「じゃあ、5回目のミーティングを始めよう。メリッサ、進捗を」
「うん、おじさまの身体データは揃ってきたわ。ただ、マッスルフォームとトゥルーフォームどっちで作ればいいか……」
「マッスルフォームの維持時間は30分だったな?トシ」
「ああ。だが無理をすればするほど時間は短くなる。全力で動くなら15分が限度だろう」
「なら全力戦闘は15分で想定したほうがいいですね」
夜11時、ベッドの上でハロと眠っているエリちゃんを気にしながら私は脳内通信でシールド博士、メリッサさん、オールマイト先生と会議をしていた。休校が開けるまであと二日、オールマイト先生の新ヒーロースーツのコンセプトだけは明確にしておこうという話になったからだ。
エリちゃんがいる生活はなんだか張り合いが出て楽しい。午後に学校を案内した時も見たことない施設に興味深々だったから思ったよりもすんなりとここでの生活に馴染んでくれるのかもしれない。ついでにサポート科に顔を出してシールド博士とメリッサさんにエリちゃんを紹介したりもした。私の足元から離れなかったけど、きちんと挨拶は出来たので満点かな。
「だったら両方に合わせて作っちゃいましょう」
「それが出来ればベストだがな……既存の超圧縮技術でも可変は流石に厳しいものがある。構造が複雑すぎて強度が保てない」
「超圧縮技術もいいですけど、ナノ技術が実戦投入できそうなんです。F技術についてはまだまだ理論実証段階なんですけど……」
「ほんと!?ナノテクノロジーよね!?」
「はい、メリッサさんのいうナノテクノロジーです。ただ、時間がもうちょっとだけ欲しいんですけど……」
私の最近の研究テーマは一応対人威力を確立したビームから別方面へ移っている。それがシールド博士から提案されたナノテクノロジー技術、超圧縮のその先の技術だ。机上の空論だったけど、私の個性で実戦段階までもっていくことが出来そうなの。もう一つの技術はまだできるかも?くらいの扱いなので封印中。いや私の個性でも暴走しかねなくて……危なすぎるんだ。
「とりあえずこれをフルガントレットに組み込んで実験してみたいんですが」
「いいと思う!私に設計やらせてもらえないかしら!?」
「お願いできますか?ナノテクの実物は明日か明後日にでも持っていきますので」
「まったく……君の個性がなければ不可能な作り方をしてるな。だがこれならトゥルーとマッスルを行き来しても問題なさそうだ。希械くん、私にも実物を見せて欲しい。ヒーロースーツに組み込めるか試してみよう」
「了解です」
ナノテクで使うナノマシンの設計図を二人に送るとメリッサさんは気色ばんで設計に乗り出し、シールド博士は流出防止のために私の個性がないと作れない作り方をしているのを見抜いてため息をついた。ふふふ、既存の技術で作ろうとしたら専用の設備と滅茶苦茶な額のお金にながぁ~~~~い時間が必要だ。
それにたとえ設計図が流出してもコピーされて利用されるより私が対策を打つ方が早いようにしているのだ。何だったらこのナノマシンは私の号令で自己崩壊するように根幹部分の外せないところ、いわばブラックボックスと言われる部分にプログラミングを仕込んでいるし。これを外すとただの金属の粉になるのだ。
そんなこんなで色々とオールマイト先生の意見を取り入れつつやいのやいのやっているとむず、とエリちゃんが身をよじった。起こしちゃったかと私が通信を繋いだままベッドに座る。立体映像が向こうにも届いているのでエリちゃんのことは3人にも見えている。寝ぼけ眼で寝転んだまま私に向かって
「おかあ、さん……」
「うん、ここに居るよ」
「ごめん、なさい……ごめんなさ……」
「うん、うん……」
エリちゃんは、夜中にうなされる。昨日もそうだった、私の隣で眠りながら自分の両親にひたすらに謝っていた。フラッシュバック、両親の記憶が彼女を苛んでいる。個性の爪痕は、こんなにも深い。頭を撫でて声をかけると次第にエリちゃんの寝言は落ち着いていき、安らかな寝息を取り戻した。閉じられた瞳からツゥ……と涙がこぼれる。それを拭って私は、沈痛な面持ちで博士たちに向き直る。
「……PTSDか」
「そんな、ここまでだなんて……」
「きっと、今日はお母さんの夢でしょう。昨日はご両親でした。何もできない自分が悔しいです」
「自分を追い詰めてはいけないよ、楪少女。ただ傍にいるだけでもエリちゃんにとっては救いとなっているんだ。君はもう既に、彼女を救い始めている。続けて行けばきっと、彼女の笑顔が見えるハズさ。そのためにも」
「私が笑顔でいないと、ですね」
「その通り!」
投影映像のオールマイト先生がムキっとマッスルフォームに変わって指を立てる。そうだよね、私よりも急に生活の場所が変わったエリちゃんの方がずっと不安なんだ。私が笑顔でいないといけないよね。そろそろ終わろうか、とシールド博士の提案で今日の会議はここまでということになった。彼が主導するオールマイト先生のニューヒーロースーツは最新技術を惜しみなく使用する予定なので信頼性だけは損なっちゃいけない。実証は急ぎで、だけど丁寧に。頑張ろう。
