祝福擬きで行く先を決めたのは間違っていただろうか 作:刈刈シテキタ刈
無断での朝帰りなどという暴挙をかましたフェイドに、事情聴取を兼ねた説教をしてからの翌朝。
フィルヴィスは件のフェイドと共に、食堂にて朝食を摂っていた。いつも通りの光景である。
「………………」
向かいの席で、黙々とレタスを頬張る彼を眺めつつ、フィルヴィスは昨日のやり取りを思い返す。
まず、夜な夜な抜け出して何をしていたのか尋ねたところ、フェイドは他派閥の人間を鍛えていたらしい。
24階層の
「……というか、良かったのか?」
「何がだ」
「話によると、今日も訓練の約束をしていたんだろう」
事の経緯を説明し終えた途端。まだ何も言っていないというのに、フェイドは宣言した。
あいつらとは、金輪際関わらないと。
これまでの付き合いから理解していたが、フェイドは非常に受動的だ。
どちらでも良いと判断した途端、言われるがまま、されるがまま他人の要求を受け入れる。
ようするに、己の意思というものが薄弱な、奴隷根性の持ち主なのである。
だからこそ、腑に落ちなかった。そんな彼が、流れに身を委ねず留まっているこの状況が。
フィルヴィスの問い掛けに対して、フェイドは考え込むような仕草を見せたのち口を開く。
「事情を話した時、お前は嫌そうな顔をしていた」
「………………」
図星である。
今から数ヶ月前。弱みを握られてウラノスの傭兵となった際も、彼は朝に帰ってきた。
その時の出来事を思い出して、フィルヴィスは不安になったのだ。
フェイドが持ち前の奴隷根性を発揮し、また厄介ごとに巻き込まれてしまうのではないかと。
「その時、俺はこう思った。お前は、俺が他者と関わりを持つ事を好ましく思っていないのだろうと」
「………………」
図星である。
レフィーヤからの又聞きでの印象に過ぎないが、アイズという少女はフェイドに執着しているように思えた。
話には出てこなかったやり取りを想像して、フィルヴィスは不安になったのだ。
何かの間違いで彼女と親しくなったら、自分は用済みとなってしまうのではないかと。
「だから、こうして不要な関わりを絶っている」
フェイドはそう言って話を締め括り、レタスを食む作業に戻った。
草食動物の如くシャキシャキとした咀嚼音を奏でては、次々と朝食を胃袋へ片付けてゆく。
フィルヴィスがこれ以上何も言わなければ、このまま部屋に戻ってぼんやりと一日を過ごす事だろう。
「何故、複雑そうな顔をしている」
「………………」
自惚れでなければ、フェイドはこれまでの日々を経てフィルヴィスを優先するようになった。
その変化は、とても嬉しい。
だが、フィルヴィスが求めているのは、何の屈託も無く接する事の出来る仲間。
己の意思一つで思うがままに操れる奴隷など、フィルヴィスの望むものではなかった。
こちらの機嫌を理由に不義理を働かれては、非常に居心地が悪いというのもあるのだが。
「……お前にしては珍しい殊勝な心掛けだが、一つ言っておく」
「何だ」
「今更、そんなことで嫌いになるなら、出会った時点でお前の事など放り出していた」
それ以前に、つい数日前にフェイドを一人にしないと誓ったばかりなのだ。
その舌の根も乾かぬ内に彼を嫌うなど、絶対に有り得ない。
見当違いな気遣いを正すため、フィルヴィスはその旨を彼に伝える。
「………………」
そこで、フェイドの食事の手が止まり、何か考え込むような仕草を見せた。
「だったら、
「っ……!」
やがて、彼から返って来たのは、状況が状況なら勘違いしてしまいそうな問い掛け。
羞恥心という概念が存在しないからこそ、この男は斯様な質問を述べられるのだろう。
「そ、そそそんなもの、げ、限度はあるに決まっているだろう!」
