個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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83話

 救急車が胝棚の総合病院に到着して私たちはエリちゃんと一緒に救急車を降りる。エリちゃんはただ体力がなくなってしまって眠っているだけらしく。発熱などの諸症状はないみたい。ただ、今までの生活と若干の栄養失調が合わさってどこまで眠り続けるかは不明だし、これから病院で詳しく検査してもらわないといけないよね。

 

 あと私も、エリちゃんの個性がどう私の体に影響を及ぼしているか分からないので検査を受けるようにナイトアイに釘を刺された。そこに関しては異論はないし、仮にその検査で私に何もなかったら、エリちゃんの個性の作用範囲が確定して尚且つ暴走した場合でも私が近づいてどうにかできるということになるので人間ドックばりに色々見てもらおうかな。

 

 「……ナイトアイ」

 

 「オールマイト……やっと会う気に?」

 

 「返す言葉もない。楪少女からさんざん発破を貰ったからね、踏ん切りがついたよ」

 

 「最終的に脅さないといけないなんて思いませんでした」

 

 凄いなオールマイト、どうやって来たんだろう。法定速度守った?いや脅した私が言うのも変だけど、よく来たね。冷や汗掻きまくりだからきっと相当急いだんだろうなあ……どれだけ弟子に自分のイメージがダウンすることを恐れてるんだろう。事故なのに、何だったらデクくんは私の胸をちらちら見てたりするぞ?言わないけど、峰田くんよりましだし。峰田くんが意図的に揉みに来たときは流石に悲鳴を上げたよ。えーくんの顔面パンチにより前が見えなくなってたのでお仕置きは取りやめたけど。

 

 「色々君と話したいこともある。私の未来についても」

 

 「ええ、希望があることは証明されました。貴方がこの先生き残るために私の個性が必要ならば、いくらでも」

 

 「……私は検査を受けてきます」

 

 この分だと私の出番はなさそうだし、お邪魔だし。素直に検査を受けるとしよう。ストレッチャーで中に運ばれていくエリちゃんについて私も病院の中に入る。オールマイトとナイトアイはそれを見送ってくれてから、別の方向に歩き出した。オールマイトの車の中で、いろいろ話し合うのだろう。

 

 

 

 

 「一応隅々まで検査したけど、どこも異常はありませんね。健康そのものです。念のため1日検査入院しましょう」

 

 「そうですかー、よかったぁ」

 

 検査、人間ドック並みにいろいろ受けたけど自己診断と同じ結果で終わった。やっぱりエリちゃんの巻き戻しは純生物に限定される個性なのかな?発動型で無機物が生える、とかじゃなくて私みたいな異形型で無機物が混ざってると多分影響されないんだと思う。詳しくは実験をしてみないとわからないけど、いや実験なんて無理だよ、強行しようとしたら私が全部ぶっ壊して中止にさせるからね!ああ、そうだよエリちゃん!

 

 「あの……私と一緒に運び込まれた女の子は……?それと他にもケガをした人がいると思います」

 

 「ああ、それなら俺が見てきた」

 

 「相澤先生!お怪我は大丈夫なんですか?」

 

 「頸動脈をやられた。ロックロックが傷口を固定してくれなきゃ死んでたな。輸血して1日入院して様子見だ。全く俺は不覚を取ってばかりだな……」

 

 首に包帯をぐるぐる巻きにした相澤先生が診察中の扉を開けて入ってくる。私は慌ててあげていたタンクトップを下ろして下着を隠す。後ろを振り返ると輸血パックを何本もぶら下げたポールを持った相澤先生が気まずそうに立っていた。私は医師の先生に頭を下げてから相澤先生と一緒に病室を出る。

 

 相澤先生の話を聞くに、デクくんは無傷、えーくんは若干打撲があるけどほとんど無傷。ファットガムはちょっと無茶したみたいで骨折が何か所かあったみたいだけど元気いっぱいでお腹が減ったって言ってるみたい。通形先輩は少しだけ打撲を貰ったみたいだけど特段なにかはない様子。天喰先輩は顔面の不完全骨折で少しだけ入院。ロックロックもナイフで刺されはしたものの軽傷で済んでるのだとか。よかった~~。

 

 「エリちゃんは、どうですか?」

 

 「まだ眠ったままだが、少々栄養不足なこと以外は問題ない。捕まった死穢八斎會の連中が言うには食事は摂らせていたが自分から食わない場合が多かったとのことだ。エリちゃんの素性も分かりつつある」

 

 今分かってることは、と相澤先生の話を総合するとエリちゃんは死穢八斎會の組長、つまりオーバーホールにオヤジと呼ばれていた人のお孫さんで……娘さんは一般人と結婚するために組を強制的に破門、離縁されてたらしい。それでもヤクザの娘とあれば危険も付きまとうので組長は密かに護衛を付けていたのだが……とある日護衛との連絡が途絶えた。

