「1年生のインターンですが、昨日協議した結果多くの先生がやめとけという意見でした」
「えー!あんな説明会までして!?」
「ざまァ!!!!!」
朝のホームルームにて、相澤先生がインターンについての説明を始めた。昨日の説明会の趣旨に反して、朝オールマイト先生が言ったように反対派の人が多いみたい。全寮制になった経緯からしてもそれは自然な流れだろう、復帰した爆豪くんは自分が参加できないまだ先の話が潰れたと知って、何とも言えない声をあげている。喜んじゃダメな奴だよ?
「が、今の方針じゃ強いヒーローは育たないという意見もあり、1年生のインターンについては受け入れ実績が多い事務所に限り許可をするという結論に至りました」
「クソが!!」
「爆豪くん、どうしたの?情緒不安定だよ?」
「不安定じゃないわかつてないほど安定しとるわクソが!」
「わー、いつも通りの爆豪くんだ」
爆豪くんのご機嫌急降下があまりにもすさまじいので後ろから声をかけるといつも通りに反発してくれてなんか安心する。いや反発するかどうかを爆豪くんの健康のバロメーターにしちゃうのもおかしいとは思うんだけどね?さてさて私はさくっとサー・ナイトアイの事務所にアポイントを取っておこうかな。必要書類に関しては朝オールマイト先生にもらったところだし!
あ、でも授業後の方がいいのか。幸い今日はサポート科のお手伝いもゴミ拾いも何もないとても平和な日なので、急用が入らない限り私はお休み!メリッサさんとお茶会でもしたいなあ。メール送っておこうかな?それともA組女子皆を誘ってもいいかも。百ちゃんのお茶と私のお菓子で!うーん、楽しそう!でも、それよりもインターンだ。頑張るぞ!……ちゃんと話せるかな、私そこに関してだけは今だにプルスウルトラしてない気がする。ぐすん。
「すー、はー……よし!」
授業後、自室にて私はスマートフォンを前に正座していた。一応相澤先生にはサー・ナイトアイの事務所にアポイントを取ることは説明していて、相澤先生も私ならば行ってよしという答えを貰っている。私ならばってどういうことなのかわかんないけど、よろしいということならそれでいいかな。
事務所の電話番号を入力して、あとワンプッシュでかかる、というところで怖気づく私、かれこれ3回目。だって、その……こういうの苦手なの!サー・ナイトアイって厳しい仕事で知られているしちょっとでも失礼なことしたらどうなるか……!うう、こわいよぅ……!あっ!手が滑った!
『はい、こちらサー・ナイトアイ事務所のセンチピーダーが対応させてもらいます』
「お、お電話失礼します!雄英高校ヒーロー科1年A組の楪希械と申します!この度はインターンのお願いをしたくご連絡をさせてもらいました!」
『楪希械、ああ!ナイトアイが一票入れてましたね。分かりました、ナイトアイに変わりますので少し待っててくださいね』
電話が保留に切り替わって、30秒ほど立つ。な、何とか今のところは失礼のないように出来てる……よね?そして保留状態の電話が通話状態に切り替わる、正座したまま背筋が限界までピンッて伸びてしまった。あっ、胸元のボタン飛んだ……。後で付け直さないと。それよりも今はインターン!
『もしもし、楪希械だな?私はサー・ナイトアイ。この事務所の社長をしている。インターンを申し込みたいという話だったが』
「はい!昨日通形先輩とお手合わせさせていただきました!そこでお話を少し聞かせて頂いて、開発した必殺技の強化及び実戦の経験を積ませていただきたいと思っております」
『ミリオから聞いている。一杯食わされて個性の詳細まで見抜かれたとな。分かった、時間を取ろう。週末、ヒーロー科の休日、午前7時に私の事務所にくるように。面接をする』
「ありがとうございます!」
『では、待っている。ヒーロースーツは持参してくること』
ブツッと電話が切れる。こっこっ……怖かった~~!!相澤先生とはまた違う厳しさを覚える声だった!でも、面接をしてくれるって!まだ受かってないけど、電話口でにべもせず断られてたら私の心はぽっきりとダメージを受けてたけどそういうことが無くてよかった~~!
「やった~~!」
思わずもろ手を挙げて万歳して喜ぶ、その瞬間、さっき外れたボタンのみならず、制服のシャツのボタンが上から3つパンパンパン、と弾けて外れてしまった。しまった、完全に手加減を忘れていた。ぐすん、最近ブラジャーが若干きついな、と思っていたんだけどやっぱり太った?いやでも腰回りの計測は大丈夫だし……あ、お尻と胸が大きくなったのか。うん、結局太ってるね。なんでぇ?