至極当然と言わんばかりに、フィルヴィスは頬を染めながら反論する。
ここで肯定してしまえば、彼に何をされても抵抗できなくなってしまうから。
本当は、彼に何をされても良いというのに。
「だったら、これから俺が出かけることは、お前の言う限度に抵触するか」
「………………それは、しない」
形勢逆転。この否定を引き出す状況まで持ち込む事が、フェイドの狙いだったか。
その口から紡がれた問いに、フィルヴィスは白旗を上げるように首肯した。
「分かった」
すると、案の定と言うべきか。フェイドは早々に朝食を食べ終え、席を立った。向かう場所は、もはや聞くまでも無いだろう。
「……フェイド、言っても無駄だろうが、あまり遅くなるなよ」
「ああ」
去り行く背中に、何度も繰り返してきた小言を飛ばす。それに対して、フェイドはいつも通りの声色で頷いて食堂を後にした。
「はあ……」
一人取り残されたフィルヴィスは、溜め息を吐いた。そのまま、ゆっくりと朝食を口に運んでゆく。
今日はこれといった予定が無い。それに伴って、急いで食べる必要も無いのである。
「………………」
この後は、何をして過ごそうか。そんな事を考えながらオムレツを食べていると。
「フィルヴィス」
唐突に声を掛けられた。食堂の出入り口へ視線を向ければ、そこに居るのは立ち去ったと思われたフェイド。
「一つ気づいたことがある」
「……何に?」
まだ、何かあるのか。若干の警戒を含んだ声色で、彼がわざわざ戻ってきた理由を尋ねる。
色々と心労を重ねているフィルヴィスとしては、これ以上の面倒事は真っ平御免だった。
「どうやら、俺はお前に嫌われたくないらしい」
フィルヴィスの警戒を余所に、フェイドはそれだけ言い残して今度こそ出て行った。
「………………」
追いかけて。
部屋まで引きずり込んで。
滅茶苦茶にしてやろうか。
「はああああぁぁぁぁ……」
などという、実行不可能な脅し文句を溜め息に変換しつつ、フィルヴィスは項垂れる。
「そんなの……そんなの……私だって……」
やがて、胸の奥から浮かび上がった言葉を、か細い声で呟く。
しかし、この想いを彼に伝える勇気も資格も、今の彼女には無かった。
何も言わず、ただ寄り添う。
それだけが、今の彼女に許された行動だった。
「──────」
黒い外套がはためき、金の長髪が風になびく。絶えず行き交い、交差しては火花が散る。
市街地から離れた市壁上部を舞台に、目にも止まらぬ速度の剣戟が繰り広げられる。
間断なく発せられる刃の旋律は、その攻防の激しさを雄弁に物語っていた。
現在、フェイドが武器を交えている相手。
それは、アイズだった。
ベルは何をしているのかというと、受け損ねた棍棒が顎に直撃して昏倒。
現在は、少し離れた場所で石畳の感触を思う存分に堪能している。
原因は一つ。模擬戦の折々でフェイドが見せてきた【パリィ】の動きを、見よう見まねで再現しようとしたのだ。
「………………」
相手の技術を盗もうとするようになったのは、良い傾向である。
しかし、ベルが目星をつけた戦技は非常に良くなかった。
敵の攻撃を逸らして体勢を崩すという都合上、成功するタイミングは非常にシビア。
尚且つ、やぶれかぶれに連発すると、見苦しい
つまるところ、素人が迂闊に手を出していい戦技ではないのである。
坩堝の騎士や鈴玉狩りに脳天から真っ二つにされてきた過去を振り返り、フェイドはそう思う。
そして、気絶したベルに代わってアイズが模擬戦を申し出てきたというのが、ここまでの経緯だった。
「………………」
僥倖である。第一級冒険者の上澄みとされるLv.6は、現状のフェイドでは対処に苦慮する相手。
そんな相手と気兼ねなく戦う事こそが、あの時アイズの頼みを聞き入れた目的だったのだから。
「──────」
