個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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73話

 「ぎりぎりちんちんは見えないようにしたけどごめんね女性陣!とまぁこんな感じなんだよね!」

 

 「いや、こんな感じって言われても……」

 

 「訳も分からず全員腹パンされただけっすよ……」

 

 ケロっとしている私とえーくん以外の全員がお腹を押さえた状態で通形先輩に文句を言う。痛いには痛かったけど、脳無のパンチと比べたらなあ……あれで胃が破れてたらしいし。痛覚鈍くて助かりました。それで、通形先輩の宣言通りに全員でかかって負けちゃったわけだけど……いや凄いな通形先輩。少なくとも私たちもそれなりに自信はあった、だけどあっさり上回った。

 

 「でも正直予想外だったんだよね!俺の個性、完璧に解析されちゃったし!必殺技まで使わされた!」

 

 「あの個性強すぎッス!」

 

 「ずるいや!私のことも考えて!」

 

 「あっはっは!俺の個性は楪さんが解析した通り「透過」!ワープはその応用なのさ!」

 

 デクくんから返してもらったフルガントレットとフルグリーヴをパリポリと食べているとそれをみた波動先輩がねえねえ美味しいの!?と聞いてくる。私はいつも通り美味しくないけど素材回収のために食べてます、と返した。通形先輩の個性は発動するとあらゆるものをすり抜ける。空気も、光も、振動も、地面すらも。取捨選択ができない個性だ。発動条件は呼吸を止めることではなくて、そもそも呼吸できなかったんだ。

 

 「緑谷君が地面を割った時、俺が飛び出してきたのはワープのために姿勢を固定して地面に弾かれようとしてたら、地面の形が変わってワープの出現先が狂ったってわけ!そもそも俺のワープのタイミングに合わせてそんな対処されたのは初めてだったけど、俺は彼らに戸惑うことなく対処することができた!なぜだと思う?」

 

 確かに気になる話、デクくんが地面を割ってワープを防がれた時通形先輩はかなりの驚愕の表情をしていたけど、よどみなく体を動かしまるでそれが作戦のうち、想定内だったとでも言わん動きで私とデクくんを制圧して見せた。超圧縮したエスカッシャンとホルスタービットをボックス状に戻してポケットの中に仕舞いながら首をかしげる。皆も答えは見えない様子。

 

 「答えは経験!回りくどくなってしまったけど、これが君たちと戦った理由でもある!言葉よりも経験で伝えたかった!俺はインターンで培った経験をもとに、楪さんと緑谷君の次の動きを予測して、予想外のことが起きても落ち着いて対処できた!」

 

 通形先輩は続けてインターンでは仮免許を取った人はお客ではなく一人のサイドキックとして扱われる、つまりそれはプロとして扱われるということで、時には人の死にも立ち会う恐ろしいことも起こるという。だけど、それよりも学校じゃ決して手に入らない一線級の経験を得ることができると言った。確かにそうかもしれない、だって実戦だ。私たちが否応なしに戦ったヴィランとの戦いは訓練よりも大きく私たちを成長させた。それを意図的に行えるインターン、経験を積めないわけがない。

 

 「俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!なので!怖くてもやるべきだと思うよ1年生!」

 

 そう私たちに教えてくれる通形先輩、彼の熱いヒーローへの思いが伝わってくる。これは私も俄然やる気になってきたな。というか絶対やる!やらねばならない!ここでやれねば女が廃る!相澤先生に促されて教室に帰る道すがら、私は決意を新たにするのだった。

 

 

 

 

 「楪、ちょっといいか」

 

 「ん?どうしたの轟くん」

 

 「付き合ってほしい」

 

 「ふえっ!?」

 

 ざわっ、と教室内に緊張とざわつきが走る。授業後の教室、寮に帰る準備をしていた私の所にやってきた轟くんがそんなことを言うので私は顔から蒸気を吹きだす程に真っ赤になってフリーズしてしまう。あの峰田くんですらフリーズするほどだ、轟くんのその言葉の威力は押して知るべしだろう。お付き合い?お付き合いって言った!?あの轟くんが!?私に!?悪いものでも食べた!?それとも個性!?

 

 「あー……轟、主語入れて言ってみろ」

 

 「?楪に訓練に付き合ってほしいって言った」

 

 「なんだー……」

 

 「何時もの轟かー」

 

 「希械ちゃんご愁傷様~。轟も勘違いさせるようなこと言わないであげてね」

 

 「???俺なんかヤバい事言ったのか?」

 

 もういいよ!私の心を弄んだんだね轟くん!とまあ冗談はそのくらいにしておいて、えーくんが轟くん全部言えって言ってくれたおかげで教室の変な空気が発散された。いやー、私なんかにお付き合いの申し込みをする人なんていないし、こんな女を好きになる人もいないからね!言ってて悲しくなってきた、ぐすん。でもいいんです、メカだもの。それで、訓練に付き合ってほしいってどういうことなんだろう。

 

 「今日でいいの?」

 

 「ああ、演習場抑えてある。楪じゃねえとダメなんだ」

 

 「……狙ってやってる?」

 

 「何をだ?」

 

 あー、轟くんのド天然は今日も絶好調だね~。私じゃなかったら女の子勘違いしちゃうよ?凄いよ、ある意味こんな意味深というか、思わせぶりなセリフを無意識に言えるって。ほら、お茶子ちゃんなんか真っ赤っかだよ?あと透ちゃんも透明だけど凄い楽しそうな顔してるね?

