臨する3人だ」

 

 へー、えーくん知り合いなんだ。ニコニコと笑顔を向けるえーくんに天喰先輩と呼ばれた黒髪の人の表情が若干緩む、えーくんのコミュ力にかかれば先輩とも仲良しになれるらしい。しかし雄英でトップの3人かぁ……あれでも去年の体育祭とかで見た顔はいないし……現場で輝くタイプなのかな?

 

 相澤先生から軽く自己紹介をする様に言われたビッグ3、天喰先輩と呼ばれた人がこちらをギンッ、と一瞥する。おお、迫力満点だ。クラス中が彼に気圧されてしまっている。爆豪くんがいたら反発して襲い掛かってたかもしれないね。

 

 「ダメだ……ミリオ、波動さん……どう頑張ってもみんな人間のままだ……言葉が出ない、頭が真っ白……辛い……帰りたい……!」

 

 え、ええ~~~?えーくんが苦笑しているところを見るとどうやら天喰先輩はとっても小心者というか、人前があまり得意なタイプじゃないようだ。アングラヒーロー目指してるのかな?相澤先生みたいに。最終的に黒板に額をつけて私たちに背を向けた先輩に私たちは如何したらいいか分からなくなる。代わりに一歩前に出てきたのは唯一の紅一点の女の人だ。

 

 「あ、聞いて天喰くん、そういうのノミの心臓って言うの!知ってた?人間なのにね。ね!不思議!えーっと、彼がノミの天喰環で、私は波動ねじれ!今日はインターンについてみんなに説明して欲しいって言われて来ました!」

 

 波動先輩っていうんだ……!そう思ってたら波動先輩の口から出てくるのはインターンについてではなく私たちの外見というか気になったところをマシンガンのように次々と質問として飛ばしてくる。答えを言う暇もない、教壇を降りて尾白くんの尻尾触ったり、色々やっている。そこで彼女が目を付けたのは机の上でコロコロ転がっている私のハロだった。

 

 「わ、わ、かわいー!何それどこに売ってるの?勝手に動いてるよね、どうなってるの?」

 

 「……合理性に欠くね?」

 

 とりあえずハロを波動先輩に渡してあげているとユラァ、と個性を発動させて髪の毛を逆立てた相澤先生が残ったもう一人に声をかけていた。それにあせあせとして大丈夫、大トリは俺なんだよね、という言い訳を重ねている金髪の男の人が前に出た。

 

 「前途ーーーーー!?」

 

 しーん

 

 「多難ーー!!!よーし掴みは大失敗だ」

 

 い、威厳ないなあ3人とも……!ギャングオルカとまではいかないにしろこう……オーラというかそういうものがあまり感じられない。えーくんだけは天喰先輩の実力を知っているからなのか尊敬の視線を注いでるけど、実際がどうなのか分からないので私たちも如何したらいいかわからない。景気よくコール&レスポンスにのればよかったのかな?マイク先生の授業みたいに。

 

 「まぁ何が何やらって感じだよね……ふむ、よし!じゃあ君たちこのまま俺と戦ってみようよ!俺たちの経験を、その身で体験したほうが分かりやすい!」

 

 「……好きにしろ」

 

 えーーーーーーっ!?結局自己紹介してないよ!?金髪の男の先輩に言いくるめられた相澤先生はあっさりと戦闘許可を出してしまう。ジャージに着替えて体育館へといった相澤先生はあっさりと教室を出て、ビッグ3もそれに続いてしまう。私たちは顔を見合わせて、ジャージを取り出すのだった。

 

 

 「あの、マジすか」

 

 「マジだよね!」

 

 通形ミリオ、と体育館で自己紹介した金髪の先輩は姿勢よく準備運動をしながら本当にやるのかという瀬呂くんにホントにやるよ、と答えている。んー、でも私も現3年生トップの実力を味わえるなら是非ともという感じなのでやる気自体はないわけじゃない、だけど全員かかっておいで、という通形先輩の言葉にムッときている人は多い。

 

 「えーくん、どう思う?」

 

 「強いと思うぜ。結局俺は職場体験じゃ一回も天喰先輩に勝てなかったし、その天喰先輩が強いって言ってるのが通形先輩だろ?舐めてかかったらヤバいんじゃないか?」

 

