この世旅する少女は灰の霧を纏い、眠り続ける明日を乞う。――神が普遍の世界で灰色は何を見る――   作:ルヌヘレル

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 日時投稿忘れてた!!


ここは七話。料理と目的の再構築。(修正に伴い八話と九話統合)

 

 改めて見るこの街の市場は人の趣味や食性に合わせているのかなんでも売っている。極めた人からすると提供できていない物もあるようだが、生活に困らないほどの種類が様々なケースに入れられて選り取り見取りだ。

 

 昼は昼に活動できる人、夜には夜活動できる人を雇って二十四時間営業を成し遂げているようで事件が起きた場合の警察組織もしっかり見回りをしていた。

 

 そんな平和で何も起きそうにない市場を二人の少女が食材を求めて彷徨っている。アイラはよくわからないので見て回るだけだが、ムエナは睨むように値札や食材らしきものを睨んでいた。

 

「なんかこれ食べれるの? ってものもあって迷うね」

 

 そう言ってアイラは目が疲れたように空を仰ぐ。

 

「ですねー。あの真っ青な植物の根は私の勘では食べれるはずですし、そうでないにしても私の知っていそうな食材もあったので、それを選ぶのも正解だと思います」

 

 ムエナは人にぶつかりそうになってるアイラを引っ張りながら小さく数字を数えている。きっと話ながら計算しているのだろう。顔は笑顔なのでその脳内ははかり知ることはできないが。

 

「うーん。悩むね。単純にお肉とかでもいいと思うんだけど」

 

「あー。であればさっきのメソウのハンベルグで大丈夫だと思います! 白鉈って魚もよさそうでしたよ」

 

 メソウ、羽の生えた豚というのが見た時の率直な感想だろう。味は旨味が強く後味すっきり、そして草なら何でも食べる上その草で味が決まると言われるほど食肉屋のこだわりが出る。

 白鉈は鉈のように四角く平たい白い浮遊漁である。味自体は白身魚のそれとそん色はなく、ただ脂がのっていておいしそうというだけである。

 ムエナが調理した事のない食材というのもあるだろうが。

 

 大きな虫を見て驚き、希少な部位と言われれば気になりふらふらと出歩くのが悪かったのかムエナはアイラの服の裾を掴んできた。

 ムエナ曰く、

 

「互いに逸れて迷子になるので行かないでください。アイラさんが居ないと会計できませんし」

 

 とのこと。周りはどこかアイラに生暖かい視線を送っている。ムエナも同様だ。

 とはいえ、平均身長が百六十五フェントなので百五十五フェントのアイラは、明らかな礼装を着ているから通報されないだけでおそらく普通に子供に見られてるはず。

 

 そんな二人が食材をください、と言えば店主は顔をほころばせた。しかし、アイラより小さい子供であるムエナから値切り攻撃を喰らうと顔を引き締めた。アイラにはなにをしているのかよくわからないが、ムエナの必死な顔を見て学ぶものがあるのだろうと話を聞いている。

 

「おじさん。これ百三十コクハにならないですか?」

 

 コクハとはこの世界の通貨である。一般的には電子決済も魔術決済も現金も対応してるのが当たり前である。

 

「いやいや! それはないよ。それ二百コクハじゃないか。百九十」

 

「これ、お肉を血から守るための紙を入れ忘れてますよ? 百七十」

 

 その言葉に驚いた様子で店主は大声を上げて商品をまじまじと見た。

 

「えぇ!? ほ、本当だ……うむむ。では百八十」

 

「私達電子決済できるんです。百七十五」

 

 ニッコリ笑顔でギリギリまで詰めるムエナ。アイラのお金で買うからこそだろう。

 

「はぁ、まぁ仕方ないか。電子決済できるなら何も言わん。小銭が出るならめんどくさいから突っぱねる所だったが」

 

「はい。ありがとうございます。アイラさん。カードここに」

 

「あい。というか順応早いね。私よくわかんないや」

 

「慣れですよ、慣れ。アイラさんもそのうちできるようになります」

 

 ムエナはそう簡単に言うからついやれやれ、と首を振ってしまう。やろうとするときっと話にならない金額を言ってしまうんだろうな、と思い遠い目をした。

 

 そんなこんなで肉屋、魚屋、八百屋といろいろなところで――負けたり勝ったりという技術ではない――平和に過ぎた市場を見ていたのだが、なんとなく大型複合施設に行こう。目的は一応あるので、ムエナを無理やり連れていく。

 

 そこは旅道具を扱う店舗であり、ここで道具をそろえようとムエナを呼んだのだ。そしてもう一つ目的がある。

 

