この世旅する少女は灰の霧を纏い、眠り続ける明日を乞う。――神が普遍の世界で灰色は何を見る――   作:ルヌヘレル

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ここは十一話。機人さんは面白い。覚えた。

 

 先ほどあんなこと言いはしたが、これ以上のアクシデントもなく無事にアーシュカナの街に着いた。

 街の中、機械の工場があると聞いて機人だらけかと思ったり、なんかみんな似たような服を着て早口で語り続ける、というのを想像したが思ったより普通で、科学様式の角ばって単色を良く使う建物が多いと感じただけだ。それ以外は割と普通の街である。

 強いて言えば珍しく横に広く大きい建物が目立つが、シュカナ森街も中央などには意外とあったりする。神士庁舎とか。

 

 機人さんの腕が無いので街の出入りを手伝っている間、機人同士の会話を見かけたが、それが何とも言えない会話の仕方だった。ちょっとよくわからない。

 最初、機人さんの知り合いの機人さんに出会ったらしい。始めは知らない機人から話しかけてきて、腕なし機人さんの名前? を知れたりした。

 

『ハイ! ( は? )KOK+LOC(なにおまえ、)機体が少しすっきり(また無茶して)しました?』(腕ぶっ壊したの?)

 

『ええ。(ほんとだよね)マザーの偉大なる孫か(いつものクソガキが)ら受けたタスクが最高(急げってうるさかった)だっ(から)たので景気付に』(人雇えなかったのさ)

 

 なんか裏の意図が副音声で聞こえてくるようだけど、彼ら也の同族意識だろうか。

 その会話をじっと見つめていると気を使ってくれたのか、アイラ達を見て真面目な会話を始めてくれた。

 

「っと。このネタも彼らには伝わらないか。済まないね、俺はココロコみたいに立派な調声機は着いてないからパリパリ電子音で喋るぜ」

 

「ああ、ソういえば名前、てイうカ機体番号伝えるの忘れテタ」

 

お天道様は(アホ)いりますか?(かな?)

 

「それはもういいから。アとアホなのはアイツでショ」

 

 少し語気を強めて言うココロコに同意する友達さん。

 

「んまーなー。となると道中で急いで雇った形か。よかったのか悪かったのか」

 

 ココロコの友達が言うには、そもそも不測の事態で出掛けている。それだから腕を失っている、全損しなくて良かったという心配をしていた。

 

「と、そうだ。報酬はどうすル? 色々してもらったカラさすがに払いたいんだガ」

 

 と言われるがアイラは何もしていないので、特に言う事などない。

 

「んー。ムエナは? 私何もしてないし」

 

「神々に関わったり、マザー? と呼ばれる方の孫、とやらに関われるなら相当有名な方でしょうし……スミェーラトを一台買う予定なのですが、少しばかり援助してくれませんか?」

 

「エ」

 

 ココロコは声をひとつ上げ、なぜか疑念の表情だ。やはりスミェーラトは一般人からすると高いのだろうか? それとも別の理由が?

 

「ソレ、ボクの仕事聞いタ上で言ってる? マジ?」

 

 ムエナと顔を見合わせてから頷くが、機人の事情に詳しくないのでよくわかっていない。名前は売れているんだろうな、って程度の所を友達さんが解説してくれた。

 

「こいつ、機人全体でみると上位に入る稼ぎ頭だぞ。貴重なスペアを手作りなんて、安いわけないんだよな。一つ一つが普遍種の核に相当するぞ。心臓とか」

 

 ムエナと二人で納得したように大きく頷く。ムエナは別の理由にも頷いていたが。

 

「やっぱり機人種って結構いるんですね。需要があれば、それはそれは手作業単価も高くなりますよね」

 

 ココロコはその反応に納得したのか一つ提案をしてくれた。

 

「ボクの仕事に着いテきテから、スミェーラト買いに行く? スミェーラトの開発者の腕とかボクのフルカティマズムだから多分顔効くト思う」

 

「お前がそこまで言う、って珍しいな。いくらお前から見ると端金でも、何時もは適当に金額渡して即仕事に戻るしな。ここまで話し込むのも珍しい」

 

「ンー。何となく? ムエナ君の料理は美味しい、アイラ君はなんか可愛いペットみたい。……所謂推し感覚? 一応戦闘力がどちらもあるのは確認してるから、時間に縛られてなさそうだしアイツがまた似たヨウナことした時に頼みやすそう、ってのはアルヨ」

 

 やはりそこは機人種なのか、一応色々打算があるらしい。深い思考まではしていなさそうだが。ただ、少し疑問がある。そこをまた友達さんが代弁してくれたって言っていいのか、私達の仕草だけで話が進んでるというか。やっぱ高性能なのかな?