 

 急いで若頭だったオーバーホールと一緒に娘夫婦の所に行くと……そこにあったのは娘とその夫の服と護衛の服、そしてそれに囲まれて泣きながら気を失ったエリちゃんだった……とのこと。それからエリちゃんの個性検査を闇医者に行ってもらい個性が確定して、オーバーホールは組長を再起不能にして暴走を開始した……。

 

 ああ、なんてこと……つまりエリちゃんは個性を発現すると同時に、自分の両親とその護衛を巻き戻してしまった、ということなんだ。だからオーバーホールは娘として扱わず道具扱いをしていて、あくまで孫として引き取った組長を黙らせた。気を失う直前、おかあさんを呼んだのは私と母親が被ってしまったんだ。だって私も……彼女と彼女の母と同じであろう赤い目にメッシュをしていたとはいえ白い髪をしているものだから。

 

 「今は隔離されている。お前が接触して得たあの子の個性の状態を鑑みての結論だ」

 

 「そう、なりますか。面会謝絶ですか?私なら……」

 

 「ああ、お前なら接触できる可能性がある。強制的に個性を止められる俺もそうなるだろう、目覚めた時次第だ」

 

 そこまで言った相澤先生のポケットから着信音が鳴り響く、点滴で取りずらそうにしながら電話に出て、少し血相を変えて確認を取り、通話を切った。何があったんだろう……?まさか他の人たちに予想外の怪我とかがあったり!?

 

 「楪……まずいことになった。護送中の警官隊がヴィラン連合に襲撃を受けた。護衛のヒーローは殉職……治崎は両腕欠損、幸い証拠品等は無事だったんだが……まさかこんな形で直接的に襲撃をするとは……」

 

 「ええっ!?あの護衛装甲車の群れを直接襲撃したんですか!?」

 

 「ああ。目的が分からん、一番可能性が高いのは個性を消す銃弾だろうが……どうした、楪」

 

 相澤先生が銃弾、と言った瞬間に私の顔がさーーーーっと青ざめる。わ、わ、忘れてたあああああ!!!私はふるふると震えながら相澤先生に向けて腕をだし、その中からにゅっとオーバーホールから証拠品として取り上げた個性を消す銃弾と謎のアンプルを出す。それを見た相澤先生は一拍おいてことを理解したのか、ゆらぁと個性を使いつつ髪の毛を逆立てる。

 

 「……楪」

 

 「ご、ごめんなさいごめんなさい!取り上げたはいいんですけどそのあとエリちゃんのこととかがあって完全に頭からすっぽぬけてて!」

 

 「ほぉう」

 

 「ひいいいっ!?」

 

 完全に私が悪いので反論すら出来ずそのまま頭を抱えてうずくまる私、それを見下ろす相澤先生の眼から個性の光は消えない。違うんですわざとじゃないんです分かってください!うえ、うえええん!まさかこんな初歩的どころか最悪なミスをするだなんて!情けないどころか仮免を持つセミプロとして失格だよぉ!恐怖に震える私を見る相澤先生はため息を一つついて個性を解除する。

 

 「……まァ、それでヴィラン連合の襲撃からその銃弾を守れたと思えばファインプレーではある。だが2度目はないぞ、心に刻めよ」

 

 「はいいいいっ!!!」

 

 相澤先生がぼりぼりと頭を掻きながらお許しの言葉をくれて私はそれに急いで立ち上がり敬礼をしながら心から謝る。ごめんなさい相澤先生、こんな教え子で。警察にそれ引き渡すぞ、と言った相澤先生に一も二もなく頷いて外で待機している警察の人に証拠品として渡しに行くことにした。

 

 「楪さん!相澤先生!」

 

 「あ、デクくん!えーくんたちも!」

 

 「相澤先生、無事でよかったわ。いまリューキュウ達が現場検証をしてるのだけれど、インターン生は先に病院に行きなさいと言われたのよ」

 

 「心配かけて悪かった。蛙吹、麗日、緑谷、切島、楪。とりあえず今日は病院で検査して1日待機だ。明日になってからまた色々あるだろう」

 

 私は警察の人に証拠品を渡す。そこまでやってなんか気が抜けちゃった。待合室のソファにずりずりと座り込む。相澤先生は警察とのアレソレがあるみたいですぐに出て行ってしまった。私の隣にえーくん、反対隣りに梅雨ちゃんが座り、デクくんとお茶子ちゃんも座ってヒーロースーツ姿の見習いヒーローが無言でソファを占領するという中々にシュールな絵面が完成した。

 

 「なんか……実感わかねえ」

 

 「うん、僕なんて結局……ヴィラン連合を取り逃がしちゃったし」

 

 「でも……作戦自体は成功だわ。大きなけが人もいない」

 