(ムエナも行先は違うにしても一所でじっとするような性格じゃなさそうだし。いろいろと迷惑をかけてるから鞄くらい買ってあげよう)

 

「ムエナ、魔法鞄選んで。買ってあげる」

 

「え!? どうしたんですか急に? 私は十分物を貰っています!」

 

 唐突の発言に驚きすぎたのか百面相しているムエナ。それも仕方ない、見つけてしまったから。自分の感情に触れかけてしまったから。

 

「なんとなく、上げたいから。理由はわからないんだけど、そうしたいから」

 

「アイラさん……」

 

 アイラの胸中は市場に出た時から、いいや。朝起きた時からおかしかった。

 なぜかずっと寝て居たい気持ちで溢れていて、それがぽっかい開いた空洞に溜まっていきそうだった。

 暗闇と光が遠く高く逃げていきそうでおかしくなりそうなのだ。

 逃避して眠って居続けることを選びそうで。

 

「アイラさん。あなたは今、悲しそうな顔をしています。とりあえず、鞄を私が貰って落ち着くならそうしましょう。そこで別れましょう。けれど、そうでないのなら私はあなたに教えてあげたい」

 

 ――人に物を贈るって言うのがどういうことか。約束は約束ですから、そうでないのなら私の料理を食べてもらいます。

 

 そう決意した顔で、力強く告げたムエナにどこか安心する。とりあえずいつの間にか強張っていた顔を解きほぐし、自分用の魔法鞄も選ぶことにした。 

 

「ムエナの礼装は全体的に涼しそうだから、この辺の水色とかに似合うかもしれないね」

 

「そうですねー。私はその鞄にある波のようなデザインが好きですねー。アイラさんの鞄は……そうだ! 互いに鞄を選んでそれを買いません? 買うのはアイラさんですけど。えへへ」

 

「ふふふ。お金は足りそうだから大丈夫。いいよ、そうしようか。講習の時間もあるから十分ほどで」

 

「了解です! じゃあ早速行ってきますね」

 

 こちらを背にして歩いていくムエナ。アイラはそれを寂しそうに見つめていたが、それを振り払い店内を見回ることにした。

 青、赤、緑、橙など色とりどりの鞄たちが店内にちりばめられていて、神印や魔術印をモチーフにした鞄もあり、デザインは多種多様だ。

 あれもいい、これもいいと悩み歩くアイラはテントや寝袋ボタン式の魔力ストーブなどを集めながら探すことにする。

 

(このぬいぐるみとか抱いて寝たら気持ちいいんだろうな。でも、なんで旅道具屋に?)

 

 旅道具に似つかわしくない大きな抱き枕をみてアイラは思う。魔法鞄とは色々なものが外見以上に入る鞄なので、旅のお供に、と鞄と一緒に販売されている物のようだ。

 それに今はアイラの肩掛け鞄に詰め込んでいるが、買い物にも便利なのでよく使われるのが魔法鞄なのだ。

 

 必要なものを見回ってい居ると店舗の隅にある少し寂れた所には鞄の中には革のままのデザインもあり、その中にはムエナの好きだと言っていた波を模したデザインが彫られているものを見つける。

 それは大きな波を模した渦巻で、それが大小さまざまにちりばめられていた。

 大きすぎないサコッシュの様で、全体的な印象は橙色だ。紐は黒の合成糸で作られていて肩を擦りにくく作られている。

 これだ! と思ったアイラはそれを手に取り勘定場まで行くとムエナは手ぶらで店員と話している。

 ムエナはアイラに気が付き手を振り何かを指し示す。

 

「あ! アイラさん! これ、これいいと思うんです」

 

 ムエナが指し示すのは『思い入れのあるあなたにおすすめ。すでにある鞄を魔法鞄にしましょう』と書かれた広告だった。

 その広告にはミャルナント限定で多少の割引をしていると書かれていて鞄を買うにしては材質により割高となるようだがアイラの鞄も魔法鞄にできそうである。

 その提案でアイラは大いに喜びムエナに抱き着ついた。

 

「ムエナ、ありがとう。ここまでしてくれてほんとにありがとう……」

 

「いいえ、大丈夫です。お金出すのはアイラさんですよ。気にしないでください」

 

「あのね。私の選んだ鞄も見てほしいの」

 

 そういってアイラは横に置いてあった鞄を見せる。

 

「おー。かわいいですね! 波の模様が肩ひもが付いてるとこいいですね。それとどことない橙色で温かい日差しを感じるようです。ありがとうございますアイラさん!」

 