 

「あー。でも転移門の類って制限食らってないか? ここ百年くらいさ」

 

 ムエナはその疑問なら会話に混ざれる、と質問を増やした。大事な事を聞くので仕方ない。

 

「あ、それ総合受付の人から聞きました。そこの所どうなんです? 私達旅の途中なんですが」

 

「えーっと、旅途中ナのか。……ココだけの話あんまり公には出来ないけど、召喚系の神具を借り受けてるンダ。だから、継続依頼で、後援者みたいな? ソンな関係になルト思う」

 

 なんか、内容が怪しすぎる。別に変な物ではないけど、神から授かった数? とか怪しい気がする。そんな貰えるの?

 

「あの、ココロコ。その辺に居るような神々でもそこまで力を貸してもらえることってない、って聞いたんだけど?」

 

 ココロコと友達さんは一瞬惚けたあと、質問をしたアイラを見て笑い飛ばした。機人の間では常識なのか?

 

「ボクね、神々が『愛しい人類の発明品だ!』って機械の玩具にハマりまくった時に既にコノのシゴトしてたのサ」

 

「あの頃は規制も緩かったから普遍種ですら道具の類も一家に数個はあったな。その後大二柱様の大規制が入って制限されたんだよ。まぁそれで持ってるのも謎だけど、大方神々の修理要員として、大二柱様にごねたんだろう」

 

 ココロコはその最後の言葉に嬉しそうな頷きを見せた。単眼ライトが眩しいが、それだけ嬉しいんだろう。

 

「ソうそう! その後ブームが終わって徐々に安売りセールの様に配られてたのをいざこざにならないように大二柱様に返還したら、『また別物で似たような事が起きた時に矢面に立って修理を請け負ってくれるなら不便そうだし特別に持ってていいよ』って言ってくれたんだ」

 

「大二柱様が不便そう、って言うと尺度がわかりませんね。でも規制中に目こぼしなんて相当なんでしょう」

 

「あア、それね。この機人パーツ型の神器、相当頑張った零細神様がくれタンだけど、登録した人の意識を分割シテ転移させる、所謂契約召喚型で下手すると夜中に行ったりするから只でさえ強い負担がさらに酷くて」

 

 ココロコに言わせればこの神器は意識を分割させるから寝ている時に呼ぶと負担がすごいのだそう。昼間に呼んでも一瞬意識が飛んだりするので、なかなか契約してくれる人はいなかったらしい。

 アイラなら寝起きの仕方的に睡眠は必須ではない。となると、寝ているときの負担は無視できる、それと負担は生きる事の楔を受けて居ればいるほど強く起こるらしい。

 意識の飛びも、このメンバーならよく付き合ってくれそうと、まぁこちらは言うほど頻繫に起こさせるつもりもないらしいが。

 

「相当無理した、っていうかチョットシタじゃれ合いで壊しちゃったんだロウね。面子でボクに被害を出さないと考えるあまり、使い勝手を考えなかったらしい。デモ、こうして適性のある人物も出たことだし、依頼もヨカッタシ、言う事はないんだけどネ!」

 

「じゃあ――」

 

「おっと。その辺の話はそっちでしてくれ。神器が関わるなら俺が聞いていい話じゃないし、俺はそろそろ趣味仕事に戻る時間だ」

 

 時計を見ればもう午後五時時三十分。こちらは急ぐ旅ではないので、ココロコに合わせよう。買ってくれるのなら、その方が嬉しいしっていうかその予定で来たけど急いだから買えないっていうか。

 本人に言うつもりはなかったが、ムエナがいい聞き方をしたな。

 

「じゃあ行ク? さっきの条件でいいナラ、何台でもスミェーラトは買ってあげるよ」

 

 ムエナと見合わせ、二人で頷いて異存はないの合図だ。

 

「何台も、は要りませんが後援者契約承りました。後で神器の契約と、細かな概要を聞きますね」

 

