「えーくん大活躍おめでと~~!」
「お、おう!ありがとな希械!」
ファンファーレと一緒に盛大に投影花火を教室中に打ち上げた私、全身で万歳してえーくんにおめでとうコールをしているのには理由がある、なんとえーくんこの度新聞に載ったのです!ネットメディアだけじゃなくて、大阪のメインの新聞とも言っていい凄いやつ!なんで?て思うでしょ!?えーくんね、ファットガム事務所で大大大活躍して、それが取り上げられたの!
大阪のチーマー崩れ?ヤクザ崩れの人がヴィランになって、発砲事件とかを含む暴動ともいえる行動を起こしたのが始まり、天喰先輩とファットガムが大部分を捕まえたんだけど、一人だけ逃げ出してえーくんが追走、行き止まりまで追い詰めたんだけどそのヴィランは個性のブースト薬を自分に投与して、個性を暴走させた。全身から刃物が飛び出るようになったヴィランをえーくんが抑えたってワケ!
その時にお披露目されたのがえーくんの必殺技、烈怒頼雄斗安無嶺過武瑠!えーくんの現時点での最高硬度を維持したまま行動する技で、この状態のえーくんはたとえ私が戦闘形態で全力で殴りつけようともノックバックすらしないし、スラストハンマーを全力でぶち当ててもスラストハンマーが壊れるほどの防御力を持っている。それでいて、行動速度は従来のまま!現時点だと1回3分くらいしか持たないけど、十分だと思う!まさに硬化の男でゴリ押しって感じ!
安無嶺過武瑠で向かってくる刃物を全て砕き、ワンパンの元でヴィランを沈めたえーくんの姿はネット上でも話題で、雄英の大型新人として一気に話題となった。画角は良くなかったけど、超超々かっこよかったので私の脳内メモリに焼き付けました。やっぱりえーくんは私の一番のヒーロー!
あとあと、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんもインターンに行っててそっちでも大活躍したみたい。どうも最近裏ルートで個性のブースト薬が流行ってるらしくて、それを使ったヴィラン組織同士の抗争、大型化する個性で戦ってた二人を捕まえるのに大貢献したとか!凄いなあ、二人とも。私も負けるわけにはいかないね。
「でもなんで私は怒られたの?」
「ありゃ誰でも怒るだろ」
えー、そんなー。私がトレーラーを受け止めた件はすぐに発表されてクラスのみんなが知る所になった。というか誰が撮影したのか知らないけど私がスラスターで跳躍してトレーラーを受け止めるところまでの一連の流れが撮影されててバッチリネットに上がってた。コメント欄はゴリラで埋め尽くされてた。ちょっと泣きたくなったけど、面白がってくれるならそれでいっか。ってなって警察の事情聴取を終えて寮に帰ると、待ち構えていたのはいい笑顔でこっちを見る三奈ちゃん他女子勢と荷車にスタンバイしている1-Aマッスルズだった。
言論を封殺されて荷車に放り込まれた私はレシプロバーストで保健室まで運ばれておでこの切り傷以外は健康と診断されてから寮に爆速ターボでトンボ返りしてお説教を貰った。なんでぇ?私何も間違った行動してないと思うんだけど?ちょっとこればっかりは異を唱えたいぞ。唱えたら怖いので言わないけど。あ、結局お目当てだったご飯の買い物とついでにブラジャーのサイズを測ろうと思ってたのにどっちも駄目でした、泣きたい。
ああ、つまりあれか。素でパワープレイしたのがダメだったんだね?例えばゴリアテを着てやれば許してくれたかもしれないけど、ゴリアテ着てやったら間違いなく運転席がぺっちゃんこだったので結果的に怒られた方法が最適解だと思います。私は腕組みしてうーん?と頭をかしげる。納得いきません、わたしわるくない!えーくんはそんな私を頬杖を突きながら見ているのだった。
それから数日後、やっとナイトアイ事務所から連絡が着てインターンの日が決まった。というか今日だ。でも、ヒーロースーツ要らないんだって、不思議。それはともかくデクくんと一緒に寮を出ると、それに合わせてえーくんとお茶子ちゃんに梅雨ちゃんも一緒に寮を出るらしいことが分かった。
「あれ?えーくんも今日なの?」
「おう、キグーだな!なんか先輩と現地集合らしくてよォ。場所ちげえんだわ」
「暫く呼ばれなくってやっと今日だよ。僕らも集合場所違うんだよね」
「へー、そうなんや。私たちもなんよ。」
電車を使う、というところまで一致していたので私たちは5人そろって駅まで一緒に行くことにした。途中でパトロール中のヒーローに送ってもらったりして、電車に乗ろうとすると関西のはずのえーくんやリューキュウ事務所のお茶子ちゃん達まで同じ電車を使うというのだ。そして降りる駅も一緒。なんだなんだ……?何が起こってるのか分かんないや。
そして、駅を降りてからも同じ方向、曲がる角すら一緒。そしてたどり着いた建物の前では雄英ビッグ3もお揃い、そういえば私とナイトアイが執務室で地下道について整理してた時の事、ナイトアイが現在他事務所とのチームアップに向けて動いていて、この情報をその時の会議に使う資料として使いたいみたいなこと言ってた。もしかして、そのための会議がこれ?