 

 気になるというえーくんとデクくんも一緒にトレーニングにくることになって、轟くんが抑えてくれた演習場に一緒に行く。炎熱あるいは氷結系の個性用に用意された耐熱フィールドだ。轟くんが全力を出せる場所だね、それで、何をしてほしいんだろう?とジャージに着替えた私たち、轟くんが前に出る。

 

 「見ててくれ」

 

 ジャージの上を脱いだ轟くん、半袖の体操服姿で左拳を引く、するとあたりの熱が一気に急上昇しだす。これは轟くんの個性だ、けど、いつもと違う。発動したら噴き出すはずの炎が見当たらない、全部轟くんの体の中、特に左腕に集中している。見覚えがある、これは……!

 

 「赫灼、熱拳……!」

 

 「エンデヴァーのやつか!」

 

 「うっ……!」

 

 最高潮に高まった熱が放出される!というところで、制御を失ってしまったらしい轟くんの左拳から爆発するように圧縮された熱が噴出した。無差別に飛び散る炎と熱が吹き荒れる、それが終わったところには悔しそうな顔をしている轟くんが佇んでいた。

 

 「……成功しねえんだ。クソ親父に頭下げて教えてもらった。力が足りなかったなんて言い訳したくねえ……なのに」

 

 「ああ、だから楪さんなんだ!」

 

 「なるほど、赫灼熱拳習得のお手伝いをしてほしいってこと?やるよ!やるやる!」

 

 「ああ、頼む」

 

 赫灼熱拳、エンデヴァーをナンバー2に押し上げた超必殺技だ。その極意は個性の熱を貯めて貯めて、臨界点ギリギリまで圧縮したのちに……1点で放出すること。私は職場体験で熱の圧縮を教わったけど、轟くんはどうやらエンデヴァーに赫灼熱拳そのものを教えてもらったらしい。ただでさえ強い轟くんに赫灼熱拳が合わさるとか凄いことだよ!私もうかうかしてられないなあ……。

 

 「んでもよ、轟。どうして急にエンデヴァーにそれ教えてもらったんだ?詳しくは知らねーけど、お前多分エンデヴァーの事嫌いなんだろ?」

 

 「……林間合宿、知らねえ間に楪攫われて、結局目の前にいた爆豪も助けられなかった。あんな思い2度とごめんだ、そうならないために親父に頭下げるくれえ、なんてことねえ」

 

 「……悪ぃ、聞くまでもなかったな」

 

 あ、ああ~~!気まずい~~~!ごめんごめんね轟くん!私がまんまと攫われちゃったせいで嫌いなエンデヴァーに頭下げさせるような真似させちゃって……!こ、これも私のせいならば、お手伝いするのが筋というもの!デクくんが頑張ろう!と轟くんに声をかけて、轟くんもさっきまでの悔し気な顔を収めて穏やかに返している。とりあえず、さっき見せてもらったのを解析すると、圧縮、蓄積まではうまくいってるんだけど、一点での放出を失敗してる状態、だよね。

 

 「轟くん、それ、右でやれない?」

 

 「右でか?」

 

 「うん、氷結の方が使い慣れてるでしょ?多分赫灼熱拳と同じ要領で行けると思うの。冷気を圧縮して、蓄積、そして放出!エンデヴァーは熱のほうしか教えられないけど、使い慣れてるほうでやったら成功しそうじゃない?」

 

 「やって、みる」

 

 視界を切り替えてサーモグラフィーを中心とした物にして、再度構えに入る轟くんを見つめる。ピキピキ、とさっきとは左右逆の構えになった轟くんの右手に霜が降りて、ぐんぐんと温度が下がっていくのが分かる。さっきの炎熱の場合に比べて圧縮と蓄積がかなりスムーズだ。やっぱりやり慣れてるものが一番ってことだよね。轟くんが右手を突き出して、臨界ギリギリまでため込まれた冷気を発射する。炎熱のように暴発することもなく、拳の一点から発射された冷気はまるでビームの様にまとまって、着弾点に氷の華を咲かせた。

 

 「すっごい!威力全然違うよ!流石にアレ貰ったら私でも動けなくなっちゃうかも!」

 

 「……成功、した」

 

 「おお、さすが才能マンだぜ轟!俺も負けてられねえ!」

 

 「やったね!轟くん!」

 

 まさかまさかの一発成功に沸く私たち。エンデヴァーが教え上手ってのを加味しても、一発で成功させるのは流石轟くんと言わざるを得ない。そして、多分これ私いらないやつだね?頼ってもらえたのに何もできてなーい、くやしい。それはともかくとして、赫灼熱拳の氷バージョン、名前は轟くんにお任せするにしても、これでエンデヴァーみたいに冷気を噴出して移動したりとか、冷凍ビームとか撃てるようになったら轟くん滅茶苦茶強くなるよね。