「とりあえず、マザーの孫? のとこまで一緒に行こう」

 

 皆でぞろぞろと荷車に乗り込む。その際ユニコーンは荷車に乗り込んだアイラをみて、何故か悲しそうな顔をした。寂しいのかな? 皆だけで会話してたしね。

 

「アイラ君、馭者やってみるかイ? 僕とムエナ君はちょっと足りないパーツの選定したくてネ。きっとユニコーンもよろこぶヨ。ここまで来たらちょっとくらい怒られても平気ダカラ、ぶつけなきゃ好きニしていいヨ」

 

「さすがに選定は片腕だとやりにくいでしょうから、私もお手伝いします。なので一人ですが、頑張ってください。最初はやり方だけ、口頭で教えてくれるそうなので」

 

「おお。うん、やってみる」

 

 このユニコーンは賢い子なので下手でも多少は分かってくれるだろう。初心者でも安心だ。

 ムエナとパーツ選定を開始している中、ココロコは口頭で説明してくれた。

 

「エット、おしりの片方を一回叩くと叩いた方に少し寄って、二回で叩いた方に道を曲がる、三回で同じくグルっと回るように動く。真ん中を一回で止まる。二回で歩く、歩いていたらちょっと速度を上げる。賢い子だから、言わなくてもある程度察してくれるヨ」

 

 地図は、と言うと子冊子に印を付けてくれた。

 

「多分今は命令で残業しテいるはずなので、神士庁舎に行ってネ。あのガキは歩けないまま特定多数種族の受付してるはずだカラ」

 

「はーい。中央ね。この道を、とりあえずまっすぐね。というか神士庁舎に居るの? エリートなのかな」

 

 神士庁舎は人、と括られる存在が務める行政機関で、街の問題や神へのお布施という名の税金を納めるために人格診断やテストをしなければならない、らしい。

 

「アイツはコネだヨ。マザー、十二柱の技術神、その孫だヨ」

 

 コネがあるのにも驚きだが、技術神といえばこの辺りを一応統括管理している存在だ。その孫、って技術神は機械の体ではないのか? ココロコがマザーと呼ぶくらいだし。

 後ろを見ればムエナも疑問符を浮かべている。螺子にも疑問符を浮かべているみたいだが。

 

「アー。様子を見るに、やっぱ来たばっかりなのネ。技術神は、機械類神話形体唯一人間の体と感情を同時に有する事が認められた、人でありながら機械類神話の祖だヨ。だからマザー、そして孫がいる」

 

 それが良いことなのかよくわからないのだが、なんとなく凄そうだ。でも確かに人の体を持つ機人は少ない。街中で百人の機人のうち、一人見るか見ないかだな。元が一ヶ所に沢山いるわけじゃないらしいから余計に見かけない気もする。

 

「確かに人の体を持つ機人ってあまり見ませんね。どういう仕組みになってるんです?」

 

「それね。たまに聞かれるけど、ただ提示されたものを選択してるだけだヨ。ボクら機人は、自我をもってこの世界に来るか、この世界で生まれて自我を確立したときに三つ貰えるものがあるんダ」

 

 一つは完全独立接続領域。所謂プライベートを保障しますよ、ということらしい。これは技術神からもらえるらしい。

 二つ目は魂。生きていることを保証し、やがて輪廻に入る手形のこと、とココロコは言っていた。

 三つ目は、人の体か、自然な感情。元から自然な感情を持ち合わせていれば人の体も選択肢に入る。だが、生きている保証があっても感情は保証されていないので、大体の機人は感情を優先するらしい。

 二つ目からは大二柱から貰えるらしい。この世界で生きてくための物って名目だとか。

 

「四つはくれないんだね?」

 

「二つは必要な物、残り一つは技術神の懇願らしいヨ。ただ、人間の体と機械の体、その利点で一番遊び惚けてるのも技術神だけどネ」

 

「なるほど」

 

 そういい終えた後、ユニコーン放置していたのを思い出す。不貞腐れてはないが、褒めて褒めての空気を感じる。後ろからは真面目な空気を感じ、あんまり邪魔したくないが聞くことにした。

 

「ねーココロコさーん。ユニコーンの名前あるのー?」

 

「エット、ユニアンラ。ユラって呼ぶといいヨ」

 