 「なるほどね……」

 

 若干前のめり気味なみんなが前衛と後衛に分かれて一人で私たちの前に立つ通形先輩に相対する。これちょっとまずいな……若干みんな緩んでる。通形先輩の挑発じみた行為と袋叩きにできるという安心感、そして直近で仮免許を取ったことによる自信が悪い方向に噛み合いだした。幸い私の隣にいるえーくんは天喰先輩の強さを知っているから、天喰先輩が認める通形先輩に対してかなり警戒モードだ。ありがたい。

 

 「我々はハンデアリとはいえプロとも戦っている……ヴィランとの戦いも経験済みです」

 

 「先輩!俺らそんなクソザコじゃないっすよ!」

 

 「うん!いつどこから来てもいいよね!一番手は誰だ!?」

 

 「僕、行きます」

 

 おお、一番手はデクくん!朝からやる気がみなぎっていたと思ってたけど、ここでもそうみたいだね。えーくんは一番手行きたかったみたいだけどやる気がフルマックス状態のデクくんに気圧されて譲ることにしたみたい。私はとりあえず様子見、という感じで腕から機関銃を展開しておく。今回は後衛かな~?

 

 「じゃあ、先輩!ご指導ご鞭撻のほど」

 

 「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」

 

 みんなの挨拶と同時にデクくんがフルカウルを身にまとって蹴りを入れに行く。何でもデクくん許容上限が上がって12%までなら無傷で使えるんだって!すっごいね~!対する先輩は……えっ!?

 

 「はっ!?は、は、は……はぅぅ~~~!?」

 

 「服脱げた!?」

 

 「あ、ああごめんごめん!調整が難しいんだよね!」

 

 デクくんの蹴りが当たる瞬間に、はらりと先輩のジャージが体を貫通するように地面に落ちる。局部は何とか手で隠してくれたけど、初対面の先輩、それに男の人のフルヌードを見てしまった私含め女子から悲鳴ともとれる叫び声が上がる。上半身まではえーくんで慣れっこだったけど下半身は想定外で、真っ赤になって蒸気を噴出する私と突っ込むえーくんという凄い絵面が出来てしまった。

 

 「隙、だらけ!」

 

 「顔面かよ」

 

 いそいそとジャージのズボンを履く通形先輩にデクくんの蹴りが突き刺さり、体ごとすり抜けた。そうか、すり抜ける個性……物理攻撃無効は私にとってはかなり鬼門だな……!遅れて遠距離攻撃持ちの後衛の攻撃が先輩に降り注ぐ、当然私の機関砲も。だけど……直撃の瞬間に、先輩はまたズボンを残して、地面の中に落ちるように姿を消した。地面もすり抜けるのか!

 

 「まずは遠距離持ちだよね!」

 

 「後ろ!?」

 

 声がした方向、真後ろに体ごと向き直ると響香ちゃんの後ろに裸の先輩がワープするかのように出現していた。そしてそのまま、響香ちゃんのイヤホンジャックを掴み、上鳴くんと一緒に響香ちゃんごとぐるぐる巻きにして拘束してしまう、そこからさらに5秒かからず、クラスの遠距離攻撃を持つ後衛のみんなのお腹に拳を突き入れて行動不能にしてしまった。全部みぞおち狙いでなんて正確な……!そして私の眼前にまたワープするように迫ってくる。

 

 「ここっ!」

 

 「なんの!必殺ブラインドタッチ目つぶし!って痛っ!?」

 

 ワープのタイムラグを計算していた私が眼前に現れるであろうことを予測して迎撃にかかると、それすらも予測されていたのか目つぶし攻撃を受けた。透過する手による目潰しだけど、今の私は両目とも機械、たとえ狙撃用のライフル弾が直撃しても平気な機械の目だ。目を瞑ることすらなく先輩を捕まえにかかる、がすり抜ける。その隙にみぞおちにパンチを貰う、けど展開したピンポイントバリアが先輩のパンチを完全に防ぐ。実体があるときとない時があるね……!えーくんなら攻撃受けても大丈夫そう。

 

 「いい機会だからしっかり揉んでもらえ。通形ミリオは俺の知る限り、プロも含めて最も№1に近い男だ」

 

 「あとは近接主体ばかりだよね!」

 

 「もうちょっと情報欲しい……えーくん、耐えれる?」

 

 「任せろ!」

 

 何したのかさっぱりわかんねえ、という砂藤くんの叫びには同意だ。攻撃自体はシンプルなもの、だけど……移動手段が全くの不明。すり抜けるかワープの二択が最有力だけど……ワープの場合はどうやって実体を失くしているかが分からない。一部だけ別の場所に飛ばしてるとか、私たちの攻撃を飛ばしてるのかどっちだ?いやさっきの接触時私に違和感はなかった。すり抜けるほうかな?