 「そうやんね!希械ちゃんめっちゃすごかったって聞いたよ!治崎を確保して、エリちゃんを守ったって!」

 

 「そうだね~そうなんだけど……現実感がないや……それに」

 

 そこまで言った後で、私たち全員のお腹が音を立てる。みんな一斉にお腹を押さえてお腹が空いた、腹減った~って。なんか心が追い付けてない、ふわふわしてて、死穢八斎會の本部に置き忘れてきたんじゃないかなっていう感じ。突発的な事件じゃない、捜査として自ら関わってそして解決した今回の件は、私たちに大きな成長をもたらして、終了することが出来たんだろう。ご飯食べようか、とデクくんが提案して、その前に体を奇麗にしましょ、と梅雨ちゃんがいう。病院のシャワー室って借りれるのかな。借りれるなら、着替えたいなあ、あ、でも制服事務所に置きっぱなし。どうしましょ。

 

 

 

 

 「ねえ、楪さん。エリちゃんがどうなったか、聞いてる?」

 

 「うん、暫く隔離なんだって。やっぱり、触れ合える人は少ないし、相澤先生みたいに個性を強制的に止められる人もいないから」

 

 「そんな……」

 

 「しょうがない、と私も思うよ。だってまた個性で人を戻しちゃったら……傷つくのはエリちゃんだから」

 

 「そうだよね……」

 

 「だから、退院したらデクくんもみんなで一緒に迎えに行こ?きっとエリちゃんもそれが嬉しいよ」

 

 一夜明け、私たちは朝食の後入院着のまま病院の休憩室でジュースを片手にエリちゃんのことについて話していた。デクくんは一番心配だろうし梅雨ちゃんやお茶子ちゃん、えーくんも同様。通形先輩と波動先輩はいま天喰先輩の病室に行ってる。なんだかんだ天喰先輩がインターン組のなかで一番重症だ、えーくんもこの後行くって言ってるし私もいくべきかな。

 

 「ここにいたか」

 

 「緑谷少年、ちょっと」

 

 「ナイトアイ、オールマイトも!」

 

 「おーれーもー!いる!ってね!」

 

 「通形先輩、昨日はお疲れ様でした」

 

 「楪も!大活躍だったじゃないか!」

 

 私たちの反省会に入って来たのはサー・ナイトアイにオールマイト、さらには通形先輩。このメンツでデクくんってことはワンフォーオールのことかな。お話があるからおいで、というオールマイト先生の言葉で何となく察しがついたらしいデクくんがちらっと私を見るけど、それは私が首を突っ込む話じゃないかな、デクくんだけだよ。私は、待ってるからね。ひらひらと私はデクくんを送り出す、もちろんにっこり笑うのも忘れずに。

 

 デクくんはそれで伝わったらしく、頷いてジュースを一気飲みするとゴミ箱に捨ててからオールマイト先生たちについていった。なんなのかしら、と梅雨ちゃんが何時ものように口元に指を立てながら首を傾げているけど、オールマイト先生はデクくんの個性の使い方の師匠なんだよ、と嘘と真実を混ぜ込んで教えるとそうなのね、と納得した様子。いや、思ったことは口に出すと散々公言している彼女のことだし、何かを察して飲み込んでくれたのかもしれない。察しが良くて助かるな、今度ゼリーを作って差し入れてあげよう。

 

 「ああ、いたか楪。ちょっと」

 

 「あれ?今度は相澤先生?」

 

 「こんどは?」

 

 「さっきオールマイトとナイトアイがやってきて緑谷ちゃんを連れて行っちゃったのよ」

 

 「なるほどな」

 

 それでどうしましょうか、となっていた私たちの所に現れたのは相澤先生、輸血の点滴はなくなっていて、昨日いたリカバリーガールから治癒を受けたらしく首の包帯も薄いものに変わっている。今度は私に用なのかな?どうしたのかな。

 

 「まずお前らに伝えておくべきだと思うから言うが、エリちゃんの目が覚めた」

 

 「ホントですか!?」

 

 「良かったじゃねえか!」

 

 「よかった~~」

 

 「ええ、嬉しいわ。ケロ」

 

 「それでだな、目覚めてからずっと楪を探している。お前ヒーロースーツ残していっただろ。服だけあったせいで個性でお前が消えたんだと思い込んでいる、会ってやれないか?」

 

 「!!会います!」

 

 相澤先生の言葉に、私は一も二もなく頷いた

 

 

 




 ナイトアイ、オールマイトと和解する。エリちゃんがこんなに早く目覚めたのは原作だと相澤先生によって起動途中のPCから電源引っこ抜くみたいな形で個性を終わらせたのに対し、今回はエネルギーを最後まで使い切る、いわばバッテリーを使い切る形で終わったのでそこの違いということで。

 あとこの世界のエリちゃんのご両親は普通です。普通にエリちゃんを愛してました。以上

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