落とされた……!クソ、今どこだよ!上に残れたのは希械と通形先輩だけ、他はプロ含めてみんな地下のさらに下まで落とされちまった!高所から落ちた時の対処は授業でやってる、うまく受け身取ってすぐに立ち上がった。俺よりうまく着地した緑谷があたりを見回している。
「広間……!?」
「おいおいおいおいおい、空から国家権力が落ちてきたぜ?不思議なこともあるもんだ」
「よっぽど全面戦争したいらしいな……!流石に我慢の限界やわ、ここはワイらが……!」
「そのプロの力は、取っておいてくれ……!明らかに時間稼ぎ要員、そんなの俺一人で十分だ」
俺たちが落ちてきたのは地下のさらに下層にある大広間、そこにはやっぱり死穢八斎會の構成員らしいヤツらが待ち構えていたみてぇだ。数は3人、玄関で殴りこんできたヤツみたいなマスクをそれぞれしてる。多分これが幹部の証か何かなのか?俺は考えるのはあんまり得意じゃねぇけど、警戒するべきだってのは分かる。
構えた俺たちを制したのは天喰先輩、言葉を聞くに3人を一人で相手にするつもりみてぇだ。いくら先輩でも一人じゃ、と声が出そうになったけど……そういや俺一度も先輩に勝てた事ねぇんだった。しかも、大体謙遜してたし……その人がこの局面で任せてくれって言ってくれたんなら……任すしかねえだろ。
「銃見せるな!窃盗の個性持ちだ!」
「ち、ばれてんのか!けどな、やりやすいわ!」
「やらせるわけないだろ、刀捨てろ!」
作戦は決まった、先輩に任して俺たちは抜ける。そのために一瞬隙を作る!合わせられるはずだ、俺なら!相澤先生が個性を消して、その隙をついて頭陀袋みたいなマスクをしたやつを気絶させる。俺はもう一人、スキンヘッドのやつに思いっきり硬化させた拳を個性らしき結晶のガードの上から捻じ込んで殴り飛ばした。鈍い音とバキバキに割れた結晶の感触と一緒に壁に叩き付けられたスキンヘッドが痛みに呻いてる。多分拳が入った左手がボッキリ折れたな。使いもんにはならねえと思う。
「ありがとう、烈怒頼雄斗。やっぱり君は強いな」
「あざっす!でも、先輩はもっと強いです!あとお願いします!」
「ああ、任せろ。ミリオを頼むよ、あいつきっと……無茶するから」
先輩を置いて、広間の扉をくぐる。その後ろで手をタコに変えた先輩が、構成員たちから銃や刀を奪って壊してるのが見える。先輩を信じて、任すしかねえ。希械も今、上で頑張ってるはずだ。腑抜けになるのはもうやめるって誓ったんだ、前だけ見てろ。俺は烈怒頼雄斗、先輩に託されたんだから。
「先輩、楪さん……大丈夫かな……心配だ」
「大丈夫に決まってるだろ、緑谷。先輩は確かにああだけど、強いんだ。職場体験で俺はそれをよく知ってる。それに……希械だって強いのは知ってんだろ。本気になったあいつは多分クラスの誰も勝てねぇ、そうだろ」
神野の件があってからクラス全員があいつに少し過保護になってるが、本気を出したあいつはクラスの誰よりも強い。当然、俺よりも。多分今頃、壁を全部壊しながら通形先輩に追いつこうとしてるはずだ。それに、俺たちだって黙ってるわけにはいかねえ。だからこうやって必死こいてコンクリートの道を走ってるんだ。
「上に戻ろう」
「あの階段やな」
「妙だ、何の障害もなくこうやって走れているが……地下全体を把握できないのか?突破力ならうち随一の楪が上で暴れまわってるかもしれん。分離されたが警官隊もいる、そっちに意識を割いて――――」
「イレイザー!」
突然、今まで動かなかった壁が動いて相澤先生を狙い撃ちにする様に、捕まえて壁に押し付けて潰そうとした。それを見ただけで、体が先に動いた。相澤先生を庇うために、後ろに飛ぶ、だけどそれはファットも同じだったみたいで俺はファットの脂肪に埋まってしまった。脱出できないでいると、そのままファットごとコンクリに押されて壁に開けられた穴を転がり落ちちまった。
「ぶはっ!!」
「雛か!?何しとんねん!」
「すいません、俺もイレイザー庇おうとして……ファットに埋まっちゃいましたけど」
「まぁ、しゃーないわ。イレイザーはいないと困る、よう判断した。それより―――」
暗がりからまた構成員が現れた!武器は……ねえ!頑丈そうなグローブ付けてやがるけど、拳だ!それなら、と俺は全身を全力で硬化させる。安無嶺過武瑠、これなら素手だろうが武器でこようが関係ない。嘗めんなよ、その拳……壊れちまっても知らねえぞ!