 ムエナとアイラは互いに選んだ鞄――ムエナは広告のチラシだが――を交換しアイラは後日ここに来るとしてムエナの鞄と旅道具を清算した。残念ながらアイラの鞄まではお金が足りなかったので、市場で買った荷物はムエナの鞄に移し替えた。

 

 じゃあそろそろ講習ですね! と急いで討伐者協会に向かう二人。市場などでだいぶ時間をかけてしまったので小走りでぶつからないように歩く。

 

「ソレアさん! ムエナの講習受けれる?」

 

「え、ええ。準備して上に行ってくれればいいわ。ムエナちゃんが講習の間アイラちゃんはどうするの?」

 

 あ、行ってきますねとそっとフェードアウトするムエナ。ソレアとアイラに手を振り去って行く。

 アイラも手を振り返しながらソレアに返事をした。

 

「そこで寝てます」

 

「そっか。この看板使う? 昼寝が好きな人に貸し出してるんだけど」

 

 その看板には『昼寝中。起こさないでください』と書かれていて魔術紋が描かれている。

 

「借ります。そうですよね。昼寝をしないと生活できない種族が居るかもしれませんもんね」

 

「そうそう。あとは職員の昼寝に使ったりね。これは誰のためにってわけじゃないけど用意したの」

 

「なるほど。じゃあおやすみなさい」

 

 ◇

 

 眠ってどれほど立っただろう。濁流のように無慈悲に過ぎ去る時間は、思考を現実に引き戻した。周囲が何か楽しそうに騒いでいる。その賑やかさに気を取られて目を覚ます。覚ましてしまった。

 いつの間にか外は暗くなり周囲は飲めや歌えやの大宴会場となっている。まるで自分の居場所ではなかったかのように様変わりしていて驚いた。

 一応自分の分は自分のお金で払っているようだがムエナもその調理応援に駆り出されているようだ。

 約束は、と思ったものその疑問は直ぐに解決することとなる。お酒に酔っている様子の人々が歓声をあげ、拍手で迎えたのは約束のハンベルグ。それも大量にほかの料理が盛られた超ドデカハンベルグだ。

 持ってきたのはムエナで、彼女の頭は軽く隠れているので不安になるがしっかりとした足取りで此方にやってくる。

 

「アイラさん! 約束の、です! よその世界ではお肉のハンベルグはハンバーグというらしいですね! さすがの混沌って感じがします! さぁこれを食べて元気になって、いっぱいお話ししましょう!」

 

 料理を作っていた疲労と空気に飲まれたのか、異様にハイテンションだ。

 

「ちょっと待って! 寝起きで何も理解できてないんだけど。どういう状況なの?」

 

「あ! そうですね。説明しないとですね!」

 

 ムエナ曰く、アイラが講習の後、早めに料理を作った後アイラが起きなくて困った。しかし買ってもらった魔法鞄には時間遅行機能が機能が付いている、というのを教えてもらったらしい。

 そして教えてくれた内の一人がムエナの作った料理の匂いにやられ食べたいー! と言って聞かなかったそう。

 仕方がないので厨房の臨時職員扱いでしばらく普通に注文を受けることに。――厨房を借りての部外者が絡む大きな金銭の発生はよくないとのこと――

 料理となれば求められてる以上のことをしがちらしい彼女は、この街には無い料理や材料と思い出を聞いただけでほぼ同一の料理を生み出し始める。

 そんな技術は人を呼び、街の人も呼んで笑いあり涙ありの大酒飲みもお酒ダメな人も集まる臨時大宴会となったそう。

 アイラはそれを聞いて呆れるのを通り越して笑ってしまう。明らかに異常な状況になっていった様子は笑う以外の選択肢を持たなかった。

 

「ちょ、ちょっと。笑わなくてもいいじゃないですかー」

 

「アハハ。いや、だって。見てよ。私の周りが奇跡的に汚れてないだけで起きたらあっちやこっちで大騒ぎだよ? 意味わかんなくて笑わない方が無理だと思う」

 

「ふふふ。まぁ、面白いならよかったです。じゃあたっぷり食べてください。アイラさんなら特別にお金は受け取らずに沢山作ってあげますから!」

 

「そう? じゃあありがたくいただきます」

 

 ものすごくでかいハンベルグを中心に麺類やポムを炒めたもの、肉や魚を揚げたものに野菜も大量に乗っていて、明らかに一人で食べる量ではない。食べきれなかったらどうする予定だったのか。

 