それはさておき。続け様、風と共に接近してくるアイズの袈裟斬りを、左手の【カイトシールド】で往なす。
彼女の戦いぶりは、これまで何度か見てきた。故に、やり過ごす程度であれば容易い。
「ふっ!」
しかし、それは昨日までのアイズであればの話。
身を翻しながら放たれる【嵐の刃】。本来の構えとは異なる姿勢から繰り出された斬撃は、フェイドの意表を突いた。
弾き飛ばされる【カイトシールド】。手元から離れた盾を横目に、フェイドは追撃を転がって回避する。
どうやら、一晩にしてアイズは【嵐の刃】を自分のものとしたらしい。
【戦鷹の爪剣】の力を借りずとも、自前の風で放てるようになったようだ。
それどころか、彼女が放つ斬撃は、フェイドや流刑兵達の剣技よりも冴え渡っていた。
息を吐く間も無く、旋風によって形成された斬撃が外套を掠める。
サーベルの刃渡りを大きく超えた剣閃は、フェイドに一方的な防戦を強いる。
「………………」
であれば、距離を潰してしまえば良い。
飛び退いて身を翻した瞬間、フェイドは左右の手から【炎術の黄銅短刀】を抜き放つ。
着地と同時に、右手の短刀に内蔵された【猟犬のステップ】を発動。
軽やかな跫音と共に掻き消えて、迫り来る旋風を回避する。
「───っ!」
そして、瞬きの間にアイズへと肉薄。
彼我の距離は、アイズが手に持つサーベルの有効射程より内側。短刀が猛威を振るう距離だった。
尚且つ、彼女は【嵐の刃】を放った直後の姿勢。彼女に許された行動は、防御のみ。
またとない好機に、フェイドは二刀流による連続攻撃を見舞う。
されど、フェイドが相対するのはオラリオでも上位に位置する剣士。
得意の距離を潰されただけで苦戦するようであれば、【剣姫】などと呼ばれていない。
瞬く間に体勢を立て直し、左右の短刀から繰り出される連撃に対処してきた。
劣勢、拮抗、逆転。目にも留まらぬ攻防の主導権は、少しずつアイズに傾いてゆく。
そして、均衡を打ち崩すような反撃により、フェイドの連撃が綻んだ瞬間。
「……そこ!」
体を反転させてから繰り出されるのは、速度を最優先とした刺突。
短刀の隙間を縫うように、サーベルの切先がフェイド目掛けて唸る。
「──────」
その
【パリィ】。左手の短刀に内蔵された戦技を、接触と同時に発動。
火花と共に一際大きな快音が鳴り響き、アイズのサーベルを弾き返す。
成功確率はおよそ四割程度の博打だったが、今回は上手く行ったようだ。
「な───っ!」
蹈鞴を踏んで、崩れた姿勢。攻撃はおろか、防御や回避も不可能な数秒間の空白。
目を見開いて驚愕するアイズを無感動に見つめ返し、フェイドは致命の一撃を放つ。
「………………」
その直前で、手を止めた。
アイズの喉笛まで迫った短刀を引いて、後ろ歩きで所定の位置に戻る。
これは、死合ではなく仕合である。故意に致命傷を与えるのは、ルール違反なのだ。
「……どう、でしたか」
一呼吸入れたのち、アイズが意見を求めてくる。フェイドの目から見て、新たな技を手に入れた自分は前より強くなれたのかと。
「お前は俺以上に【嵐の刃】を使い熟せている」
「………………!」
実際のところ、風の
もはや、第一級冒険者といえど、並大抵の者では太刀打ちすら出来ないだろう。
「本当、ですか……!」
フェイドがそのように告げると、アイズは微かに表情を綻ばせた。
「ただ、物足りない」
しかし、無邪気に喜ぶ彼女に向けて、フェイドは淡々とした面持ちで続ける。どうもしっくりこない。手応えがないと。
「………………」
学べる事はそれなりにあった。
ベートとの戦いでも薄々感じていたが、この世界の人間は狭間の地と違って、致命傷以外も避ける傾向が強い。
肉を切らせて骨を断つ。或いは、骨を切らせて命を断つ。