 ほう。かわいい名前、にはいるのか。にしてもこの世界は図鑑が意味をなさないくらい多様な生き物がいるらしいが、ユニコーンっていう種は素晴らしいね。かわいい、従順で速い、いざとなれば多少戦える、のは道中で見た。

 聖獣、って括りになるから飼う? のも一苦労なのかな。いいなー。ほしいなー。

 

「ユラちゃん、いいね! 後ろ姿可愛いよ!」

 

 褒めてほしそうだったので褒めておく。ユラは一人で速度も調節してるし、ぶつからないようにしてる。アイラは見ているだけだが後ろもパーツ選定に集中しててこちらに口は出していない。まぁ、指示棒も信号って目印もあるし線も引かれてるから賢ければあんまり意味ないんだろうけど。

 魔動車とか、電気車もあって大変不思議な道となっている。青色でとても大きい車、何かを運んでいるようだ。

 空は茜刺す夕暮れ、街は外の草原より大分近代的な建築物だらけ。前も後ろも綺麗な車が行き交う道路で、上から見れば色とりどりの紐になるだろう。歩道に目を移せば機械同士の恋愛、仕事に忙しそうなヒトビト。

 これを見るだけでこの街の特色がわかるようだ。他にも街は沢山あるだろうけど、ここみたいな場所も探せばあるのかな。

 

 

 のんびりと建物観察に俯瞰観察と人類観察をして大きな車と進路を同じくする事数十分した頃。そろそろ神士庁舎に着く頃か、と前を向くと大きい車はアイラ達と一緒で神士庁舎に用事のようで広く取られた駐車場に向かっていった。大きい圧迫感が無くなり少し寂しい。

 私達はその横の厩舎にユラを預けなければいけないから。厩舎にゆっくりと進み誘導員の誘導がある所まで進んでいると、ユラが立ち止まり、大きな鳴き声を上げた。

 

「……ヒン!」

 

「ン? もう着いたんですネ。アイラ君、ムエナ君、助かったヨ。まだ乗ってていいヨ」

 

 広げたパーツを集めてそれぞれ別の袋に入れて後で修理するんだろうか。あとは多少の修理で流用可能なものは帰って継ぎ接ぎしたり、とか? なんとなくのイメージだが。

 そしてココロコはまだ片腕のままで荷車を降りた。何するんだろうか。

 彼は徐にユラの所まで行き、傍に立ち何やら喋り始める。

 

「ユラ君、あと少しなんダ。厩舎に入ってくれないカ? 寂しいならあとで構っテあげるかラ」

 

 その言葉を聞いてユラは怒り、悲しみ、どちらとも取れない雰囲気で足踏みを始めた。どうやら厩舎が寂しいようだ。

 

「お願いダ。ボク達は少しお仕事があって――」

 

 ユラはココロコを睨み、静かに頭突きをしている。ココロコは機人なので重さを生かして耐えているが、ユラの頭突きは転ぶじゃすまないと思う。

 

 誘導員は戸惑いの表情を浮かべているアイラ達の近くまでやってきて説明してくれた。ココロコの愛馬、ユラは寂しがりで有名、そして過去色々あったらしくそこを引き取った形でやってきて数百年もこの調子なのだとか。

 プライドもあって基本的に始めてみる人の言う事は聞かない。つまり誘導員の言う事も聞かないのが問題だが、生き物それも聖獣なのでこれくらいは可愛い物らしい。

 と、ここまでで疑問なのがプライドが高いはずのユラはアイラが大丈夫だった事。なんなのだろうか? とりあえずできることをしよう。ムエナの事は嫌ってないだろうけど……ムエナはそれを感じ取ってアイラに馭者を任せたのかな。

 

「えっと、許可が取れるのであればユラとその辺で散歩してきましょうか?」

 

 ユラが顔が飛ぶんじゃないかというくらい勢いよくこちらを見た。目が爛々としている。

 対照的にココロコさんはどことなく寂しそうな感じと申し訳なさそうな気持ちで一杯なのか、手を振り額に手を当て、足は前後に動いてお願いをしてくる。相当悩ましいんだろう。

 

「アイラ君、何か見せつけたようでごめんネ。駐車場の隣にだだっ広い演習場があるから、そこデ過ごしていてもらえるかな。いつも一人にするのは申し訳なかったんダ。手早く終わらせて来るヨ。ボクの連絡用端末渡しとくかラ、何かあったら教えテ」