 

 こういう時に頼りになるのがデクくん、なんだけど彼が立てた予測を上回られた。カウンターのカウンター、さっき私がやられたやつだけどキレが段違い。けどデクくんもさるもの、私がさっきカウンターを入れられるのを見てたおかげでガードが間に合っている。12%の超パワーなら掠っただけでもパンチ程度なら逸らせるだろう。

 

 デクくんを後回しにすることにしたらしい通形先輩はそのまま地面に落ちるように消えて、今度は飯田くんの真後ろに出現、そのままお茶子ちゃんや砂藤くんといった近接主体のみんなをみぞおちパンチで次々行動不能にしていく。えーくんが全身を硬化させて現れた先輩の攻撃を無視してパンチを叩き込もうとするが、それも透過してしまう、がバンッ!と音を立ててえーくんと先輩が弾かれあった。接触時に実体を取り戻すと弾かれる?いい感じに情報が集まってきた……!

 

 「んだよこれ……!」

 

 「残ったの僕たちだけか……!」

 

 「よし、いけそう。そろそろ反撃しよう3人とも。先輩、覚悟!デクくん、これ付けて!」

 

 「やれるものならやってみるといいんだよね!」

 

 デクくんにフルガントレットとフルグリーヴ、改修前のそれを渡して付けてもらう。無敵化とも思える凄い個性、だけどこの仮説が正しければチャンスを作り出すことができる!先輩が個性を使って床に潜る……今!

 

 「デクくん!割って!」

 

 「スマァッシュ!」

 

 「なに!?」

 

 「うらあああっ!」

 

 私の指示を疑わなかったデクくんが引き出した40%ほどのワンフォーオールでの踏み付けが先輩が潜った地面を割る。その瞬間、先輩が空中にはじき出されるように出現した。デクくんが地面を割ると同時に走り出していたえーくんのタックルが先輩を捕らえて引き倒す、瞬間にまたすり抜けて、先輩は近くにあった百ちゃん製の拘束用ロープでえーくんをぐるぐる巻きにしてしまう。ダメか!

 

 「確定だね、すり抜けるほうが個性だと思う。さっきのえーくんみたいにすり抜けたままで実体を取り戻したら弾かれるんだ。ワープは地面に弾かれてた」

 

 「そうか、それで地面の形を変えればワープの出現先が変わるんだ!」

 

 「それと、先輩……発動中は呼吸を止めてる。それがおそらく発動条件、それなら……飽和攻撃で呼吸させないようにすれば、スタミナ切れでこっちが勝てる」

 

 超圧縮されたボックスを解放してエスカッシャンとホルスタービットを出して空中に浮遊させる。そしてデクくんが両手の20%でパンチを連打し空気の砲弾を先輩に向けて連射する。先輩はそれににやりと笑うと、半分だけ体を地面に埋めた。

 

 「必殺……ファントム・メナス!」

 

 「ぐっ!?」

 

 「うあっ!?」

 

 目で捉えても反応できなかった。ランダムワープによる錯乱で狙いを逸らされた私たち、デクくんと私はお腹にパンチを受けて崩れ落ちる。こ、このパンチいった~~!?えーくんの鉄拳に匹敵するよ!?崩れ落ちた私たちを最後に、A組vs通形先輩の戦いは、通形先輩の勝利で終わってしまうのだった。




 さり気にデクくんが強化。常時8%ではなく常時12%です。理由としてはフルガントレットのおかげで毎日100をぶっぱできるからですね。100%を恒常的に使い続けたことにより許容上限が上がりました。

 そしてやっぱり強いミリオ先輩。ではまた次回。感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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