「というわけで臨時講師の楪少女と通形少年、そして観客のエリちゃんだ」
「なんか増えてる!?」
「ヤッホーデクくん」
「手伝いに来たんだよね!」
「こん、にちは」
みんなのパートわけが決まった翌日の事、訓練終わりに私はエリちゃんとお散歩に行ってから文化祭の準備に取り掛かろうと思っていたので、エリちゃんと雄英の敷地内をプラプラしていたらオールマイト先生から少しだけ時間が欲しいと呼び出しを貰った。なので私はエリちゃんを抱っこしてオールマイト先生がいる森の中に来たら、なぜか通形先輩もいらっしゃった。エリちゃんは通形先輩を見ると少しだけ恥ずかしそうに挨拶をしたし、通形先輩は笑顔でエリちゃんに構ってくれる。エリちゃんはかわいいな~。
通形先輩は、死穢八斎會の事件後病院にてサー・ナイトアイからワンフォーオールのことや弟子に取った理由を話されている。通形先輩はそれに全く怒ることはなく、むしろ事件前よりもナイトアイと固い師弟関係を結んでいるみたい。たまにメールで今日のオールマイト先生についてナイトアイに報告したりしてるからそこら辺の雑談でナイトアイから聞いたからきっと間違いない。フィギュア第二弾はもうすぐ発送です。デクくんの分もあるよ!
それで一応話を聞くに、デクくんがワンフォーオールを一定段階まで習得できたというのを判断したオールマイト先生はワンフォーオールの次の使い方を教える段階に来たということで、デクくんにとある技をレクチャーしようとしてるみたい。それが、サポートアイテムなしで攻撃に風圧を纏わせて遠距離攻撃をする方法。ワンフォーオールは出力が15%を超えると攻撃に風圧が伴い始めるのは体育祭前の測定で分かってたことなので、そこの使い方を教えるということなのだろう。
「楪さんは分かるんだけど……通形先輩はなんで?」
「ふむ、それは通形少年がこの個性の使い方に最も適した人材だからだ。まず緑谷少年、現時点で安定して壊れずに引き出せるのは12%、そうだね?」
「はい!だから、15%はとても……」
「ところがどっこい!」
「どっこい……?」
ここで私が口を挟む。15%を引き出すのは無理だというデクくんの声を全否定。ぴしっとデクくんを指さすとエリちゃんも真似して指をさした。それにちょっとほっこりしながら私は5月に測定したオールマイト先生の個性の使い方をデジタル分析した映像を見せる。スマッシュの瞬間にスローになって、視覚化されたエネルギーの流れが移る中、デクくんが何かに気づく。
「常に同じ出力じゃない……!?」
「その通り!君の個性は私とよく似ている!私は常に100%を意識していたわけではない!それはつまり……!」
「攻撃の瞬間だけ、インパクトに合わせて出力を爆発させる……!だけど、結局上限の話は……」
「そこだよデクくん。つまり、インパクトの瞬間に出力を一気に上げる。体が壊れる限界点を見極めてね。100%なら一瞬で壊れる。だけど……それより低い出力なら短時間耐えられる可能性は十分にあるんだよ」
そう、デクくんのワンフォーオールの許容上限は12%だけどそれ以上にあげた瞬間に100%を素で引き出したような壊れ方はしない。負荷の大きさに合わせて、壊れる。出力の大きさと怪我は比例関係だ、低%なら長く、高%なら短く、壊れるまでの時間が変わる。12%が無理なく使えるなら、それ以上を一瞬だけ使うことはできるかもしれない。そこで
「そこで、俺というわけさ!君の個性、難しいみたいだからね!ただ、俺との共通点として体の部位で個性を発動することができるって聞いたよ!」
「……!全身に個性を回しつつ1部位だけ一瞬で高めて遠距離攻撃!」
「そう!透過とは勝手が違うけど、アドバイスはできるハズさ!同じ発動系だからね!だからこそ今日は俺が臨時講師ってわけ!」
「私はデータでお手伝いするよ。エリちゃんはデクくんを応援してあげてね。頑張れーって」
「……デクさん、頑張って」
「……っ!うん!頑張るよ!」
「はいというわけでまずは20%のフルカウルお願いしまーす」
エリちゃんが聞いてるのでワンフォーオールの話は意図的に避けつつデクくんが風圧攻撃を習得するための道筋を立てて説明をすると、もともと努力型かつ頭を使うタイプなデクくんにはすぐに色々理解をすることができたらしい。私に抱っこされた状態でぎゅっと手を握ってデクくんを応援するエリちゃんによほどの気合が入ったのかデクくんは鼻息荒く、ワンフォーオールを発動する、12%ではなく20%……少し顔色が苦しそうだけど、壊れない。
「戻して!」
「はっっ……ふぅ……」
「うん、その状態なら2秒持つね。つまりデクくんが目指すのは体の1部位で20%以上を1秒以内にあげて戻す、かな」
両目でデクくんの体に自壊の症状が出た途端、私は強くデクくんに叫ぶ。デクくんは私が叫んだ瞬間にすぐにワンフォーオールを纏うのをやめた。少々傷んだのか額に脂汗が滲んでいる。大体データは取れたね、今のを考えるに25%を瞬時に引き出すのを目安に考えたほうがよさそう。さてここからは通形先輩の出番だ!