 ひとまずアイラは中心で主張激しいメソウのハンベルグから手を伸ばす。ナイフを入れればすんなり切ることができるが一つにするのが大変だ。そんなハンベルグを一口含めばその味は爆発したようにおいしさの暴力で口内を蹂躙する。

 

「っ! もいひいね(おいしいね)!」

 

 肉は口に入れた瞬間柔らかく崩れ、肉汁が飛び出せば旨味が飛び込んでくる。その上それと同時に繋ぎとなるいろいろな野菜の甘さがアイラの舌を喜ばせた。

 その中には少しばかり弾力のあるような触感の物もある。これが旨味を出し、触感を飽きさせない構造になっているようだ。

 

「ふふふ。口にいっぱい入れちゃって。小動物みたいですね」

 

(そういわれても食べるところを客観的にみたことないし……うん。このアセプラの炒め物もおいしいね)

 

 必死に口を動かしていれば、アイラの周りでは大食い自慢達が自分で好きなものを盛った大食い大会のようなものが出来上がっていて賑わいは一層増している。机を挟んだ向こうのところでは大酒のみ大会、侍と槍を持った男が女機人を必死に止めている様子がわかりやすいように囃し立てられていた。

 酔った治癒士の意味のない再生魔力放出も、雰囲気に寄った魔導士の味のないお酒創造もこの空間では宴会芸で済まされる。本来は無駄遣いの一言だが。

 

 

 

 

 アイラは二時間ほどゆっくり時間を掛けてムエナの顔サイズのハンベルグやティメトなどのサラダ、塊肉を焼いた物や麺などのが下に敷いてあったりしていた物を満足に食べ終え、人心地着く。空腹も満腹も感じないと気が付き料理を追加注文をすることは無かったがあらゆるお酒、あらゆる飲み物。辛い物から甘い物、すごく渋い物までなんでも飲み明かした。まるでここで最後の晩餐だとでも言うように、飲んだ。

 これもけっして酔うことは無かったものの、この空間に謎の懐かしさを覚え満足していくのをアイラは感じる。

 

(このままここで寝て居たいなぁ)

 

 再び眠ろうとすれば、隣に座ってじっと見ていたムエナの気配を感じ、ついそちらを見てしまう。

 

「アイラさん、気が付いてくれて嬉しいです。大事なお話しましょう?」

 

「うん。ムエナは、ここでずっと料理を作ってくんでしょ? じゃあこれで約束は――」

 

 ムエナは答えを聞きたくないとばかりに話を勝手に進めるアイラの頬をむんずと掴み、少し圧のある笑顔でアイラを見つめている。どうやら怒らせたようだ。少し落ち着きを取り戻したアイラと視線が合うとムエナは頷いてから話し始める。

 

「いいえ。ここで一生を終えるつもりはありません。私はたーくさんの料理を作っていけ、と神様に言われて生れ落ちました。生きる世界が変わろうとそれは変わりません」

 

「でも、この世界じゃ旅をしないでもそれはできるよね?」

 

 アイラは普通の疑問のように言うが、内心は嵐のように渦巻いている。声音も硬く震え、何かに怯えているようだ。ムエナはその雰囲気を感じ取ったのか、次の言葉を紡ぐ声色は優し気だった。

 

「ええ。それはそうですが、私の本当の使命とはおそらく生きる事。生きてどんな形であれ幸せと言い続けることです。前の世界ではきっとそれが保てないからこの世界に呼ばれたのです」

 

 苦笑気味で秘密だよ、という様にムエナの料理の秘訣教えてくれる。

 

「実は私の料理のおいしさは私が幸せと思った量を表します。きっと、ここに居れば保つことは可能でしょう」

 

 次の由来を聞く頃には涙腺は限界だった。気持ちを我慢するのも、限界だ。

 

「しかしそれでは私はあなたが気になって夜も眠れなくなってしまう。子供のように泣くあなたを、小動物のように一人寂しく飲み込むように食べるあなたを私は放っておくことはできません」

 

 ――ですから、貴方と旅をしたいのです。あなたが寂しくないように食事は寂しく食べるものではないと、教えてあげたい。

 

 そうムエナが締めくくり、アイラがその言葉を飲み込むことができると、頬に伝う何かを感じた。胸にほとばしる温かさを知った。それはきっとかけがえのない何かを手に入れた物だと、それを知らずにいても感じるような温かさだ。

 アイラは気が付けば泣いていた。周囲の人が彼女を元気付けようとはしゃいだのを見て笑ってしまい、また泣いてしまう。

 涙が止まり、落ち着いたアイラは独白を始める。

 