「インターンについてだが、ヴィラン連合の出現を重く見てこれ以上は中止ということになった」
「それは……仕方がないですよね」
「だー……もうちっと先輩たちと一緒にやりたかったんだけどなあ」
翌日の朝食の後、そういえばインターンについてはどうなるのだろうか、とインターン組でエリちゃんと遊びつつ話し合っていたところにぬるっと相澤先生が出現して何事もなかったかのような口調でインターンの中止を伝えてきた。それは私たちにとっては半分予想できたことではあったけど、正直に言えば残念というほかない。だってまた中途半端ー!うう……職場体験に続きこれまでも……私、何かしましたか!?悪い事なんてしてないよ!
「そうね、残念だけど……ヒーローとして働くことができたわ。大きな経験を得たと思うの」
「そうやね!また落ち着いてきたらできますよね!?インターン!」
「ああ。少し時間は置くことになると思うが、出来るようにはなるだろう」
「そうですか!よかった……あ、そうだ。相澤先生。外出許可が欲しいんですが」
「……理由は」
「エリちゃんの服を買いに行きます。いつまでもこれじゃあ……」
私は病院で買いそろえた無地のシャツに無地のスカートを履くエリちゃんを先生にずいっと見せる。お料理の材料については学校から分けてもらえるようにはなったけど、エリちゃんは女の子なのだ。おしゃれというレベルではないにしろ、無味乾燥な服じゃなく同年代の子たちが着ている服と同じものを着せてあげないといざ学校に通いだした時に仲間外れにされてしまうかもしれない。
「……俺が買ってきたのがあるだろ」
「それ本気で言ってます?これですよ、これ」
「相澤先生、さすがにこれはないと思うわ」
「あー……これ子育てに慣れてないお父さんのチョイスやね」
「……そんなに悪いか、これ」
「せめてミッドナイト先生に頼んでくれれば……」
私がつまんで取り出したのは無駄にフリルが付いてて、原色のピンクで、大きくGANRIKINEKOがプリントされたトレーナーに、フリルだけで形成されたスカートだった。こっちも原色ピンクにさらにスカイブルーが追加されて段々で色が変わっている。アメリカの子供服か?日本だと派手過ぎるよこれは。ちなみにエリちゃんに着るか聞いたらきゅっと眉根を寄せたのでやめました。
「仕方ないな。俺が付いていく、それでいいな」
「はー……ありがとうございます。エリちゃん、お出かけしようお出かけ。あ、下着店にも入りますけど大丈夫ですよね?」
「正気か?」
「普通に女の子なんですからそういうお店で選ぶべきでしょう。それに実は私も色々あってですね」
「イヤ言うな、セクハラになる、俺が。ミッドナイトに頼むから待ってろ」
そうなのだ。心操くんのトラックの件で忘れていたけれども、私は今現在……ブラジャーとパンツのサイズがあってない!ブラジャーはともかくパンツまで合わなくなったのはショックだった。だって……太ったってことだもの!は~~~~…… 私含む女子3人から指摘を受けた相澤先生は頭をガリガリとしながらも必要性を感じてくれたのか許可をくれる。そんなわけで
「えーくん、ついてきてくれない?」
「荷物持ちか?任せろ!あーでも流石に女用の下着店は勘弁してほしいぜ……」
「じゃ、それは私が行くわ」
「わたしもー!」
「たくさん買うなら僕も付いていくよ。荷物持つくらいしかできないけど」
その場のノリでインターン組全員とエリちゃんのお出かけが決まる。エリちゃんはお出かけについてはあまり恐怖を感じてないのか、それともみんなが一緒だからか……こくりと頷いてそわそわしだした。私はそこら辺を跳ね回っていたハロを回収してイヤリングにはめ込む。準備してくるぜ!とえーくんとデクくんが部屋に戻り、私たちも、と言ったところで玄関が勢いよく開き、ミッドナイト先生が「エリちゃんの服を選べるんですって!?」と登場した。快く受けてくれて有難いな、と思いつつヒーロースーツで行くのか、と若干不安を感じるのだった
「はああああ~~~~」
「希械ちゃんどうしたの?そんなにため息なんてついて……」
「……バストがワンカップ上がってたの」
「羨ましいわ」
「出費がバカにならないの……被覆控除で何とかできるヒーロースーツはともかく、普段使いのやつ全部買いなおしだよ!?おかげで荷物が……」
「成長期だもの、仕方ないでしょ。そ・れ・に、貴方のプロポーションは問題ないどころか優秀よ。毎日努力してるのね」
こそっと梅雨ちゃんに耳打ちしてため息をつく。あああああ~~~!予想はしてたけど!してたんだけど!ブラジャーもパンツも買いなおし!出費にして……イヤ言いたくない。えーくんに持ってもらっているソレの数で察するべし。まだ大きくなるんだ……私。そろそろ止まってもいいと思うの。それはそうと!エリちゃんがすっっっごく可愛くなった!白のシャツに赤い吊りスカート!シンプルながらもよく似合っているデザインだよね!
