「ごめん皆!お待たせ!」
「遅ーいデクくん!心配したんだよ!」
「そうだよ~!デクくん、電話置いてっちゃうもんやから……」
「いやその……面目ない。ちょっと山降りるときに転んで気絶しちゃってて……」
「えーーー!?」
現在9時45分ちょっと前、ギリギリのギリギリでデクくんは帰ってきた。デクくんの話によると山を走って降りるときに勢いが付きすぎて転んで木に頭を打ったせいで暫く気絶していたとのことで、リカバリーガールに診察をしてもらっていたから遅れたとのことだ。もう!なんて危ないことをしてるの!エリちゃんがいなくてよかった……不要な心配をかけちゃうところだった。もう既に会場でスタンバイしてるんだよ、皆も。エリちゃんと通形先輩も。
私とお茶子ちゃんは時間ギリギリになって青山くんと一緒にステージ裏に駆け込んできたデクくんに向かって二人で詰め寄る。あと1分遅かったら私、衛星と監視カメラを全部ジャックしてデクくん探すつもりだったんだからねー?反省してください、と怒ってたらしいハロにごちんと頭に乗っかられたデクくんに指を立てる。
とにもかくにも、これで役者は揃った。ここからはノンストップ、全力の全力だ。ただただ、走りぬけるのみ。伝えるんだ、私たちの思いを。ぶつけろ、私たちの願いを。午前10時ちょうど、幕が開いた。
「どんなもんだー!1年生!」
「ヤオヨロズ!ヤオヨロズ!」
ざわざわと広がる喧騒の渦、バンドシャツ姿の私たちが静止した状態で腕をあげて止まっている。開幕の号令は、我らが才能爆発マン、爆豪くんだ!
「いくぞゴラアアアア!!!」
「よろしくお願いしまぁぁぁぁす!」
天に掲げた彼の両手から個性の大爆発が起きる。続けざまの高速ドラミングによりインパクトを与えて観客の心をがっちりつかむ!音で殺る!宣言通りのその勢いに私たちも乗る、イントロを一斉に弾き始めたバンド隊、響香ちゃんの挨拶で一斉に私たちダンス隊のバンド服がフォールドプロジェクターによって専用衣装に変わった。響香ちゃんの歌声が駆け抜ける中、私たちは踊り始める。
「服変わった!」
「おお!いいじゃん!」
ステップ、ジャンプ!バンド隊の激しいリズムに合わせて踊る私たち。ヒーロー科の厳しい訓練で鍛え上げた身体能力を十分に活かしてステージを縦横無尽に跳ね回る。そして、最初の見せ場、デクくんと青山くんの出番だ!一斉に脇にはけた私たちと逆に中央に出るデクくんと青山くん、全員でバッと二人を指し示すポーズをとる。観客の注目が二人に集まり、その瞬間デクくんが青山くんを上空へぶん投げる。そして青山くんは回転しながらヒーロースーツの機能を使ってミラーボールのようにネビルレーザーをばらまいた。
上空で天井近くにいた障子くんに上下逆でキャッチされた青山くんにロープが取り付けられる。それと同時にハロが操る轟くんの氷を削るダイヤモンドダスト発生装置から細かい氷が吹き荒れ、青山くんのネビルレーザーの光を乱反射する。そしてサビに差し掛かった。爆豪くんのドラムが加速し、響香ちゃんの歌に熱がこもる。
峰田くんが四方八方にもぎもぎを投げると同時に、上のキャットウォークから瀬呂くんのテープが発射されてもぎもぎを巻き込み芯のような形になる。それを追うように轟くんの氷結が走って観客の真上に氷でできた橋が完成した。そして私はお茶子ちゃんとタッチしたダンス隊を次々放り投げて氷の橋の上に送る。私自身もブーストで飛び立ち、圧縮ボックスを砂藤くんが投げて、それが元に戻り、シールドビットとなる。それを足場にデクくんとえーくん、三奈ちゃんと一緒に観客の中を飛び回った。
「楽しみたい人ー!ハイタッチー!」
お茶子ちゃんとハイタッチした人が次々と浮き上がる。瀬呂くんのテープで安全を確保して、さらに投影映像により観客の手拍子、足踏みにエフェクトが付いた、エフェクトの星が舞い散る中、私がえーくんと三奈ちゃんを空中でキャッチし、ステージに舞い戻る。ここから3人での見せ場!
ダンス経験者による三奈ちゃんを中心としたアクロバットなダンスに観客がさらに沸いた。踊りながら、私は観客席を見る。そしてすぐに、見つけた。通形先輩に抱き上げられてこちらをきらきらとした瞳で見つめるエリちゃんを。楽しんでくれてるみたいだね!それなら私、もっと頑張っちゃうよ!