そんな相手とばかり戦ってきたフェイドとしては、その差異に違和感を覚えた。
そういう意味では、レヴィスなどの
現時点で見出した攻略法としては、体勢崩しに注力したのち致命の一撃を与える。といったところ。
迂闊に手出しせず、機を窺い続ければ必ず隙は生じる。丁度、今回の仕合でアイズに実践したように。
「………………私じゃ、物足りない?」
「ああ」
それはそれとして、今のアイズは訓練相手としては些か物足りない。
何処か呆然とした表情で聞き返されるが、フェイドは頷いて肯定の意を伝える。
「そっか……そう、なんだ……」
すると、アイズは肩を落としてしゃがみ込んでしまった。
春風と呼ぶには寒々しい風が、横合いから枯れ葉を運んでくる。
伴って、落ち込む彼女を慰めるように出現した
「だが、殺す気で来れば俺に勝てる」
実際のところ、アイズに対して優勢を取れているのは、彼女の剣技に殺意が伴っていないから。
モンスターを無慈悲に切り刻むあの容赦の無さが発揮されれば、形勢は容易に覆るだろう。
故に、フェイドは言外に要求する。ここから先は殺す気で来いと。
「……それは、出来ないです」
しかし、アイズは先程までのしょぼくれた様子から打って変わり、きっぱりと断ってきた。
その面持ちには、人を傷つける事に対しての忌避感が見て取れる。
「どれだけ傷つけられようが、俺は俺を治せる」
であれば。
「……私が全力を出すのは、モンスターだけです」
しかし、効果はいまひとつ。傍に出現した
「今から俺はモンスターだ」
であれば。【インプの頭(猫)】を被り、アイズへ威嚇のポーズを取る。これならば、彼女はこちらをモンスターと見做して襲ってくる筈。
「…………違います、貴方はフェイドさんです」
しかし、効果はいまひとつ。傍に出現した
「馬鹿、阿保、間抜け」
であれば。最後の手段として、アイズを罵ってみる。これならば、彼女はベートのように逆上して切りかかってくる筈。
「………………悪口言っても、駄目なものは駄目です」
しかし、効果はいまひとつ。傍に出現した
「そうか」
であれば。これ以上重ねる言葉は無い。
こちらから殺しにかかれば、アイズは否が応でも全力で対処してくる筈。
「だったら、俺の方から殺す気で行く」
このまま無闇に続けていても、ただアイズの
このような場所に足繁く通ってきた目的は、彼女と同程度、或いはそれ以上の敵と渡り合う手段の確立なのだから。
そうして、フェイドは
「………………!」
効果は抜群。フェイドの言動に目を見開いたのち、アイズはサーベルを構え直した。
それに伴って、傍に出現した
どれだけ武器を掻き集めようとも、どれだけルーンで己を強化しようとも、フェイドは持たざる者だ。
自らの屍を幾つも積み重ねなければ、殺したい敵も碌に殺せやしない。
故に、フェイドはこの戦いを通じて紐解こうとしていた。たった一つの命で戦い抜く、彼女らの術理を。
やがて、金と銀が交差する刃を向けたのち、死合を開始する。
「………………」
「………………?」
といった事はなく、フェイドは【分たれぬ双児の剣】を
「あの」
「なんだ」
「今、怖い事言って、大剣を取り出したのは、何だったんですか?」
「ああすれば、お前が殺す気で仕掛けてくるかもしれないと思った」
そうすれば、万が一のことが起きても言い訳が出来る。フェイドはそう言いながら、先程弾き飛ばされた【カイトシールド】を拾いに行く。
「……ずるい」
「そうか」
その返答で、アイズは自分が揺さぶりをかけられたのだと気づいたらしい。不満そうな声色で、先ほどの言動を咎めてくる。
足りない頭で考えた末の行動だったのだが、お気に召さなかったようだ。
「私が、その気になったら、どうするつもりだったんですか」