「よし緑谷!ここからは俺が教えるよ!先ず、人体で一番繊細に動かせる部分はどこかな!?」
「指です!」
「そう!だから、最初は指からだ!俺の個性も実はそういう風に末端から訓練していったんだよね!じゃあ!後は試行回数と努力だ!いくぞ!」
「はいっ!」
通形先輩の声にデクくんも気合を入れて返し、サー・ナイトアイ仕込みの個性制御術をデクくんに伝授していく。私はそれをデータで取りながら、マッスルフォームに変身して二人を見守るオールマイト先生を目を白黒させて見つめるエリちゃんの頭を撫でるのであった。
「しゃー!曲決まった!後は死ぬ気で練習うううう!」
「ちげえ!殺る気だ!おら上鳴そこミスってんぞ!」
「演出隊と相談して私が入る場面ラスサビちょっと前になったんだけど、ここら辺からでいい?」
「ん、そこがいいかもね。TAB譜はこっからだね。何かわかんないとこある?」
「響香ちゃんがすごく丁寧にたくさん教えてくれてるから大丈夫!夜に練習してみるね」
そんなことがあって今は休日、朝ごはんの後にエリちゃんを相澤先生に預けて、私はバンド組の練習にいる。午後はダンス隊に行って振付決めをえーくんと三奈ちゃんと一緒にやる予定だ。演出隊の瀬呂くんに砂藤くん、口田くん、轟くん、障子くんにも話を通して大まかな流れを決めている。曲が決まったので私がダンス隊から外れてバンド隊に合流するタイミングはここ!というのを共通で決められたので、超練習すればいいのだ。
「夜やるならベースかそっか?」
「ん?これでやるから大丈夫だよ。音出すとエリちゃん起こしちゃうかもしれないし」
「便利だなー、それ」
私は手元に出現させた立体映像のベースをじゃん、と響香ちゃんに見せる。実物みたいな重さはないけど、触った感触とかそういうのを私の手のデータを弄って干渉することであたかも実際に演奏してるようなリアリティをもって練習することができる。もちろんホンモノを握った方がいいに決まってるんだけど。夜にジャンジャカやってエリちゃんを起こすとか考えられないので日中で練習しまくることにした。
そうこうしてるとドタドタドタドタバンッ!と練習している空き教室のドアが勢いよく開いて誰かが転がり込むように入ってくる。見覚えのあるブドウっぽい頭、峰田くんだ。彼は息も絶え絶えになった状態で荒げた呼吸を必死に落ち着かせ……いやさらに荒くなってない?
「おい峰田、どうしたよ」
「如何したもこうしたもあるかぁ!楪か八百万!オイラの一生の頼みを聞いてくれ!」
「は、はい。何でしょう?」
「ミスコンにでてくれぇ!!!!」
「ミスコン?あれ?そんな催しあるの?初めて知った」
「相澤先生!黙ってたんだよ!クソ!何としてでも楪か八百万を送り込まねぇと……」
「却下だ、峰田」
ミスコン、ミスコンテスト?へー、この学校ってそんな催しものまでやってるんだ。意外、国立だからそういうのって保護者の目が厳しくてできないものだと思ってた。魂からほとばしるような峰田くんの叫びに気圧されてしまう私たち、勢いのまま押せると判断したらしい峰田くんがこちらににじり寄ってくるのを捕縛布がグルグル巻きにする。それができるのは、いつの間にか現れた相澤先生だけ。
「出し物一つ決めるのにあそこまで非合理的な時間を使うおまえらにミスコンなんて知らせたら余計に収拾が付かなくなる。もう参加も締め切っているしな、諦めろ」
「イヤだぁ!もう一回あのドレス姿の楪と八百万を見てぇんだ!あと耳郎も」
「ウチはついでか!」
「ぎゃああああっ!!!」
「くだらねえ」
ついで扱いされた響香ちゃんの乙女の怒りが峰田くんを直撃する。爆豪くんがぽつりとつぶやいたその言葉が今のその現状を表していた。どれだけ見たいんだ峰田くん、百ちゃんのドレスがもう一度見たいのは何となくわからなくもないが、私は違うでしょう。女の子なら何でもいいの?そんなんだからもてないんだよ、というかもうちょっと欲望を封じ込めたほうがいいと思う。というか封じ込めて、お願い。私たち1-Aだけ妙にセクハラに耐性が付きだしたの峰田くんのせいだからね?