 

 「ああ、楪……ありがとう」

 

 「んー、私は何にもやってないけどね。でも右が出来たってことは、左もできるってことだ!頑張ろう!轟くん!」

 

 「おお」

 

 レッツ赫灼!と手をあげた私に付き合ってくれるえーくんとデクくん、それに見様見真似で便乗する轟くんという構図で、私たちは轟くんの赫灼熱拳習得に向けて、作戦会議を始めるのだった

 

 

 

 

 「絶凍氷拳って名付けたそうですよ、氷結版赫灼」

 

 「はは、轟少年も中々いいネーミングセンスをしてるね」

 

 通形先輩にボコボコにやられた翌日の事、私は始業前の時間を利用してオールマイト先生に相談をもちかけ、仮眠室に一緒にお邪魔していた。というのもインターンのお話で、行きたい場所が出来たからそのことについてオールマイト先生に相談に乗ってもらうためだ。昨日のことについて雑談から入っていると暖かいお茶が入った湯飲みを傾けるオールマイト先生は楽しそうに聞いてくれる。この人、とっても聞き上手だよね。流石はナンバーワンヒーロー!

 

 「で、本題なんですけど。インターンについて、私行きたい事務所がありまして」

 

 「ふむ、その前にだ楪少女、一応だが私の立場はインターン反対派だ。朝のホームルームで説明があるだろうが、1年生のインターンは受け入れ実績が多い事務所に限り認めることになった。けど私としてはもう少し必殺技に磨きをかけてからでもいいんじゃないかと思ってるんだ」

 

 「認めてはもらえるんですね。行きたい事務所って言うのは……サー・ナイトアイの事務所なんですけど……」

 

 「ナイトアイ?通形少年がインターンしてる所だね。どうして?」

 

 

 そう、私が行きたい事務所って言うのはサー・ナイトアイの事務所だ。理由としては一つ、通形先輩がやった経験則からの予測をものにするため。私のデジタルな予測は予想外の事態に弱いので、経験則での予測と両立させて先読みとして機能させたい。あと、教えてもらったんだけど通形先輩の複雑な工程が必要になる透過の個性の制御を教えたサー・ナイトアイなら、私一人でのオールレンジ攻撃の操作について何かしらヒントを貰えるかもしれない。そうすれば、ハロと一緒に2人分の操作が可能になってより強くなれると思う、という話をオールマイト先生に言うと彼は成程、と納得してくれた。

 

 「ちょうど私はサー・ナイトアイから体育祭での指名を戴いていますし、コネクションはあると思います」

 

 「いいと思うよ。もしかしてそれが私に相談を持ち掛けた理由かい?私の許可なんていらないよ、それは」

 

 「いえ、もう一つありまして。サー・ナイトアイにオールマイト先生の死の予知を詳しく教えてもらおうと思っているんです。なのでそっちの方の許可が欲しいんです。貴方が抗うと決めたということを、彼に伝えていいか、と」

 

 インターン先についてはいろいろ考えたけど、条件に合致してる事務所は二つ、ウィングヒーロー、ホークスの事務所とサー・ナイトアイの事務所の二つで、ホークスの所で職場体験をしていた常闇くんにお話を聞いたところ、ホークスよりもサイドキックとの活動が多かったという話を聞かせてもらったので、サー・ナイトアイのほうにしようかなと思ったんだ。それで、思いだしたのがサー・ナイトアイの個性で予知されたオールマイト先生の死期の話。私にとってはどっちも大事なので、両方を取ることにしました。強欲でごめんなさい。

 

 「……どうして、と聞いてもいいかい?」

 

 「ええ、端的に言えば対策を立てます。サー・ナイトアイからの情報を元に設計段階から貴方が対峙するであろうヴィランにメタを張ります。直接お話するのは気まずいと仰ってらしたので、私から聞いた方がいいかと」

 

 「分かった。正直言って彼には会わす顔がないんだ。結局私は、彼の言う通りの道を進んでいる」

 

 「ありがとうございます。でもきっと、話したらサー・ナイトアイの方から連絡があると思います、だから」

 

 「ああ、その時は彼ときちんと向き合おう。気まずい役目を押し付けて済まない、楪少女」

 

 サー・ナイトアイの件について、やはりかなり気に病んでいるらしいオールマイト先生は、私がサー・ナイトアイに事情を説明することを許してくれつつ、深く頭を下げてきた。私はそれを慌てて止める。だって、私がやりたくてやってることだから、この人に謝られる理由なんてない。笑顔でいて欲しい、それだけなんだから。




 轟くん、前倒しで赫灼熱拳習得へ。氷結版も習得。燐の3歩くらい手前ですかね。強化強化。そして楪さんのインターン先はサー・ナイトアイです。

 ではまた次回 感想評価よろしくお願いします

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

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