しくしく、と気分が完全に落ち込んでしまった私はシャツを脱いで、上だけ下着姿のまま机の引き出しからえーくんのお母さんに頂いた誕生日プレゼントの裁縫セットを取り出して、地面に飛んでいったボタン4つを全部集める。そしてそのまま針に糸を通してボタン留めをしていると部屋のチャイムが鳴った。
「希械~。わりぃけど今日の授業でわかんねえとこあったんだ。教えてくんねえか?」
「えーくん?いいよ~」
「おう、お邪魔するぜ~~……はっ!?」
遠隔操作でドアのかぎを開けると、英語の教科書とノートを持ったえーくんが部屋の中に入ってくる。そしてシャツをもってボタンを留めている私を見て、完全に固まった後すさまじい勢いで振り向いてドタンバタンとドアを閉めてしまった。どうしたんだろう?とぬいぬいと二つ目のボタンを留めながら首をかしげる。
「お、お、ま……開けていいっつったよな!?」
「言ったよ?」
「よくねーーーーよっ!!!!」
「なんで?」
「なんでってお前……」
「えーくんに見られるなんて今さらじゃない。何回一緒にお風呂入ったと思ってるの」
「小学校1年生までだろうがそれは!」
でも結局私の全部を見られたことには変わりないし、そもそもえーくんに見られることくらいなんてことないし、何だったらえーくんは毎日1度は私に上半身裸の状態を見せつけてきたのだ、トレーニングで。自分も人のこと言えないじゃないか。それにヒーロースーツほぼ半裸じゃんえーくん。私のヒーロースーツも露出多いし、大事な部分見えてないし別に良くない?流石に通形先輩みたいに全裸は憚られるけどちゃんと服着てるし。下着だけど。
「はい、服着たよえーくん」
「……おまえさー、男を部屋にいれてる自覚あるの?」
「えーくんが私を襲うなら話は別だけど。襲うの?私のこと」
「んな男らしくねえことはしねえけどさ、もうちょい意識しろよ、これが峰田だったら嫌だろ?いや普通俺でも嫌なもんだろ」
「まあ嫌だけど、峰田くんにぱんつ覗かれる回数も数えるのやめちゃったし」
「……あいつマジで一回話し合わねえとダメだな……」
懲りないよねー峰田くんも。覗かれるたびに踏んずけてはいるんだけど、踏みつぶされる<ぱんつらしくて何回でも油断したところに覗きに来るの。スパッツ履いたら逆に興奮しだして怖くなったからやめちゃった。よくよく考えれば峰田くんがいまだにヒーロー科に所属出来てるのが謎だな?性欲の権化なのに。私がそこまで怒らないから調子に乗ってるのかな?一回本気で怒ってみようかな?私が怒ったら怖いよ~。
「それで、分からないの英語でいいの?どこ?」
「ん、ああここなんだけどよ……」
「ああ、そこ。過去形にすれば平気だよ」
「かー、そういうことか。お前はいいよなあ、英語喋れてよ」
「海外のレポートとか論文読むのに必要だったからね。これも強くなるためだよ」
えーくんが聞きたいことに3つ目のボタンを留めながら答える。口に糸を咥えて噛みきり、玉結びして4つ目のボタンに取り掛かった。いやね、本当に科学関係は英語できないとダメなんだよ。というか読むだけならドイツ語とかもいるからね。日本語に訳されるのなんて何か月も先なんだから待ってられないし、自分で和訳しているうちに読めるようになったし。おかげでシールド博士とかメリッサさんとも英語でやり取りできる、便利。ついでにオールマイト先生も英語ぺらペらなんだよね、尊敬するなあ。
「強くなるといやあ、お前インターン行くのか?俺は行くぜ」
「うん、私も行くよ。さっきまでサー・ナイトアイの事務所にアポイント取ってたところなんだ」
「へぇ。俺は当然ファットガムだな!帰って来たときにゃ一回り大きな男になって帰ってくるぜ!男子三日合わざれば刮目してみよ!ってやつだな!」
やっぱりえーくんはファットガムの所に行くんだね。職場体験で相当気に入ったみたいだし、ファットガムは防御系ヒーローの中でもクラストに次いで人気が突出してるヒーローだ。ファットガム印のたこ焼きソースは私も愛用している。ファットガム事務所の雰囲気をえーくんは相当気に入ったみたいだ。というか私にも次の機会あったら行こうぜって言ってくれてたし。
でも一回り強くなったえーくんかあ。必殺技も作ったえーくん、私の素手じゃもう戦闘形態でも硬くて負けそうになっちゃってるし。対人威力のビームは弾くし。ほんとに硬くなるだけなの?そのうち私と腕相撲して勝っても不思議じゃないんだけど。頼もしくていいか。えーくんが楽しければ私も楽しい、何の問題もないね!