男が拳を振るった瞬間に、凄まじい衝撃が俺の全身を駆け巡る、んだこれ……!まるで緑谷に殴られ続けてるみてえじゃねえか。いや、連打力ならこいつの方が上!だけどなあ、たかがこの程度で俺の硬化を破れると思うな!殴られながら前に進む、ぜってえ倒れねえ、倒れたらその時が俺の死だ。約束した、無事で会うって。じゃあよ、勝つしかないだろ……!
「おおおおおおおおおりゃああああああっ!!!」
「いい……!」
殴られながらも振りかぶったパンチ、勢いはそがれたけどそれでも反撃する余裕はある。それなら俺は何度でもぶん殴る!そんだけだ!だけど、拳は男の眼前で青い半透明のバリアみたいなもんに止められた。男の方も内から攻撃を通形先輩みたいに透かすことはできないのか嵐のようなラッシュが止まる。後ろからファットも攻撃に参加してくれるけど結果は変わんねえ。硬いバリア……!へっ、希械でそんなの経験してんだよ。あいつの方がすげえ。
「烈怒、無事やな」
「っす」
一旦安無嶺過武瑠を解いて、通常の硬化に戻す。時間制限があるかんな、安無嶺過武瑠。都度息を入れて戦う時だけ安無嶺過武瑠の方がいい、オールマイトの言ってたゴリ押しだけど、頭だって使わなきゃなんねえ。
「俺は思うんだ、ケンカに刀や刃物は無粋だって。持ってたら勝てるだろ、な?その身に持っているもんだけで殺し合うのがいいんだ」
「ふむ……ファットガムに体を硬化できる少年……防御が得意な二人だ。乱波よ、残念だったな」
「節穴か?ガキの方もデブも強いぞ。それに俺のラッシュを受けても平然と立つ、今までいなかった」
「だとしても、だ。我々は矛と盾、たいしてあっちは盾と盾……我々のコンビネーションなら封殺できる」
「参ったな……ケンカにならないぞ」
一人じゃなくて、二人だったのか。グローブ付けた奴が増強系の個性で、バリア張ってるやつは和服着てるおっさんだな?ファットがいつも言う『ヴィラン退治はいかに早く相手を戦意喪失させるか』今この状況はスピード勝負、ならなるたけ早くみんなと合流しなきゃなんねえ。希械がまた、自分を削っちまう前に。
「ファット!」
「ああ、こんな三下ぶっ飛ばして、さっさとみんなの所もどるで!」
「オッス!」
ファットの号令に気合を入れて返す。怖くねえ、なんていや嘘だ。けど、それ以上に燃えている!負けてらんねえんだ、あいつにも緑谷にも!俺だって、エリちゃんを救けてぇ!
「おい天蓋、バリア出すな。面白くなってきたところだ」
「烈怒、各個撃破や。殴った感じあのバリアは俺じゃ破れん。可能性があるんだとしたら、君の必殺技や。バリアぶち抜いて、あの糸目にいてもうたれ。その間に俺は、あいつをやる」
「分かりました!天蓋っつったな、おっさん。勝負だぜ、盾と盾、どっちが硬いか」
「乱波、まずはあの少年を」
「知らん、突っ込んできた方が先だ」
「乱波君いうたな。打撃でダメージ貰ったんは久々やわ。ここはひとつキミの腕が壊れるか俺が壊れるか……勝負といこうやないか!」
「やっぱりお前はいいデブだ!」
ファットと乱波っつー大男が激突する。ありえねえほどの速度のラッシュ、音が重なりすぎてどんだけ打ってるのか分かったもんじゃねえ。けど、ファットなら受け切れる。あの脂肪で衝撃全部沈めて、打撃の隙間縫ってあいつを殴ることができる。ファットが任せろって言ったんなら信じて任すのが男だ。だから俺は、俺がやるべきことをやる。
「フム……少年、残念ながら君は私に触れることさえできない。最高硬度のバリア……乱波でも砕けんよ。そして、ファットガムを倒した後は君だ」
「言ってくれるなあ!じゃあまずいくつか訂正させてもらおうじゃねえか!一つ!俺はお前を捕まえる!二つ!ファットはあいつになんか負けねえ!」
ビキビキ、メキメキと音を立てて俺の全身が硬化していく。安無嶺過武瑠、触れれば切れそうなほどに鋭くそして今までにないほどの硬度を持ちつつ、フットワークを鈍らせないように訓練した必殺技。何度希械に打たれて、殴られ続けたかわかんねえ。あいつには頭が上がらねえわな。その研鑽の日々が実を結んだこの必殺技、見せてやる!