「まー確かに、峰田の気持ちも分からなくないけどなあ。楪や八百万に耳郎、麗日の正装似合ってたしな」
「……気にならないと言ったらうそになる。俺は見れなかったからな」
「可愛かったぜー?写真とっときゃ良かったな、爆豪?」
「んな下らねえことに脳容量使ってねーんだよ俺は。さっさとやり直せや」
「ういうい」
相澤先生に引きずられていった峰田くんを放っておいて私たちは練習を再開する。私が参加するタイミングは先なのでタイミングを確認しながらラスサビで入る。爆豪くんは相変わらず完璧だし、響香ちゃんの安定したベースのおかげでみんな何とかついていけてるって感じ。私も頑張らねば。弾けるだけだからね、弾きこなさないといけないわけで。むーん、むずかしい。
「あ、心操くんだ」
「しんそう?」
「私のお友達なの。エリちゃんも仲良くしてあげてね」
「うん」
文化祭というやつは、実は開催日当日よりも、準備期間が一番楽しいだなんて言われている。私もそれは何となく今察しているところで、研究開発を一旦ストップしてみんなと交流しながら文化祭の準備をするのはとっても楽しいの。それで今は私、休憩中。エリちゃんと一緒に文化祭の浮ついた雰囲気が漂う雄英の中を歩いていく。
すると普通科のC組の教室を通りがかった時、クラスの皆と一緒に作業をして何やら大工仕事をしている心操くんがいた。思わずぽろっと声を出すとそれを聞いていたエリちゃんが首を傾げる。私とエリちゃんは身長差がありすぎて手を繋ぐことが難しいので基本抱っこして移動するか、エリちゃんの歩幅に合わせてゆっくりと移動している。今日はエリちゃんは自分の足で歩いている。
「おい心操、師匠来てんぞ」
「師匠って誰だよ……って楪か」
「わー、なんか小っちゃい子いるー!」
「あれじゃね?校長先生の話にあった保護してる子ってやつ」
あっちゃー、ちょっと足を止めたせいで気づかれちゃったね。視線が集まってしまったことに少し怖くなっちゃったエリちゃんが私の足にきゅっと抱き着いて後ろに隠れる。心操くんははやし立てる周りを諫めてから癖になってる首を抑える仕草をしつつトンカチを置いてこちらにやってくる。
「なに?」
「お散歩中なの。エリちゃんをよろしくお願いしまーすってあいさつ回り、かな?」
「ふーん……俺、心操人使って言うんだ。うちのクラスはお化け屋敷だっていうから縁はないだろうけど、よろしくね」
「……よろしく、おねがいします」
「うん、よろしく」
エリちゃんに視線を合わせる為にしゃがみ込んでくれた心操くんがエリちゃんに挨拶をしてくれる。そうか、C組はお化け屋敷やるんだ、エリちゃんにびっくりドッキリ系はちょっとアレなので確かに縁はないかもなあ。私の後ろから顔だけ出したエリちゃんが心操くんにきちんと挨拶をしたので頭を撫でてあげる。その様子が微笑ましかったのか、私がトレーラーから助けた人たちを中心にこっちにわらわらとやってきた。
「そっかー、こんな小さい子いるならお化け屋敷はやばいかもねー」
「ヒーロー科震えあがらせてやるからクラスに宣伝してくれや、これチラシな」
「……ま、色々やるから楽しんでいってくれよ。覚悟しておいた方がいいかもな」
「うーん、機会があったらお邪魔しようかな。心操くんが私を驚かせられるか、見ものだねー」
「言ったな?驚かせてやるから来てみろよ……無理せずにな」
「うん」
C組の皆は意外とエリちゃんに好意的で、女子はしゃがみ込んでエリちゃんとコミュニケーションを取ろうとしてくれる。ただ、ヒーロー科の皆ほど扱いに精通しているわけでもないから私はさりげなく心操くんの傍によってエリちゃんが囲まれないように抱き上げつつ話を広げる。親子みたい、と誰かの声が聞こえる。そう見えちゃうのかな、でも……その役目は私じゃないんだよね。
この作品において心操くんが所属してるC組はヒーロー科への悪感情がありません。楪さんがトレーラーから助けた人がクラス中に広めてくれたからですね。あと心操くんはきっとクラスにヒーロー科のフォローいれてるに違いない(願望)
では感想評価よろしくお願いします。次回でまた
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