ラスサビ直前、皆がジャンプして後ろに宙返りする。その瞬間、光のゲートが発生し、皆がそれをくぐった瞬間もう一度衣装が変わる。黄色を基調とした衣装から、赤が眩しい情熱の色へ。再度の早着替えに観客たちの熱は最高潮、バンド隊の衣装も同じように光のエフェクトに包まれて様変わりする。
後ろに下がった私は、立て掛けてあったベースを手に取った。ストラップを肩にかけて響香ちゃんと一緒に前に出る。スタンドマイクからマイク本体が分離して響香ちゃんの口元に追随している。えーくんと三奈ちゃんが手を振ってからシールドビットで作られた階段を駆け上がって氷の橋のあちこちに分散したダンス隊と合流する。
響香ちゃんと目を合わせて、合図。ラスサビに入った瞬間私のベースと響香ちゃんのベースが組み合わさり、音楽の圧力がさらに高まる。元から合った響香ちゃんのベース音に私のスラップベースが組み合わさって、音楽の厚みが深まる。ってあ!響香ちゃんあんなにアドリブいれるなって言ってたのに、自分がいれてる!分かる、分かるよ!楽しいもんね!いいよどんどんいれちゃって!私たちがフォローするから!
背中合わせになる私と響香ちゃん、観客の声援が大きく、大きく響いている。演奏に集中しながらもつい、気になってエリちゃんの方を見てしまった。私の顔に満面の笑顔が浮かぶ。笑っていた、エリちゃんが……!笑ってる!両手を広げて此方を指さし、通形先輩に指し示すエリちゃんの顔には、花が咲いたような大輪の笑顔があった。それに涙ぐむ通形先輩を見て、私も泣きそうになったけど、まだ途中だからこらえる。
響香ちゃんの熱のこもった歌が終わり、最後の1音が途切れる。その瞬間、爆豪くんが最大威力で爆破を起こしたよりも大きな声援が観客席のあちこちから私たちに降り注ぐ。バンド隊、ダンス隊、演出隊全員がステージに揃って、観客に向かって頭を下げて、カーテンコールが引かれた。凄い聞き覚えのある声がカーテンを揺らしている、何してるのプレゼントマイク先生。
観客席から完全に私たちが隠れた瞬間に、私は膝をついて崩れ落ちる。両目からぼろぼろと涙がこぼれた。心配した皆が駆け寄ってくる中、つっかえながら私はみんなに伝える。
「うっ……ぐす……笑ってた!エリちゃん、笑ってたよ……よかったぁ……!」
「希械ちゃん!やったね!」
「……頑張ったな、希械。お前ら!大成功だぞ!」
「ケッ、当然だな」
エリちゃんが笑ってた、それを伝えた瞬間みんながわっと沸いた。駆け寄って私に抱き着く三奈ちゃんも、デクくんも……クラスの大多数が笑えなかったエリちゃんが笑顔を取り戻したことを知り、涙ぐんでいる。良かった!ほんとに良かった!きっと、これ以上ないほどの大成功だ!私は三奈ちゃんどころかえーくんも巻き込んで抱っこしながら、成功の余韻に思いっきり浸ったのだった。
「詰め込み過ぎだろ!色々可笑しかったわ!」
「勢いがヤバすぎて笑っちまったわ」
「B組の劇好評だな~見たかったぜ」
「しゃーない、片付けはちゃんとしないとな」
「あ、アンプとかは私が何とかするよ。ハロ!」
『圧縮!圧縮!』
少しだけ余韻に浸った私たちは急いで体育館の片づけを済ましてしまう。別の体育館の中では私たちと時間差で始まったB組の劇「ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~」が上映されていたらしく、私たちが片づけを終えると同じくらいに上映が終了したらしくて、観客の人たちがお腹を抱えながら体育館から出てくるところだった。そんなに面白かったのかな?私もちょっと見たかったかも。
ライブに使ったアンプ、大小合わせて計40個ほどがうずたかく私の前に積みあがっている。何せ観客を取り囲むように計算してアンプを配置したからね。音が伝わるまでの遅延とかも含めて完璧な配置だったはずだ。それらが一つ一つ超圧縮技術で小型のボックスに変わる。それをあーんと食べようとしていると、響香ちゃんがじっとこっちを見ているのに気づいた。
「どしたの?」
「え!?いや……その……食べちゃうんだなって」
「うん。こんなにあっても使わないでしょ?どの会社の規格にもあわないアンプだし」
「えー……あー、その……」
「ああ!欲しいの!?もしかして!?」
そっかそっか!腐っても私が本気を出して作ったアンプだもの!響香ちゃんが音質に太鼓判を押す出来だったし、部屋で使いたくなったのかなあ?でも寮でアンプなんてヤバいなんてものじゃ……私の部屋防音室だった……!もじもじと何をかを言おうとしている響香ちゃん、アンプが欲しいのかと聞いたら図星だったらしくて真っ赤になって俯いて、一回だけ頷いた。やだ、かわいい。
「いいよ、はい!」
「あ、ありがと!大事に使う!」
「うん、壊れたら直すから教えてね」
私は大、中、小の圧縮されたアンプを手に取って、どれがどのサイズなのかマジックで書いてから袋でまとめて響香ちゃんに渡す。響香ちゃんはよっぽど恥ずかしかったのか顔を赤くしたままだったけど、両手で受け取ってお礼を言ってくれた。どうせ食べて失くしちゃうくらいなら欲しい人にあげちゃえばいいよね。なんかいいことした気分!そう考えていると、鈍い音がして、私の方に誰かが飛んでくる。あれは……?