「まだあるか、少年」
「おうよ!最後に3つ!俺は盾じゃねえ……盾であり、矛だ!」
体が軋む、硬化した体同士がすり合わさって火花が飛び散る、軋みながらこちらにやってくる俺を天蓋のおっさんは何かを察したかのようにバリアを分厚くした。関係ねえ、ぶち破ってやる!向こうが分からないくらい分厚いバリア、きっとこのおっさんの最大出力だ。ならこいつを何とかしちまえば、俺の勝ちだ。
拳を握る、メキメキと異様な音が鳴り続ける。さらに握る、もっと握る。握って握って……一塊の鉄塊のように変わった拳を思いっきり引いた。小細工なしの一本勝負、ナックルアローだ。振りかぶった拳に渾身の力を込めて、踏み込む!踏み込んだ脚が地面を割った。解放された力をありったけ目の前のバリアに向けて叩き付ける。インパクトの瞬間、関節含むすべてを硬化させて反動すら打撃の威力に変える!これがっ!
「烈怒
ガキャア!!と工事現場でも聞かねぇような音が俺の拳とバリアから発生する。分厚いバリアにぶち込まれた俺の全力が余すところなく伝わり、ビシビシとひびが入る。ひび割れたガラスみたいになったバリアの向こうから、糸目を見開くおっさんの顔が見える。ダメ押しのもう一発、破裂するような音を立ててバリアが完全に砕け散る。これ以上バリア張られたら困るんで急いで近づいておっさんの胸倉をつかみ上げた。
「ば、ばかな……!?」
「おっさん!歯ぁ食いしばれ!」
ガツン!と音を立てて俺の頭突きが天蓋のおっさんの額にぶつかる。バリアに頼り切ってたからか、おっさんは痛みに耐性がなかったようでそれだけでくたりと気絶してしまう。情けねえ、ヤクザがこれかよ……てめえらが囲ってるエリちゃんはこれの何倍も怖くて痛かったに決まってるんだぞ!
それよりも、ファットだ……!おっさんを地面に投げ捨てていまだに打撃音が鳴り続けるファットと乱波の方に向き直る。乱波のやつ、打撃の速度上がってねえか!?そしてファット……かなり細くなっちまってる……!打撃の防御に使う脂肪が少なくなってるんだ!衝撃を沈めると脂肪が燃える……!盾がなくなりかけてる!
迷うまでもねえ!希械だったら、芦戸だったら、緑谷だったら!絶対に飛び込んでファットを庇う!そして、俺ならそれを無傷でやり遂げられる!安無嶺過武瑠のまま走ってファットの前に飛び出る。
「烈怒!」
「この人殴りたかったら!俺を壊してみろよ!」
「お前……!最高だ!」
まるでガトリングのような拳の雨が俺を襲う。ズリ、と押されて下がりそうになる足を根性でこらえる、いや進め!こいつのパンチは俺に効かねえ!足を踏みしめて前に出る。確かにパンチは速い、俺の知ってる誰よりも。だけど……!
「うおおおおおおおおっ!!!!」
「押される……!俺が……!?」
一歩、二歩と前に出る。それに伴ってラッシュを続ける乱波が押されるように下がってく。オールマイトが言ってた、小細工よりもゴリ押しで……!ゴリ押してやろうじゃねえか!確かにすげえよ、息を入れる暇もねえ。けどな、それでも最後にものをいうのは覚悟と根性だ、俺はそれを神野で知った。血塗れで戦い続けるアイツが怖くなった。だから、こんどこそ……!誰よりも前に立って全てを受け止める、そんな男になるんだ!
「俺の後ろに!血は流れねええええ!!!」
「お疲れさんや烈怒頼雄斗!プロの俺が完全におんぶにだっこ……!情けなくて涙が出るわ……!でもな、おおきに!ええ矛が出来たわ」
俺の肩に手を置いたファットが入れ違うように前に出る。その右拳には今まで蓄積されてきた衝撃が渦を巻いていて、それだけで勝負が決まると確信するほどの威力をもって、乱波に襲い掛かった。
「俺たちの勝ちや」
「……ああ、俺の負けだ。いいケンカだった」
吹き飛ばされて壁を貫通して隣の部屋まで吹き飛んだ乱波に、ファットが手錠をかける。乱波は抵抗せずに負けを認めて、素直に従った。いつもの丸いフォルムからスタイリッシュな瘦せ型に変貌したファットは、それでも変わらない笑顔で、俺の背中を強く叩いて褒めてくれるのだった。
切島君、お強い。天蓋君のバリアかち割って乱波君のラッシュを耐えて押し返す。あれこいつソロでも大丈夫だったのでは?
必殺技「烈怒不黎無」
名前の元ネタは勿論アストレイレッドフレームの「赤い一撃(レッドフレイム)」より。超簡単に言えば刃牙でいう剛体術。インパクトの瞬間に関節を全て個性で硬化して殴りつける切島君ならではの技。ただし、威力的にはオリバとか花山とかが放った感じになる。あと拳の硬さが段違いなのでもっと強いかもしれない。
では次回はガチギレ楪ちゃんVSオーバーホールでお送りしたいと思います。感想評価よろしくお願いします。
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
-
必用
-
本編だけにしろ