「やああああっ!!!!」
轟音を立てて壁が粉砕され、赤熱したコンクリートがあたりに飛び散る。もう、壁の数が多い!1m先に設置されてるとかそんな感じだよ!私はビームサーベルを振り回して壁に切れ目を入れてそのまま突っ込むことで壁を粉砕しながら先に向かった通形先輩を追って地下道をかける。えーくんたちはきっと大丈夫、なんせ相澤先生たちが一緒だ。私より安全!
常にソナーを発してマップを更新し、目的の部屋がある場所まで走り続ける。時には壁を粉砕し、時には落とし穴を飛び越え、時には待ち構えていた一般構成員を殴り飛ばして気絶させて進み続ける。途中には通形先輩が殴って気絶させたと思しきお腹を押さえた状態で沈む構成員も転がっている。近い……!
「これは……幹部格?」
決定的なものを発見した、ペストマスクを模した仮面をつけている構成員が一人転がっている。そして明らかな戦闘音、間違いない!通形先輩が戦っている!目の前の閉じられた壁の中で!右手を握ってエネルギーを集中させる、ピンポイントバリアが右手を覆った。間髪入れずにそれを目の前の壁に叩き付ける!轟音を立てて壁に大穴が開いた。
「音本!撃て!」
目の前に広がる光景は、修羅場だった。治崎に殴りかかるマントを失った通形先輩、銃を構えた構成員、そしてその先にあるのは……通形先輩のマントに包まれたエリちゃん。考えてる場合かっ!スラスターに無茶を強いる、爆発するように推進剤を吐き出したスラスターが私を打ち出した。エリちゃんの後ろから覆いかぶさるように私が彼女を庇う、銃弾は……私の肩に突き刺さる。
「エクスマキナ!」
「誰だ?いや、何でもいい……今お前は銃弾を受けた!お前の個性は庇ったその子の力でなくなった!お前の全てが今!無に帰した!」
治崎、いやオーバーホールが動揺した通形先輩の隙をついて地面に手を突いた。その瞬間に棘だらけだった地面がいったんバラバラになり、組変わるような形で大壁を形成して私を挟みつぶすように迫ってきた。私は庇っていたエリちゃんを優しく抱きあげて立ち上がる。私の腰からボックスがおち、ハロが超圧縮を解いて大きくなる。
轟音を立てて壁が閉じられる。通形先輩の叫びが聞こえる、ぎゅっと瞳を閉じたエリちゃんを優しく撫でる、予想していた痛みがない事にエリちゃんは恐る恐る目を開いて、私と目が合う。そして、その後ろに目をやって驚いたように瞳を丸くしている。
「個性がなくなった?残念だけど、ちゃんと狙いなよ。隙間に挟むんじゃなくてさ」
エリちゃんを左手一つで抱っこして、右手で左肩に手をやり機械の隙間に挟まる形で止まっていた銃弾を摘まむ。まだ中身が入ったそれを握りつぶして地面に落とす。後ろで手を広げたゴリアテが壁を手でせき止めた状態で止まっている。ハロが一回跳ねてゴリアテのヘルメット内に収まり、ヘルメットが快音を立てて閉じる。壁から手を離したゴリアテの左の肘が稼働し、サドンインパクトの発射態勢に入る。
「先輩!戻って!」
私の叫びに反応した先輩が地面に落ちる。瞬間ゴリアテのサドンインパクトが眼前の全てを薙ぎ払う衝撃波になってオーバーホールを含む3人に向かって解き放たれた。塵が視界を遮る中、滅茶苦茶になっていく地下道の壁に叩き付けられるオーバーホールが見える。ゴリアテの肘が排熱し、塵が晴れる。
「先輩、エリちゃんをお願いします。まだ終わってない」
「いや、エクスマキナ。俺がやった方がいい!一度当たったら終わりの個性だ」
「ですから、私です。先輩ならエリちゃんを傷つけずにここから脱出できます。私だと……巻き込んでしまう」
それに、ここから先は見せない方がいい。絶対に。サドンインパクトに打たれながら、オーバーホールは3回ほど自分を分解して、無傷に作り直していた。傷が回復しているのは間違いない。もうすぐ出てくる、今ので気絶しないなら痛みによる気絶は無理だ。だから、殺さないようにギリギリをついて致命傷スレスレの攻撃を叩き込み続け、心を折るしかない。そんなの、傷つき続けた女の子に見せるものじゃない。
「信じて、ルミリオン。私を本気で戦わせてください」
「っ……!無理しちゃだめだ!すぐにサーたちも来る!」
「はい、お願いします」
「だ、だめ!殺されちゃう……!」
「ふふ、心配してくれるの?とっても優しいのね。大丈夫だよ……お姉ちゃんは絶対に負けないから」
通形先輩にエリちゃんを手渡す。私のヒーロースーツの裾を掴んで必死に心配してくれるエリちゃんに笑顔を見せながらガッツポーズをする。ハロもゴリアテを操ってマッスルポーズ、ユーモアはないけど、コミカルに。エリちゃんの乱れてしまった髪の毛をうさぎさん型のヘアピンを作って留めてあげる。それの上に手をやったエリちゃん、ヒーロースーツから手が離れる。通形先輩はそれを確認してすぐさま踵を返し、私が開けた穴から出ていった。
「エリを……返せ……」
「どこ見てるの?」
「ぐああああああっ!?」
オーバーホールは無傷ではあるものの、よたついた動きで這い出して来た。その瞬間、私が操作する新兵器によって両肩を貫かれて壁に縫い付けられる。白い牙のような形をしたそれは、新開発したビット兵器、ファング。ビームを発射するのではなく、ビット自体が武器となり、襲い掛かるものだ。バンッと音がしてまたオーバーホールが自分を分解して無傷に戻る。ふーん、ファングごと分解されてるね。発動は掌だけど、体に接触してれば分解に巻き込めるのかな?