「死なないように立ち回るつもりだった」
「それでも、死んじゃったら」
「お前の
「……ばか、あほ、まぬけ」
「悪口を言っても、俺は反省しない」
そうして、辿々しい抗議を一通り受け流したところで。
「……あの、フェイドさんは不死身、ですよね」
「ああ」
「だったら、どうして……どうしてそんなに急いでるんですか?」
そんな質問が、アイズの口から発せられる。
「どういう意味だ」
「いえ……特に意味は無いんですけど、なんとなくそう見えた、から」
急いでる。その言葉を、フェイドは頭の中で反芻する。理由は幾つかあるが、最も大きなものを挙げるとするならば。
「………………」
遥か空の彼方。太陽が放つ光に紛れ、
「お前には関係の無い話だ」
俺の事は気にせず、自分の事だけ考えていれば良い。
暫くの間それを眺めたのち、フェイドはそう言って突っぱねた。
「そう、ですか……」
どこか寂しそうな様子のアイズはさておいて、フェイドは一人耽る。
唯一、フェイドが遭遇していない
「………………」
狭間の地を離れている間に、何らかの方法で目覚めたのか。
だとしたら、如何なる理由で自分に目を付けているのか。
あれ自身がここまで出向いてくるのか、刺客を送り込んで来るのか。
一体、どれだけの猶予があるのか。
敵は既知なのか、未知なのか。
今の自分で殺せるのか。
「んっ……」
暫しの間フェイドが耽っていると、アイズの口から小さな欠伸が漏れ出てきた。
「眠いのか」
「眠く、ないです」
咄嗟に口を覆い隠して何事もなかったかのように振る舞うものの、彼女の瞼は半開き。
近頃よく眠れていないのか、睡魔に襲われているのが見て取れる。
「………………」
それを見たフェイドは、何も言わずに石畳に腰を下ろした。
そのまま、市壁の塀に背を預けて目を閉じる。
「フェイド、さん?」
「………………」
突然の沈黙に戸惑った様子で名前を呼ばれるが、一切無反応。
瞑目したまま微動だにせず、フェイドは人型の置物と化した。
「……そっか、顔に出てなかったけど、フェイドさんも眠かったんだ」
やがて、そのような独り言をこぼして納得すると、アイズは一際大きな欠伸をした。
「ううっ……棍棒……パリィ……」
そして、横たわるベルを見やるが、依然として昏倒しており目覚める気配は皆無である。
悪い夢に魘されているのか、よく分からない譫言を呟いている。
「みんな、眠ってるし……私、も……」
高く登った太陽が発する温もりが、アイズの眠気を更に強くする。
そのまま、最後にそう呟いて横たわり、十秒も経たないうちに寝息を立て始めた。
「すぅ……すぅ……」
そうして、暖かな日差しの下で、なし崩し的に始まった昼寝。
遠く離れた都市の喧騒が、入れ替わるようにして聞こえてくる。
「………………」
しかし、アイズは勘違いしていたが、フェイドは眠ったわけではない。
ただ、目を閉じてこれまでの戦いを思い返しているだけである。
あの日、フィルヴィスが死ぬ存在と判明して以来、空いた時間にこうして模索していた。
何が敗因で殺されたのか、何が勝因で殺せたのか。それを突き詰めてゆけば、死なずに勝てる糸口が見つかるかもしれないと思ったから。
「………………」
深く息を吸って吐く。蔓延る雑念を断ち切り、意識を深く沈める。
やがて、閉じた瞼の裏に映し出されるのは、今は遥か遠き狭間の地の風景。
鼓膜が風の音を通り越して拾うのは、間断の無い剣戟とけたたましい咆哮。
そうして、フェイドの意識は辿り着いた。
この海馬に刻まれた、膨大な戦闘記録。類い稀な猛者が待ち受ける、追憶の世界へと。
お昼寝の時間だ。
ちょっとのんびりした展開が続いてるような気もしますが、次の次のお話くらいで展開が動く予定です。
読んでいただきありがとうございました。