 

 そうしてあれこれと道具が外され、何か操作をしているココロコさんを尻目にユラはこちらにゆっくりすり寄ってきた。ヨシヨシ、さっきはありがとうね。

 荷車はそれなりに大きく、あの魔獣くらいの圧迫感を感じる上どうしても収納できない機械類がずっしりと重みを出している。どうやって動かすのかな、と思ったら前輪が出てきてゆっくりと自走を始めた。手早く、と言うからにはこれが最大なんだろう。人とおんなじ速度でのんびり進んでいる。

 厩舎の後はこれが普通なのか、ユラは何も気にしていない。ココロコさんは少し恥ずかしそうだが。ムエナ? いつものニコニコ顔だよ。

 

 ユラと建物に消えていく荷車を見つめていた。さすがに寂しいのか、こちらに顔を擦りつけてきたが建物に入って見えなくなるころには体をうずうずさせていた。

 仕草と汗を見ると疲労はあるが、遊びたい遊びたいで仕方ないと言った様子かな。

 体を休めるためにもとりあえず歩くことにし、ユラと車を観察していく。歩きながら時計を見たら午後六時三十分を行かない時間だ。

 行政機関は年中無休二十四時間運営らしく、夕方も終わりかけているこの時間でも車の出入りや人は消えなかった。

 やはりこの世界には眠らない存在や夜に生きる存在も多いのだろう、恰好が黒っぽい。車も徐々に黒や銀などが増えていった。

 

 しかし夜に消えない人たちの気配も演習場に近づくにつれ少なくなっていく。車の数も出入り口が遠い所為かこの辺まで来ていない。

 楕円形の窪地に斜面を舗装した演習場はこの時間は使われないのか、人一人見当たらずこの世界で一人ぼっちになる錯覚に陥りそうだ。横の存在感が無ければ、たぶん眠ってしまっただろう。

 ただよく見れば、何かを擦った後や陥没した後があり、演習場は演習場として利用されているようだ。たまに金属の殻みたいなものも転がっている。

 

「ユラ、どうする?」

 

 そう問えばユラは固くなさそうな砂地を選んでゆっくり転がった。馬は、あんまり転がらないんだよね? ユニコーンとやらを馬に当てはめていいのかわからないけど、相当気を許してくれてるんだろう。

 ユラのお腹を手で掻いて彼女が満足したら、その温かいお腹を背に転がった。ユラは嬉しそうにこちらを見てくる。

 

 ふと、茜が沈みゆく空を見た。太陽は闇に追い出され、空間は徐々にその身を別の色に変貌させた。

 やがて風は冷めていき、茜に溢れていた空は月が支配する。空は星の濃淡で彩られた月とともに、闇色を飾っている。

 それの事がとても嬉しいようで悲しい、気持ちの所以も内容も理解出来なかった。アイラの気持ちが闇に沈みゆくようで、沈み切らないのは最初とは違う出会いの差。人が居るなら、生きて居ようとさえ思えるほど人とは温かい存在だった。

 

「でも、寂しいね。ユラ、走ろう」

 

 一応この演習場は何かの明かりで照らされているので転んだりはしない。私は拭い切れない不安、寂しさ。その他色々な感情を置き去りしていくように、だだっ広い子の場所を支配するように走った。

 ユラも速度を合わせて着いて来てくれたので、嬉しい気持ちが沢山溢れていくようだ。

 

「ふふふ」

 

 どのくらい走るのかも決めておらず、一人と一匹だけで明るいの暗い異常な空間を走り続けた。

 やがて可笑しく感じてきて、笑いが漏れていく。空気を取り込む意味もアイラには無いのか笑いながらでも息は切れなかった。

 

「アハハ!」

 

 徐々にアイラはおかしくなってきて、ユラに置いてかれてしまう。やはり、この世界で一人なんだなと感じる。

 

「アハハハハ」

 

 走りながら、疲れを知らないアイラは周囲の魔力を吸い込み始め、周囲の物は徐々に灰霧になっていく。すべては、我が身の献身なり、そう強く情動は語りかけてきた。

 すべてを霧にしてしまおうそう強く思った時、それは物だ、人だ、決して逃してはならない核をとらえた。




アイラの一言。

「あはは? なんだろね、これ」







 ではまた次回。

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