二つ、三つ、と腰から圧縮ボックスを落とす。それが変形して追加のファング、シールドビット、ホルスタービットに変わる、自分でもわかる。怒りでどうにかなりそうだ、きっと私は今とてもヒーローとは言えない表情をしてる。怒りで熱くなるんじゃなくて、どんどん体の熱が冷めて行ってる。冷静に、合理的に物事を進めようとしている。それこそ、無感情な機械のように。
「自分の娘に拳銃を向けさせて発砲させる……流石にやっていいことと悪いことがあるよ。」
「ハァ……ハァ……」
ファングによる近接攻撃、ビットによるビーム射撃が組み合わさった波状攻撃の檻が真綿で首を締めるかのように、一手ごとにオーバーホールの動きを制限して詰みの状態に持っていく。オーバーホールはビームに貫かれては自分を分解して修復し、ファングにズタズタに引き裂かれては自分を戻し、を繰り返している。無傷に戻っていくが、分かる。息の仕方、体表の蕁麻疹、冷や汗、筋肉のこわばり……すべてが彼の消耗を私に示している。
「まだだ……っ!」
「っ……!」
そう来たか、彼はファングの攻撃を予測し、自分の頭を貫くように姿勢を変えた。私がヒーローだから、殺さないというのを予測して。怒りでどうにかなりそうな今でも、最後の一線だけは跨がないように意識してたのを逆手に取られた。私はファングの軌道を外す、完璧な計算の元にランダムパターン化された攻撃に一瞬のスキが開き、その隙をついてオーバーホールは大規模攻撃を繰り出してくる。
ビットとファングを巻き込んだ棘の壁、それが迫ってくる。だが、こっちにはゴリアテがいる。ゴリアテが前に出て壁を完全に受け止める。私はその隙にオーバーホールがどこにいるかを目視で探る。
「終わりだ……!」
「そうだね」
迂回するように回り込んできたオーバーホールが私のすぐ横に迫ってきていた。彼の全てを分解する手が、私の体に触れて……すり抜ける。驚愕に目を見開くオーバーホールのすぐ横に蛍光灯が付くような音を立てて私が現れる。大規模攻撃の瞬間に、立体映像と入れ替わっておいた。右手の空間が歪む……この距離ならいくら遅い私でも外さない。
「貴方の目的は、果たされない。何をしようと、私が、私たちが!ここで止める!」
「現代病が!そういうのが!
「うるさあああああいっ!!!」
もう、オーバーホールのハチャメチャな理論に付き合ってられなかった。何がオヤジを隅に追いやるだ、何が現代病だ!勝手な理屈並べたところで……!小さな女の子を苦しめる理由になったりするもんか!そんな自分のことしか考えてないヴィランの理屈に耳を貸すわけない!絶対にここで止めてあの子に謝らせてやる!