「私の生まれは遠い闇でね。温かくて、私の居場所はそこしかないと思っていたの。そこでずっと泣いていた」

 

 ムエナは静かに続きを促し、アイラは語る。

 

「泣きながら眠って、眠って。眠り続けて居たらつい最近ね、太陽のような声に起こされて、追い出されたの」

 

「太陽のような声ですか。追い出したのはあなたを虐めるためなのですか?」

 

「たぶん、違うと思う。声もとても愛を感じるものだった。でも、すごく寂しかった。何も知らないのに、何もわからないのに追い出されて」

 

 勢いのまま語るのを周りは許してくれた。そのことがまた、たまらなく嬉しい。

 

「何を生きがいにしていいのかわからなくて、一人で生きていくなんて考えられなかった」

 

 一口だけ飲み物を飲み、一拍してからアイラは口を開く。周囲のガヤはガヤの役割を果たしながらも聞き耳を立てている。大事な誰かの子供の様で、何故か気を惹く彼女の助けになれるように。

 

「でね、その声からこの世界を旅すればお母さんが会いたがってるって聞いて。頑張ろうとしたの。でも、目が覚めたら寂しくて。悲しくてね。最初にあった動物とは違って外の動物さん達は助けてくれないし、私に残されたものは何もなかったの。だから、もう一人で眠っていようかなって思って」

 

 ガヤは囁き声で、動物が助けてくれない、って助けてくれるのは聖獣じゃないの? と噂話を始めるが、ムエナが会話を継いだのでガヤに帰っていく。

 

「きっと、アイラさんを起こした人はアイラさんに外を経験してほしかったのでしょう。そしてあなたにしかできないことがあると信じて。あなたに笑顔で居てほしいからこそ起こしたのでしょう。

 

 アイラを抱きしめて、お母さんのように背中を撫でつけてくれる。

 

「あなたはきっと愛される子です。それでも嫌なのであれば、殴りに行きましょう。おそらくその声は神様のような存在でしょうから。

 

 次に出る言葉は、お茶目で、少し突飛な内容だった。

 

「嫌なことをされたら人間が試練として殴りに行くのは推奨されてるそうですよ? 講習でぽそっと教えてくれました。えへへ」

 

「そうなの? 行ってみようかな」

 

 ムエナはアイラの両手を強く握り、笑顔で口を開く。何か大きな事情に巻き込まれそうなアイラの話を聞いてなお躊躇せずに答えを出した。

 

「アイラさんの目的はお母さんに会う事、きっとそれ以外にもあるでしょうけどとりあえず置いておいて。その起こされて嫌だった人に文句を言う旅をするのだとしたら、その旅に私を連れていってはくれませんか?」

 

 満面の笑みは楽しい未来を想起させるようで、それに縋っていいと思える見たこともない夏の海を海を彷彿とさせた。

 

「味気ないご飯も二人で食べればこそ、ですよそしてその先も、できれば料理番を任せてください。おいしく楽しい料理を提供しますよ」

 

 アイラはその言葉に感動で打ち震えた。涙が滂沱と流れ寂しく凍った心が溶けだすようだ。これからは寂しくないのだと、この先に待つ不確定な生きる意味ではなく自分で知り合った生きる意味ということに強く喜びを得た。

 

「うん……うん! 一緒にいこう! 一緒に!」

 

 アイラは頷く。何度も、何度も泣いて疲れ寝てしまうまで頷いた。これはきっと世界から見たら半歩も進んでないような出来事かもしれない。明日また世界は朝を迎える、その暁に誓ってアイラはかの声を殴り飛ばそうと決めた。




 アイラの一言

「必ずあの邪知暴虐の声を討滅せんと誓った。と、思う」


 今度は日時を忘れました。
 この後三話ほど閑話があり、あとがきに本編にでる可能性の薄い、まぁ出るかもしれないけど不安を軽減させるための設定羅列を「小説家になろう」で投稿してますが、ここでやっていいのかわかりません。
 あと本編の文字数が足りません。
 なのでそこだけ向こうで読むなら読んでいただければ。読まなくても本編にそのうち出る情報と、アイラの反応と意味のない掘り下げ。それから完全なIFだけです。
 閑話は基本的に昼寝の夢くらいふわふわした扱いなので。私があとがきでしゃべりたいとき、出先で暇で書くくらいなのもなので。

 サブタイ注意喚起をしていてうるさいのが見えない、というのはこっちの利点かも。
 てことであと一話だ。その後四日後、投稿予定です。そうなると書き溜めできるかも。

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