「あ、相澤先生」
「グラントリノ!?」
「なんだ緑谷、知り合いのヒーローか?」
「あ、うん。職場体験でお世話になって……」
建物の中にはずらっと並ぶヒーローたち、その中にはチャートで見覚えのあるヒーローや地域密着型のマイナーヒーローまで様々。デクくんがブツブツとそれぞれヒーローの名を呟いている。その中には相澤先生とデクくんの職場体験先で小柄な黄色基調のヒーロースーツを着たお爺ちゃんヒーロー、グラントリノの姿もある。まさに歴戦の古強者って感じ、生涯現役なのかな?
「ナイトアイさん、そろそろ始めましょう」
「では、これよりあなた方から提供してくれた情報を元に、死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか協議を行わせてもらいます」
ナイトアイの合図で、みんなが机の前に腰掛ける。私たちも通形先輩に従ってナイトアイ事務所に用意された席に腰掛けることになった。そこで説明されたのは今までの経緯、ナイトアイ事務所が2週間前から張っている死穢八斎會のことだ。きっかけは強盗団レザボアドッグスの事件を皮切りに、ここ1年以内に裏組織との取引が急増、そして先日にヴィラン連合の覆面のヴィラントゥワイスと接触したことが分かったと。それで、グラントリノにお声がかかったらしい、あ!思い出した!名前だけ知ってたけど確かグラントリノってオールマイト先生のお師匠さんなんだっけ!なるほどそれで……。
「一ついいか、雄英生とはいえどうしてここにガキがいる。話が進まねえ、本題に行く前に日が暮れちまうぞ」
「ぬかせロックロック!この二人は超重要参考人やぞ!」
「あとエクスマキナもだ。彼女がいなければ情報はもっと不足していただろう」
「え!?俺!?」
「私もですか!?」
浅黒い肌のヒーロー、ロックロックが私たちがいることに苦言を呈すると、ガタッと立ち上がったのが丸くて親しみやすいデザインをしているファットガム、そして私を指さしたナイトアイだ。とりあえずファットガムが言うところによると死穢八斎會は違法薬物の取引に手を出していて昔はそれを専門にしていたファットガムに連絡がいったらしい。
「そんで、この前環に打ち込まれた薬……個性を壊す薬や。今まで見たこともない種類、今は個性は元に戻っとるが、一時的にとはいえ致命傷やな」
「それで俺にも声がかかった。俺の「抹消」とは違うが、その薬は個性の大本である個性因子を直接攻撃しているらしい」
「そんで持ってた連中は撃ったっきりでな、中身の解析もできんかった!だけどな!切島君が弾いてくれた無傷の一発が手に入ったんや!そんでそれを調べた結果……中に入ってたのは人の血と細胞やった、気色悪いことにな」
ざわっとヒーローたちがざわつく、人の細胞由来の力ってことはそれは個性の力の可能性が高い。当然ながらI・アイランドなどの一部を除いて個性由来の人体実験は禁止されているし、忌避もされている。ここ1年公的に行われたことはない。そして私はたどり着いてしまった。心当たりがあったんだ、だって、だって……!あの子の、あの手足の包帯は……!