私の叫びと共にピンポイントバリアパンチがオーバーホールの顔面を真正面からとらえる。ペストマスクが拉げて飛び、頬骨を折り、歯が滅茶苦茶にへし折れるのが分かる。私はそのまま地面に拳を振りぬいて、オーバーホールを叩きつける。頭を時間差で2回強烈に揺さぶられたオーバーホールはそこでついに気力が尽きたかのように気絶した。
「後でたっぷり反省してください。タルタロスの中でしょうけど」
そう言って私は拘束具でオーバーホールをガチガチに拘束する。さらに首輪とヘルメットをつける、脳波計と拘束装置だ。たとえ意識を取り戻したとしても個性を遣おうとした瞬間に電撃が流れて個性の発動を不可能にする。私はオーバーホールのズボンのポケットが膨らんでるのを見て、ポケットに入っていた何かを取り出す。それはあの個性を消す銃弾と見覚えのないカプセルだった。証拠品だね、と私は自分の腕の中に証拠品としてしまう。さっき音本と呼ばれた男が使っていた方の銃弾は……サドンインパクトに巻き込まれて滅茶苦茶になっている。
「ハロ、ナイスアシスト。助かったよ」
『オツカレ!オツカレ!』
ゴリアテが乱雑にオーバーホールを持ち上げる、もう片手には他の幹部がぞんざいに拘束されてぶら下がってる。結局は私は無傷で、オーバーホールを捕らえることが出来た。戦術に完全に嵌めることが出来て、オーバーホールを封殺することができたのが非常に大きい。それに……オールフォーワンほど怖くなかった。あの世界にある闇を全てを凝縮したようなヴィランに比べれば……怖くない。だから、臆せず立ち向かえたのだと思う。
「エクスマキナっ!!!」
「楪さんっ!!!」
「はい?」
「……なん、だと……予知が……?」
とりあえず地上に出るか、と思って道を戻るか、と考えてるとデクくんとナイトアイが私が開けた穴から現れた。いやに焦っている二人が私を見て、デクくんはほっと息をついていて、ナイトアイは驚愕に顔を歪めている。ヒーロースーツが大きく裂けているナイトアイは私が首を傾げているのを見て、それからゴリアテに持たれているオーバーホールを見て絞り出すように声を出した。
「倒した……のか?」
「え、はい。そうですけど……やり過ぎましたか!?」
「い、いや……そうではない。今は後で置いておこう。とにかく合流は済んだ、主犯も拘束済み……よくやった」
「……あれ?デクくん相澤先生とえーくんは?ファットガムにロックロックも」
「あ、うん。実はね……」
デクくんが説明するところによると天喰先輩は足止め要員の排除のために残り、ファットガムにえーくんは分断されて、さらにデクくんたちはヴィラン連合のトガヒミコとトゥワイスに襲われ、相澤先生が負傷、動脈をナイフでやられてしまったらしく失血でリタイアせざるを得なくなったそうだ。ロックロックと警察が残ったから無事だろうとのこと。良かった……!
それで途中で通形先輩とエリちゃんと合流し、私が一人で戦っていることを聞いた二人は急いでこっちに来て、私がすでに鎮圧してて拍子抜けした……って感じかな。でもこれ、あれだよね?作戦成功ってことでいいよね!?助けられたんだ!よかった~~!来た道を戻って、突入してきた警察にオーバーホールを渡した。警察は拘束の上からさらに拘束を重ねてから厳重にオーバーホールを連行していく。
そこまで見届けて、ようやくなんか体の力が抜けた。おっと完全に気を抜いちゃいけない、エリちゃんの無事を確認してからじゃないと安心できない。通形先輩が一緒だから無事だろうけど、この目で確認するまでは。小走りで元来た道をまっすぐ進む。地下から出て、本部から庭園に出ると……道路側がいやに騒がしいことに気づく。急いで外に出ると……そこには異様な光景が広がっていた。
「う……うぅ……あ、ああ……!」
「エリちゃん!」
「ダメだミリオ!戻ってしまう!」
「くそ、イレイザーがおれば……!」
道路の真ん中で、エリちゃんがうずくまっていた。エリちゃんの額にある角から計測できないほどのエネルギーが迸っている。何があった!?救急隊員の人が一人腰を抜かしたようにへたり込んでいる。いや、顔に見覚えがある、作戦に協力してくれている隊員の人だけど……作戦前に見た時より、若い。服も少しぶかぶかになってるように見える。
「なんだ……!これは……!」
「戻ったんや……!エリちゃんをあの救急隊員に任せた瞬間、エリちゃんの個性が発動して、隊員が若返った!それでエリちゃんが自分から離れて、今ああなっとる!」
「人間を巻き戻す個性なのか……!!」
痩せに痩せたファットガムの断片的な説明で、事態を理解する。エリちゃんの個性は巻き戻しで、それが何かのはずみで発動した。だけど訓練を受けてないであろうエリちゃんは個性を止めるすべを知らない、だからアクセルを踏み続ける状態から戻れずにいま個性を暴走させ続けているんだ!近づけば巻き戻るという事態に、みんな手をこまねいている。相澤先生は失血で気を失い、すでに別の救急車で病院に行ってる……!打つ手が……!
「よせ!エクスマキナ、いくんやない!」
「戻れ!エクスマキナ!」
ファットガムとナイトアイが走りだしてエリちゃんの元に向かう私を止める。その手を振り切った私はエリちゃんの元にひた走る。だって……だって!助けを求めてる!必死に個性を制御しようと苦しみながら私たちに向かって手を伸ばすエリちゃんを見た瞬間、私は走らざるを得なかった。
「大丈夫だからね……!」
私はエリちゃんの元にたどり着くと、膝をついて、彼女を抱きしめる。えーくんたちが私を呼ぶ声が、いやに響いていた。
薄味かもしれませんがオーバーホール戦はこれで終わりです。ミリオは個性を失わず、サー・ナイトアイも生存という形で終わりました。それのしわ寄せももちろんあります。それは次回にて。
楪さんに準備をする時間を与えると大体こうなります。メタを張るどころか真正面からすりつぶすくらいの武装を携えてやってきます。今回はエリちゃんのこともあったので本気でキレてたこともあります。切島君が荼毘にやられた時並みに怒っていたり。
オーバーホールくんはレスバして油断を誘おうとしたんだけどまさかのレスバ拒否で残念でしたな。
それではまた次回で。感想評価よろしくお願いします
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