私がえーくんの分も夜ご飯を作って、久しぶりに二人だけでご飯を食べた。えーくんは沢山食べてくれるので作り甲斐があるなあ。でも夜ご飯を食べたら男女の部屋の行き来の時間は過ぎてしまったので、えーくんは私に今一度気を付けるように釘を刺して帰っていった。大丈夫、見せるのはえーくんだけだよ。何回みられてるか分からないからね!全部!今更だよ!
「ん~~~いい朝!今日は残念だけど作り置きのご飯だね」
時刻は午前4時30分、アポイントを取ってから初めての休日、つまり今日が面接当日だ!いつもよりだいぶ早く起きた私は、昨日作りおいてた残り物と食パンで朝ごはんを済ますと寝間着のラフな格好のまま大浴場まで下りていく。女子の大浴場は男子のお風呂と同じ広さだけど、私たち自身が少人数なのでだいぶ余裕がある。当然ながらこんな時間にお風呂入る人はいない、つまりは貸し切り!わーい。
「ふんふんふーん」
ざばーっと頭からお湯を被って丁寧に丁寧に頭を洗い、体を洗っていく。もこもこと泡の塊になった私、お風呂は命の洗濯というけどよく言ったものだよね。シャワーで全身の泡を隅々まで流し、髪の毛を纏めてタオルで包んだ私は湯船にざばっと入る。少しお行儀悪いけど、誰もいないからね。
たっぷり30分ほどかけて体の隅々まで洗った私は、ほこほこと湯気を立てながら服を着替えて脱衣所を後にする。そして、昨日洗っておいた制服のシャツにアイロンがけをして、着替えてネクタイをピシッと決めて、ヒーロースーツの入ったアタッシュケースを持ち、背中に書類やら必要なものが入ったリュックサックを背負って、まだ誰も起きていない寮を後にする。
面接で目を隠しておくのは非礼だと思うので、今回は前髪をピンで分けて両目を出した状態。今から面接に出発することを相澤先生にメールで伝えるとすぐに電話がかかってきた。気を付けて行ってくるように、何かあったらどんな小さなことでも必ず報告し、事件に巻き込まれた場合は近隣のヒーローがいない場合に限って仮免許の権利行使を許可すると言われた。切り際に「お前に関しては不採用はないだろう。安心して受けに行ってこい」という激励を貰ってから、私はハイツアライアンスを後にした。
サー・ナイトアイの事務所は雄英から電車で1時間、まだまだ早い時間なのにもかかわらず電車でお仕事に向かう人たちに交じって私も電車に乗る。遅れもなく定刻通りに発車した快速特急に乗って私は一時間の旅に出た。雄英前で降りる人が多かったからか、座席が空いていたので座らせてもらう。
途中で乗ってきた妊婦さんに席を譲ったり、痴漢をしてた人を持ち上げて駅員さんに引き渡してたりしたら少し時間をオーバーしちゃった。30分余裕をもって出てきてよかった~。そういえばなんでサー・ナイトアイはこんなに早い時間に面接の時間を指定したんだろう?実技試験もあったりするのかな?通形先輩に聞けばよかったかな。
数多の試練を乗り越えて、やってきましたサー・ナイトアイ事務所。スタイリッシュなビル一棟が事務所なんてやっぱり人気のヒーローはお金あるんだね。事務所の玄関の電気はついてない……今10分前だけどどうしたらいいのかな?ええい、女は度胸だってどっかで言った気がする!覚悟を決めてインターホンをポチっと!
「来たのか、10分前行動。いいことじゃないか」
「ぴえっ!?」
「元気がないな」
「し、失礼しました!雄英高校ヒーロー科1年A組!楪希械です!本日はよろしくお願いします!」
完全に油断していた私が背後からかけられた声にびくっと飛びあがる。慌てて真後ろを振り向くと、そこには七三分けにかっちりとしたグレーのビジネススーツを模したヒーロースーツに身を包んだヒーロー、サー・ナイトアイが銀色のアタッシュケースを片手に眼光鋭く私を見つめていたのだった。
ラッキースケベ切島君。ちなみに無防備楪ちゃんを見る権利は切島君にのみ与えられています。仮にこれが芦戸さんだった場合楪ちゃんはきちんと上を着てくれます。幼馴染への思い信頼、がんばれえーくん。
いろんな意味で成長中な楪ちゃん、次回はナイトアイと面談へ。
では感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