「ミッドナイト先生、さすがですね」
「ふふ、みんなで選んだ服気に入ってくれて良かったわ。これで暫くは大丈夫そうかしら?」
「そうですねえ。基本的な生活用品は校長先生から差し入れて頂いてますし、服はこれで揃いました。あとは……これで最後ですね」
「それは……白いハロ?」
私が腕の中から取り出したのは、デクくんが指摘した通り真っ白に赤い目をしたハロとそれがはまっているネックレスだった。エリちゃんがハロを気に入ってくれたのはすごく嬉しかったし、ずっと仲良くしてくれてた。だけど、このハロは私のハロでずっと彼女と一緒にいれるわけじゃない。だから、彼女のための、彼女の一番になれるハロを作った。
エリちゃんの髪と目で色をお揃いにしたハロ。性能は私のハロより下がるけど、これは万能であるべきというコンセプトで作った私のハロと違い、白ハロはエリちゃんの友達兼、護衛役なのでそっち方面に特化したのだ。つまりこのハロもサポートアイテムの区分に入る。白ハロの中にはエリちゃんを護衛するために作った外骨格「ギガンテス」が封入されている。万が一の場合白ハロの自己判断で外骨格を起動して中にエリちゃんを乗せ、飛行で離脱あるいは防衛行動をとる様にプログラムしてあるの。おそらく、狙われるかもしれないから。
「え……わたしの、ハロ?」
「うん。エリちゃんだけのハロだよ。白ハロ、起きて」
『オキタ!オキタ!エリチャン、ハロ!ハロ!』
「わぁ……」
「よかったね、エリちゃん」
ネックレスをエリちゃんの首にかけてあげて、白ハロに呼びかけると、私の起動コマンドを認識した白ハロが起動してエリちゃんを認識し、挨拶をした。エリちゃんはそれに感嘆の声を上げた後に、ぐす、と鼻を鳴らしてから……大声で泣き始めてしまった。私は慌てて荷物をその場に降ろしてエリちゃんを抱っこする。
「エリちゃん、どうしたの!?ごめんね、気に入らなかったのかな……?」
「ち、ちがう……う、うえええん……」
「そうじゃないわよ楪さん、嬉しいのよ。どうしたらいいか分からなくて、泣けてきちゃうの」
私に力いっぱい抱き着きながら泣いているエリちゃんに動揺していた私は思わず慌ててしまう。でも、ミッドナイト先生がエリちゃんの様子を見て、断言してくれた。そっか……エリちゃん嬉しかったんだ。胸をなでおろした私が改めてエリちゃんを抱きしめる。その頬に私の頬をくっつけて、落ち着くまで待つ。周りの皆は、微笑みながらも怒ることなくそれを見守っていた。エリちゃん、私は……いや、私たちは貴方がとっても大事なんだよ。だから、貴方が立てるようになるまでしっかりと私たちが支えていくからね。白ハロ、エリちゃんをきちんと守る様に。
エリちゃん専用ハロ(白)登場です。さて更なる強化フラグが立ちましたねぐへへへへ。仔細はまだまだ先ですが
ちなみにどうして楪さんが頬と頬をくっつけているチークキスをしているかというと手や足は機械なので体温がないからですね。暖かさの共有はこんな感じになると思いました
感想評価くださると作者喜びます。ではでは次回でお会いしましょう
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