「エリちゃんの身体を、銃弾にしてるってこと、ですか……!?」
「……その可能性は高い。治崎の娘、出生届はなかった。そして先日遭遇した時には手足に夥しいほどの包帯を巻いていた。治崎の個性は対象を一度壊し再構成する個性。何度壊しても治せるだろう」
「そんな!」
「なんてことしてやがる……!」
体から力が抜ける。何が強引にハッピーエンドにする機械仕掛けのヒーローだ。私は見つけてた、見つけてたんだ。最悪その場からの狙撃だって出来た、一撃で頭を吹き飛ばしてやることだってできた。たとえそれが犯罪だったとしても。けど、やらなかった。見捨てたんだ、あとから捕まえやすくするためなんていう大義名分で。絶望の檻の中にいる小さな女の子の檻の鍵を自ら閉めたんだ。
今度こそエリちゃんを保護する。という通形先輩とデクくんに私も深く頷く。熱気が籠る会議室に冷静に水を差したのはロックロックだ、見られた以上何かしらの対策をするのではないか、と。それに対してナイトアイは日本全土にある死穢八斎會に関連のあるグループの組織を可能な限り洗い出して、それを調査することを提案した。
「そして、本部ですがこちらはエクスマキナによる科学的探知で地下に迷宮のような複雑な地下道が無許可で建設されてることが発覚しました。エクスマキナによるマップがこちらです、同様に他の場所についても同じように地下道がある可能性があります。それも留意してもらいたい」
「あの、一つよろしいですか。貴方の個性の「予知」性能は分かりかねますが、それで未来を見れないのですか?」
「……それは、できない」
「なぜ?」
相澤先生の質問にナイトアイが個性の性能を答えていく。インターバルは24時間、対象の未来を1時間の間見ることができる。それで十分だろうと言った相澤先生にナイトアイが返した言葉は、その人物が予知で死んでしまった場合その予知を覆したことがない事を説明し、未来が確定するのが予知で見た段階だとする可能性が一番高く、ダメ押し以外で未来を見て死を予知した場合、避けられないからこそ、ここぞという時のダメ押しとして使うべきだと主張した。
ナイトアイは、オールマイト先生の予知を見てしまったから、こうしてそれが重くのしかかっているんだ。だって現状オールマイト先生は予知通りに動いているから、オールマイト先生ですらダメならもう、避けられないと思っているのかもしれない。そこまで言い切られたら誰も、未来を見ろだなんて言えなかった。
結局そのあと、反対意見は出ることもなく個別で捜査を進め確度を高めてから一気にガサ入れという形で落ち着いた。解散した私たちは建物の中の休憩室の机に座って、沈んでいた。
「そっか、そんなことがあったんだな……辛いな、希械、緑谷」
「うん……」
「……通夜でもしてんのか」
「相澤先生」
「学外ではイレイザーヘッドで通せ」
休憩室でうなだれていた私たちに声をかけてきたのは相澤先生だった。えーくんたちに事のあらましを話した。エリちゃんについての後悔は、私より直接接したデクくんたちの方が深いだろう。その沈みようは、迂闊な慰めの言葉は言えないくらいくらい。相澤先生が通夜のようだ、ということもわかる。
「今日は君たちのインターン中止を提言しに来たんだがなァ。ヴィラン連合が関わってくる時点で事情が変わってくる」
「ええ!?今さら何で!?」
「話は最後まで聞け」
相澤先生から出たのはインターン中止の話、理解はできる、なにせヴィラン連合だし、私のような被害者がまた雄英内から出れば今度こそヒーロー育成高としての、いや教育機関として雄英は終わる。そういう意味では絶対にここで中止せねばならないだろう。私たちの心を無視する形になるが、それが仕方のないことだ。
「ただなぁ、緑谷に切島。お前らはまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ。特に緑谷、お前はこのまま無理やり止めたら勝手に飛び出していってしまうと俺は確信した」
「……はい」
「なら、俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう、分かったか問題児たち。楪も、今度は自分を犠牲にして物事を収めようとするな、全員無事に切り抜けることを考えろ」
「はい!」
「ありがとうございます、相澤先生」
「イレイザーヘッドだ」
相澤先生のインターン続行の許可に、私はほっと息をつく。絶対に、絶対に助けるんだ。私が閉めてしまった檻の鍵を、鍵なんかなくたって全部捻じ曲げてもエリちゃんを助け出そう。そのために私は、私たちは強くなった。もう二度と誰も、何も失わないように。えーくんの気合の掛け声に、私たちは声を合わせて応えるのだった。
トレーラーと相撲したら怒られた楪さん。そして強化されたえーくん、現時点でもう強い。というわけで次回からガサ入れです。楪さんはオーバーホールとどう戦うのか。
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