「デクくん、どうしちゃったの?空中遊泳?」
「
「え、うん?」
飛んできたのは今日の遅刻魔ことデクくん、放物線を描いて私の胸の中に納まった彼を抱き留める。私に真正面から抱き留められたせいでもごもご言ってるのでよくわからないまま下ろして、発射点をみると腕を振りぬいた状態でハウンドドッグ先生が鼻息荒く立っていた。な、殴られたのか……体罰?いや流石に勘弁してあげて欲しいなあ、ただ転んだだけなんだし。オールマイト先生の心配っぷりったらなかったよもう。
ホント凄かったんだよデクくん?聞いてる?オールマイト先生ったらデクくんが戻ってこない戻ってこないって寮と雄英の門を行き来してたんだよ?5分おきくらいに。ただでさえ顔色が悪いっていうのに真っ青になっちゃってさ。しまいにはマッスルフォームに変身して吐血しながら探しに行こうとするもんだから全員で止めたんだよ?エクトプラズム先生に捜索はお願いしたんだけどね。
「とりあえず緑谷お前暫くあだ名は『はじめてのおつかい』な」
「あ、あはは……ゴメンナサイ」
「そうだぞー心配したんだよ~?」
わざとらしくぷんすこ、と腰に手を当てて怒って見せるとデクくんは苦笑をしながら謝る。氷の橋の残骸を爆破して細かくした爆豪くんがひくひくと頬を動かして、無言でデクくんの頭を爆破した。爆豪くんの無駄に繊細な個性コントロールにより見事なアフロヘアーに変わったデクくんの表情に思わず峰田くんが噴き出した。そんなことしてるとB組の劇を見終わった観客の人たちが私たちを見つけて手を振り上げる。
「A組~~!楽しかったぞ~!」
「お疲れ様!来年も期待してる!」
「わっ!!やったァ!アザッス!」
えーくんが素直に褒められたことに感激してお礼を言い返す。私たちも手を振り返して応える。三奈ちゃんがフォールドプロジェクターでまたライブ衣装に姿を変え、それに触発された女子全員が同じようにまたフォールドプロジェクターでライブ衣装に姿を変える。オーディエンスが沸いて一通り写真を撮られたところで、中から大きな声が聞こえる。
「ごめん!こき下ろす気で見てた!」
「最高だったよ!ありがとう!」
「……言わなくてもいいのに」
「へっ、勝った」
爆豪くんは何の勝負をしてたんだろうね?それはともかく、あの人たちはヒーロー科に対してストレスを抱えていた人たちなんだろう。だけど私たちの思いは私たちを否定的に見ていた人にも届いて、その心を動かすことが出来たんだ。よかった……そうこうやっていると、聞き覚えのある足音が。後ろを振り向く。
「エリちゃん……楽しかった?」
「えっとね、えっとね……!」
通形先輩がエリちゃんを抱っこして、私たちの所までやってきてくれていた。エリちゃんは私と目が合うと、ふくふくとしたほっぺを紅潮させて一生懸命話し始めるのだった。
ステージ、ヨシ!エリちゃんも笑って大団円です。ちなみにデクくんvsジェントルですがデクくんが圧勝してます。ほぼ無傷、逃げに徹されたせいで時間がかかってます。鼻血も出てない。やっぱ常時12%はお強いです。あとインパクトの瞬間に出力を上げるのが身についているので打撃の瞬間に出力上げてきます。つよい。
次回は文化祭を普通に楽しむ会です。感想評価よろしくお願いします。では次回に
映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?
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必用
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本編だけにしろ